離婚・家族 2026-09-12

ひとり親家庭の支援制度 ― 児童扶養手当だけじゃない、使える制度の一覧

離婚後にひとり親になると、児童扶養手当以外にも使える公的支援があります。ひとり親家庭等医療費助成、就学援助、母子父子寡婦福祉資金貸付金、住居確保給付金、税のひとり親控除。所得制限や申請窓口は制度ごとに違い、多くは「申請しないと使えない」ものです。何が使えるか、どこに聞けばいいかを一覧で整理します。

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この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → [離婚後の生活] → 状況別(当てはまる方だけ)

離婚から半年、女性が持って来たのは、児童扶養手当の決定通知書だけでした。月4万4,000円。「これだけでは、正直きついです」。パート収入は月11万円、子二人、家賃6万5,000円。私は、市の窓口で申請できる制度を、一枚の紙に書き出しました。女性が使えるのに使っていない制度が、六つありました。この記事は、その紙の話です。

離婚後の手続きの記事で、児童扶養手当の申請を書きました。この記事は、その他に使える公的支援を一覧にします。制度の多くは、知らなければ使えず、申請してはじめて受けられる「申請主義」です。離婚を考えている段階、あるいは離婚した直後に、まとめて確認してください。

一つ目、児童扶養手当。ひとり親家庭の子の生活の安定のための手当で、所得に応じて月額が決まります(全部支給・一部支給・支給なしの三段階)。養育費の記事で書いたとおり、受け取った養育費の8割が所得に算入されるので、養育費の額によって手当の額が変わります。市区町村の窓口で申請します。

二つ目、ひとり親家庭等医療費助成制度。ひとり親家庭の親子の医療費の自己負担を軽減する制度で、多くの市区町村にありますが、所得制限、対象年齢、助成の範囲(通院・入院)は自治体ごとに違います。児童扶養手当を受けている家庭は対象になっていることが多いので、手当の申請と同時に確認してください。

三つ目、就学援助。学用品費、給食費、修学旅行費などを、所得の少ない世帯に補助する制度で、小中学校の設置者(市区町村の教育委員会)が実施します。ひとり親家庭であることだけでなく、世帯の所得が基準以下であることが要件です。学校を通じて申請するのが一般的です。

四つ目、母子父子寡婦福祉資金貸付金。都道府県・政令市・中核市が実施する、ひとり親家庭向けの貸付制度です。修学資金(子の進学費用)、技能習得資金(資格取得のための費用)、生活資金、住宅資金、転宅資金(引っ越し費用)、就職支度資金など、用途ごとに種類があり、多くは無利子または低利子です。返済が要る「貸付」であることに注意しつつ、離婚直後にまとまった費用が要る場面(引っ越し、資格取得)で使える制度です。福祉事務所や自治体のひとり親家庭支援の窓口が申請先です。

五つ目、住居確保給付金。離婚に限らず、離職や収入減少で住居を失うおそれがある人に、家賃相当額を一定期間支給する制度です。ひとり親であることが直接の要件ではありませんが、離婚後に収入が急に減った場合、対象になることがあります。自治体の自立相談支援機関(生活困窮者向けの窓口)が申請先です。

六つ目、税のひとり親控除です。所得税と住民税の計算で、一定の要件(婚姻歴の有無を問わず、生計を一にする子がいて、所得が一定以下、事実上の婚姻関係にある人がいないこと)を満たすと、控除が受けられます。離婚と会社の手続きの記事で書いたとおり、勤務先の年末調整で申告するか、確定申告で申告します。以前あった「寡婦控除」「寡夫控除」との違い(婚姻歴の有無で差がなくなったこと)も、2020年の税制改正で整理されています。

七つ目、公営住宅の優先入居。多くの自治体が、ひとり親家庭を公営住宅の入居選考で優先する扱いをしています。所得基準はありますが、離婚後の住まい探しで、家賃負担を抑える選択肢になります。

ひとり親家庭が使える主な制度
制度内容窓口
児童扶養手当所得に応じた月額の手当市区町村
ひとり親家庭等医療費助成親子の医療費の自己負担軽減市区町村
就学援助学用品費・給食費・修学旅行費の補助学校(教育委員会)
母子父子寡婦福祉資金貸付金修学・生活・住宅・転宅資金などの貸付(無利子・低利子)都道府県・政令市・中核市
住居確保給付金家賃相当額の一定期間支給自立相談支援機関
ひとり親控除所得税・住民税の控除年末調整・確定申告
公営住宅の優先入居入居選考での優先枠都道府県・市区町村の住宅担当

六つを、金額で書きます。一つ目、ひとり親家庭等医療費助成。この市では、児童扶養手当の受給者は対象で、親子の医療費の自己負担がほぼゼロに。女性は下の子が喘息で月に一度通院しており、月約3,000円が浮く。二つ目、就学援助。上の子が小学三年で、給食費と学用品費で年約6万円の補助。三つ目、保育料の減免。下の子(4歳)の保育料は、ひとり親で所得が基準以下なので、月1万8,000円がゼロに。四つ目、公営住宅の優先入居。市営住宅の募集で、ひとり親家庭は優先枠があり、応募して二回目で当選、家賃は6万5,000円から2万8,000円に。五つ目、税のひとり親控除。年末調整で申告し、所得税と住民税で年約4万円の減。六つ目、母子父子寡婦福祉資金の技能習得資金。女性は医療事務の資格を取りたいと言っていて、講座の費用約12万円を無利子で借り、翌年に資格を取って、パートから正職員になりました。

月額で並べると、児童扶養手当4万4,000円に、医療費約3,000円、保育料1万8,000円、家賃の差3万7,000円、就学援助を月割りで約5,000円、税で約3,000円。合わせて、児童扶養手当の4万4,000円の外側に、月約6万6,000円分。「これだけでは、きつい」の「これだけ」が、実際には、使える制度の四割でした。

申請主義の重さも書きます。六つの窓口は、福祉事務所、教育委員会、保育課、住宅課、勤務先(年末調整)、県の福祉資金の窓口、で六か所。女性は、半年前に児童扶養手当の窓口で「他に使える制度はありますか」と聞かなかった。聞いていれば、窓口の職員は、少なくとも医療費助成と保育料の減免は、その場で案内していたはずです。「制度の多くは、知らなければ使えず、申請してはじめて受けられる」と本文の最初に書いた、その半年分が、月6万6,000円×6か月で、約40万円でした。

これらの制度は、こども家庭庁や自治体のひとり親家庭支援担当の窓口で、まとめて案内してもらえます。離婚が決まった段階、あるいは離婚後すぐに、一度まとめて相談に行くことを勧めます。制度ごとに窓口が違う(福祉事務所、教育委員会、都道府県、税務課)ため、複数回に分けて確認することになりますが、児童扶養手当の申請窓口で「他にどんな制度が使えますか」と聞くだけでも、案内してもらえることが多いです。

決定通知書一枚で来た女性は、一枚の紙を持って帰り、三か月で六つの窓口を回りました。月4万4,000円が、月約11万円分になり、翌年には正職員になりました。「児童扶養手当の申請窓口で、他にどんな制度が使えますか、と聞くだけでも」と本文の最後に書きました。その一言が、この家では、月6万6,000円の値段でした。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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