土地・不動産 2026-09-09

登記事項証明書の読み方 ― 表題部・甲区・乙区で、その不動産の「今」が分かる

不動産の身分証明書にあたる登記事項証明書(登記簿謄本)。表題部で物件の物理的な情報、甲区で所有者の変遷、乙区で抵当権などの担保を読みます。取り方と手数料、地番と住所の違い、相続・売買・境界の相談でそれぞれどこを見るか、「抹消」の下線の意味を整理します。

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この記事の位置: [まず読む:値段と書類の読み方] → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「まだローンが残っているんです、この家」。相続の相談で、女性が登記事項証明書を広げて、乙区の抵当権の欄を指しました。債権額2,800万円、抵当権者は銀行。父が20年前に組んだ住宅ローンです。私は、その行の下を見ました。下線が引いてある。「これ、抹消されていますよ」。抵当権は12年前に完済されていて、記録は残っているけれど効力はない。女性は「下線の意味を知らなかった」と言いました。この記事は、その下線の話から始めます。

土地や建物の相談は、登記事項証明書を取るところから始まります。かつて「登記簿謄本」と呼ばれた書類で、法務局がコンピュータ化してからは登記事項証明書という名前になりました。誰の所有か、担保が付いているか、面積や構造はどうか。その不動産の「今」が一枚に載っています。

取り方は三つ。法務局の窓口で請求する(一通600円)、オンラインで請求して郵送で受け取る(500円)、オンラインで請求して窓口で受け取る(480円)。証明書としての効力は要らず、内容を見るだけなら、登記情報提供サービスでオンライン閲覧するのが安く早いです。どの方法でも、請求には「地番」(土地)または「家屋番号」(建物)が要ります。住所(住居表示)とは別の番号で、固定資産税の課税明細書や、以前の登記の書類に載っています。分からなければ法務局の窓口で住所から調べてもらえます。

証明書は三つの部分に分かれます。一つ目は「表題部」で、不動産の物理的な情報です。土地なら、所在、地番、地目(宅地・田・畑・山林など)、地積(面積)。建物なら、所在、家屋番号、種類(居宅・店舗など)、構造(木造瓦葺2階建など)、床面積、そして建築年月日(新築日)。「いつ建った建物か」、つまり築何年かを見るのはここです。売るときの値段の目安や、売ったときの税金の計算(減価償却)に使います(建物の相続税の評価は、市区町村の固定資産税評価額をそのまま使うので、ここからは出ません)。

登記事項証明書の三つの部分
部分何が載っているか相続で見るところ
表題部土地: 所在・地番・地目・地積/建物: 家屋番号・種類・構造・床面積・新築日面積と建築年(築年数・登録免許税の確認)
権利部 甲区所有者の変遷(順位番号・原因・氏名)、差押・仮登記など現在の所有者が亡くなった人か、その前は誰か
権利部 乙区抵当権・根抵当権・賃借権など所有権以外の権利残っている担保、抹消漏れ(下線があれば抹消済み)

二つ目は「権利部(甲区)」で、所有権に関する記録です。誰が、いつ、何を原因に(売買・相続・贈与)所有者になったかが、順位番号の順に並びます。一番下の行が現在の所有者です。相続の相談では、ここに亡くなった人の名前が残っているか(相続登記が済んでいるか)、その前の所有者は誰か(数次相続になっていないか)を見ます。「所有権移転仮登記」「差押」「仮差押」といった記載があれば、その不動産に第三者の権利が絡んでいる合図です。

三つ目は「権利部(乙区)」で、所有権以外の権利、主に担保です。抵当権(住宅ローンなど)、根抵当権(事業の借入枠)、地上権、賃借権など。抵当権の欄には債権額、利息、債務者、抵当権者(金融機関)が載ります。相続で不動産を引き継ぐとき、乙区に抵当権が残っていれば、その借金がまだあるのか、完済済みで登記だけ残っているのかを確認します。完済していても、抹消登記をしないと抵当権の記載は消えません。

読み方の要点を一つ。過去の記録は消えずに残り、効力を失った記録には下線が引かれます。下線のある抵当権は抹消済み、下線のある所有者は過去の所有者です。下線を見落として「まだ抵当権が付いている」と慌てる相談は多いです。

場面ごとに見る場所を整理します。相続なら、甲区の現在の所有者と、表題部の地積・床面積(登録免許税の計算に使う評価証明書と照合)。売買なら、甲区に売主以外の権利がないか、乙区の抵当権を決済時に抹消できるか。境界なら、表題部の地積と、別途取る公図・地積測量図。共有なら、甲区の「持分」の記載で誰が何分の何を持っているか。マンションなら、表題部の「敷地権の表示」があるか。

その日に、証明書を一枚ずつ一緒に読みました。表題部。所在、地番、地目は宅地、地積は165.28平米。建物のほうは、家屋番号、種類は居宅、構造は木造スレート葺2階建、床面積は1階62.10平米、2階48.55平米、新築は平成8年。この新築年から、建物が築何年かが分かります。甲区。順位番号1が平成8年の売買で父が取得、それが最後の行なので、現在の所有者は父のまま、相続登記はまだ。乙区。順位番号1が平成8年の抵当権設定、債権額2,800万円、そして順位番号2が平成26年の「1番抵当権抹消」。1番の抵当権の行に下線。つまり、ローンは完済され、抹消登記も済んでいる。女性が「まだ残っている」と思っていた2,800万円は、記録として残っていただけでした。

この家の土地の登記事項証明書(見本)
この家の土地の登記事項証明書(見本)登記事項証明書の見本。上から表題部(所在・地番・地目 宅地・地積165.28平米)、甲区(平成8年の売買で甲野太郎が所有者、一番下の行が今の持ち主)、乙区(平成8年の抵当権設定 債権額2,800万円に下線、平成26年に1番抵当権抹消)。下線のある行は抹消済みで効力がない。全部事項証明書(土地)全部事項証明書(土地) 表題部(土地の表示)表題部(土地の表示) 所在 ○○市△△町一丁目所在 ○○市△△町一丁目 地番 12番3   地目 宅地地番 12番3   地目 宅地 地積 165.28㎡地積 165.28㎡ 権利部(甲区) 所有権に関する事項権利部(甲区) 所有権に関する事項 順位番号|登記の目的|受付年月日|権利者その他の事項順位番号|登記の目的|受付年月日|権利者その他の事項 1 所有権移転 平成8年5月10日 原因 売買1 所有権移転 平成8年5月10日 原因 売買   所有者 ○○市△△町一丁目12番3 甲野太郎  所有者 ○○市△△町一丁目12番3 甲野太郎 権利部(乙区) 所有権以外の権利に関する事項権利部(乙区) 所有権以外の権利に関する事項 順位番号|登記の目的|受付年月日|権利者その他の事項順位番号|登記の目的|受付年月日|権利者その他の事項 1 抵当権設定 平成8年5月10日1 抵当権設定 平成8年5月10日   債権額 金2,800万円 抵当権者 株式会社○○銀行  債権額 金2,800万円 抵当権者 株式会社○○銀行 2 1番抵当権抹消 平成26年 原因 弁済2 1番抵当権抹消 平成26年 原因 弁済 何が何が どこの、どんな土地かどこの、どんな土地か 誰の誰の 今の持ち主は今の持ち主は 一番下の行一番下の行 担保は担保は 下線のある行は下線のある行は 抹消済み(効力なし)抹消済み(効力なし) 見本です。所在・氏名・銀行名は架空。実物は欄がもっと細かく分かれています。見本です。所在・氏名・銀行名は架空。実物は欄がもっと細かく分かれています。

登記事項証明書の見本。上から表題部(所在・地番・地目 宅地・地積165.28平米)、甲区(平成8年の売買で甲野太郎が所有者、一番下の行が今の持ち主)、乙区(平成8年の抵当権設定 債権額2,800万円に下線、平成26年に1番抵当権抹消)。下線のある行は抹消済みで効力がない。

表題部で「何が」、甲区で「誰の」、乙区で「担保は」。赤い下線は、実物では黒い下線です。

別の相談で、逆のことがありました。乙区に下線のない根抵当権があり、極度額3,000万円、債務者は亡くなった父が経営していた会社。家族は「父の会社の借入は全部返した」と言っていましたが、根抵当権は借入枠なので、返済しても抹消登記をしなければ枠は残ります。銀行に確認すると、残高はゼロだが枠は生きていて、抹消には銀行の書類が要る。相続登記のあとに抹消登記をして、ようやく乙区がきれいになりました。下線があれば終わっている、下線がなければ生きている。読み方は、その一点です。

取り方の費用も、実例で書きます。この女性の家は土地と建物で二通、窓口で600円×2。同じ日に、登記情報提供サービスで内容だけ先に見るなら、一件330円程度で、証明書としては使えないが、読むには足ります。相談の前に見るだけなら、こちらで十分。相続登記の申請には証明書は不要で(法務局が自分で登記記録を見るため)、必要なのは金融機関や不動産会社に見せるときです。

最後に、登記事項証明書は「今」を示すものであって、現況を保証するものではありません。表題部の地目が「畑」でも現況は駐車場、床面積が登記と違う増築、建物が取り壊されているのに登記が残っている(建物の滅失登記漏れ)、といったずれはよくあります。証明書と現地を両方見る、が原則です。

下線を知らなかった女性は、その日、「相続で引き継ぐ借金がある」という心配を一つ減らして帰りました。証明書の読み方を一つ覚えるだけで、消える心配があります。表題部で「何が」、甲区で「誰の」、乙区で「担保は」。三つの部分を、この順で読む。そして、下線のある行は過去の記録。この四つで、証明書の九割は読めます。残りの一割は、本文の最後に書いたとおり、現地に行かないと分かりません。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-05

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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