相続・手続き 2026-09-07

固定資産税評価証明書はどこで取る、何に使う ― 相続登記の費用計算から名寄帳まで

相続登記の登録免許税を計算するときに必要な「固定資産税評価証明書」。発行してくれる窓口、取れる人と必要書類、納税通知書の課税明細で代わりになる場合、年度の切り替わりで取り直しになる罠、そして不動産の漏れを防ぐ「名寄帳」の使い方を整理します。

目次を見る →

この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → [相続人と財産を確定する] → 分け方を決める → 名義を変える・税金(10か月〜3年) → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)

相続登記の準備をしていた女性が、3月の終わりに評価証明書を三通取って来ました。実家の土地と建物、それに畑。「これで法務局に出せますね」。書類は揃っています。ただ、登記の申請は4月にずれ込む見込みでした。私が言ったのは「その証明書は、4月1日で去年のものになります」でした。彼女は「三通で1,200円もしたのに」と言いました。取り直しは避けられません。ただ、取り直すときに一緒に取るものがあります。

相続登記の準備で「評価証明書を取ってきてください」と言われて、何のことか分からずに止まってしまう人は多いです。固定資産税評価証明書は、市町村(東京23区は都税事務所)が管理している固定資産課税台帳の内容、つまり土地や建物の「固定資産税評価額」を証明する書類です。相続登記では、この評価額に税率を掛けて登録免許税を計算するので、法務局へ出す申請書に、評価額の分かる書類として添付するのが基本です(課税明細書で代えられる場合は、後で書きます)。

発行してくれるのは、不動産の所在地の市町村役場(税務課・資産税課など)です。東京23区は各都税事務所。不動産が複数の市町村にまたがっていれば、それぞれで取ります。取れるのは、所有者本人、相続人(亡くなった人との関係が分かる戸籍が必要)、委任状を持った代理人などです。相続人が取る場合、亡くなった人の死亡が分かる戸籍と、自分が相続人であることが分かる戸籍を持参します。手数料は自治体によって違いますが、一通あたり数百円です。郵送でも請求できます。

使い道は三つあります。一つ目は相続登記の登録免許税の計算(評価額の0.4パーセント)。二つ目は相続税の申告で、建物の評価は原則として固定資産税評価額をそのまま使い、土地の評価も路線価がない地域では評価額に倍率を掛けて出します。三つ目は、遺産分割協議の材料です。相続人の間で「どの不動産がどれくらいの価値か」を並べて話すときの共通の物差しになります。

何のために、どの書類を取るか(2026年9月時点)
目的取る書類取れる窓口備考
相続登記の登録免許税の計算固定資産税評価証明書(申請する年度のもの)市町村役場/都税事務所課税明細書で代用できる法務局もある
相続税の申告(建物・倍率地域の土地)固定資産税評価証明書同上土地は路線価地域なら路線価で評価
所有不動産の漏れ確認名寄帳同上(評価証明と同じ窓口)市町村ごとに取る。共有・非課税地も載る
遺産分割の話し合いの材料評価証明書+名寄帳同上実勢価格ではない点に注意

ここで一つ、実務で毎年起きる罠があります。固定資産税評価証明書は「年度」で切り替わります。年度は4月1日に変わるので、3月に取った証明書で4月以降に登記申請すると、法務局から新年度のものを求められます。相続登記を3月末に間に合わせるつもりで準備していて、4月にずれ込んだ場合は取り直しです。年度をまたぎそうなら、4月に入ってから取るほうが二度手間になりません。

証明書の代わりに、毎年4月から6月ごろに届く「固定資産税納税通知書」に付いている課税明細書を使える場合があります。課税明細書には物件ごとの評価額が載っているので、法務局の多くはこれを添付書類として受け付けています。ただし扱いは法務局によって差があり、記載が一部省略されている自治体もあるので、事前に申請先の法務局へ確認するのが確実です。

評価額は三年に一度、全国一斉に見直されます(評価替え)。直近では2024年度が基準年度で、次は2027年度です。基準年度の間は原則として据え置かれますが、地価が下落した場合は下方修正されることがあります。相続した時期によって評価額が変わるので、登録免許税の見積もりは「申請する年度の評価額」で行ってください。

最後に、相続の実務で私が必ず勧めているのが「名寄帳(なよせちょう)」です。名寄帳は、同じ市町村内でその人が所有している不動産を一覧にしたもので、評価証明書と同じ窓口で取れます。亡くなった人が持っていた土地は、本人も家族も全部は把握していないことがあります。共有持分の私道、山林、隣接する小さな分筆地。名寄帳を見て初めて存在が分かる不動産は珍しくなく、遺産分割協議書に載せ忘れると、あとから協議のやり直しになります。評価証明書を取るときは、必ず名寄帳も一緒に。この一枚が、相続登記の漏れを防ぐ最も安い保険です。

非課税の土地(公衆用道路として使われている私道など)は、評価証明書に評価額が載らないことがあります。その場合の登録免許税は、近傍の宅地の評価額をもとに計算するので、法務局に相談してください。

現場の続きです。4月に入ってから、女性は同じ窓口で新年度の評価証明書を三通取り直しました。そのとき、私が頼んだのは「名寄帳も一緒に」でした。名寄帳は、亡くなった父がその市で持っていた不動産の一覧です。出てきた一覧には、実家の土地と建物、畑のほかに、三筆の土地がありました。実家の前の私道の共有持分(12分の1)、畑に接する幅1メートルほどの細長い土地(水路の跡)、そして隣の市との境にある山林の一部。女性も、他の相続人も、この三筆の存在を知りませんでした。

この三筆を載せずに遺産分割協議書を作っていたら、実家と畑の登記は通り、三筆は父名義のまま残っていました。私道の持分は、実家を売るときに「前面道路の持分がない」と買主から指摘されて初めて気づき、そのときにまた協議書を作り、印鑑証明を集め直すことになります。相続人は四人で、一人は海外でした。名寄帳の一枚で、その二度手間が消えました。三筆の評価額は合わせて数万円で、うち二筆は100万円以下の土地の免税に当たり、登録免許税はかかりませんでした。

評価証明書の使い方も、この件で確かめました。登録免許税は、土地と建物の評価額の合計(この家は1,600万円)の0.4%で6万4,000円。畑は評価額が低く、非課税の私道は近傍宅地の評価額から計算。相続税は、基礎控除(3,000万円+600万円×4人=5,400万円)の範囲内で申告不要。協議では、評価証明書の額を「共通の物差し」にして、実家を長女、畑と山林を長男、私道の持分は実家に付随して長女、と決めました。

この件で、もう一つ間違いかけたことがあります。評価証明書の土地の欄には「価格(評価額)」と「課税標準額」の二つの数字が並んでいます。登録免許税の計算に使うのは「価格」のほうです。課税標準額は固定資産税を計算するための額で、住宅の敷地なら住宅用地の特例で価格の6分の1以下まで下がっています。実家の土地は、価格が1,120万円、課税標準額が約186万円でした。長男が最初に作った見積もりは、課税標準額の186万円に建物の480万円を足した666万円に0.4%を掛けて2万6,600円。正しくは、土地の価格1,120万円と建物の480万円を足した1,600万円で、6万4,000円です。差は3万7,400円。そのまま申請していたら、法務局から不足分を納めるよう補正を求められるところでした。

評価証明書のどの数字を使うか ― 「価格」で計算する
評価証明書のどの数字を使うか ― 「価格」で計算する評価証明書の土地の欄に、価格1,120万円と課税標準額約186万円の二つが並ぶ。登録免許税に使うのは価格のほうで、建物の480万円と足した1,600万円に0.4%を掛けて6万4,000円。課税標準額で計算すると2万6,600円になり、3万7,400円足りない。 評価証明書 土地の価格 1,120万円土地の価格 1,120万円 これを使うこれを使う 課税標準額 約186万円課税標準額 約186万円 固定資産税用(使わない)固定資産税用(使わない) + 建物の価格 480万円+ 建物の価格 480万円 1,600万円×0.4%1,600万円×0.4% ¥ 6万4,000円 課税標準額で計算すると2万6,600円課税標準額で計算すると2万6,600円 (3万7,400円不足→補正)(3万7,400円不足→補正)

評価証明書の土地の欄に、価格1,120万円と課税標準額約186万円の二つが並ぶ。登録免許税に使うのは価格のほうで、建物の480万円と足した1,600万円に0.4%を掛けて6万4,000円。課税標準額で計算すると2万6,600円になり、3万7,400円足りない。

課税価格は1,000円未満、税額は100円未満を切り捨て。持分で持つ土地は、価格に持分を掛けてから計算する。

計算の端数にも決まりがあります。評価額の合計(課税価格)は1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨てます(国税通則法118条・119条)。この家の1,600万円はちょうどなのでそのままですが、たとえば評価額の合計が1,234万5,678円なら、課税価格は1,234万5,000円、0.4%を掛けて4万9,380円、税額は4万9,300円です。

評価証明書に載っているのは、その物件全体の価格です。持分で持っている土地は、価格に持分を掛けてから税率を掛けます。この家の私道の持分(12分の1)も、近傍宅地の評価額をもとに出した私道全体の額に12分の1を掛けて計算しました。また、亡くなる直前に建てた家で、まだ評価額が付いていないときは、評価証明書に価格が載りません。その場合は法務局が定める新築建物の価格の基準で計算するので、申請先の法務局に確かめてください。

当サイトの「相続登記ナビ」は、不動産の評価額を入力すると登録免許税の目安を出し、手続きの段階の中で「戸籍・評価証明書を集める」段を示します。名寄帳は道具の一覧には入っていないので、評価証明書を取る窓口で一緒に頼んでください。

3月の終わりに「1,200円もしたのに」と言った女性は、4月に取り直した窓口で、名寄帳を見て黙りました。三筆の土地は、そこにしか書いてありませんでした。この記事の最後に「評価証明書を取るときは必ず名寄帳も一緒に」と書いたのは、この一枚が、相続登記の漏れを防ぐ一番安い保険だからです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。

あわせてどうぞ

解説記事一覧