土地・不動産 2026-10-02

建物滅失登記 ― 家を壊したら1か月以内。壊しただけでは、登記の上の家は消えない

建物を取り壊したら、所有者は1か月以内に「建物滅失登記」を申請します。解体業者の証明書があれば本人でも申請でき、登録免許税はかかりません。亡くなった親の名義の家を壊したときに相続人が申請する手順、附属建物の見落とし、未登記の家や他人名義の家が登記に残っているときの道を、実際の費用と合わせて書きます。

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「家はもう更地なのに、買主の不動産会社から『登記に家が残っています』と言われました」。8月の終わりに、50代の男性が登記事項証明書を持って来ました。亡くなったお母さんの名義の木造2階建てを6月に解体し、土地を売る契約の準備をしていたところでした。解体業者からは「建物滅失証明書」という紙を受け取っていて、それで手続きは終わったと思っていたそうです。証明書は、封筒に入ったまま書類箱の中にありました。

建物を取り壊しても、法務局の登記記録は自動では消えません。登記記録の上では、解体したあとも「木造瓦葺2階建の居宅」が土地の上に建ったままです。これを閉じる手続きが「建物滅失登記」で、表示に関する登記の一つです。権利の登記(所有権の移転や抵当権)とは別の、建物の物理的な状態を登記に合わせる手続きです。

不動産登記法57条は、建物が滅失したときは、所有者が滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の規定もあります(164条)。登記名義人が亡くなっている場合は、相続人がこの申請をすることができます(30条)。相続登記を先に済ませる必要はなく、お母さんの名義のままで、相続人の一人が申請人になれます。期限の1か月を過ぎても、申請そのものはできます。気づいた時点で、まず申請を済ませることが先です。

手続きの順番は、次のとおりです。解体工事が終わったら、業者から建物滅失証明書(取毀証明書とも言います)を受け取ります。証明書には、業者の印鑑証明書と、業者が会社なら代表者の資格を証する書面が付きます。会社の場合は、申請書に会社法人等番号を書けば、この二つを省略できると法務局の記載例にあります。次に、法務局で建物の登記事項証明書を取り、所在・家屋番号・種類・構造・床面積を登記のとおりに申請書へ写します。不動産番号を書けば、これらの記載は省略できます。最後に、建物の所在地を管轄する法務局へ、窓口か郵送かオンラインで出します。

壊しただけでは、登記の上の家は残る ― 取り壊した日から1か月以内に申請する
壊しただけでは、登記の上の家は残る ― 取り壊した日から1か月以内に申請する左に取り壊した家(点線)。解体業者から建物滅失証明書を受け取り、所有者(亡くなっていれば相続人)が法務局へ1か月以内に建物滅失登記を申請する。申請が済むと登記記録が閉じられ、法務局から市町村へ通知が行く。登録免許税はかからない。 取り壊した家 現地は更地 解体業者解体業者 建物滅失証明書 所有者・相続人 1か月以内に申請1か月以内に申請 法務局法務局 登記記録を閉じる登記記録を閉じる 登録免許税 0円登録免許税 0円 通知通知 市町村市町村 課税台帳課税台帳 附属建物(物置・車庫)も、登記にあれば一緒に滅失の登記をする附属建物(物置・車庫)も、登記にあれば一緒に滅失の登記をする

左に取り壊した家(点線)。解体業者から建物滅失証明書を受け取り、所有者(亡くなっていれば相続人)が法務局へ1か月以内に建物滅失登記を申請する。申請が済むと登記記録が閉じられ、法務局から市町村へ通知が行く。登録免許税はかからない。

未登記の家を壊したときは法務局への申請は要らず、市町村に家屋の滅失を届け出ます。届を別に求める市町村もあります。

相続人が申請するときに足す書類は、登記名義人が亡くなったことと、申請する人が相続人であることが分かる戸籍です。さらに、登記に載っている住所と亡くなった人の最後の住所が違う場合は、そのつながりが分かる戸籍の附票か住民票の除票を付けます。この住所のつながりが、本人申請で一番つまずく所です。昔の住所のまま登記されている家は多く、附票の保存期間が過ぎて古い住所が出てこないこともあります。その場合は法務局の窓口に相談して、ほかに付けられる書類を確かめます。

お金の話です。建物滅失登記には登録免許税がかかりません。法務局の申請書の記載例にも、登録免許税の欄はありません。かかるのは、戸籍や登記事項証明書の取得費と郵送代です。土地家屋調査士に頼めば、書類集めから申請まで任せられますが、その報酬がかかります。解体業者が調査士を紹介してくれることも多く、解体の見積もりに含まれていることもあります。

登記に載っていない家(未登記建物)を壊したときは、法務局への申請は要りません。ただし、固定資産税は登記と別に市町村の家屋課税台帳で課税されているので、市町村に「家屋滅失届」などを出して、課税台帳から外してもらいます。固定資産税は1月1日に建っている家に課税されるので、年末に解体した家が1月1日の現況確認から漏れないように、届は早めに出します。登記のある家でも、滅失登記が済めば法務局から市町村に通知が行くのが通常ですが、届を別に求める市町村もあります。

建て替えのときは、手続きが二つ続きます。古い家を壊したら滅失の登記、新しい家が建ったら、所有権を取得した日から1か月以内に建物の表題登記(47条)です。新築の表題登記は、住宅ローンを組むなら銀行が求める登記なので、たいてい土地家屋調査士が入ります。そのとき古い家の滅失の登記が済んでいないと、同じ土地の上に新旧二つの家が記録されたままになり、新しい家の登記の前に片付けることになります。家の一部だけを壊した場合(離れや増築部分だけを取り壊したなど)は、建物全体がなくなったわけではないので、滅失の登記ではなく、床面積が減ったことの表題部の変更の登記をします(51条)。これも1か月以内です。

もう一つ、相談でときどきあるのが、自分の土地の上に、他人名義の古い建物の登記だけが残っている場合です。何十年も前に取り壊された家の登記で、名義人はとうに亡くなり、相続人も分からない。滅失登記の申請ができるのは建物の所有者側なので、土地の所有者は申請できません。この場合は、法務局に「建物が存在しない」ことを申し出て、登記官の職権で滅失の登記をしてもらう道があります(表示に関する登記は職権でもできる、という28条の仕組みです)。申出の書式や現地調査の運用は法務局ごとに違うので、管轄の法務局に事前に相談します。

この家では、申請の前に登記事項証明書をよく見ると、主である建物の下に「附属建物 符号1 物置 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建 6.61㎡」と書かれていました。男性は「物置なんて、とっくに無かった」と言います。解体業者の証明書は母屋のことしか書いておらず、物置の分がありません。附属建物も滅失の登記をしないと、記録の上では物置だけが残ります。男性に聞くと、物置は20年ほど前にお父さんが壊していて、壊した業者も分かりません。そこで、母屋は業者の証明書で、物置は申請人の男性が「この日ごろに取り壊した」と書く上申書を付けて、同じ申請書で一緒に出すことにしました。上申書で足りるかは法務局の判断なので、出す前に窓口で確かめ、物置の跡の現地写真も付けました。

書類の費用は、お母さんの死亡の記載のある除籍謄本750円、男性の戸籍謄本450円、お母さんの戸籍の附票300円、男性の住民票300円、建物の登記事項証明書600円で、合計2,400円でした(2026年8月時点、市役所の手数料は市町村ごとに違います)。土地家屋調査士の見積もりは4万4,000円(税込)だったので、本人申請との差は4万4,000円です。男性は自分で出すことを選び、申請から8日後に登記完了の通知が来ました。土地の売買の決済は、予定どおり9月に済みました。

この家の費用(本人申請と、土地家屋調査士に頼む場合)
項目本人申請調査士に頼む
母の除籍謄本(死亡の記載)750円750円
申請人の戸籍謄本450円450円
母の戸籍の附票(住所のつながり)300円300円
申請人の住民票300円300円
建物の登記事項証明書600円600円
登録免許税0円0円
調査士の報酬(税込・見積もり)―4万4,000円
合計2,400円4万6,400円

解体したら、業者の証明書を受け取った日に、登記事項証明書を取ってください。附属建物が書かれていないか、住所が今と同じか。この二つを見れば、自分で出せるかどうかの当たりがつきます。封筒の中の一枚は、出して初めて家を消します。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。

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