相続・手続き 2026-10-06
相続登記の登録免許税の計算 ― 評価額の0.4%、端数の切り捨て、100万円以下の土地は2027年3月まで免税
相続登記を申請するときに納める登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。ただし、合計して1,000円未満を切り捨て、税額は100円未満を切り捨て、評価額100万円以下の土地は2027年3月31日まで免税、建物には免税がない、共有持分は持分の分だけ、といった細かい決まりがあります。自宅と山林と私道の持分を相続した例で、申請書に書く金額を電卓で出すところまで書きます。
この記事の位置: 亡くなる前にできること → 亡くなってすぐ(3か月まで) → 相続人と財産を確定する → 分け方を決める → [名義を変える・税金(10か月〜3年)] → 相続した財産をどうするか → 状況別(当てはまる方だけ)
「自分で申請してみます。で、印紙はいくら買えばいいんですか」。相続登記の相談で、最後に決まって出る質問です。父を亡くした50代の男性の手元には、固定資産税の課税明細書が一枚。自宅の土地と建物、田舎の山林が2筆、それに前の道路の持分が載っていました。この記事は、その一枚から登録免許税の額を出す手順です。電卓があれば、十分ほどで終わります。
登録免許税は、登記をするときに国に納める税金です。相続登記の義務化の記事で書いたとおり、相続による所有権移転登記の税率は、不動産の価額の1,000分の4、つまり0.4%です(登録免許税法別表第一、2026年10月時点)。「不動産の価額」は、売買の値段でも路線価でもなく、市町村が固定資産税のために付けた固定資産税評価額を使います。課税明細書の「価格」または「評価額」の欄の数字で、固定資産税の課税明細書の読み方の記事で場所を書きました。明細書が見つからなければ、固定資産税評価証明書を市町村で取ります。
計算の手順は四つです。一つ、登記する不動産の評価額を全部足す(共有持分なら、評価額に持分の割合を掛けた額)。二つ、合計の1,000円未満を切り捨てる。これが課税標準です。三つ、課税標準に0.4%を掛ける。四つ、出た税額の100円未満を切り捨てる。計算した額が1,000円に満たないときは1,000円になります(同法19条)。一つの申請書で土地と建物をまとめて申請するときは、物件ごとに計算するのではなく、合計してから切り捨てる、というところが間違えやすい点です。
次に免税です。租税特別措置法84条の2の2により、2027年3月31日までに申請する相続登記のうち、二つの場合は登録免許税がかかりません。一つ目は、評価額が100万円以下の土地。山林、田畑、原野、私道の持分など、評価の低い土地が当たります。判定は土地一筆ごと、共有持分なら持分の価額で見ます。建物は対象外で、評価額が100万円以下の建物でも税金はかかります。二つ目は、土地を相続した人が相続登記をしないまま亡くなった場合に、その人の名義にする登記。祖父から父、父から自分、と二段になっている相続で、祖父から父への登記が免税になります(この場合は建物ではなく土地だけ)。どちらも、申請書に「租税特別措置法第84条の2の2第2項により非課税」(二段目の場合は第1項)と書かないと適用されません。書き忘れると、普通に課税されます。
課税明細書の評価額のうち、100万円以下の土地は免税として外す。残りを合計して1,000円未満を切り捨てたものが課税標準。これに0.4%を掛け、100円未満を切り捨てた額が登録免許税。1,000円未満なら1,000円になる。
免税は土地だけで、建物にはありません。相続人申告登記には登録免許税がかかりません。
男性の課税明細書を見ます。自宅の土地は評価額1,236万5,400円、建物は312万8,000円。山林は2筆で、18万円と42万円。前の道路は6人で共有の私道で、評価額9万6,000円、持分6分の1。まず免税を仕分けます。山林2筆はどちらも100万円以下なので免税。私道は、9万6,000円の6分の1で1万6,000円。これも100万円以下で免税。残るのは自宅の土地と建物です。
計算します。1,236万5,400円と312万8,000円を足して1,549万3,400円。1,000円未満を切り捨てて、課税標準は1,549万3,000円。0.4%を掛けると6万1,972円。100円未満を切り捨てて、登録免許税は6万1,900円。山林2筆と私道の持分は0円。申請書には、課税価格として1,549万3,000円、登録免許税として6万1,900円、そして免税の土地について根拠の条文を書きます。納め方は、収入印紙を申請書に貼る(法務局の近くの郵便局や法務局内の印紙売場で買えます)か、オンライン申請なら電子納付です。
| 不動産 | 評価額 | 扱い | 税額 |
|---|---|---|---|
| 自宅の土地 | 1,236万5,400円 | 課税 | ― |
| 自宅の建物 | 312万8,000円 | 課税(建物に免税なし) | ― |
| 土地+建物の合計 | 1,549万3,400円 | 1,000円未満切り捨て → 課税標準 1,549万3,000円 | ×0.4%=6万1,972円 → 6万1,900円 |
| 山林(1筆目) | 18万円 | 100万円以下の土地 → 免税 | 0円 |
| 山林(2筆目) | 42万円 | 100万円以下の土地 → 免税 | 0円 |
| 私道の持分(6分の1) | 9万6,000円×1/6=1万6,000円 | 100万円以下 → 免税 | 0円 |
| 登録免許税の合計 | 6万1,900円 |
よくある間違いを三つ。一つ目、路線価や「土地価格スキャン」のような実勢の目安で計算してしまう。登記に使うのは固定資産税評価額で、路線価より低いのが普通です。二つ目、年度をまたぐ。評価額は4月1日に年度が切り替わるので、3月に取った評価証明書で4月に申請すると、新しい年度の評価額で計算し直しになります。三つ目、建物にも免税があると思い込む。免税は土地だけです。
相続人が複数で、たとえば兄が土地、妹が建物、と分けるときは、それぞれが自分の分を申請し、登録免許税もそれぞれの不動産の評価額で計算します。二人で2分の1ずつ共有にするなら、一つの申請書にまとめて、評価額の合計から計算できます。もう一つ、私道や水路のように「公衆用道路」として固定資産税が非課税になっている土地は、課税明細書に評価額が載っていません。この場合は、市町村で近くの宅地の評価額を基にした価額を出してもらうか、法務局に計算の基準を聞きます。評価額が載っていないから0円、ではありません。
遺言で、相続人でない人(たとえば孫や世話になった人)が不動産をもらう「遺贈」の場合は、税率が2%(1,000分の20)になります。評価額1,549万3,000円なら約31万円で、相続の5倍です。相続人への遺贈は相続と同じ0.4%で済むので、遺言で「遺贈する」と書くか「相続させる」と書くかで登記の税金が変わる、ということは覚えておいてください。遺言の種類と選び方の記事に書いた「相続させる」旨の遺言は、この点でも有利です。
相続人申告登記(相続登記の義務を果たすために、相続人であることだけを届け出る登記)には登録免許税がかかりません。期限までに協議がまとまらず、とりあえず義務だけ果たしたい、というときに、この違いが効きます。相続人申告登記の記事に手順を書いています。
この男性は、収入印紙6万1,900円分を法務局内の売場で買い、申請書に貼って出しました。司法書士の見積もりは、報酬と実費を合わせて11万円前後でしたから、自分でやった分の差は、報酬の部分です。ただし、戸籍を集め、相続関係説明図を描き、遺産分割協議書を作るところまでを自分でやった上での数字で、そこに三週間かかっています。当サイトの「相続登記ナビ」は、相続人と不動産の評価額を入れると、登録免許税の目安と、免税に当たる土地があるかどうかまで出すようにしています。申請前に、この記事の手順で電卓を叩いた数字と、ナビの数字が合うことを確かめてから、印紙を買ってください。
「印紙はいくら買えばいいか」の答えは、評価額を足して、1,000円未満を捨てて、0.4%を掛けて、100円未満を捨てる。免税の土地はそもそも足さない。この四行で出ます。難しいのは計算ではなく、評価額をどの書類で見るか、免税をどう仕分けるか、のほうです。課税明細書を一枚、机の上に置くところから始めてください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-06
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-06 確認)。
- 法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」 ― 100万円以下の土地と、登記をしないまま亡くなった場合の免税。期限は2027年3月31日。申請書に書く根拠条文
- 国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」 ― 相続による所有権移転登記は不動産の価額の1,000分の4、遺贈は1,000分の20
- e-Gov 法令検索「登録免許税法」 ― 15条(課税標準が1,000円未満のときは1,000円)、19条(最低税額1,000円)、別表第一の税率