土地・不動産 2026-09-29
亡くなった人の固定資産税は誰が払う ― 1月1日の所有者、相続人代表者、現所有者の申告
親が亡くなったあとも、固定資産税の納税通知書は届きます。その年の税は1月1日の所有者(亡くなった親)にかかり、相続人が引き継いで払います。翌年からは、名義が親のままなら「現に所有している者」、分け方が決まっていなければ相続人全員に連帯してかかります。相続人代表者の届、現所有者の申告、相続登記との関係を、年税額12万円の家を例に整理します。
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「父の名前で、固定資産税の通知が来ました。父は2月に亡くなっています。これ、払わなくていいんですよね」。5月の連休明けに、長女の方が封筒を持って来ました。宛名は亡くなったお父さん、年税額は12万円、4回払いの納付書が付いていました。答えは「払います。ただ、払うのはお父さんではなく、相続人の皆さんです」でした。
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)に、土地や家屋の所有者として登記されている人にかかります。4月から6月ごろに届く納税通知書は、その年の1月1日の所有者に向けたものです。このお父さんは1月1日には生きていたので、2026年度の固定資産税はお父さんの税です。亡くなったあとは、その支払い義務を相続人が引き継ぎます。宛名が亡くなった人のままでも、納付書で払えば済みます。
翌年度は話が変わります。地方税法343条2項は、登記されている所有者が1月1日より前に亡くなっているときは、その日に「現に所有している者」に課税すると定めています。遺産の分け方が決まっていなければ、相続人全員の共有です。そして共有の不動産の税は、共有者が連帯して納める義務を負います(同法10条の2)。市町村は、相続人のうち誰にでも全額を請求できる、ということです。
左の枠は2026年度。1月1日にはまだ父が生きていたので、通知書は父あて。父の税を相続人が引き継いで払う。右の枠は2027年度。1月1日に登記が父のまま、分け方も未定なので、長女・長男・次女の三人の共有として連帯して納める。通知書は代表者あてに届く。
相続登記で名義が変われば、その次の1月1日から新しい名義人あてに通知が来ます。
そこで使うのが「相続人代表者指定届」です。相続人が二人以上いるとき、通知書や納付書を受け取る代表者を一人決めて、市町村に届けます(同法9条の2)。届がなければ、市町村が相続人の一人を指定することもあります。代表者は書類の受け取り役で、代表者だけが払う義務を負うわけではありません。ここを誤解して、代表者になるのを嫌がって話がこじれる家があります。
もう一つが「現所有者の申告」です。2020年から、市町村は条例で、亡くなった人名義の土地や家屋を現に所有している人に、住所や氏名を申告させられるようになりました(同法384条の3)。期限は市町村の条例で決まり、法律上、知った日の翌日から3か月より短くはできません。相続人代表者指定届と一枚の様式にしている市町村もあります。
見落とされやすいのが、口座振替です。亡くなった人の口座から固定資産税を引き落としにしていた場合、銀行に死亡を伝えて口座が凍結されると、引き落としができなくなります。市町村からは納付書が別に送られてきますが、宛名は亡くなった人のままなので、郵便物の整理の中で埋もれがちです。納期限を過ぎると延滞金がかかります。銀行に連絡したら、同じ週のうちに市町村の税務課にも連絡し、相続人代表者の届と一緒に、納付書の送り先を決めてしまうのが安全です。都市計画税がかかる地域では、固定資産税と同じ通知書で一緒に請求され、誰が払うかの決まりも同じです。
では、いつから通知書の宛名が相続人の名前に変わるか。相続登記をして名義が変われば、その次の1月1日を基準に、新しい名義人に通知書が届きます。遺産分割が決まって長女一人が相続すると決まり、年内に登記を済ませれば、翌年度からは長女あてです。相続登記の義務化で、相続を知った日から3年以内の申請が求められていますが、税の面でも、名義を早く整えると誰に通知が来るかがはっきりします。
一つ、見落としやすい点があります。同じ市町村の中で、ある人の土地の課税標準額の合計が30万円未満、家屋は20万円未満なら、固定資産税はかかりません(免税点、同法351条。総務省の案内では、2027年度分からは家屋も30万円未満になります)。つまり、山林や細い土地だけを持っていた場合、通知書が一度も来ないことがあります。「通知が来ていないから土地はない」とは言えません。持っている不動産の一覧は、固定資産税評価証明書と同じ窓口で取れる名寄帳で確かめます。
もう一つ、1月1日で決まることがあります。空き家になった実家を年末に取り壊すと、翌年度から家屋の税はなくなりますが、土地の税が上がることがあります。住宅が建っている土地には住宅用地の特例があり、200平方メートルまでの部分は課税標準が価格の6分の1になっています。1月1日に住宅がなければこの特例が外れ、土地の税が数倍になることがあります。取り壊しの時期は、1月1日をまたぐかどうかで翌年の税額が変わるので、売却の予定と合わせて決めてください(空き家を相続したときの注意は、空き家の記事で詳しく書いています)。
相続放棄をした人はどうか。放棄すると初めから相続人でなかったことになるので、亡くなった人の税も引き継がず、翌年度の「現に所有している者」にも当たらないのが原則です。ただ、放棄の手続きの前に通知書が届き、慌てて亡くなった人の預金から払うと、相続財産を処分したと見られて放棄できなくなるおそれがあります。放棄を考えているなら、払う前に家庭裁判所の手続きと順番を確かめてください(相続放棄の記事で詳しく書いています)。
亡くなった年の固定資産税は、遺産の話し合いでも扱いを決めておきます。亡くなった人の税なので、本来は遺産から払うものです。相続人の一人が立て替えたなら、遺産分割のときにその人へ戻す、と協議書に一行書いておくと、あとで「誰が払ったか」で揉めません。相続税の申告が必要な家では、亡くなった時点で払い終えていない固定資産税を、債務として遺産から差し引けます。申告が要るかどうか、差し引ける範囲の判断は、税理士に確かめてください。
この家の数字を書きます。相続人は長女・長男・次女の三人。年税額は12万円(土地8万円・家屋4万円)で、4回払いの1回分は3万円です。2026年度分はお父さんの税で、預金から払うことにしました。お父さんの口座は凍結されていたので、長女が立て替え、遺産分割のときに精算します。2027年度分は、分け方が決まっていなければ三人の連帯です。三人で話して、長女を代表者にし、法定相続分の3分の1ずつ、4万円を長女に渡すと決めました。
| 年度 | 税の持ち主 | 払い方 | 三人の負担 |
|---|---|---|---|
| 2026年度 | 父(1月1日の所有者) | 長女が立て替え、遺産分割で精算 | 12万円を三人で分けると各4万円(合計12万円) |
| 2027年度(登記前のまま) | 三人の共有(連帯納付) | 代表者の長女がまとめて納付 | 各4万円を長女に渡す(合計12万円) |
| 2027年度(年内に長女へ登記) | 長女(1月1日の名義人) | 長女が納付 | 長女12万円、長男・次女0円 |
分け方は秋に決まりました。家は長女が相続し、長男と次女には預金から代わりのお金を払う形です。長女が年内に相続登記を済ませれば、2027年度の通知書は1月1日の名義人である長女あてになります。その場合、三人で分けるのは2026年度分の12万円だけで、2027年度からは長女一人の税です。
最初に「払わなくていいんですよね」と聞いた長女の方は、最後に「父の名前の通知書は、父の最後の宿題でした」と言いました。固定資産税は1月1日で決まる税です。亡くなった日ではなく、1月1日に誰の名義か、を見ると、誰が払うかが分かります。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。
- e-Gov法令検索 地方税法 ― 343条2項(登記名義人が死亡しているときは「現に所有している者」に課税)、384条の3(現所有者の申告)、9条の2(相続人代表者の指定)、10条の2(共有物は連帯納付)、351条(免税点)
- 総務省 固定資産税 ― 1月1日(賦課期日)の所有者に課税する仕組みと免税点(土地30万円・家屋20万円、2027年度分から家屋30万円)