土地・不動産 2026-09-09
地目と現況の違い ― 登記は「畑」なのに駐車場、そのままにしておくと何が起きるか
登記簿の地目と、実際の使われ方(現況)がずれている土地は珍しくありません。地目の種類、地目変更登記の義務、固定資産税は現況で課税される仕組み、登記が「田・畑」のままだと売買で農地法の許可が要る問題、相続した土地で最初に確認すること。宅建士の実務目線で整理します。
この記事の位置: [まず読む:値段と書類の読み方] → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
相続した土地を売る契約の直前に、買主側の不動産会社から電話が来ました。「登記の地目が畑になっています。農地法の手続きは済んでいますか」。土地は40年前から砂利敷きの月極駐車場で、固定資産税も雑種地として払っている。売主の女性は「畑だったなんて知りませんでした」。契約は延期。この記事は、その電話から地目変更までの三か月の話です。
相続した土地の登記事項証明書を見ると、地目が「畑」になっている。ところが現地は何十年も前から砂利敷きの駐車場。このずれは、地方の土地ではごく普通に起きています。地目とは、登記簿に記録された土地の用途の区分で、宅地、田、畑、山林、原野、雑種地、公衆用道路など、不動産登記の規則で23種類が定められています。
地目は「現況主義」で、土地の実際の状態に合わせて定めることになっています。用途を変えたら、所有者は1か月以内に地目変更登記を申請する義務があります(登記の申請は土地家屋調査士の業務です)。ところが、この義務は守られないことが多く、畑を駐車場にしても、山林に家を建てても、登記はそのまま、という土地が残ります。相続の相談で見る土地の地目と現況のずれは、たいてい親の代か祖父の代のものです。
固定資産税は、登記の地目ではなく現況で課税されます。市町村が現地を確認して「課税地目」を決めるので、登記が畑でも駐車場として使っていれば雑種地として、宅地並みに近い税額がかかります。逆に、登記が宅地でも実際に耕作していれば農地として低い税額です。固定資産税の課税明細書には「登記地目」と「現況地目」の両方が載っていることが多いので、二つが違っていれば、そこに何かの経緯があります。
問題になるのは、登記が「田」「畑」のままの土地を売る、貸す、家を建てるときです。登記が農地なら、現況が駐車場でも、農地法の手続き(転用の許可または届出)を求められる場合があります。役所は登記と現況の両方を見て判断し、長年駐車場だった土地でも「非農地証明」を農業委員会から取ってから地目変更する、という手順になることがあります。買主の側から見ると、登記地目が農地の土地は手続きに時間がかかるので敬遠されがちで、売却前に地目を現況に合わせておくのが実務の勧めです。
逆のずれもあります。登記が「宅地」で、現況が畑。この場合、農地法の許可なく売れますが、固定資産税は農地として安くなっている可能性があり、宅地として使い始めると税額が上がります。また、登記が「山林」で現況が宅地(家が建っている)の場合、住宅ローンの審査で地目変更を求められることがあります。金融機関は、担保にする土地の地目が宅地であることを条件にすることが多いためです。
| 登記地目 | 現況 | 起きること | 対処 |
|---|---|---|---|
| 田・畑 | 駐車場・宅地 | 売買や建築で農地法の手続きを求められる | 非農地証明を取り、地目変更 |
| 宅地 | 畑 | 固定資産税が農地として安い。宅地利用を始めると上がる | 使い方が決まってから考える |
| 山林・原野 | 宅地(家がある) | 住宅ローンの担保審査で地目変更を求められる | 地目変更登記 |
| 宅地 | 更地・駐車場 | 固定資産税の住宅用地特例が外れる(建物がないため) | ―(税額は現況で決まる) |
相続した土地で最初に確認する順番はこうです。登記事項証明書の地目、固定資産税の課税明細書の現況地目、そして現地。三つが一致していれば問題ありません。ずれていれば、そのずれが「今後の使い方の障害になるか」を考えます。農地のままにしておくなら何もしなくていい。売る・建てる・担保にするなら、地目変更が先です。地目変更登記の費用は、土地家屋調査士に頼んで数万円から十数万円程度で、農地からの変更なら農業委員会の書類が加わります。
順にやったことです。まず、確認。登記事項証明書の地目は「畑」、固定資産税の課税明細書は「登記地目 畑・現況地目 雑種地」、現地は駐車場。三つがずれている、本文で書いた典型の形です。次に、農業委員会。市街化調整区域の土地で、農地法上は「畑」のまま。40年前から駐車場だったことを、航空写真(国土地理院の過去の空中写真で1985年の駐車場の状態が確認できた)と、固定資産税の課税履歴で示し、「非農地証明」を申請。農業委員会の現地確認を経て、証明が出るまで六週間。この証明があれば、農地法の転用許可は不要で、地目変更の申請に進めます。
次に、地目変更登記。土地家屋調査士に依頼し、非農地証明と現地の写真を添えて、畑から雑種地への地目変更を申請。報酬と実費で約7万円、申請から完了まで二週間。登録免許税はかかりません。ここまでで三か月。契約は、地目変更が完了した翌週に結び直しました。売却額は1,800万円で、延期による値下げはありませんでしたが、買主が住宅ローンを組む予定だったため、地目が「畑」のままでは融資の審査が通らず、変更なしには売れない土地でした。
一つ、危なかった点も書いておきます。この土地が、農用地区域(青地)に入っていたら、非農地証明が出ない可能性がありました。40年間駐車場でも、農用地区域に入っていれば、農業委員会は「農地に戻すべき土地」として扱うことがあり、証明ではなく転用許可の手続きになり、許可が下りなければ売れません。この土地は農用地区域の外だったので、証明で済みました。「役所に聞かないと分からない」と農地の記事に書いた区分は、地目のずれを直すときにも効きます。
一つ注意を。地目を「宅地」に変更すると、固定資産税の課税地目も宅地になり、税額が上がります。使う予定がないのに地目だけ先に変える必要はありません。「何に使うか」が決まってから、その用途に合わせて変える。地目は、土地の使い方の結果であって、目的ではありません。
「畑だったなんて」と言った女性の土地は、三か月と約7万円で「雑種地」になり、その翌週に売れました。ずれは、女性の父の代からのもので、40年間、誰も困らなかった。困ったのは、売る日でした。「売る・建てる・担保にするなら地目変更が先」と本文に書いたとおりで、その「先」は、売る契約の前です。契約の直前ではなく。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。