相続・手続き 2026-10-08

遺族年金の基本 ― 誰が、いくら、どこで受け取るか(遺族基礎年金と遺族厚生年金)

会社員の夫が42歳で亡くなり、妻と子2人が残された家を例に、遺族年金の仕組みを整理します。1階の遺族基礎年金は「子のある配偶者」と「子」だけ、2階の遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3。2026年度の額で年178万4,900円、子が18歳の年度末を過ぎるごとに額が変わる流れ、請求の窓口と書類、時効5年、相続放棄をしても受け取れること、2028年4月からの見直しまで。

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この記事の位置: 亡くなる前にできること → [亡くなってすぐ(3か月まで)] → 相続人と財産を確定する → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

「夫の会社の人から『遺族年金の手続きをしてください』と言われました。でも、何をもらえるのか、まったく分かりません」。相談に来たのは41歳の妻でした。夫は42歳の会社員で、勤めている最中に病気で亡くなりました。子どもは中学2年の長男(14歳)と小学4年の長女(10歳)。葬儀から一か月がたち、住宅ローンは団体信用生命保険(ローンを組んだ人が亡くなると残りを保険で払う仕組み)で消えたものの、毎月の生活費の見通しが立たない、という相談でした。

遺族年金は、亡くなった人に生活を支えられていた家族に払われる公的年金です。日本の公的年金は2階建てで、1階が全員の入る国民年金、2階が会社員や公務員の入る厚生年金です。遺族年金も同じ形で、1階の「遺族基礎年金」と、2階の「遺族厚生年金」があります。会社員が亡くなった家では、条件が合えば両方を受け取れます。

遺族基礎年金を受け取れるのは、「子のある配偶者」か「子」だけです。ここでいう子は、18歳になった年度の3月31日までの子です(障害等級1級・2級なら20歳未満)。子がいない配偶者は、遺族基礎年金を受け取れません。額は2026年4月分から年84万7,300円(昭和31年4月2日以後生まれの場合)で、子の加算が1人目と2人目は各24万3,800円、3人目からは各8万1,300円です(日本年金機構の案内より)。亡くなった人の側にも、保険料を納めていた期間の条件があります(加入期間の3分の2以上が納付済みか免除。2036年3月末までの死亡なら、直近1年に未納がなければ足りる特例があります)。

遺族厚生年金は、厚生年金に入っていた人が亡くなったときの2階部分です。受け取れる人の範囲は広く、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順に、いちばん上の順位の人が受け取ります(夫・父母・祖父母は55歳以上などの条件つき)。額は、亡くなった人の老齢厚生年金のうち「報酬比例部分」(給料と加入期間で決まる部分)の4分の3です。在職中に亡くなった場合などは、加入期間が300か月(25年)に足りなくても、300か月あったものとして計算します。若くして亡くなった人の家族の年金が小さくなりすぎないための決まりです。

遺族年金は2階建て。1階は子のいる家だけ、2階は厚生年金に入っていた人の家族
遺族年金は2階建て。1階は子のいる家だけ、2階は厚生年金に入っていた人の家族1階の遺族基礎年金は、国民年金から、子のある配偶者または子に出る。2階の遺族厚生年金は、厚生年金に入っていた人が亡くなったとき、配偶者・子・父母・孫・祖父母のうち順位がいちばん上の人に、報酬比例部分の4分の3が出る。会社員だった夫が亡くなり、妻と子2人がいる家は、両方を受け取れる。2階 遺族厚生年金(厚生年金に入っていた人)2階 遺族厚生年金(厚生年金に入っていた人) 報酬比例部分の4分の3/配偶者・子・父母…の順報酬比例部分の4分の3/配偶者・子・父母…の順 1階 遺族基礎年金(国民年金)1階 遺族基礎年金(国民年金) 子のある配偶者・子だけ/子が18歳の年度末まで子のある配偶者・子だけ/子が18歳の年度末まで 妻 41歳 長男14 長女10 この家は両方を受け取るこの家は両方を受け取る 子がいない配偶者は1階なし(2階だけ)子がいない配偶者は1階なし(2階だけ)

1階の遺族基礎年金は、国民年金から、子のある配偶者または子に出る。2階の遺族厚生年金は、厚生年金に入っていた人が亡くなったとき、配偶者・子・父母・孫・祖父母のうち順位がいちばん上の人に、報酬比例部分の4分の3が出る。会社員だった夫が亡くなり、妻と子2人がいる家は、両方を受け取れる。

自営業など国民年金だけの人が亡くなった場合は2階がありません。子がいなければ、寡婦年金か死亡一時金が出ることがあります。

子が大きくなったあとの話も書いておきます。遺族基礎年金は、末の子が18歳の年度末を過ぎると終わります。そのとき40歳以上65歳未満の妻には、遺族厚生年金に「中高齢寡婦加算」(2026年度は年63万5,500円)が上乗せされ、65歳まで続きます(夫が亡くなったときに40歳以上だったことなどが条件)。反対に、夫が亡くなったとき30歳未満で子のない妻の遺族厚生年金は、5年で終わります。

亡くなった人が自営業などで国民年金だけに入っていた場合は、2階がありません。遺族基礎年金を受け取れない家族には、代わりに「寡婦年金」(妻に60歳から65歳まで)か「死亡一時金」のどちらかが出ることがあります。婚姻の期間や保険料を納めた期間などの条件が細かいので、亡くなった人の加入記録を見ながら窓口で確かめます。

制度は動いています。2025年に成立した年金制度改正法で、遺族厚生年金は2028年4月から見直される予定です。20代から50代で死別した子のない配偶者は、男女とも原則5年の有期給付(そのぶん額は今より増える)になります。一方、18歳の年度末までの子がいる間は今と同じで、すでに受け取っている人には影響しないと、厚生労働省は説明しています。子の加算を増やすことも決まっています。

請求の窓口は、年金事務所か街角の年金相談センターです(亡くなった人が自営業などで国民年金だけに入っていて、遺族基礎年金だけを請求するなら市区町村の窓口)。持っていくものは、請求書、亡くなった人と請求する人の基礎年金番号が分かるもの、戸籍謄本、世帯全員の住民票と亡くなった人の住民票の除票、請求する人の収入が分かる書類、死亡診断書の写しなど亡くなったことが分かる書類、受取口座の通帳です(戸籍や住民票は発行から6か月以内。マイナンバーを書けば住民票を省ける場合があります)。「生計を維持されていた」かは、同じ家に住んでいたか(別居なら仕送りなど)と、請求する人の前年の収入が850万円未満か(所得なら655万5,000円未満)で見ます。窓口は予約制が多いので、電話で予約してから行きます。

請求には時効があり、5年です。遺族年金は亡くなった月の翌月分から出るので、請求が遅れても、さかのぼって受け取れるのは5年分までです。似た名前の「未支給年金」は別のものです。年金を受けていた人が亡くなったとき、受け取るはずだった最後の月の分を同じ家計の家族が受け取る手続きで、自動車・株式・年金の名義変更の記事に書きました。

相続との関係も整理します。遺族年金は、法律で遺族に直接払われるお金で、亡くなった人の遺産ではありません。遺産分割の対象にならず、相続放棄をしても受け取れます。所得税も相続税もかかりません。借金が多くて相続放棄を考えている家でも、遺族年金の請求は別に進めてかまいません。生命保険金との違いは、相続放棄と生命保険の記事に書きました。

この家の数字です。年金事務所で出してもらった見込みでは、夫の報酬比例部分は300か月で計算して年60万円、その4分の3の遺族厚生年金が年45万円でした。遺族基礎年金は84万7,300円に子2人の加算48万7,600円を足して、年133万4,900円。合わせて年178万4,900円、月にならすと約14万8,700円です(2026年度の額)。

額は子の年齢で変わります。4年後に長男が18歳の年度末を過ぎると、子の加算が1人分減って年154万1,100円。8年後に長女も過ぎると遺族基礎年金が終わり、遺族厚生年金45万円に中高齢寡婦加算63万5,500円が付いて、年108万5,500円になります(どれも今年度の額で計算。額は毎年度改定され、改正で子の加算が増えれば変わります)。妻は、下の子が高校を出たあとの年がいちばん少ないことを、この表で初めて知りました。そして、パートの時間を増やす時期を、長女が中学に上がる年に決めました。

この家の遺族年金(年額)は、子が18歳の年度末を過ぎるたびに変わる
この家の遺族年金(年額)は、子が18歳の年度末を過ぎるたびに変わるいま(子2人)1,784,900円4年後(子1人)1,541,100円8年後〜65歳1,085,500円

いま(子2人) 1,784,900円、4年後(子1人) 1,541,100円、8年後〜65歳 1,085,500円

2026年度の額で計算。いま=遺族基礎年金84万7,300円+子の加算48万7,600円+遺族厚生年金45万円。4年後=84万7,300円+24万3,800円+45万円。8年後〜65歳=遺族厚生年金45万円+中高齢寡婦加算63万5,500円。遺族厚生年金の45万円は、この家の見込み額です。

遺族年金の相談で私ができるのは、制度の当たりをつけ、窓口に持っていく書類をそろえるところまでです。受け取れるかどうかと正確な額を決めるのは日本年金機構で、加入記録を見ないと分かりません。最初の一歩は、亡くなった人の基礎年金番号が分かる書類を探して、年金事務所に予約の電話を入れることです。妻は手帳に「年金事務所 予約・戸籍・住民票・通帳」と書いて帰りました。何をもらえるか分からない、という不安は、表に三つの数字が並んだところで、何年後にいくらになるか、という予定に変わりました。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-08

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-08 確認)。

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