相続・手続き 2026-09-09

相続手続きの全体像と期限 ― 死亡届から3年後の相続登記まで、いつまでに何をするか

人が亡くなったあとの手続きは、期限のあるものから順に片づけます。7日以内の死亡届、14日以内の年金・保険の届出、3か月の相続放棄、4か月の準確定申告、10か月の相続税申告、3年の相続登記。全体を一枚の年表にし、それぞれの手続きで誰に何を出すか、どの記事で詳しく書いたかを整理します。

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この記事の位置: 亡くなる前にできること → [亡くなってすぐ(3か月まで)] → 相続人と財産を確定する → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

父を亡くした翌日、女性が持って来たのは、葬儀社から渡された「死亡後の手続き一覧」でした。項目が42個。女性は「全部やらないといけないんですか」と聞き、私は「あなたの家で要るのは、このうち14個です」と答えました。42個のうち、事業所得のない家には準確定申告は要らず、農地のない家には農業委員会の届出は要らず、相続税のかからない家には申告は要らない。この記事は、その14個を、期限の順に並べ直した年表です。

相続の手続きは、種類が多く、期限がばらばらで、提出先も市役所・年金事務所・法務局・税務署・家庭裁判所と分かれています。相談で最初に渡すのが、期限順に並べた一枚の年表です。この記事はその年表を、それぞれの手続きの要点と、詳しく書いた記事へのリンクと一緒に載せます。

相続手続きの期限(死亡日を起点に)

  1. 7日以内 死亡届・火葬許可(市区町村。葬儀社が代行することが多い)
  2. 14日以内 健康保険・年金・世帯主の届出(市区町村・年金事務所。年金は止め忘れると返還)
  3. 3か月以内 相続放棄・限定承認(家庭裁判所。間に合わなければ期限前に伸長を申立て)
  4. 4か月以内 準確定申告(税務署。亡くなった人にその年の所得があれば)
  5. 10か月以内 相続税の申告・納税/農地の届出(税務署/農業委員会)
  6. 3年以内 相続登記(法務局。2024年4月から義務。協議未了なら相続人申告登記)
  7. 3年目の年末 空き家の3,000万円特別控除の期限(相続した実家を売るなら)

死亡から7日以内にするのが、死亡届です。医師の死亡診断書と一緒に市区町村へ出し、火葬許可証を受け取ります。葬儀社が代行することが多い手続きです。14日以内には、亡くなった人の健康保険と年金の届出(国民健康保険・後期高齢者医療の資格喪失、年金受給停止)、世帯主の変更、介護保険の資格喪失を市区町村と年金事務所へ。年金は止め忘れると過払いになり、返還を求められます。

期限はありませんが、早いほうがいいのが、相続人の確定と財産の把握です。戸籍を集め、相続人を確定する(戸籍の集め方の記事)。預貯金、不動産、株式、保険、借金を一覧にする。不動産は固定資産税の課税明細書と名寄帳で漏れを防ぎ、借金は郵便物と信用情報機関への照会で確認します。ここが遅れると、あとの期限が全部苦しくなります。

3か月以内が、相続放棄と限定承認の期限です(相続放棄の記事)。借金が財産より多い、関わりたくない、という場合はこの期限内に家庭裁判所へ。財産の全体像が分からないなら、期限前に熟慮期間の伸長を申し立てます。

4か月以内が、準確定申告です。亡くなった人にその年の所得(事業所得、不動産の賃料、年金など一定額以上)があれば、相続人が代わって1月1日から死亡日までの所得税を申告します。給与や年金だけで源泉徴収されていた人は不要なことが多いです。

10か月以内が、相続税の申告と納税です(基礎控除の記事)。基礎控除を超える家、または特例を使ってゼロにする家は、この期限までに遺産分割を終えて申告します。同じ10か月の目安で、農地を相続した場合の農業委員会への届出もあります(農地の記事)。

期限は3年ですが、実質的に10か月と並行して進めるのが、遺産分割協議と、それに基づく名義変更です。遺産分割協議書を作り(協議書の記事)、法定相続情報一覧図を取り(一覧図の記事)、預貯金の解約、株式の移管、自動車の名義変更、不動産の相続登記を進めます。相続登記は2024年4月から義務で、取得を知った日から3年以内(義務化の記事)。協議がまとまらないときは相続人申告登記で期限を止めます(申告登記の記事)。

名義変更の主な手続き先
財産手続き先主に必要なもの
不動産法務局相続登記の申請書、戸籍一式または一覧図、協議書、評価証明書
預貯金各金融機関所定の用紙、戸籍一式または一覧図、協議書、印鑑証明書
株式・投資信託証券会社所定の用紙、戸籍一式または一覧図、相続人名義の口座
自動車運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会)車検証、戸籍、協議書(または遺産分割協議成立申立書)
生命保険金保険会社請求書、死亡診断書の写し、受取人の本人確認書類

3年目の年末が、空き家を売る場合の3,000万円特別控除の期限です(空き家の記事)。相続開始から3年目の12月31日までに売る必要があります。相続税を払った人が土地を売る場合の取得費加算の特例は、相続開始から3年10か月以内です(売却の税金の記事)。

最後に、期限のないものを二つ。遺言書があるなら、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認(法務局保管なら不要)、公正証書遺言はそのまま執行へ(保管制度の記事、遺言執行者の記事)。そして、亡くなった人の名義のままの携帯電話、公共料金、サブスクリプション、クレジットカードの解約。期限はありませんが、放置すると引き落としが続きます。

この女性の家の14個を、期限順に書きます。7日以内、死亡届(葬儀社が代行)。14日以内、国民健康保険と介護保険の資格喪失、世帯主の変更(母が世帯主に)、年金の受給停止。前の三つは市役所の窓口で一度に終わり、所要は一時間半でした(年金だけは窓口が別で、あとで書きます)。期限なしで急ぐもの、戸籍の収集(父の出生から死亡まで7通、二週間)、財産の一覧(預金三口座、自宅、生命保険)。3か月以内、相続放棄は借金がないので不要、と確認して終わり。4か月以内、準確定申告は年金だけなので不要。10か月以内、相続税は財産合計約2,900万円で基礎控除4,800万円(相続人は母と女性と弟の三人)の中なので不要。3年以内、遺産分割協議書、預金三口座の解約、生命保険の請求、自宅の相続登記。期限なし、携帯電話とクレジットカードと新聞の解約。

この家で実際にかかった時間も書きます。死亡から市役所の手続きまで10日。戸籍の収集に二週間。協議書の作成と三人の押印に三週間。預金の解約は、一口座あたり書類の提出から二週間で、三口座を並行して一か月。相続登記は本人申請で、申請から完了まで十日。全部で、死亡から約三か月で終わりました。42個の一覧を見たときに女性が想像していた「一年はかかる」は、要るものを14個に絞ってからは、三か月です。

一つ、この家で後回しになったものがあります。父の年金の受給停止です。父は厚生年金を受けていたので、届出先は市役所ではなく年金事務所でした。この家では、市役所の日に一緒に済んだと思い込み、年金事務所への連絡が遅れました。年金は、亡くなった月の分まで受け取れます(まだ受け取っていない分は、遺族が「未支給年金」として請求します)。届出が遅れて、その後の月の分まで振り込まれると、後日、返還の通知が来ます。返す手続き自体は簡単ですが、「止め忘れると返す」と本文に書いたのは、このことです。年金だけは、市役所より先に、年金事務所に電話してください(日本年金機構にマイナンバーが登録されている人は、亡くなったことの届出そのものは原則として省略できますが、未支給年金の請求は要ります)。

全部を一人でやる必要はありません。行政書士と司法書士の違いの記事に書いたとおり、戸籍と協議書は行政書士、登記と家庭裁判所は司法書士、税は税理士、争いは弁護士。この年表のどこを自分でやり、どこを頼むかを決めるのが、相続手続きの最初の判断です。

42個の一覧は、女性の家では14個になり、三か月で終わりました。この記事の最初の表は、その14個を含む全体の年表で、どの家にも全部が要るわけではありません。「どこを自分でやり、どこを頼むかを決めるのが最初の判断」と本文の最後に書きました。その前に、もう一つ判断があります。42個のうち、どれが自分の家に要るか。年表は、その消し込みのためにあります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-05

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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