相続・手続き 2026-09-08

相続人の範囲と法定相続分 ― 配偶者・子・親・兄弟姉妹、誰がどれだけ相続するのか

遺言がないとき、誰が相続人になり、どの割合で分けるのか。配偶者は常に相続人、子・親・兄弟姉妹の順位、代襲相続、養子と前妻の子、内縁の配偶者、半血の兄弟。相続の相談で最初に確定させる「相続人の範囲」を、具体例の帯グラフつきで整理します。

目次を見る →

この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → [相続人と財産を確定する] → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

四十九日の翌週、母と三人の子が、遺産分割の相談に来ました。父の遺産は1,200万円、遺言はなし。母は「私と子三人で、四等分でいいと思っています」。四等分ではありません。母が2分の1で600万円、子三人で残りの600万円を三等分して200万円ずつ。そして、私は戸籍を見て、もう一つ言いました。「お子さんは、四人です」。父の最初の結婚で生まれた子が、戸籍に載っていました。この記事は、その四人目の話です。

相続の手続きは、必ず「誰が相続人か」を確定するところから始まります。遺産分割協議書も、法定相続情報一覧図も、相続登記も、相続人が一人でも欠けていれば無効になるからです。誰が相続人になるかは民法で決まっていて、家族の思いや同居の有無では変わりません。

まず、配偶者は常に相続人です。婚姻届を出している配偶者に限られ、内縁の配偶者や、離婚した元配偶者は相続人になりません。配偶者以外の相続人には順位があり、第1順位が子、第2順位が直系尊属(父母、祖父母)、第3順位が兄弟姉妹です。先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続人になりません。子がいれば親は相続人にならず、子も親もいないときに初めて兄弟姉妹が相続人になります。

「子」には、養子も、前の配偶者との間の子も、認められた婚外子も含まれ、相続分は同じです(2013年の民法改正で、婚外子の相続分が嫡出子と同じになりました)。普通養子は実親との親子関係も残るので、実親と養親の両方の相続人になります。特別養子は実親との関係が切れます。離婚した元配偶者は相続人ではありませんが、その人との間の子は相続人です。相続の相談で「前の奥さんの子にも権利があるんですか」と驚かれることが多い点です。

子が親より先に亡くなっていた場合、その子(亡くなった人から見て孫)が代わりに相続人になります。これが代襲相続で、孫も亡くなっていればひ孫へと続きます。兄弟姉妹が相続人になる場合にも代襲相続はありますが、甥・姪までで止まり、その先へは続きません。

相続人の順位 ― 配偶者は常に、あとは第1順位から順に
相続人の順位 ― 配偶者は常に、あとは第1順位から順に亡くなった人を中心に、配偶者は常に相続人。第1順位は子(子が先に亡くなっていれば孫が代襲)、子がいないときだけ第2順位の父母・祖父母、第1も第2もいないときだけ第3順位の兄弟姉妹が相続人になる。 亡くなった人 配偶者 常に相続人 ①① ②② ③③ 子 第1順位 孫(代襲) 父母・祖父母 第2順位(子がいないとき) 兄弟姉妹 第3順位(①②なし)

亡くなった人を中心に、配偶者は常に相続人。第1順位は子(子が先に亡くなっていれば孫が代襲)、子がいないときだけ第2順位の父母・祖父母、第1も第2もいないときだけ第3順位の兄弟姉妹が相続人になる。

法定相続分は、相続人の組み合わせで決まります。配偶者と子なら、配偶者2分の1、子全員で2分の1。配偶者と直系尊属なら、配偶者3分の2、直系尊属3分の1。配偶者と兄弟姉妹なら、配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1。配偶者がいなければ、同じ順位の人で全部を等分します。子が三人なら3分の1ずつです。兄弟姉妹のうち、父母の一方だけが同じ「半血」の兄弟姉妹は、両方が同じ兄弟姉妹の2分の1になります。

相続人の組み合わせと法定相続分
相続人配偶者それ以外
配偶者と子1/2子全員で1/2(人数で等分)
配偶者と直系尊属(父母など)2/3直系尊属全員で1/3
配偶者と兄弟姉妹3/4兄弟姉妹全員で1/4(半血は全血の1/2)
配偶者のみ全部―
子のみ/直系尊属のみ/兄弟姉妹のみ―同じ順位で等分
例 ― 配偶者と子3人(うち1人は前の配偶者との子)、遺産1,200万円、遺言なし
法定相続分配偶者 600万円 / 子 200万円 / 子 200万円 / 前妻の子 200万円

前の配偶者との子も、同居していなくても、他の子と同じ相続分。協議で違う分け方にするには、この子を含む全員の合意が要る。

この法定相続分は、遺言がない場合の「話し合いの出発点」であって、必ずこの割合で分けなければならないわけではありません。相続人全員が合意すれば、法定相続分と違う分け方(家は長男、預金は次男、など)にできます。それを書面にしたものが遺産分割協議書です。逆に、遺言があれば遺言が優先しますが、遺留分の記事で書いたとおり、法定相続分の半分(直系尊属のみのときは3分の1)は遺留分として保障されます。

相続人になれない場合もあります。故意に被相続人を死亡させた、遺言書を偽造・破棄したなどの「相続欠格」。被相続人を虐待した、著しい非行があったとして家庭裁判所が認めた「廃除」。そして相続放棄です。相続放棄をした人は最初から相続人でなかったことになり、その人の子への代襲相続も起きません。

順に書きます。父の出生から死亡までの戸籍は6通。3通目に、父が28歳で結婚し、32歳で離婚し、その間に子が一人生まれた記載。その子は、離婚のとき母親の戸籍に入り、父とは音信不通。母と三人の子は、父に前の結婚があったことは知っていましたが、子がいたことは知りませんでした。相続人は、母と、子四人。法定相続分は、母が2分の1で600万円、子四人が8分の1ずつで150万円。母が最初に言った「四等分で300万円ずつ」から、子一人の取り分は半分になり、当事者が一人増えました。

前の結婚の子への連絡は、戸籍の附票で住所を調べて、私が手紙を書きました。四十九日を過ぎていること、遺産の内容、法定相続分が150万円であること。返事は二週間後で、「顔も覚えていないが、法定相続分は受け取る」。協議は、母が600万円、四人の子が150万円ずつで、法定相続分どおり。前の結婚の子は協議書に実印を押して印鑑証明書を送り、一度も会わないまま、三か月で終わりました。「前の奥さんの子にも権利があるんですか」と驚かれることが多い、と本文に書きましたが、この家では、母が「そういう人がいるなら、当然」と言い、それが協議を三か月で終わらせました。

一つ、この家で確認した別のことも書きます。母は、父の母(義母、91歳)が施設で存命だと言いました。第2順位の直系尊属です。ただ、第1順位の子がいるので、義母は相続人になりません。母は「義母にも何か渡すべきか」と聞き、法律上は相続人ではないので協議に加える必要はなく、渡すなら母から義母への贈与になる、と整理しました。「先の順位の人が一人でもいれば、後の順位の人は相続人にならない」の一行が、この家では、義母の91歳の分でした。

相続人の範囲は、戸籍で確定します。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めると、家族が知らなかった子や養子縁組が見つかることがあります。「知っている家族」ではなく「戸籍に載っている相続人」で協議をする。この原則を最初に押さえておけば、あとの手続きが無効になる事態は防げます。戸籍の集め方の記事にまとめました。

「四等分でいい」と言った母の家は、母600万円と、四人の子が150万円ずつ、でした。四人目は、戸籍の3通目にいました。「知っている家族ではなく、戸籍に載っている相続人で協議をする」と本文の最後に書きました。この家は、3通目を見てから協議を始めたので、無効になる協議書を作らずに済みました。四十九日の翌週に来た理由は、それだけで足りました。

この家の分け方 ― 遺産1,200万円、配偶者と子四人
この家の分け方 ― 遺産1,200万円、配偶者と子四人50%13%13%13%13%母(配偶者) 600万円長女 150万円長男 150万円次男 150万円前の結婚の子 150万円

母(配偶者) 600万円(50%)、長女 150万円(13%)、長男 150万円(13%)、次男 150万円(13%)、前の結婚の子 150万円(13%)

配偶者2分の1、子全員で2分の1。子は四人で等分なので一人8分の1ずつ。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

あわせてどうぞ

解説記事一覧