暮らしと手続き 2026-09-07

法定相続情報一覧図の取り方と使いどころ ― 戸籍の束を一枚にする無料の制度

相続手続きのたびに戸籍一式を出し直す手間をなくす「法定相続情報証明制度」。申出先、必要書類、一覧図の書き方、無料で何通でももらえる写しの使い道と、この制度でできないことを整理します。

相続手続きで最初にぶつかる壁は、戸籍の量です。亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を全部そろえると、転籍や改製をはさんで五通、六通になることは珍しくありません。それを法務局、銀行、証券会社、年金事務所と、手続き先ごとに提出し、確認され、返してもらう。法定相続情報証明制度は、この戸籍の束を法務局が一度だけ確認し、「法定相続情報一覧図」という一枚の図にまとめて認証してくれる仕組みです。2017年5月に始まりました。

使い方は三段階です。まず、戸籍一式と、亡くなった人の住民票の除票、相続人全員の現在の戸籍を集めます。次に、相続関係を図にした「一覧図」を自分で作ります。最後に、申出書と一緒に法務局へ出します。法務局が戸籍と図を照合し、間違いがなければ認証文つきの写しを交付してくれます。手数料は無料で、写しは必要な通数だけ無料で受け取れます。

申出ができる法務局は、亡くなった人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、亡くなった人名義の不動産の所在地、このどれかを管轄する登記所です。窓口でも郵送でも申し出られます。申出人になれるのは相続人(またはその代理人)で、行政書士・司法書士・弁護士などの資格者が代理できます。

一覧図の書き方は法務局のひな形に従います。亡くなった人を中心に、配偶者と子を線でつなぎ、それぞれの氏名・生年月日・続柄を書きます。相続人の住所は任意記載ですが、書いておくと相続登記や金融機関で住民票の提出を省略できる場面があるので、載せることを勧めます。図には「法定相続分」は書きません。誰がどの割合で相続するかは、この制度の対象外です。

使い道は広いです。法務局の相続登記、銀行・信用金庫・ゆうちょの預貯金の解約、証券口座の名義変更、生命保険金の請求、そして相続税の申告。年金の未支給分の請求にも使えます。一通ずつ渡して回収を待つ必要がなく、同時並行で手続きを進められるのが最大の利点です。

一覧図の写しが使える主な手続き(2026年9月時点)
手続き提出先戸籍の束の代わりになるか
相続登記法務局なる
預貯金の解約・名義変更銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行なる(多くの金融機関)
証券口座の名義変更証券会社なる(会社により確認)
相続税の申告税務署なる
未支給年金の請求年金事務所なる
遺産分割の割合の証明ならない(法定相続分は記載されない)

交付を受けた一覧図は、法務局で五年間保管されます。その間は再交付を申し出ることができるので、あとから手続き先が増えても戸籍を出し直す必要はありません。

この制度でできないことも書いておきます。一つ、数次相続(祖父の相続を放置しているうちに父も亡くなった場合)は、被相続人一人につき一枚なので、二枚に分けて作ります。二つ、相続放棄をした人も、図の上では相続人として載ります。放棄の事実は家庭裁判所の「相続放棄申述受理証明書」で別に示します。三つ、遺産分割の内容や遺言の有無は反映されません。一覧図はあくまで「戸籍上、誰が相続人か」を証明するものです。

実務で勧めているのは、戸籍を集め終えた時点で、相続登記や銀行の手続きを始める前に一覧図を取ってしまうことです。戸籍の読み取りを法務局に一度確認してもらえるので、相続人の見落としに気づく最後の関門にもなります。手続き先が二つ以上あるなら、取らない理由はほとんどありません。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士) 内容確認日:2026-09-07

記事の内容は執筆時点の公開情報と実務経験に基づく一般的な解説です。個別の事案については、公式資料と専門家への相談で確認してください。

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