こうじ ― 中吉
こぼれる陽
うすいカップに
じっと待つ
湯気の向こうで
朝がほどける
急がない朝も、進んでいる。
選んだ理由:湯気が消えるまでを一日の助走にした一首。
名前の音が五七五七七の頭に隠れる、展示用の十二首です。利用者投稿や実在人物の記録ではありません。
こぼれる陽
うすいカップに
じっと待つ
湯気の向こうで
朝がほどける
急がない朝も、進んでいる。
選んだ理由:湯気が消えるまでを一日の助走にした一首。
あめあがり
かどの自転車
りんが鳴る
雲の切れ間を
先に見つけた
光は、見つけた人から届く。
選んだ理由:名前の音と雨上がりの明るさが自然につながった。
たしかめる
くつひも結ぶ
みぎの靴
少し遅れて
春がついてく
結び直せば、また歩ける。
選んだ理由:小さな準備を運勢の中心に置いた一首。
ひるさがり
ななめの影を
たどる猫
塀の向こうに
海の気配が
猫だけが、近道を知っている。
選んだ理由:猫吉らしく、本人より先に猫が出発する。
まどぎわの
こっぷの水に
とおい空
揺れて映った
今日の青色
遠くは、ときどき机の上にある。
選んだ理由:大きな景色を小さなコップへ収めたところを残した。
さびた鍵
くるりと回す
らじお鳴る
無人の部屋に
夏が戻った
開く音は、思い出より先。
選んだ理由:末吉の『まだ途中』を、古い部屋の再開で表した。
あさの駅
おとが少ない
いすひとつ
始発を待てば
町が目覚める
最初の音を、待っている。
選んだ理由:何も起きていない時間を、小吉の良さとして選んだ。
みちの端
ずっと小さな
きのうの葉
水たまりには
空が残った
引いた波にも、景色は残る。
選んだ理由:波吉を海だけで終わらせず、水たまりへ移した一首。
ゆびさきに
うすい絵の具の
こぼれ青
窓を開ければ
風の続きが
塗り残しから、風が入る。
選んだ理由:完成させすぎないことを吉として読んだ。
ののひかり
ぞうきの道を
みつけた日
誰にも言わず
道を一本
見つけた道は、もう始まっている。
選んだ理由:大吉を派手な成功ではなく、道の発見として置いた。
かさがない
なのに降り出す
えきの前
走った先で
虹だけ届く
傘はない。虹はある。
選んだ理由:困りごとを消さず、最後だけ少し救う凶の見本。
つきの下
ばす停ひとつ
さびた椅子
海には遠い
青だけが来る
深夜の青は、行き先を急がない。
選んだ理由:千分の一の運勢に合わせ、静かな浮遊感を選んだ。