奉納歌の間

一日一首、架空の名前から生まれたオリクジを納めます。

2026-10-07 ひなた ― 吉

ひだまりに
なにも言わずに
たたずんで
猫がそこにいる
それだけでいい

ただそこにいる、それで十分。

2026-10-06 そらの ― 中吉

そら豆を
らんらん剥けば
のぞく緑
今日はこれだけ
いいことがあった

さやの中、今日の小さな正解。

2026-10-05 つむぎ ― 末吉

つぼみまだ
むすばれもせず
ぎゅっと土
あたためている
根っこの話

地面の下で、もう動いている。

2026-10-04 あさひな ― 吉

あたらしい
さいふのにおい
ひだまりに
なれてきたころ
春が来ている

なじんだものが、いちばんあたたかい。

2026-10-03 るりこ ― 中吉

るすばんの
りんごひとつが
こころなし
赤くなってた
今日もよかった

ひとりの午後に小さな実り。

2026-09-05 みなとり ― 中吉

みずたまり
なぜかきれいと
とまってる
りんごのにおい
風ふきぬけた

悪くない午後、確かにあった。

2026-09-02 しおりな ― 大吉

しずかにも
おいかぜが吹く
りんごの木
なびく枝から
実が落ちてくる

何もしなくても、もう転がってくる。

2026-08-31 さちのり ― 凶

さいふから
ちょうど小銭が
のぞくけど
りん檎一個も
買えない春よ

財布ごとかわいい凶。

2026-08-30 あきのぶ ― 小吉

あめあがり
きのうの雲は
のきばまで
ぶどう色した
夕焼けに似る

昨日の残りが今日をそっと照らす。

2026-08-29 あきのり ― 吉

あたらしい
きのうより少し
のびている
りんごの木みたく
ちゃんと育ってる

気づかないうちに、伸びてた。

2026-08-27 あきやま ― 中吉

あの角の
きいろい銀杏に
やっと気づく
まだ昼間だと
空が言ってた

見上げれば、ちゃんとそこにある。

2026-08-25 ゆきさ ― 凶

ゆうべまた
きゅうりだけだよ
さいふから
千円消えた
でも腹へった

凶でもきゅうりは体にいい。

2026-08-24 みなせ ― 大吉

みずたまり
なにも映して
せいいっぱい
空が青くて
それだけでいい

今日の空は全部あなたのもの。

2026-08-23 あかり ― 中吉

あの角を
かがやく自販機
りんごジュース
百円玉が
ちょうどあったよ

今日はそういう日だった。

2026-08-22 こよね ― 小吉

こぬ雨を
よそに窓ふく
ねこがいて
それだけで足る
土曜の昼よ

なにもない日に、ちゃんとある。

2026-08-21 ほしね ― 凶

ほぼ全部
しくじってきた
ねえそれが
わりといい味
出てるじゃないか

失敗は、だいたいキャラになる。

2026-08-20 そらね ― 凶

そのツキは
らいげつ回収
ねこのひたい
くらいとこにも
日なたはあるよ

凶でもねこはあたたかい。

2026-08-19 あさね ― 波吉

あの波は
さっきも同じ
ねそべって
また来た気がする
それでいいんだ

行きつ戻りつ、それが海の正直さ。

2026-08-18 さより ― 小吉

さっきまで
よそのベランダに
りんごあり
気づけばなくて
それだけのこと

見えていたものが、ちゃんとあった。

2026-08-17 さより ― 吉

さいごまで
よく噛んで食べた
りんご飴
それだけのこと
今日も悪くない

ちゃんと味わえた一日。

2026-08-16 ゆらね ― 大吉

ゆるやかに
らせん状に日が
ねじれてく
向かい風さえ
背中を押してる

今日、全部が味方になった。

2026-08-15 こはる ― 吉

こぬか雨
はらりとぬれる
るすの窓
ただいまと言えば
灯りがともる

帰ってくる場所が、ある。

2026-08-07 けんしろう ― 小吉

けんかした
しおりのはさまる
ろくじごろ
うすくひかって
本のやけた縁

ちいさな傷も、どこかあたたかい。

十二首の礎

こうじ ― 中吉

こぼれる陽
うすいカップに
じっと待つ
湯気の向こうで
朝がほどける

急がない朝も、進んでいる。

あかり ― 吉

あめあがり
かどの自転車
りんが鳴る
雲の切れ間を
先に見つけた

光は、見つけた人から届く。

たくみ ― 小吉

たしかめる
くつひも結ぶ
みぎの靴
少し遅れて
春がついてく

結び直せば、また歩ける。

ひなた ― 猫吉

ひるさがり
ななめの影を
たどる猫
塀の向こうに
海の気配が

猫だけが、近道を知っている。

まこと ― 中吉

まどぎわの
こっぷの水に
とおい空
揺れて映った
今日の青色

遠くは、ときどき机の上にある。

さくら ― 末吉

さびた鍵
くるりと回す
らじお鳴る
無人の部屋に
夏が戻った

開く音は、思い出より先。

あおい ― 小吉

あさの駅
おとが少ない
いすひとつ
始発を待てば
町が目覚める

最初の音を、待っている。

みずき ― 波吉

みちの端
ずっと小さな
きのうの葉
水たまりには
空が残った

引いた波にも、景色は残る。

ゆうこ ― 吉

ゆびさきに
うすい絵の具の
こぼれ青
窓を開ければ
風の続きが

塗り残しから、風が入る。

のぞみ ― 大吉

ののひかり
ぞうきの道を
みつけた日
誰にも言わず
道を一本

見つけた道は、もう始まっている。

かなえ ― 凶

かさがない
なのに降り出す
えきの前
走った先で
虹だけ届く

傘はない。虹はある。

つばさ ― 海月吉

つきの下
ばす停ひとつ
さびた椅子
海には遠い
青だけが来る

深夜の青は、行き先を急がない。

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