離婚・家族 2026-09-12

離婚届の書き方と証人 ― 受理されない典型と、出す前の「不受理申出」

離婚届は市区町村の窓口でもらえ、夫婦の署名と証人二人の署名で出せます。ただ、親権者の記載漏れ、証人の要件、本籍の書き間違い、訂正の仕方で受理されないことがあります。記入欄ごとの注意、証人になれる人、届出先と持ち物(2024年3月から戸籍謄本の添付は原則不要)、夜間・休日の提出、そして相手に勝手に出されないための「不受理申出」を整理します。

目次を見る →

この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → [書面にする・届を出す] → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)

市役所の窓口で二回、離婚届を差し戻された男性が来ました。一回目は親権の欄が空欄。二回目は本籍の番地が戸籍と一字違い。「三回目で受理されたいんです」。届を見ると、証人の一人の署名が、明らかに本人の字ではありませんでした。妻の母の名前を、妻が書いたそうです。「これも駄目ですか」。駄目です。三回目も、このままなら差し戻しでした。この記事は、一枚の紙が受理されるまでの話です。

協議離婚の記事で、届を出す前に決めることを書きました。この記事は、届そのものの話です。離婚届は一枚の紙ですが、書き方を間違えると受理されず、受理されないと離婚は成立しません。窓口で差し戻される典型と、その避け方を書きます。

用紙は、全国どの市区町村の窓口でも同じ様式でもらえ、多くの自治体はWebからも印刷できます。記入するのは、夫婦それぞれの氏名・生年月日・住所・本籍、離婚の種別(協議離婚)、婚姻前の氏に戻る人がどの戸籍に入るか(親の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るか)、未成年の子の親権者、同居の期間、別居前の住所、世帯の主な仕事、そして届出人の署名です。2021年9月から押印は不要になりました。

受理されない典型を挙げます。一つ、未成年の子がいるのに親権者の記載がない。最も多い差し戻しです。2026年4月の改正で、共同親権を選ぶ場合は「父母双方」、単独親権なら父か母を記載します。二つ、証人の欄に不備がある。三つ、本籍地の番地や筆頭者が戸籍と違う。本籍は住所と違うことが多く、記憶で書くと間違えます。戸籍謄本で確かめてください。四つ、訂正が二重線と訂正印(または署名)でされていない。修正液は使えません。五つ、婚姻前の氏に戻る人の「戻る戸籍」の記載漏れ。

証人について書きます。協議離婚の届には、成人(18歳以上)の証人二人の署名が要ります。夫婦の親、兄弟、友人、誰でも構いません。証人は「二人が離婚に合意していることを知っている」ことを証明する立場で、離婚の内容に責任を負うわけではなく、養育費の保証人になるわけでもありません。頼める人がいない場合、行政書士など専門家が証人を引き受けることもあります(有償、数千円から1万円程度が目安)。証人の署名は本人が書く必要があり、代筆は無効です。

受理されない典型と対処
不備対処
未成年の子の親権者が未記載共同親権なら「父母」、単独なら父か母を記載(改正後)
証人が18歳未満、または代筆成人二人が自署。頼める人がいなければ専門家に依頼
本籍・筆頭者が戸籍と違う戸籍謄本を見て書く。記憶で書かない
修正液で訂正二重線で消して訂正印か署名
婚姻前の氏に戻る人の戻る戸籍が未記載親の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るかを記載

届出先は、夫婦の本籍地か、届出人の所在地(住所地)の市区町村です。本籍地以外に出す場合、以前は戸籍謄本(全部事項証明書)を添える必要がありましたが、2024年3月1日の戸籍法改正で、提出先の市区町村の職員が本籍地の戸籍を確認できるようになり、戸籍届出時の戸籍証明書等の添付は原則不要になりました。窓口では本人確認書類の提示を求められます。届出は夫婦のどちらか一人でもでき、郵送もできます。夜間や休日は、時間外の受付窓口(守衛室など)で預かり、翌開庁日に審査して受理されれば、預かった日が離婚日になります。「〇月〇日に離婚したことにしたい」という希望があれば、その日に出す(または預ける)ことで叶います。

出す前に知っておくべき制度が、「不受理申出」です。離婚届は、片方が署名し、証人を揃えれば、もう片方の知らないうちに出せてしまいます。相手が勝手に出すおそれがある場合、本籍地の市区町村に「不受理申出」をしておくと、本人が窓口に来て取り下げない限り、届は受理されません。反対に、自分が署名して渡した離婚届を、相手が出す前に翻意した場合も、不受理申出で止められます。署名した届が手元を離れたら、出されるまでは「まだ離婚していない」状態が続く、ということです。

届出先と持ち物
項目内容
届出先夫婦の本籍地、または届出人の所在地の市区町村
本籍地以外に出す場合2024年3月1日から戸籍謄本の添付は原則不要(窓口で本籍地の戸籍を確認できる)
本人確認運転免許証、マイナンバーカードなど
時間外守衛室などで預かり、翌開庁日に審査。預けた日が離婚日
一緒に請求離婚届受理証明書(あとの手続きで使う)

届が受理されたあとのことも一つ。戸籍に反映されるまで数日から一、二週間かかり、その後に離婚後の戸籍謄本が取れます。離婚後の手続き(氏の変更、健康保険、年金、児童扶養手当)の多くは、この新しい戸籍謄本や、離婚届受理証明書が要ります。児童扶養手当のように、マイナンバーを示すことで戸籍証明書の添付が不要になった手続きもあるので、窓口で先に確かめてください。受理証明書は、届を出した窓口でその場で発行してもらえるので、離婚届を出すときに一緒に請求しておくと、手続きが早く進みます。離婚後の手続きの記事に、その順番を書いています。

現場で、一つずつ直しました。親権の欄。子は6歳で、二人は改正後の共同親権を選んでいたので、「父母双方」に記入。二回目の差し戻しのとき、窓口で「共同にするなら両方に丸を」と言われたのに、どちらか一方だと思い込んで空欄にしていたそうです。本籍の番地。戸籍謄本を取り寄せて、「一丁目1番地」ではなく「一丁目1番」だと確認。一字の違いで戻されます。証人。妻の母には、その週末に本人に署名してもらいました。代筆の署名は無効で、もし受理されていても、あとで届の有効性が争われる材料になります。証人には「二人の離婚の意思を知っている」ことしか求められず、養育費の保証人になるわけでもないと説明すると、妻の母は安心して署名しました。三回目は、受理されました。

反対に、届を止めた例も書きます。夫に署名した離婚届を渡した翌朝、女性が「やっぱり、財産のことを決めてからにしたい」と相談に来ました。夫はその日の午後に届を出すつもりだと言っている。私は本籍地の市役所に不受理申出をするよう伝え、彼女は午前中に窓口へ行きました。夫は午後に届を出しに行き、受理されませんでした。夫は怒りましたが、この不受理申出のあと、二人は財産分与と養育費を決め、公正証書を作り、三か月後に、彼女自身が窓口で申出を取り下げてから届を出しました。届の紙は、最初と同じ紙でした。

受理証明書のことも、現場の一言として。三回目で受理された男性に、その場で「離婚届受理証明書」を二通取ってもらいました。翌週、勤務先の扶養の異動と、児童扶養手当の申請に、この証明書が要りました。戸籍への反映を待つと一〜二週間かかるので、届を出す日に証明書を取っておくと、離婚後の手続きがその週から始められます。

離婚届は、書くのは十分で終わります。しかし、その前に決めるべきこと(親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割)を決めずに出すと、届のあとが長くなります。用紙をもらったら、まず協議離婚の記事に戻って、五つを確かめてください。

離婚届は、書くのは十分で終わる、と本文に書きました。三回窓口に行った男性は、三週間かかりました。書き間違いのせいではなく、確かめるべきこと(戸籍の番地、親権の選び方、証人の署名)を、届を書く前に確かめなかったからです。この記事の表は、その「先に確かめること」の一覧です。用紙をもらったら、記入の前に、表の五行を見てください。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-01

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-01 確認)。

あわせてどうぞ

解説記事一覧