相続・手続き
相続登記、遺産分割、遺言、相続放棄。行政書士として相談を受けてきた手続きの順番と、本人でできる範囲。
読む順番の目安は、相続人の範囲と戸籍の集め方、法定相続情報一覧図、遺産分割協議書、相続登記、そのあとに遺言・遺留分・相続放棄です。どの記事も制度の公開情報と実務経験の範囲で書き、数字には時点を付けています。個別の事案は、記事を読んだうえで専門家に確認してください。
相続は、亡くなる前にできることと、亡くなってから期限つきで進むことに分かれます。死亡を境に、その前・直後・確定・分割・名義と税金、の順に並べています。
1. 亡くなる前にできること
遺言・贈与・共有を避ける設計。元気なうちにしかできない手続き。
- 遺言の種類と選び方 ― 自筆証書・公正証書・秘密証書、要件と費用と向き不向き(2026-09-09)― 遺言には三つの形式があります。自分で書く自筆証書、公証人が作る公正証書、めったに使われない秘密証書。それぞれの要件(一つ欠けると無効)、費用、検認の要否、向いている人を整理し、遺言を書く前に決めておく三つのこと(財産の一覧・誰に何を・執行者)を書きます。
- 自筆証書遺言の保管制度 ― 法務局に預けると何が変わるか、検認との違い(2026-09-07)― 2020年7月に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度。手数料3,900円で預けると、紛失・改ざんの心配がなくなり、家庭裁判所の検認が不要になります。預ける前の様式ルール、預けたあとに相続人がすること、公正証書遺言との使い分けを整理します。
- 公正証書遺言の作り方の実際 ― 予約から正本の受け取りまで、当日の流れと費用(2026-09-09)― 公正証書遺言は、公証役場で公証人が作る遺言です。作る場面が保管制度の登場で減ったとはいえ、内容が複雑な遺言や判断能力に不安がある人には今も第一選択です。公証役場の選び方、事前の打ち合わせで渡す資料、証人二人の手配、当日の読み聞かせと署名、手数料の計算(財産の額と受け取る人の数で決まる)、正本・謄本の扱い、出張してもらう場合を、実務の順で書きます。
- 遺言の付言事項 ― 法的効力はないが、いちばん読まれる部分(2026-09-09)― 遺言書の最後に添える「付言事項」は、財産の配分のような法的効力を持ちません。それでも、なぜこの配分にしたか、家族への感謝、葬儀の希望を書いた数行が、相続のあとの争いを一つ減らすことがあります。書く内容、書かないほうがいい内容、遺留分を侵す配分のときの書き方、自筆・公正証書・保管制度それぞれでの扱い、実務で見た「効いた付言」を整理します。
- 遺言の撤回と書き直し ― 新しい遺言が優先する仕組みと、古い遺言の始末(2026-09-09)― 遺言は、いつでも、何度でも撤回できます。新しい遺言を書けば、抵触する部分は古い遺言が撤回されたことになります。公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することもできます。ただし、古い遺言が残っていると、複数の遺言の解釈で揉めます。撤回の四つの方法、書き直すときに「従前の遺言をすべて撤回する」と書く理由、保管制度に預けた遺言の撤回手続き、書き直しが必要になる場面を整理します。
- 遺言執行者 ― 遺言に「執行者」を書く意味と、いないと何が止まるか(2026-09-09)― 遺言は、書いただけでは動きません。遺言の内容どおりに登記や解約を実行する人が「遺言執行者」です。指定がないと相続人全員の協力が要り、内容に不満のある相続人が一人いれば止まります。執行者の権限(2019年改正で明確化)、誰がなれるか、就任後にすること、報酬、指定の書き方を整理します。
- エンディングノートと遺言の違い ― 書いても法的な効力がないもの、あるもの(2026-09-09)― エンディングノートは、書店で買えて気軽に書けます。ただし、財産の分け方をどれだけ丁寧に書いても法的な効力はありません。効力があるのは要件を満たした遺言だけです。ノートに書く価値があること(財産の一覧、口座、連絡先、医療と葬儀の希望)、遺言にしか書けないこと、二つを組み合わせる実務の勧め方を整理します。
- 死後事務委任・任意後見・家族信託 ― 「亡くなったあと」「判断できなくなったあと」を誰に託すか(2026-09-09)― 一人暮らし、頼れる子がいない、判断力が落ちる前に備えたい。そのための契約が三つあります。死後の葬儀や手続きを頼む「死後事務委任契約」、判断能力が落ちたときの後見人を先に決める「任意後見契約」、財産の管理を家族に託す「家族信託」。何をカバーするか、いつ効くか、費用の目安、遺言との組み合わせを整理します。
- 生前贈与と相続時精算課税 ― 年110万円の非課税、7年の持ち戻し、2024年から変わった選び方(2026-09-09)― 「毎年110万円ずつ子に渡せば相続税が減る」は、2024年の改正で半分だけ正しくなりました。暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ延び、一方で相続時精算課税に年110万円の基礎控除が加わった。二つの制度の仕組み、どちらを選ぶかの考え方、住宅資金の特例、贈与で気をつける実務上の点を整理します。
- 名義預金 ― 子や孫の名義でも、親の財産と見られる預金(2026-09-09)― 子や孫の名義の通帳に親がこつこつ入金していた預金は、名義が誰であっても、税務上は親の相続財産と扱われることがあります。これが名義預金で、相続税の税務調査で最も多く指摘される項目です。判断の基準(原資、管理、贈与の合意)、税務署がどう調べるか、遺産分割での扱い、そして名義預金にしないための贈与の仕方を整理します。
- 二次相続を見据えた配分 ― 「配偶者に全部」が、次の相続で高くつく理由(2026-09-09)― 父が亡くなり、母と子二人が相続する。配偶者の税額軽減で母が全部取れば一次相続の税金はゼロになります。ところが、母が亡くなる二次相続では、配偶者控除が使えず、相続人も一人減って基礎控除が下がり、母の固有の財産まで加わって、合計の税額が増えることがあります。一次と二次の合計で考える理由、配偶者が取る割合の考え方、配偶者居住権や小規模宅地の特例の使い方を整理します。
- 不動産の共有はなぜ避けるべきか ― 「とりあえず共同名義」が十年後に招くもの(2026-09-08)― 遺産分割で話がまとまらず、相続人全員の共有にした不動産。売るにも貸すにも全員の同意が要り、相続を重ねるたびに共有者が増えていきます。共有のルール(2023年改正)、共有物分割の方法、持分だけの売却、実務で勧める代わりの分け方を整理します。
2. 亡くなってすぐ(3か月まで)
全体像、相談先、凍結された口座、遺言書の扱い、借金と放棄の判断。
- 相続手続きの全体像と期限 ― 死亡届から3年後の相続登記まで、いつまでに何をするか(2026-09-09)― 人が亡くなったあとの手続きは、期限のあるものから順に片づけます。7日以内の死亡届、14日以内の年金・保険の届出、3か月の相続放棄、4か月の準確定申告、10か月の相続税申告、3年の相続登記。全体を一枚の年表にし、それぞれの手続きで誰に何を出すか、どの記事で詳しく書いたかを整理します。
- 相続の相談先の選び方 ― 弁護士・司法書士・税理士・行政書士・調査士、何を誰に頼むか(2026-09-09)― 相続の相談先は一つではありません。争いは弁護士、登記は司法書士、相続税は税理士、書類と協議書は行政書士、境界と分筆は土地家屋調査士、公正証書は公証役場。信託銀行や市役所の無料相談、法テラスもあります。「最初に誰に相談するか」で費用と時間が変わるので、事案の種類ごとの入口と、費用の目安、専門家同士の連携のされ方、相談前に用意するものを整理します。
- 行政書士と司法書士の違い ― 相続で、誰に何を頼めるのか(2026-09-08)― 相続の相談先として名前が挙がる行政書士と司法書士。法律で決まっている「できること・できないこと」の線引きと、行政書士が窓口になって登記だけを司法書士へ回す実務の形、本人申請で済む場合、弁護士や税理士の出番を、行政書士の立場から整理します。
- 預貯金の相続 ― 口座はいつ凍結されるのか、遺産分割前に引き出せる「仮払い制度」(2026-09-09)― 亡くなった人の口座は、金融機関が死亡を知った時点で凍結され、遺産分割が終わるまで原則として動かせません。葬儀費用や当面の生活費をどうするか。2019年7月に始まった仮払い制度(法定相続分の3分の1、金融機関ごとに150万円まで)、凍結の実際、解約までの手続き、勝手に引き出したときの問題を整理します。
- 葬儀費用と香典は相続でどう扱うか ― 誰が払うのか、相続税で引けるもの・引けないもの、埋葬料5万円(2026-10-01)― 葬儀費用を誰が払うかは法律に決まりがなく、相続人の話し合いで決めます。香典は遺産ではなく喪主が受け取るもの。相続税では、通夜・告別式・火葬・お寺へのお礼は遺産から引けますが、香典返しや四十九日の法要は引けません。領収書の束の仕分けで、相続税の申告が要るかどうかが変わった家の数字で整理します。
- 遺言書の検認 ― 見つけた自筆の遺言書を、開封する前にすること(2026-09-09)― 自宅で自筆の遺言書を見つけたら、開封せずに家庭裁判所へ。封を開けると過料の対象になり、勝手に処分すれば相続欠格です。検認の申立て先、必要書類、当日の流れ、1〜2か月という期間、検認が「有効性を判断しない」手続きであること、検認済証明書の使い方、そして法務局保管なら不要になる理由を整理します。
- 借金も相続する ― 住宅ローンと団信、連帯保証、借金があるか分からないときの調べ方(2026-09-10)― 相続するのは財産だけではありません。借金も法定相続分で自動的に引き継ぎます。住宅ローンは団体信用生命保険で消えることが多いこと、連帯保証は表に出にくく最も危険なこと、信用情報機関への開示請求で本人名義の借入を調べる方法、3か月の期限との関係、そして「一人が全部引き受ける」協議が債権者には通じない理由を整理します。
- 相続放棄の期限と手順 ― 3か月の数え方、やってはいけないこと、放棄したあとに残るもの(2026-09-07)― 借金や管理できない不動産を引き継ぎたくないときの「相続放棄」。家庭裁判所への申述、3か月の熟慮期間の起算点、期限の延長、放棄が無効になる行為、放棄後に相続権が移る先、そして2023年改正後の保存義務までを整理します。
- 限定承認 ― 相続放棄と単純承認の間にある、使われない選択肢(2026-09-09)― 「借金がいくらあるか分からないが、実家は残したい」。そのための制度が限定承認です。プラスの財産の範囲でだけ借金を引き継ぐ、理屈の上では理想的な選択肢ですが、実際の申立ては年に数百件しかありません。相続人全員で申し立てる、3か月の期限、清算手続きの手間、みなし譲渡所得税という落とし穴。使われない理由と、それでも使う場面を整理します。
- 相続放棄と生命保険 ― 放棄しても受け取れる保険金、受け取ると放棄できなくなるもの(2026-09-09)― 借金があって相続放棄をしたいが、父の生命保険の受取人は自分になっている。受け取っていいのか。答えは、受取人が指定されている保険金は受取人固有の財産なので、放棄しても受け取れます。ただし、受取人が「本人」や「相続人」の契約、入院給付金、死亡退職金、遺族年金、未支給年金は扱いが違います。非課税枠が放棄した人には使えない点も含めて整理します。
- 生命保険と相続 ― 保険金は遺産分割の対象外、でも相続税の対象。この二重の扱いを整理する(2026-09-09)― 受取人を指定した生命保険金は、相続人で分ける遺産には入りません。受取人の固有の財産です。一方で相続税では「みなし相続財産」として課税対象になり、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。遺留分との関係、受取人が先に亡くなっていた場合、相続放棄しても受け取れる理由、そして生命保険を「相続対策」に使う考え方を整理します。
- 準確定申告 ― 亡くなった人の所得税は4か月以内。要る家・要らない家と、医療費を払った日の分かれ目(2026-10-01)― 亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの所得は、相続人が4か月以内に申告します。これが準確定申告です。ただ、年金暮らしで他の所得が少ない人なら申告が要らないことも多い。入院費は「亡くなる前に払ったか、後に払ったか」で行き先が変わります。年金と家賃収入のあった父の数字で、要否と書類の行き先を整理します。
3. 相続人と財産を確定する
戸籍で相続人を固め、財産の一覧を作る。ここが揺れると後が全部やり直しになる。
- 相続人の範囲と法定相続分 ― 配偶者・子・親・兄弟姉妹、誰がどれだけ相続するのか(2026-09-08)― 遺言がないとき、誰が相続人になり、どの割合で分けるのか。配偶者は常に相続人、子・親・兄弟姉妹の順位、代襲相続、養子と前妻の子、内縁の配偶者、半血の兄弟。相続の相談で最初に確定させる「相続人の範囲」を、具体例の帯グラフつきで整理します。
- 相続に必要な戸籍の集め方 ― 出生から死亡まで、2024年から使える広域交付(2026-09-08)― 相続手続きの最初の壁、戸籍集め。なぜ「出生から死亡まで」が必要なのか、戸籍謄本・除籍・改製原戸籍の違い、遡り方、手数料、そして2024年3月から始まった「広域交付」で本籍地に行かずに済む範囲と、その制度で取れない戸籍を整理します。
- 相続関係説明図の書き方 ― 戸籍の原本を返してもらうための一枚、一覧図との違い(2026-09-09)― 相続登記の申請に添えると、戸籍の原本を返してもらえる「相続関係説明図」。法定相続情報一覧図と何が違うのか、何を書いて何を書かないのか、代襲相続・数次相続・相続放棄の表し方、手書きでもいいのか。本人申請の人が最初につまずく一枚を、記載例つきで整理します。
- 法定相続情報一覧図の取り方と使いどころ ― 戸籍の束を一枚にする無料の制度(2026-09-07)― 相続手続きのたびに戸籍一式を出し直す手間をなくす「法定相続情報証明制度」。申出先、必要書類、一覧図の書き方、無料で何通でももらえる写しの使い道と、この制度でできないことを整理します。
- 数次相続と代襲相続の違い ― 祖父名義の土地を、今からどう動かすか(2026-09-09)― 「祖父の名義のまま」の土地は、相続が二段になっています。子が親より先に亡くなっていた「代襲相続」と、親の相続手続きの途中で子も亡くなった「数次相続」は、似ているようで相続人も相続分も違います。二つの違い、数次相続で相続人が増える仕組み、登記のまとめ方、今から動かす手順を整理します。
- 養子縁組と相続 ― 養子は実子と同じ相続人、ただし相続税で数えられるのは一人か二人まで(2026-09-10)― 養子は実子と同じ相続分を持ちます。普通養子と特別養子の違い、孫や連れ子を養子にするときの手続き、養子縁組で法定相続人が増えると基礎控除が増える仕組みと、その数に上限がある理由(実子がいれば一人、いなければ二人まで)、孫養子の相続税2割加算。節税目的の縁組が問題になる場面も含めて整理します。
- 相続欠格と廃除 ― 「あの子には相続させたくない」は、どこまで法律でできるか(2026-09-09)― 遺言で「長男には何も渡さない」と書いても、遺留分は残ります。相続権そのものを失わせる仕組みは二つだけ。法律上当然に相続人でなくなる「相続欠格」と、家庭裁判所に申し立てて認めてもらう「廃除」です。それぞれの要件、廃除が認められる例と認められない例、手続き、取り消し、代襲相続との関係を整理します。
- 固定資産税評価証明書はどこで取る、何に使う ― 相続登記の費用計算から名寄帳まで(2026-09-07)― 相続登記の登録免許税を計算するときに必要な「固定資産税評価証明書」。発行してくれる窓口、取れる人と必要書類、納税通知書の課税明細で代わりになる場合、年度の切り替わりで取り直しになる罠、そして不動産の漏れを防ぐ「名寄帳」の使い方を整理します。
- 遺産の調べ方と財産目録 ― 通帳が3冊しかないとき、どこに何を問い合わせるか(2026-10-02)― 亡くなった人の財産は、家の中の書類から当たりをつけ、銀行の残高証明書、市町村の名寄帳、証券保管振替機構の開示請求、生命保険協会の契約照会の順に確かめていきます。それぞれの費用と、結果が出るまでの日数、相続放棄の3か月に間に合わないときの期間の伸長、調べた結果を財産目録にまとめる書き方を、実際の相談の数字で書きます。
- デジタル遺品と相続 ― 開かないスマホ、ネット銀行、サブスク、暗号資産をスマホの外からたどる(2026-10-03)― 亡くなった人のスマホが開かない。携帯電話会社でも画面ロックは解除できないのが一般的です。それでも、郵便物、カードの明細、家族の端末、確定申告書の控えから、ネット銀行・サブスク・写真・暗号資産はたどれます。財産になるものと止めるべき契約の分け方、相続放棄を考えている場合の注意、カードを止めても契約は終わらない点、遺す側の準備を、実際の金額で書きます。
4. 分け方を決める
協議書、実家と預金の分け方、遺留分、特別受益と寄与分、まとまらないときの調停。
- 遺産分割協議書の書き方 ― 自分で作れる範囲と、失敗しやすい箇所(2026-09-07)― 相続人全員の合意を一枚の書面にする遺産分割協議書。法務局・銀行・税務署で通用する最低限の要件、署名と実印と印鑑証明書の扱い、本人作成でつまずきやすい五つの箇所を、行政書士の実務目線で整理します。
- 実家と預金をどう分けるか ― 代償分割・換価分割・現物分割の使い分け(2026-09-09)― 遺産が「実家ひとつと預金少し」で、相続人が兄弟二人。いちばん多い相続で、いちばん分け方に悩む形です。分け方は三つ。実家を一人が取って他方に金銭を払う代償分割、売って現金で分ける換価分割、実家と預金を別々に取る現物分割。それぞれの向き不向き、代償金の決め方と資金の作り方、協議書に必ず書くこと、税金の扱いを整理します。
- 配偶者居住権 ― 家は子に、住む権利は妻に。2020年にできた「分けて相続する」仕組み(2026-09-09)― 遺産のほとんどが自宅で、妻が家を相続すると預貯金がほとんど残らない。この問題のために2020年4月に作られたのが配偶者居住権です。家の「所有権」と「住む権利」を分け、妻は住み続けながら預貯金も受け取れる。設定の方法、登記、評価の考え方、向いている家と向いていない家を整理します。
- 遺留分の基本 ― 遺言でも奪えない取り分は、誰に、どれだけあるのか(2026-09-07)― 「妻に全部」「長男に全部」と遺言に書いても、他の相続人には法律で保障された最低限の取り分「遺留分」が残ります。誰に遺留分があるのか、割合はいくつか、2019年の改正で請求の仕方がどう変わったか、時効、生前にできる対策までを整理します。
- 特別受益と寄与分 ― 「兄だけ家を建ててもらった」「私だけ介護した」を遺産分割でどう扱うか(2026-09-10)― 遺産分割で最も揉めるのが、生前にもらった分(特別受益)と、尽くした分(寄与分)です。持ち戻しの計算、婚姻20年以上の配偶者への自宅贈与の例外(2019年改正)、寄与分が認められる範囲の狭さ、相続人でない長男の妻が請求できる特別寄与料(2019年新設)と期限。数字の例と一緒に整理します。
- 相続分の譲渡と「事実上の放棄」 ― 家庭裁判所の相続放棄と何が違うのか(2026-09-09)― 「遺産はいらない」の伝え方は三つあります。家庭裁判所で相続放棄する、遺産分割で何も取らない(事実上の放棄)、自分の相続分を他の相続人に譲る(相続分の譲渡)。借金を免れるか、協議に参加し続けるか、税金はどうなるか。三つの違いと、協議から抜けたい相続人に実務で勧めている方法を整理します。
- 遺産分割調停の流れ ― 話し合いがまとまらないとき、家庭裁判所で何が起きるか(2026-09-10)― 相続人の間で協議がまとまらないとき、次の段階が家庭裁判所の遺産分割調停です。申立て先と費用、調停委員を挟んだ話し合いの進み方、月1回で半年から1年という時間、不成立なら審判へ自動的に移る仕組み、弁護士は必須ではないこと、調停で決まったことの効力。行政書士として「調停に行く前」に整理してほしいことも書きます。
- 遺産分割協議のやり直し ― 判を押したあとで変えられるのは、どんなときか(2026-10-07)― 遺産分割協議書に全員で判を押したあとで、前の結婚の子が見つかった、別の口座が出てきた、やはり分け方を変えたい、となることがあります。いったん成立した協議は気が変わっただけでは変えられませんが、協議が無効だった場合、全員が合意した場合、書き漏れの財産が出てきた場合には、道があります。やり直せる三つの道と、できないこと、登記と税金の注意点、2,400万円の遺産を例にした分け直しの数字を整理します。
- お墓・仏壇・遺骨は誰が引き継ぐか ― 遺産分割の対象外「祭祀財産」と、墓じまいの手続き(2026-09-10)― お墓、仏壇、位牌、系図は相続財産ではなく「祭祀財産」として、一人の祭祀主宰者が引き継ぎます。誰がなるかの決まり方(指定・慣習・家庭裁判所)、相続税がかからない理由と例外、遺骨の扱い、墓地の使用権、そして増えている墓じまい(改葬許可・離檀料・永代供養)の手続きと費用の目安を整理します。
5. 名義を変える・税金(10か月〜3年)
相続登記、預金以外の名義変更、相続税の要否と申告。
- 相続登記の義務化 ― 自分で申請できる相続と、専門家に頼むべき相続の見分け方(2026-09-05)― 2024年4月から相続登記は義務になりました。期限と過料、本人申請で済む典型的な事案、迷わず専門家へ渡すべき事案の境目を、行政書士の実務目線で整理します。
- 相続人申告登記 ― 3年以内に遺産分割がまとまらないときの、義務化への逃げ道(2026-09-09)― 相続登記が義務になり、3年以内に申請しないと過料の対象になります。でも話し合いがまとまらない。そのために2024年4月に作られたのが「相続人申告登記」です。一人で、無料で、戸籍も最小限で申し出られ、義務を果たしたことになります。できること・できないこと、必要書類、そのあとに残る手続きを整理します。
- 自動車・株式・年金・携帯の相続手続き ― 不動産と預貯金以外の、細かいけれど止まると困るもの(2026-09-09)― 相続手続きで後回しにされがちな、自動車の名義変更(普通車は運輸支局、軽自動車は検査協会)、株式・投資信託の移管、未支給年金と遺族年金の請求、携帯電話やクレジットカードの解約。それぞれの手続き先、必要書類、期限、放置すると起きることを、一覧で整理します。
- 相続税の基礎控除と申告の要否 ― うちは相続税がかかるのか、10分で当たりをつける(2026-09-09)― 相続税がかかるのは、遺産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える家だけです。基礎控除の計算、遺産に含めるもの・含めないもの、土地の評価の当たりのつけ方、そして「税額がゼロでも申告が要る」特例の落とし穴。税理士に相談する前の下調べとして、行政書士・宅建士の立場で整理します。
- 小規模宅地等の特例 ― 実家の土地の評価が8割減になる条件(2026-09-09)― 相続税の計算で、亡くなった人が住んでいた土地は330㎡まで評価額を80%減らせます。これが小規模宅地等の特例で、実家のある相続で相続税がかかるかどうかを分ける最大の制度です。配偶者・同居の子・別居の子(いわゆる家なき子)それぞれの要件、事業用と貸付用の区分、申告期限までに分割が決まっていることと申告書の提出が必要な点を整理します。
- 相続税申告の流れ ― 10か月で何をどの順にするか、税理士に頼むかの目安(2026-09-09)― 遺産が基礎控除を超えそうなら、相続開始から10か月以内に相続税の申告と納付が要ります。財産の洗い出しと評価、遺産分割の確定、申告書の作成、納付。この四つを10か月に収める段取りと、申告が必要なのに見落とされやすい場合(配偶者控除や小規模宅地の特例を使ってゼロになる場合)、税理士に頼む目安と報酬の相場、期限に間に合わないときの手当てを整理します。
- 相続登記の登録免許税の計算 ― 評価額の0.4%、端数の切り捨て、100万円以下の土地は2027年3月まで免税(2026-10-06)― 相続登記を申請するときに納める登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。ただし、合計して1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨て、評価額100万円以下の土地は2027年3月31日まで免税、建物には免税がない、共有持分は持分の分だけ、といった細かい決まりがあります。自宅と山林と私道の持分を相続した例で、申請書に書く金額を電卓で出すところまで書きます。
6. 相続した財産をどうするか
空き家・農地・使い道のない土地を、持つか、手放すか。
- 空き家を相続したら ― 放置のコスト、2023年改正の「管理不全空家」、国庫帰属と3,000万円控除(2026-09-08)― 誰も住まない実家を相続した人へ。放置すると固定資産税が最大6倍になる仕組み(特定空家・管理不全空家)、相続放棄しても残る保存義務、建物を壊せば使える相続土地国庫帰属制度、売るなら使いたい3,000万円の特別控除。選択肢を、期限とセットで整理します。
- 農地を相続したら ― 許可は要らないが届出は要る、売る・貸す・転用するときの農地法(2026-09-09)― 農地は、相続で取得するときは農地法の許可が要りません。ただし農業委員会への届出は必要で、売る・貸す・宅地に変えるときには許可が要ります。3条・4条・5条の違い、農業をしない相続人の選択肢(貸す・売る・国庫帰属)、相続税の納税猶予、放置のリスクを整理します。
- 相続土地国庫帰属制度の詳細 ― 引き取ってもらえる土地、もらえない土地、負担金と手順(2026-09-09)― 相続した土地を国に引き取ってもらう制度が2023年4月に始まりました。ただし、建物がある、境界が不明、崖がある、といった土地は対象外です。申請できない土地と承認されない土地の条件、審査手数料と負担金、申請から帰属までの流れ、共有地や隣接地をまとめて出す方法、向いている土地の見分け方を整理します。
- 相続した山林の届出 ― 森林法の「所有者届出」は90日以内、相続登記とは別の手続き(2026-09-25)― 山林を相続したら、3年以内の相続登記とは別に、所有者になった日から90日以内に市町村へ「森林の土地の所有者届出」を出します。面積の大小は関係なく、登記をしたかどうかにも関係ありません。対象になる森林の確かめ方、届出書に書くことと添付書類、2026年4月からの様式の変更、届け出たあとに持ち続けるか手放すか。見たこともない山を相続した相談の実際で整理します。
- 相続した土地を売るときの取得費加算の特例 ― 払った相続税の一部を経費にできる、3年10か月の期限(2026-09-26)― 相続税を納めた人が、相続した土地や株を一定の期限内に売ると、納めた相続税のうち売った財産に対応する分を「取得費」に足せます。期限は、亡くなってからおおむね3年10か月。計算式、空き家の3,000万円特別控除とどちらか一方しか使えないこと、確定申告の書類。父の土地を売る兄弟の実際の数字で、譲渡所得の税金がいくら変わるかを書きます。
- 相続した実家、住むか・貸すか・売るか ― 10年の収支を一枚で比べる(2026-09-29)― 相続した実家をどうするか。住む、貸す、売るの三つは、感情の話になりがちですが、まず10年の収支を一枚に並べると、話が進みます。持ち続けるだけで出ていくお金(固定資産税・保険・修繕)、貸したときの手取り(家賃から経費と空室を引く)、売ったときの手取り(仲介手数料・税金・空き家の特例)。相談で実際に作った表と折れ線を、数字ごと載せます。
7. 状況別(当てはまる方だけ)
認知症・未成年・行方不明・海外・生活保護・再婚家庭。通常の流れに一段加わるもの。
- 認知症の相続人がいるとき ― 成年後見と遺産分割、後見が始まると何が変わるか(2026-09-09)― 相続人の一人が認知症で、遺産分割協議の内容を理解できない。その協議は無効になります。代わりに判断する人を家庭裁判所に選んでもらうのが成年後見です。三つの類型、申立ての手順と費用、後見人が遺産分割でできること・できないこと、後見が相続後も続く現実、そして生前にできる備えを整理します。2026年6月に成立した民法改正(後見・保佐を補助に一本化)は施行前で、この記事は今の制度の説明です。
- 未成年者がいる相続 ― 親が子の代わりに協議できない理由と、特別代理人の選任(2026-09-09)― 父が亡くなり、相続人は母と未成年の子。母が子の代わりに遺産分割協議に署名すればいい、と思いがちですが、それはできません。母と子の利益が相反するからです。家庭裁判所で特別代理人を選ぶ手続き、候補者の選び方、裁判所が協議書案を審査する基準、子が複数いる場合、相続放棄との関係、遺言で避ける方法を整理します。
- 行方不明の相続人がいるとき ― 不在者財産管理人と失踪宣告(2026-09-09)― 相続人の一人と何十年も連絡が取れない。住民票の住所にも住んでいない。遺産分割協議は相続人全員でしなければ無効なので、このままでは何も進みません。方法は二つ。家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらって代わりに協議に加わってもらうか、7年以上生死不明なら失踪宣告で死亡したものとみなすか。それぞれの手続き、費用(予納金)、期間、相続登記を先に済ませる方法を整理します。
- 海外在住・外国籍の相続人がいる相続 ― 印鑑証明が取れない人と、戸籍がない人の手続き(2026-09-09)― 相続人の一人が海外に住んでいる、あるいは相続人や亡くなった人が外国籍。戸籍と印鑑証明で回る日本の相続手続きは、ここで止まります。海外在住の日本人は在外公館のサイン証明と在留証明で代える、外国籍の人は本国の証明書と翻訳で代える、亡くなった人が外国籍なら本国法で相続人が決まる。それぞれの手続き、時間、相続税の納税義務の判定を整理します。
- 生活保護を受けている人の相続 ― 受け取ると保護はどうなるか、放棄はできるか(2026-09-09)― 生活保護を受けている人が相続人になった。遺産を受け取れば保護は止まるのか、受け取らずに放棄していいのか。原則は、相続財産は収入として申告し、生活に足りる資力があれば保護は停止または廃止、受け取った分から、亡くなった人の死亡の日より後に受けた保護費の返還を求められます。放棄は原則として認められませんが、借金のほうが多い、管理できない不動産だけ、といった場合は例外があります。福祉事務所への相談の順番を整理します。
- 離婚・再婚のある家の相続 ― 元配偶者は相続人でなく、前の結婚の子は相続人のまま(2026-09-09)― 離婚した元配偶者は相続人になりません。しかし、前の結婚で生まれた子は、何十年会っていなくても相続人のままです。再婚相手は相続人になりますが、再婚相手の連れ子は養子縁組をしなければ相続人になりません。この三つの原則から、再婚家庭の相続で起きること(前妻の子との協議、連れ子の取り分ゼロ)、それを避けるための養子縁組と遺言、離婚時の財産分与・年金分割との違いを整理します。
- 相続人がいない人の財産はどうなるか ― 相続財産清算人、特別縁故者、最後は国庫という順番(2026-10-06)― 子も親も兄弟もいない人が亡くなると、財産を受け取る相続人がいません。その財産は、家庭裁判所が選ぶ「相続財産清算人」が借金を払って整理し、生前に世話をした人などが「特別縁故者」として受け取れることがあり、残りは国のものになります。2023年4月の改正で短くなった手続きの流れ、申立ての費用、期限の数え方を、内縁の妻が相談に来た例で整理します。
この棚の参考(公式)
この棚の記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます。
- 法務省 民事局(相続登記・遺言書保管制度・相続土地国庫帰属) ― 相続登記の義務化、自筆証書遺言書保管制度、相続土地国庫帰属制度の公式案内
- 法務局(登記の手続き・様式) ― 相続登記の申請書様式、登記事項証明書の取り方、法定相続情報証明制度
- 国税庁 タックスアンサー(相続税・贈与税) ― 基礎控除、小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減、贈与税の非課税
- 裁判所(家事事件の手続き) ― 相続放棄・限定承認・遺言書の検認・遺産分割調停・不在者財産管理人の申立て
- e-Gov 法令検索(民法ほか) ― 条文の原文。民法の相続編(882条〜)、相続税法
記事の内容は執筆時点の公開情報と実務経験に基づく一般的な解説です。個別の事案については、公式資料と専門家への相談で確認してください。