土地・不動産 2026-09-09

不動産を売ったときの税金 ― 譲渡所得の計算、取得費が分からない土地の「5%ルール」

土地や家を売ると、売った値段ではなく「儲け」に税金がかかります。譲渡所得の計算式、所有期間5年で変わる税率、相続した土地で買った値段が分からないときの概算取得費(5%)、マイホームの3,000万円控除、相続税の取得費加算。売る前に知っておくべき数字を、宅建士の実務目線で整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → [売るとき] → 貸す・借りる・特殊な権利

売却代金3,000万円が振り込まれて三か月後、男性は新しい車を買い、キッチンを直し、残りを子の学費に回しました。翌年の2月、確定申告の相談に来て、私が出した数字は「約580万円」。「そんなに?」。祖父が戦後に買った土地で、買った値段が分からない。取得費は5%の150万円で、譲渡所得は約2,850万円。長期譲渡で約20%。男性の手元に残っていた売却代金は、その時点で約400万円でした。この記事は、その580万円を、翌年の2月ではなく、売る前に知っておくための話です。

「土地を3,000万円で売ったら、税金はいくらか」。この質問に「3,000万円に対して」で答える人はいません。税金がかかるのは売った値段ではなく、売った値段から「買った値段」と「売るのにかかった費用」を引いた儲け、つまり譲渡所得です。ここでは、その計算と、相続した土地でよく起きる問題を整理します。

計算式は「譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)」です。譲渡価額は売った値段。取得費は、買ったときの代金と、購入時の仲介手数料、登記費用、不動産取得税などの合計(建物は経過年数に応じた減価償却分を引きます)。譲渡費用は、売るときの仲介手数料、印紙税、測量費、建物の取り壊し費用などです。3,000万円で売った土地を2,000万円で買っていて、売買の費用が合計200万円なら、譲渡所得は800万円です。

税率は所有期間で変わります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」で、所得税15パーセント・住民税5パーセント(復興特別所得税を含めて合計20.315パーセント)。5年以下なら「短期譲渡所得」で、所得税30パーセント・住民税9パーセント(合計39.63パーセント)。ほぼ倍の差です。相続した土地の場合、所有期間は亡くなった人が買った日から数えるので、親が30年前に買った土地を相続直後に売っても長期になります。

相続した土地で毎回問題になるのが「買った値段が分からない」ことです。祖父が戦後に買った、親が何十年も前に建てた、契約書も領収書も残っていない。この場合、取得費は「譲渡価額の5パーセント」として計算できます(概算取得費)。3,000万円で売れば取得費は150万円。譲渡所得は2,850万円近くになり、長期なら約580万円の税金です。売った値段のほとんどが儲け扱いになる、というのがこのルールの厳しさです。実際の取得費が5パーセントより大きいことを、当時の通帳、住宅ローンの記録、分譲時の価格表などで証明できれば、そちらを使えます。売る前に、古い書類を探す価値は十分にあります。

取得費が分からない土地を3,000万円で売った場合(概算取得費5%、長期譲渡)
譲渡価額売却代金 3,000万円
取得費(5%)と譲渡所得取得費 150万円 / 譲渡所得 2,850万円
税金(20.315%)と手取り税 約579万円 / 手取り 約2,421万円

譲渡費用(仲介手数料など)は省略。実際の取得費を証明できれば譲渡所得は減る。

特例もあります。自分が住んでいた家(マイホーム)を売る場合、譲渡所得から3,000万円を控除できます。相続した親の家に自分が住んでいなければこの特例は使えませんが、空き家の記事で書いた「被相続人の居住用財産の3,000万円特別控除」が別にあります。また、相続税を払った人が相続開始から3年10か月以内に相続した土地を売る場合、払った相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」があります。

よく使う特例(2026年9月時点)
特例内容主な条件
居住用財産の3,000万円特別控除譲渡所得から3,000万円を控除自分が住んでいた家。住まなくなって3年目の年末まで
被相続人の居住用財産(空き家)の特別控除譲渡所得から最大3,000万円を控除1981年5月以前の建物、相続から3年目の年末まで、耐震か取壊し
相続税の取得費加算払った相続税の一部を取得費に加算相続開始から3年10か月以内の譲渡
所有期間10年超の軽減税率6,000万円以下の部分の税率を14.21%に自分が住んでいた家、所有10年超

税金は、売った翌年の確定申告で払います。譲渡所得は給与などとは分けて計算する分離課税で、給与の所得税とは別に、譲渡所得の額に上の税率を掛けた分が上乗せされます。売った年の翌年2月16日から3月15日までに申告し、住民税は翌年6月以降に通知が来ます。手取りで考えるなら、売却代金から仲介手数料と、翌年の税金を引いた額が「使えるお金」です。

その場で、二つのことをやりました。一つ、取得費の証拠探し。祖父が買ったのは1952年で、当時の契約書はない。ただ、父が1985年にこの土地の上に家を建てたときの住宅ローンの記録と、土地の固定資産税の古い通知書が、父の遺品の中にありました。土地の取得費の証明にはなりません。祖父が買った値段を示すものは、結局、見つかりませんでした。取得費は5%の150万円のまま。二つ、特例の確認。男性はこの家に住んでいなかったので、マイホームの3,000万円控除は使えない。父が一人で住んでいた家で、1985年築なので、空き家の3,000万円控除の「1981年5月31日以前の建築」の要件を満たさない。相続税は基礎控除の中で払っていないので、取得費加算の特例もない。特例は、三つとも使えませんでした。

税額の計算です。譲渡価額3,000万円、取得費150万円、譲渡費用は仲介手数料約105万円と印紙税1万円と測量費30万円で約136万円。譲渡所得は3,000万円−150万円−136万円で2,714万円。長期譲渡で、所得税15.315%と住民税5%、合わせて約551万円。男性が「580万円」と聞いた概算より少し下がりましたが、手元の400万円では足りません。不足分の約150万円は、車のローンとは別に、親族から借りて納めました。所得税は3月15日まで、住民税は6月以降に通知が来て年四回に分けて納付。

もう一つ、書いておきます。もし、この土地が祖父ではなく父が1985年に買ったもので、当時の契約書が残っていたら。仮に取得費が1,200万円だったとすると、譲渡所得は3,000万円−1,200万円−136万円で1,664万円、税額は約338万円。5%ルールとの差は約213万円。「売る前に古い書類を探す価値は十分にある」と本文に書いた価値は、この家の場合、探しても出てこなかった213万円です。

実務で売主に最初に伝えるのは三つです。買った値段の証拠を探すこと。所有期間5年の壁を確認すること(相続なら親の取得日)。そして、売った年の翌年に税金が来ることを、資金計画に入れておくこと。売却代金を全部使ってから確定申告で慌てる、という事態は、この三つで防げます。個別の計算は税理士か税務署で確認してください。

3,000万円の振込から一年、男性の手元には、車とキッチンと、親族への借金150万円が残りました。「売った翌年に税金が来ることを資金計画に入れる」と本文の最後に書きました。この家では、その一行を、売る前に誰も言わなかった。3,000万円で売れた土地の「使えるお金」は、約2,300万円でした。最初に伝える三つのうち、三つ目が、この家で一番効いたはずの一行です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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