相続・手続き 2026-09-09

自動車・株式・年金・携帯の相続手続き ― 不動産と預貯金以外の、細かいけれど止まると困るもの

相続手続きで後回しにされがちな、自動車の名義変更(普通車は運輸支局、軽自動車は検査協会)、株式・投資信託の移管、未支給年金と遺族年金の請求、携帯電話やクレジットカードの解約。それぞれの手続き先、必要書類、期限、放置すると起きることを、一覧で整理します。

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この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → 相続人と財産を確定する → 分け方を決める → [名義を変える・税金(10か月〜3年)] → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

父が亡くなって二か月、母から電話が来ました。「父の車で買い物に行ったら、駐車場で当てられた。保険会社に電話したら、契約者が亡くなっている人だと言われて」。車は父の名義のまま、自動車保険の契約者も父。相手の保険会社との示談は進みましたが、父の保険を使うには、契約者の変更が先で、その前に車の名義変更が要る。母は「車なんて、後回しでいいと思っていた」と言いました。この記事は、その「後回し」の順番を、期限と損の大きさで並べ直したものです。

相続手続きの全体像の記事で、不動産と預貯金の手続きは書きました。ここでは、その他の財産と契約、つまり自動車、株式、年金、携帯電話やカードについて、手続き先と書類を一覧にします。どれも金額は不動産より小さいことが多いのですが、放置すると保険が使えない、配当が受け取れない、引き落としが続く、といった形で困ります。

不動産・預貯金以外の主な手続き(2026年9月時点)
対象手続き先主な書類期限・注意
普通自動車運輸支局車検証、戸籍または一覧図、協議書(100万円以下は成立申立書)、印鑑証明、車庫証明保険の契約者と所有者のずれに注意
軽自動車軽自動車検査協会車検証、戸籍など(簡略)協議書は不要な場合が多い
株式・投資信託証券会社(特別口座は信託銀行)所定用紙、戸籍または一覧図、協議書、印鑑証明、相続人の口座配当・総会通知が手がかり
未支給年金年金事務所年金証書、戸籍、住民票、受取口座死亡届出は14日以内(厚生年金10日)。請求の時効5年
携帯電話各社の窓口死亡の証明、本人確認解約まで料金。端末の残債は相続債務
クレジットカードカード会社死亡の連絡未払い分は相続債務。ポイントは失効が普通

自動車から。普通自動車の名義変更(移転登録)は、車を使用する場所を管轄する運輸支局で行います。必要なのは、車検証、亡くなった人の死亡が分かる戸籍と相続人全員が分かる戸籍(または法定相続情報一覧図)、遺産分割協議書(車を誰が取得するか)、取得する相続人の印鑑証明書、車庫証明(保管場所が変わる場合)です。車の価値が100万円以下なら、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」という簡易な書面で済みます(査定書などで100万円以下であることを示します)。軽自動車は軽自動車検査協会で、戸籍と印鑑証明書は簡略化されていて、協議書も不要な場合が多いです。名義を変えないまま乗り続けると、自動車保険の契約者と所有者が食い違い、事故のときに支払いで揉めることがあります。売却や廃車も名義変更が先です。

株式と投資信託。証券会社に口座がある場合は、証券会社の相続手続きで、相続人名義の口座へ移管します。相続人がその証券会社に口座を持っていなければ、先に口座を作ります。必要書類は預貯金と同じで、所定の用紙、戸籍一式または一覧図、協議書、印鑑証明書です。上場株式を証券会社を通さずに持っていた(特別口座で管理されている)場合は、その会社の株主名簿管理人である信託銀行に手続きします。配当の通知や株主総会の招集通知が、口座の存在を知る手がかりになります。非上場の株式(家業の会社など)は、会社の定款と株主名簿の書き換えで、評価は税理士の領域です。

年金。亡くなった人が受け取っていた年金は、死亡の届出で止め、まだ受け取っていない分(未支給年金)を、生計を同じくしていた遺族が請求できます。請求先は年金事務所(または年金相談センター)で、年金証書、戸籍、住民票(生計同一を示す)、受取口座が要ります。時効は5年です。遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、亡くなった人の加入状況と遺族の要件で受け取れるかが決まり、こちらも年金事務所で相談します。年金を止め忘れると過払いになり、返還を求められるので、14日以内(国民年金は14日、厚生年金は10日)の死亡届出を最初に済ませてください。

携帯電話、クレジットカード、サブスクリプション。携帯電話は各社の窓口で、死亡の証明(戸籍や死亡診断書の写し)を示して解約、または家族への承継をします。解約するまで基本料金がかかり、端末の分割払いが残っていれば相続債務です。クレジットカードは解約し、未払い分は相続債務として相続人が払います。ポイントは失効するのが普通です。動画・音楽などのサブスクリプションは、メールの受信箱とカードの明細から洗い出して解約します。これらに期限はありませんが、引き落としは止めるまで続きます。

その他、ゴルフ会員権(名義書換料がかかることが多く、相続を認めないクラブもある)、生命保険(受取人が請求、生命保険の記事)、電話加入権、電子マネーの残高、暗号資産(取引所の相続手続き)も、通帳とメールを手がかりに洗い出します。

この家で実際にやった順番と、かかった日数を書きます。まず年金。死亡から9日目に年金事務所へ死亡届と未支給年金の請求。父の年金は月18万円で、未支給分は死亡月の一か月分18万円。母の口座に振り込まれたのは二か月後でした。次に自動車。父の車は普通車で、査定は約60万円。100万円以下なので、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」で済み、母が取得。運輸支局で移転登録、その足で保険会社に契約者変更。ここまで、電話の翌週に終わりました。当てられた事故の修理は、相手の保険から出たので父の保険は使いませんでしたが、使う場面なら、この名義変更が先でした。

株式は、父が証券会社に口座を持っていて、上場株が三銘柄で約240万円。母は口座を持っていなかったので、先に母の口座を開設(二週間)、それから相続手続きの用紙と一覧図と協議書と印鑑証明書を出して移管(三週間)。もう一つ、父宛に「配当金のお知らせ」が届いていた会社があり、これは証券会社ではなく信託銀行の特別口座で管理されていた株で、約30万円分。この会社の株主名簿管理人の信託銀行に別途手続き。通帳とメールと郵便物を全部見る、と本文に書いたのは、この30万円のことです。

携帯とカードも書きます。父の携帯は、解約が死亡から五週間目で、基本料金が一か月余分にかかりました(約7,000円)。クレジットカードは二枚、うち一枚に新聞の購読料と動画の月額が残っていて、明細を見て解約。カードの未払いは合計約4万円で、相続債務として母が払いました。全部で、放置していれば毎月1万円強の引き落としが続いていた計算です。

順番の目安です。年金の届出(14日以内)が最初。次に自動車(保険との関係で早めに)。株式は預貯金と同じタイミングで、一覧図を取ってからまとめて。携帯とカードは引き落としを止めるために早めに。全部を一度にやろうとせず、期限と「放置したときの損」の大きい順に片づけてください。

「車なんて後回し」と言った母は、事故の翌週に名義を変えました。この記事の表の順番は、その家でやり直した順番です。年金は14日以内、車は保険のために早く、株は一覧図を取ってから、携帯とカードは引き落としを止めるために早く。金額は不動産より小さくても、止まると困るのは、こちらのほうが日常に近いからです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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