土地・不動産 2026-09-09
固定資産税の住宅用地特例と都市計画税 ― 「家を壊すと税金が6倍」の本当のところ
住宅が建っている土地は、固定資産税が最大6分の1、都市計画税が最大3分の1に軽減されています。これが住宅用地の特例です。古い実家を壊すとこの特例が外れ、「税金が6倍になる」と言われますが、実際の増え方は物件によります。特例の仕組み、200㎡の線、管理不全空家の勧告で特例が外れる制度、都市計画税の意味、1月1日基準日の使い方を整理します。
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「壊すと6倍になるって、不動産屋さんに言われたんです」。実家の解体の見積もりを持って来た男性は、固定資産税の納税通知書も持っていました。土地の評価額1,800万円、180平米、建物の評価額100万円、築48年。今の年税額は、土地と建物と都市計画税を合わせて約6万3,000円。「6倍だと38万円ですよね」。なりません。計算すると、約23万円でした。この記事は、38万円と23万円の差の話です。
「実家を壊すと固定資産税が6倍になる」。空き家の相談で、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。半分正しくて、半分違います。仕組みを知っておくと、壊す時期と売る時期の判断が変わります。
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に、市町村が課す税金です。税率は標準で1.4%、課税標準は固定資産税評価額です。固定資産税評価証明書の記事で書いた評価額が、そのまま計算の元になります。ここに「住宅用地の特例」があります。住宅が建っている土地は、200㎡までの部分(小規模住宅用地)は課税標準が6分の1、200㎡を超える部分(一般住宅用地)は3分の1になります。300㎡の宅地なら、200㎡分が6分の1、100㎡分が3分の1です。
都市計画税は、市街化区域内の土地と建物に、固定資産税とあわせて課される市町村税で、税率の上限は0.3%(市町村によって0.2%などもあり、課さない市町村もあります)。市街化調整区域の記事で書いた区分でいう市街化区域が対象で、道路や公園などの都市計画事業の費用に充てられます。こちらにも住宅用地の特例があり、小規模住宅用地は3分の1、一般住宅用地は3分の2です。納税通知書では固定資産税と都市計画税が一枚にまとまっているので、両方の合計で見てください。
「6倍」の意味は、この特例が外れることです。家を壊して更地にすると、翌年の1月1日には住宅用地ではなくなり、課税標準が6分の1から本来の額に戻る。計算上は土地の固定資産税が最大6倍です。ただし、実際の税額の増え方は、多くの場合それより小さくなります。理由は二つ。一つ、更地(非住宅用地)には負担調整措置があり、課税標準は評価額の7割を上限にする扱いが一般的なので、6倍ではなく4倍前後になることが多い。二つ、家を壊すと建物の固定資産税がなくなるので、土地と建物の合計では、増え方はさらに小さい。古い建物の評価額が低ければ効果は小さいですが、ゼロではありません。「6倍」は土地だけを見た計算上の上限で、通知書の合計で見ると「3〜4倍程度」が実務でよく見る数字です。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡まで) | 評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
| 非住宅用地(更地、店舗、駐車場など) | 特例なし(負担調整で評価額の7割が上限の扱いが一般的) | 同左 |
| 特定空家・管理不全空家で勧告を受けた土地 | 特例が外れる | 特例が外れる |
特例が外れるもう一つの場面が、空き家の放置です。2015年の空家等対策特別措置法で、倒壊のおそれなどがある「特定空家」に市町村が勧告をすると、住宅用地の特例が外れる仕組みができました。2023年12月の改正で、その手前の「管理不全空家」(放置すれば特定空家になるおそれのある空き家)も、勧告を受けると特例が外れるようになりました。つまり、「家を建てたままにしておけば税金が安い」は、管理されている家に限る話になりました。空き家の記事で書いた「放置のコスト」は、税金の面でもはっきり上がっています。
| 古家あり | 土地 4.2万円 / 建物 1.4万円 |
|---|---|
| 更地 | 土地 約17.6万円 |
古家あり:土地1,800万円×1/6×1.4%=4.2万円、建物100万円×1.4%=1.4万円、合計5.6万円。更地:1,800万円×7割×1.4%=約17.6万円。合計で約3.1倍。都市計画税は別途。
1月1日という基準日は、実務で使えます。たとえば12月に家を壊せば翌年の課税から特例が外れますが、1月2日以降に壊せば、その年の課税は住宅用地のままです。逆に、更地を持っていて住宅を建てる予定なら、1月1日までに建物が完成(正確には住宅として認定される状態)していれば、その年から特例が使えます。売却の予定がある空き家なら、壊してから売るより、古家付きで売って買主が壊す、あるいは1月1日を過ぎてから壊す、という順番が、税金の面では有利になることがあります。
通知書の数字で計算します。今の税額。土地は評価額1,800万円で、180平米は全部が小規模住宅用地(200平米以下)なので課税標準は6分の1の300万円、固定資産税1.4%で4万2,000円。都市計画税は3分の1の600万円に0.3%で1万8,000円。建物は評価額100万円に1.4%で1万4,000円、都市計画税0.3%で3,000円。合計7万7,000円。男性の通知書は、負担調整で少し低く、約6万3,000円でした。
壊したあと。土地の特例が外れ、課税標準は評価額1,800万円の7割(負担調整の上限)で1,260万円。固定資産税1.4%で17万6,400円、都市計画税0.3%で3万7,800円。建物はなくなるのでゼロ。合計約21万4,000円。今の6万3,000円と比べて約3.4倍。「6倍」は、土地の固定資産税だけを、負担調整なしで、6分の1から1に戻したときの計算上の数字で、通知書の合計で見ると3〜4倍、というのが本文に書いた実務の数字です。この家では3.4倍でした。
時期の判断も、その場でしました。男性は、実家を売るつもりで、解体は「更地のほうが売りやすい」と不動産会社に言われたから。ただ、この地域では古家付きで売って買主が壊す形も普通で、その場合、解体費用(木造二階建て、約140万円)は買主負担か、価格に織り込む形。男性は、12月に解体する予定でしたが、1月1日を過ぎてから解体すれば、翌年の税額は住宅用地のまま。売却の見込みが翌年の春なら、1月2日以降に解体して、春に更地で売れば、更地の税額21万4,000円を払う年はゼロ。12月に壊していれば、翌年一年分、約15万円の差でした。
最後に、評価替えの話。固定資産税評価額は3年に一度見直され(直近は2024年度、次は2027年度)、その間は原則据え置きです。土地は公示地価の7割が目安なので、地価が上がっている地域では、評価替えの年に税額が上がります。急な上昇を抑える負担調整措置があるので、一気に上がることはありませんが、納税通知書の課税標準の欄を、評価替えの年には見ておいてください。
「38万円ですよね」と聞いた男性の答えは、約21万4,000円で、しかも、解体を1月2日以降にすれば、その21万4,000円を払う年がありませんでした。「半分正しくて、半分違う」と本文の最初に書きました。正しいのは、特例が外れること。違うのは、6倍という数字と、いつ外れるかを選べないという思い込みです。納税通知書と、1月1日という日付。この二つで、38万円は、ゼロになりました。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。