相続・手続き 2026-09-08

相続に必要な戸籍の集め方 ― 出生から死亡まで、2024年から使える広域交付

相続手続きの最初の壁、戸籍集め。なぜ「出生から死亡まで」が必要なのか、戸籍謄本・除籍・改製原戸籍の違い、遡り方、手数料、そして2024年3月から始まった「広域交付」で本籍地に行かずに済む範囲と、その制度で取れない戸籍を整理します。

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この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → [相続人と財産を確定する] → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

亡くなったのは、独身で子のいない姉でした。両親はすでに亡く、相続人は弟である相談者と、妹の二人。「姉の戸籍を出生まで集めてください、と銀行に言われたんですが、姉は生まれてから一度も本籍を動かしていないので、一通で済みますよね」。済みません、と答えました。しかも、この相続では、2024年から使える便利な制度が、全部には使えません。その理由から始めます。

相続の手続きで最初に頼まれるのが「亡くなった人の、出生から死亡までの戸籍を全部」です。なぜ全部なのか。相続人を確定するためです。結婚前の戸籍、前の婚姻の戸籍、養子縁組の記録。それらを全部たどらないと、家族が知らない子や養子がいないことを証明できません。法務局も銀行も、この連続した戸籍で相続人を確認します。

戸籍には三つの種類があります。今生きている戸籍の写しが「戸籍謄本(全部事項証明書)」。全員が除かれた(死亡、婚姻などで誰もいなくなった)戸籍が「除籍謄本」。法律や様式の改正で作り直される前の古い戸籍が「改製原戸籍(かいせいはらこせき)」です。一人の人の一生を追うと、生まれたときの親の戸籍(多くは改製原戸籍か除籍)、結婚して作った戸籍、様式改正で作り直された戸籍、と数通に分かれます。転籍(本籍地の移動)をしていれば、さらに増えます。

戸籍の種類と手数料(2026年9月時点)
種類どんな戸籍か手数料
戸籍謄本(全部事項証明書)今も在籍者がいる現在の戸籍450円
除籍謄本全員が除かれて閉じられた戸籍750円
改製原戸籍法改正・様式変更で作り直される前の古い戸籍750円
戸籍の附票その戸籍にいた間の住所の履歴(住所のつながりを示す)自治体により300円前後

集め方の基本は「死亡時の戸籍から、過去へ遡る」です。まず最後の本籍地で死亡の記載がある戸籍を取り、その戸籍の最初のほうに書かれた「従前戸籍」や「改製」の記載を読んで、一つ前の戸籍がどこの市区町村のものかを確認し、そこへ請求する。これを出生の記載がある戸籍にたどり着くまで繰り返します。慣れない人には難しい作業で、窓口で「この人の出生から死亡までが必要です」と伝えると、その役所にある分はまとめて出してくれます。

手数料は、戸籍謄本が一通450円、除籍謄本と改製原戸籍が一通750円です。相続人側の戸籍(現在の戸籍謄本)も一通ずつ必要で、こちらは450円。合計で数千円になることが普通です。

ここで大きく変わったのが、2024年3月1日に始まった戸籍の「広域交付」です。それまでは本籍地の市区町村にしか請求できず、本籍が遠方なら郵送でやり取りするしかありませんでした。広域交付では、本人、配偶者、直系の親族(父母・祖父母・子・孫)の戸籍を、全国どこの市区町村の窓口でもまとめて請求できます。亡くなった親の戸籍を、自分の住んでいる市役所で、出生から死亡までまとめて取れる、ということです。

広域交付には条件があります。窓口に本人が行き、マイナンバーカードや運転免許証などの顔写真付きの身分証を示すこと。郵送や代理人による請求はできません。取れるのは本人・配偶者・直系の戸籍だけで、兄弟姉妹の戸籍は対象外です(兄弟姉妹が相続人になる相続では、両親や祖父母の戸籍は自分の直系なので広域交付で取れますが、亡くなった兄弟姉妹が親の戸籍を出たあとの戸籍は、従来どおり本籍地への請求が要ります)。また、コンピュータ化される前の古い戸籍の一部は広域交付では出せない場合があり、その分は本籍地へ請求します。それでも、相続人が配偶者と子だけという多くの相続では、戸籍集めの手間は以前の半分以下になりました。

広域交付(2024年3月〜)で取れる戸籍・取れない戸籍
広域交付従来の本籍地請求
本人・配偶者・直系(父母・祖父母・子・孫)の戸籍○ 全国どこの窓口でも○
兄弟姉妹・おじおばの戸籍×○(相続人であることを示す書類が必要)
請求の方法本人が窓口へ、顔写真付き身分証窓口・郵送、代理人も可
コンピュータ化前の一部の古い戸籍△ 出せない場合あり○

集めた戸籍は、法定相続情報一覧図の申出に使うことを勧めています。法務局が戸籍の束を確認して一覧図を認証してくれるので、そのあとの相続登記や銀行の手続きには一覧図の写しだけで済み、戸籍を提出先ごとに出し直す必要がなくなります。読み取りの間違い(相続人の見落とし)にも法務局で気づけます。

現場の整理です。兄弟姉妹が相続人になる相続では、集める戸籍が二段階増えます。亡くなった姉の出生から死亡までの戸籍に加えて、両親それぞれの出生から死亡までの戸籍が要ります。両親に他の子(腹違いの兄弟)がいないことを証明するためです。そして、広域交付で取れるのは「本人・配偶者・直系」の戸籍だけで、兄弟姉妹の戸籍は対象外。両親や祖父母の戸籍は相談者から見て直系なので広域交付で取れますが、姉が親の戸籍を出たあとの戸籍と、コンピュータ化されていない古い戸籍は、本籍地の市区町村に一つずつ請求することになります。

本籍は動いていない、という相談者の記憶は、半分正しく半分違いました。姉自身は本籍を動かしていません。ただ、姉が生まれたときの戸籍は、父を筆頭者とする戸籍で、その戸籍は父の転籍で二回、様式の改正で二回、作り直されていました。父の出生の戸籍は、祖父の代の戸籍で、本籍は現在の市町村合併前の村。母の出生の戸籍は別の県。結局、請求先は五つの市区町村、通数は十二通、郵送でのやり取りを含めて二か月半かかりました。手数料は、戸籍450円×5通と除籍・改製原戸籍750円×7通で7,500円、郵送用の定額小為替の手数料などを足して約7,650円でした。

そして、集めた戸籍の中に、想定していなかった記載がありました。父の改製原戸籍に、父が若い頃に「認知」した子の記載があったのです。相談者も妹も、その存在を知りませんでした。認知された子は、父の子として、姉の兄弟姉妹に当たります。つまり、この相続の相続人は、弟と妹の二人ではなく、三人でした。もし戸籍を一通で済ませていたら、相続人が一人足りない協議書を作り、銀行で止められるか、あとから無効になっていました。認知された子の現在の戸籍と住所をさらに追い、手紙を出し、協議に加わってもらいました。

最後に、法定相続情報一覧図を作りました。十二通の戸籍を法務局に出し、相続関係を図にした一覧図を認証してもらう制度です。以後、銀行三行と証券会社の手続きは、この一覧図の写し一枚ずつで済みました。戸籍の束を提出先ごとに出し直していたら、さらに一か月かかっていたと思います。

戸籍を読むのが難しいのは、古い戸籍が手書きで、旧字体や崩し字で書かれているからです。改製原戸籍で「養子」「認知」「復籍」といった記載を見落とすと、相続人が一人足りない協議書を作ってしまいます。自信がなければ、戸籍の収集と相続関係の確定だけを行政書士や司法書士に頼み、そのあとの協議や申請は自分でやる、という分け方もあります。

相談者が最後に言ったのは、「一通で済むと思っていたのが、十二通で、相続人が一人増えた」でした。戸籍を全部集める理由は、役所の形式ではなく、まさにこのためです。家族が知らない相続人は、古い戸籍の中にしかいません。広域交付で楽になった相続と、ならなかった相続の違いも、この記事の表に書きました。兄弟姉妹の相続なら、最初から「二か月」と「十通以上」を見込んで、早めに始めてください。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。

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