離婚・家族 2026-09-12
離婚後の手続き ― 氏と戸籍、子の氏、健康保険、年金、児童扶養手当、住所の順番
離婚届が受理されたあとにも、手続きが十件近くあります。婚姻中の氏を使い続けるなら3か月以内の届出、子を自分の戸籍に入れるなら家庭裁判所の許可と入籍届、健康保険の切り替えは14日以内、国民年金の種別変更、児童扶養手当と児童手当、住所と世帯、マイナンバーカード、銀行や免許の氏名変更。期限のあるものから順に、必要書類と一緒に整理します。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → [離婚が成立したら] → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
離婚届を出した翌日、女性は市役所の窓口で、「次は何をすればいいですか」と聞きました。窓口の職員は、「氏の届はお済みですか」「お子さんの戸籍は」「国保の加入は」「児童扶養手当は」と、四つ続けて聞き返しました。女性は、一つも済ませていませんでした。離婚届が終わりではなく、離婚届が一覧の一行目です。この記事は、その女性が、翌日から三週間でやった手続きの順番です。
離婚届を出して、終わりではありません。相続手続きの全体像の記事で「亡くなったあとの手続きの一覧」を書きましたが、離婚のあとにも同じくらいの一覧があります。期限のあるものから順に、必要書類と一緒に書きます。
最初に、離婚届を出すときに「離婚届受理証明書」を一緒に取っておきます。戸籍に反映されるまで一、二週間かかり、その間、離婚したことを証明する書類はこれだけです。健康保険や年金の手続きで、戸籍謄本の代わりに使えます。
| 手続き | 期限 | どこで | 持ち物 |
|---|---|---|---|
| 離婚届受理証明書の取得 | 離婚届と同時 | 市区町村 | 本人確認書類 |
| 健康保険の切替(扶養から外れた側と子) | 14日以内 | 市区町村(国保)または勤務先 | 資格喪失証明書 |
| 国民年金の種別変更(第3号→第1号) | 14日以内 | 市区町村 | 年金手帳・基礎年金番号 |
| 転出・転入届、世帯主変更 | 14日以内 | 市区町村 | 本人確認書類、マイナンバーカード |
| 婚姻中の氏を続ける届 | 3か月以内 | 市区町村 | — |
| 児童扶養手当の申請 | 早いほど良い(翌月分から) | 市区町村 | 戸籍謄本、住民票、所得証明、口座 |
| 児童手当の受給者変更 | 早いほど良い | 市区町村 | 口座、本人確認書類 |
| 子の氏の変更許可→入籍届 | 期限なし(早めに) | 家庭裁判所→市区町村 | 戸籍謄本、印紙800円 |
| 年金分割の請求 | 離婚の翌日から2年 | 年金事務所 | 情報通知書、合意書または公正証書 |
| 不動産・自動車の名義変更 | 協議書の期限 | 法務局・運輸支局 | 協議書、登記事項証明書など |
| 免許・口座・カード・保険・勤務先の氏名変更 | 順次 | 各機関 | 新しい戸籍謄本または住民票 |
一つ目、氏(名字)です。婚姻で氏を変えた側は、離婚で自動的に婚姻前の氏に戻ります。婚姻中の氏を使い続けたい(子と同じ氏でいたい、仕事で使っている)なら、離婚の日から3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を市区町村に出します。3か月を過ぎると、家庭裁判所の許可が要ります。届は離婚届と同時にも出せます。
二つ目、子の氏と戸籍です。子は、離婚しても親の戸籍から自動的には動きません。父の戸籍の筆頭者が父で、母が婚姻前の氏に戻って新しい戸籍を作った場合、子は父の戸籍に残ったままです。母が親権者で子を自分の戸籍に入れたいなら、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て(子が15歳未満なら親権者が申し立て、印紙800円、通常は書面審査で数日〜数週間)、許可が出たら市区町村に「入籍届」を出します。母が婚姻中の氏を続けている場合でも、戸籍が別なので、この手続きは要ります。
三つ目、健康保険です。相手の扶養に入っていた側は、離婚で扶養から外れるので、14日以内に国民健康保険に加入するか、自分の勤務先の健康保険に入ります。相手の勤務先から「資格喪失証明書」をもらって、市区町村の窓口へ。子も、どちらの保険に入るかを決めて手続きします。
四つ目、年金です。相手の扶養(第3号被保険者)だった側は、国民年金の第1号被保険者への種別変更を、14日以内に市区町村で行います(勤務先の厚生年金に入るなら不要)。それとは別に、年金分割の記事で書いた標準報酬改定請求を、離婚の翌日から2年以内に年金事務所へ。
五つ目、子の手当です。児童手当は、受給者が変わる(父から母へ、など)場合に、受給者変更の手続きを市区町村で行います。児童扶養手当は、ひとり親家庭に支給される手当で、所得制限があり、申請した翌月分から支給されるので、離婚後すぐに申請します。必要書類は戸籍謄本、住民票、所得の証明、預金口座など。養育費の記事で書いたとおり、受け取る養育費の8割が所得に算入されます。あわせて、ひとり親家庭の医療費助成、保育料の減免、就学援助など、市区町村ごとの制度を窓口で聞いてください。
六つ目、住所と世帯です。引っ越すなら転出・転入届(14日以内)、同じ家に残るなら世帯主の変更。住民票が動くと、マイナンバーカードの券面の変更(氏や住所)も市区町村で行います。
七つ目、名義の変更です。氏が変わった人は、運転免許証、パスポート、銀行口座、クレジットカード、携帯電話、生命保険(契約者・受取人の見直しも)、勤務先への届出。財産分与で不動産を受け取った人は、財産分与を原因とする所有権移転登記を法務局で(登録免許税は評価額の2%)、自動車は運輸支局で名義変更。財産分与の記事で書いた協議書の期限どおりに進めます。
三週間の順番を書きます。一日目、離婚届受理証明書を取得。同じ日に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出(子と同じ氏を続けたいため)。二日目、夫の勤務先から資格喪失証明書を受け取り、市役所で国民健康保険に加入、子二人も。同じ窓口で国民年金の第3号から第1号への種別変更。三日目、児童扶養手当の申請。必要書類は戸籍謄本(まだ反映されていないので受理証明書で代用)、住民票、所得証明、通帳。所得制限の範囲内で、月約4万5,000円(子二人)の見込み、申請の翌月分から支給。同じ日に、ひとり親家庭の医療費助成と、保育料の減免も申請。
二週目、戸籍に離婚が反映されたので、家庭裁判所に「子の氏の変更許可」を申し立て。子は8歳と5歳で、母が親権者として申立て、印紙800円×2、書面審査で八日後に許可。許可書を持って市役所に入籍届を出し、子二人が母の戸籍に入りました。ここまでで、氏と戸籍と保険と年金と手当が終わり。三週目、名義の変更。氏は変えなかったので運転免許証の氏はそのまま、住所は変わったので免許証の住所変更、銀行口座とクレジットカードと携帯電話の住所変更、マイナンバーカードの券面の住所変更。そして、年金事務所で年金分割の標準報酬改定請求。三週間で、一覧の全部が終わりました。
一つ、後回しにして困ったことも書きます。生命保険です。女性が契約者の保険の受取人が、元夫のままでした。三か月後に気づいて変更しましたが、その三か月の間に女性に何かあれば、保険金は元夫に。「離婚したら、遺言と生命保険の受取人を見直す」と本文の最後に書いた一行は、一覧の最後にあるために、後回しにされやすい一行です。この家では、三か月の空白がありました。
最後に、遺言の見直しを一つ。離婚した元配偶者は相続人ではなくなりますが、婚姻中に「妻に全財産を」と書いた遺言は、自動では消えません。離婚・再婚のある家の相続の記事で書いたとおり、離婚したら、遺言と生命保険の受取人を見直す。それが、離婚後の手続きの一覧の、最後の一行です。
「次は何をすればいいですか」の答えは、この記事の表の一覧で、女性は三週間で、最後の一行を除いて終わらせました。最後の一行は、三か月後でした。離婚届は、一覧の一行目で、受取人の変更が最後の行。一行目から最後の行までを、三週間で歩く。市役所の窓口で四つ聞き返された翌日から、女性はそれを始めました。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。