相続・手続き 2026-10-16

相続した実家を売るときの「空き家の3,000万円控除」 ― 1981年5月以前の家、一人暮らし、3年目の年末まで。相続人3人なら1人2,000万円

親が一人で住んでいた古い家を相続して売るとき、利益から最高3,000万円を差し引ける特例があります(相続人が3人以上なら1人2,000万円)。建てた年、亡くなる前に誰が住んでいたか、売るまでの使い方、買主が取り壊す期限、売る期限の五つで使えるかが決まります。兄弟3人で2,700万円で売った実家の例で、特例なしなら3人で約502万円の税金が0円になる計算と、市区町村の確認書をもらう順番を示します。

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この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → 相続人と財産を確定する → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → [相続した財産をどうするか] → 状況別(当てはまる方だけ)

「母が一人で住んでいた家を、兄弟3人で売ることにしました。税金がかなりかかると聞いて、迷っています」。50代の男性からの相談です。母は2024年3月に亡くなり、家と土地は兄弟3人が3分の1ずつ相続しました。家は1978年に建てた木造で、誰も住む予定はありません。近所の不動産会社からは、古い家が建ったままで2,700万円なら買い手がいる、と言われていました。

相続した家を売って利益が出ると、譲渡所得の税金がかかります。利益は、売った値段から、取得費(親が買ったときの値段など)と譲渡費用(仲介手数料や取壊し費用など)を引いた額です。親が何十年も前に買った家は、買ったときの値段が分からないことが多く、その場合は売った値段の5%を取得費にします(概算取得費)。古い実家の売却で利益が大きく出やすいのは、このためです。

そこで使えるのが「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。相続した空き家やその敷地を売ったとき、利益から最高3,000万円を差し引けます。2024年1月1日以後の売却で、家と土地を相続した人が3人以上いるときは、1人2,000万円になります。対象は2027年12月31日までの売却です(2026年10月時点)。

条件は、家・人・使い方・売り方・期限と値段に分けると整理しやすくなります。家は、1981年5月31日以前に建てられた建物で、マンションのような区分所有の建物ではないこと。人は、亡くなる直前に、亡くなった人が一人で住んでいた(ほかに住んでいた人がいない)こと。老人ホームに入っていた場合も、要介護認定などの条件を満たせば対象になります。使い方は、相続してから売るまで、貸したり、事業に使ったり、誰かが住んだりしていないこと。売り方は、家を耐震改修して売るか、取り壊して土地を売るか、売った翌年の2月15日までに買主が耐震改修か取壊しをすること。期限は相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、値段は売った代金が1億円以下です。

空き家の特例が使えるかは、五つの関門で決まる
空き家の特例が使えるかは、五つの関門で決まる一、家:1981年5月31日以前の建築で、区分所有の建物ではない。二、人:亡くなる直前に一人で住んでいた(老人ホームは条件付きで可)。三、使い方:相続から売るまで貸さない・住まない・事業に使わない。四、売り方:耐震改修して売る、取り壊して売る、または売った翌年2月15日までに買主が改修か取壊し。五、期限と値段:相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日まで、代金1億円以下。全部通れば最高3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円)を差し引ける。 相続した実家 ① 家:1981年5月31日以前の建築・区分所有でない① 家:1981年5月31日以前の建築・区分所有でない ② 人:亡くなる直前に一人で住んでいた② 人:亡くなる直前に一人で住んでいた ③ 使い方:相続後に貸さない・住まない・事業に使わない③ 使い方:相続後に貸さない・住まない・事業に使わない ④ 売り方:耐震改修か取壊し(買主なら翌年2月15日まで)④ 売り方:耐震改修か取壊し(買主なら翌年2月15日まで) ⑤ 期限:相続から3年たつ年の年末まで・代金1億円以下⑤ 期限:相続から3年たつ年の年末まで・代金1億円以下 ¥ 全部通れば 最高3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円)を差し引ける全部通れば 最高3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円)を差し引ける

一、家:1981年5月31日以前の建築で、区分所有の建物ではない。二、人:亡くなる直前に一人で住んでいた(老人ホームは条件付きで可)。三、使い方:相続から売るまで貸さない・住まない・事業に使わない。四、売り方:耐震改修して売る、取り壊して売る、または売った翌年2月15日までに買主が改修か取壊し。五、期限と値段:相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日まで、代金1億円以下。全部通れば最高3,000万円(相続人3人以上は1人2,000万円)を差し引ける。

特例は2027年12月31日までの売却が対象(2026年10月時点)。老人ホームに入っていた場合は条件付きで対象になります。

期限の数え方を、この家で確かめます。母が亡くなったのは2024年3月。3年を経過する日は2027年3月で、その年の12月31日、つまり2027年12月31日までに売る必要があります。特例そのものの期限とも重なっていました。相談を受けたのは2026年の秋なので、残りは1年と少しでした。

つまずきやすいところを三つ書きます。一つ目は「一人暮らし」の条件です。亡くなる前に子どもの誰かが一緒に住んでいたら、対象になりません。介護のために泊まり込んでいた、住民票だけ実家に残していた、という場合は、実際の暮らしぶりを市区町村が確認します。二つ目は、相続してから売るまでの使い方です。売るまでの間に親戚に安く貸していた、というだけで外れます。三つ目は、買主に取り壊してもらう場合です。売った翌年の2月15日までに取壊しが終わらないと、この特例は使えません。売買契約書に、取壊しの期限と、終わったことを示す書類(建物の滅失登記をしたあとの登記事項証明書など)を渡してもらう約束を書いておきます。

手続きの順番は、こうです。家のある市区町村に「被相続人居住用家屋等確認書」の交付を申請します。亡くなった人の住民票の除票、相続人の住民票、空き家だったことが分かる書類(電気や水道の使用量が分かるもの、不動産会社の広告など)を出します。必要な書類は市区町村ごとに違うので、先に窓口で確かめてください。買主が取り壊す場合は、取壊しのあとで申請します。そのうえで確認書を付けて、売った翌年に確定申告をします。相続人が3人なら、3人それぞれが自分の持分について申告します。

老人ホームに入っていた場合は、条件がもう一段あります。要介護認定や要支援認定を受けて老人ホームなどに入り、亡くなる直前までそこにいたこと。入ってからも、家は亡くなった人の荷物を置くなどに使われ、貸したり、事業に使ったり、ほかの人が住んだりしていなかったこと。施設に入ったあとに子どもが実家に移り住んでいた、というときは対象から外れます。

相続人の人数で控除額が変わる点も、遺産分割の前に知っておくと役に立ちます。2,000万円になるのは、家と土地を相続した人が3人以上のときです。兄弟が3人いても、遺産分割で2人が実家を取得すれば、1人3,000万円のままです。この家は1人あたりの利益が823万1,000円で、2,000万円の枠に収まったので違いは出ませんでしたが、都市部で売値の高い実家なら、誰が取得するかで税金が変わることがあります。売値1億円以下の判定は、ほかの相続人が売った分も合わせて見ます。

もう一つ、相続税を払った人が使える「取得費加算の特例」(払った相続税の一部を取得費に足せる)とは、同じ家と土地について、どちらか一方しか選べません。相続税がかからなかった家では、取得費加算は使えないので、こちらの特例が中心になります。どちらが得かは、払った相続税の額によって変わります。

お金を計算します。この家は2,700万円で、買主が取り壊す条件で売りました。取得費は分からないので、5%の135万円。仲介手数料は(2,700万円×3%+6万円)×1.1=95万7,000円(税込)です。利益は2,700万円−135万円−95万7,000円=2,469万3,000円で、1人あたり823万1,000円。母が家を買ったのは何十年も前で、相続した家は親が持っていた期間を引き継ぐので、5年を超える長期譲渡の税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税、住民税5%)がかかります。特例を使わなければ、1人あたり約167万円、3人で約502万円。特例を使うと、1人2,000万円まで差し引けるので、税金は0円になります。

この家の利益と税金(売値2,700万円、相続人3人で3分の1ずつ)
3人の合計1人あたり
売った値段2,700万円900万円
取得費(売値の5%)135万円45万円
仲介手数料(税込)95万7,000円31万9,000円
利益(譲渡所得)2,469万3,000円823万1,000円
特例なしの税金(20.315%)約502万円約167万円
特例ありの税金(1人2,000万円まで控除)0円0円

この家では、母が亡くなる前の1年間、次男が週に2回泊まりに通って介護をしていました。住民票も生活の本拠も次男自身の家のままだったので、市区町村の確認では「一緒に住んでいた人」とは扱われませんでした(確認書を出すかどうかは市区町村の判断で、泊まる回数や暮らしぶりによっては結論が変わりえます)。買主の取壊しは売った年の12月に終わり、確認書はその翌月に交付されました。

私は宅地建物取引士として、売買の段取りと、確認書の申請書類をそろえるところまでをお手伝いしました。申告の中身と、特例が使えるかの最終的な判断は、税理士か税務署に確かめてください。相続した実家を売るか迷っているなら、まず登記事項証明書で建てた年を見て、亡くなった日から期限を数えてください。1981年5月以前の家で、一人暮らしだったなら、売る時期によって税金が数百万円変わることがあります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-16 確認)。

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