学び・資格 2026-09-28
測量士補という選択肢 ― 28問・700点中450点、土地家屋調査士の午前の部が免除になる資格
測量士補は、受験資格のない択一28問の国家試験で、18問正解で合格します。2026年は5月17日に実施、合格率は直近5年で31〜51%。いちばんの使い道は、土地家屋調査士の筆記試験の午前の部(測量の計算と作図)が免除になることです。試験の形、合格率の読み方、調査士と同じ年に受ける組み立て、自分で持っている立場から見た使いどころを書きます。
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「土地家屋調査士を受けたいんですが、先に測量士補を取るのは遠回りですか」。不動産会社で働く40代の人から、そう聞かれました。手元の計画表には、調査士の午前の部(測量の計算と作図)に半年で300時間。私は、測量士補の試験日と合格点を紙に書きました。5月に択一28問、18問正解で合格、合格発表は6月。調査士の筆記は例年10月なので、同じ年のうちに、午前の部を免除にして調査士を受けられます。この人にとって、測量士補は遠回りではなく近道でした。この記事は、私自身も持っている測量士補を、どう選び、どう使うかの話です。
測量士補は、測量法に基づく国家資格で、試験は国土地理院が行います。測量士が作った計画に従って測量に従事する技術者の資格で、国や自治体が発注する公共測量の現場では、測量士か測量士補でなければ技術者として従事できません(測量法48条)。受験資格はなく、年齢も学歴も問いません。大学や高専などで測量の科目を修めて卒業した人や、国土交通大臣の登録を受けた養成施設を修了した人は、試験を受けずに測量士補になる資格があります。同じ日に測量士の試験もありますが、こちらは午前の択一に加えて午後に記述式があり、測量士補とは重さが違います。
試験の形を書きます。2026年は5月17日(日)の午後1時30分から4時30分までの3時間で、試験地は北海道から沖縄まで14か所でした。問題はすべて択一式で、1問25点の700点満点、450点以上で合格です。つまり28問のうち18問。合格発表は2026年は6月25日でした。測量士補試験では電卓が使えず、三角関数や座標の計算は手で行います。問題に関数表が付いているので、覚えるのは表の引き方と、手で速く正確に計算する段取りです。3時間で28問なので、一問あたり6分ちょっと。計算の問題と、文章の正誤を選ぶ問題が混ざっているので、文章の問題を先に片づけて、残りの時間を計算に回す順番をすすめています。受験の申込みは試験の数か月前の時期で、電子申請でもできます(日程は年ごとの受験案内で確かめてください)。
出題の範囲は、測量に関する法規、多角測量、GNSS測量(人工衛星を使う測量)、水準測量、地形測量、写真測量、地図編集、応用測量(道路や河川、用地の測量)です。計算問題は、三角関数、座標、面積、標高の計算が中心で、中学から高校の数学の範囲に収まります。文章の問題は、作業の手順や誤差の扱いを問うもので、過去問と同じ形が繰り返し出ます。
合格率は、国土地理院が公表している数字で、令和4年44.1%、令和5年32.2%、令和6年31.4%、令和7年51.2%、令和8年44.4%。三割から五割の間を、年によって大きく動きます。合格点が「18問」で固定されているので、問題の難しさがそのまま合格率に出る試験です。資格の選び方の記事で、合格率は「準備した人の割合」を映すと書きましたが、測量士補の場合は、それに加えて年ごとの難しさの振れが大きい。難しい年に当たっても18問を取れるよう、過去問は5年分を全部、一肢ずつ確かめておくのが安全です。
令和4年 44.1%、令和5年 32.2%、令和6年 31.4%、令和7年 51.2%、令和8年 44.4%
合格点は毎年450点(28問中18問)で固定。問題の難しさがそのまま合格率に出ます。
いちばん大きな使い道は、土地家屋調査士の筆記試験の午前の部が免除になることです。調査士の筆記は、午前の部(平面測量の問題と作図)と午後の部(不動産登記法などの択一と、土地・建物の書式)に分かれていて、測量士、測量士補、一級・二級建築士となる資格がある人は、午前の部を受けなくてよくなります。調査士の受験者の多くがこの免除を使っていて、午前の部をわざわざ受ける人は少数派です。午前の部の問題も測量の計算と作図で、測量士補の範囲と大きく重なります。重なる知識を、作図のない択一で確かめてもらえる分だけ、測量士補の側が入りやすい、というのが多くの受験者の選び方です。免除を受けるには、調査士の受験申込みのときに、測量士補の合格証書の写しなど、資格があることを示す書面を付けます。
左から右へ時間が進む。5月に測量士補試験(択一28問、18問で合格)、6月に合格発表、夏に土地家屋調査士の受験申込み、10月の調査士の筆記試験では、午前の部(平面測量と作図)が免除になり、午後の部(択一と書式)だけを受ける。
日程は2026年の実施と例年の流れによる目安です。受験の年の案内で確かめてください。
もう一つの使い道は、測量の仕事そのものです。測量会社や建設コンサルタントの求人には、測量士補を条件や歓迎の欄に書いているものが多くあります。実務で経験を積めば、測量士の試験を受けずに測量士になる道もあります。私の場合、測量士補の知識がいちばん役に立っているのは、境界の相談で地積測量図の座標と面積を読むときです。座標の一覧から辺の長さを出し、図面の数字と現地の境界標の位置が合っているかを確かめる。この計算は、試験で手で解いた座標計算そのものです。たとえば地積測量図に四つの境界点の座標が載っていれば、隣り合う点の座標の差から辺の長さが、座標の組み合わせから面積が出ます(座標法)。図面に書かれた面積と自分で計算した面積が合えば、その図面の数字は信用できる、と一つ確かめられます。
冒頭の人の一年を、数字で書きます。1月から5月まで、測量士補の過去問に約150時間。5月に受けて20問正解の500点で合格し、6月に合格が分かりました。調査士の受験の申込みは夏なので、申込みの時点で午前の部の免除を使えます。午前の部を自分で勉強するつもりだった300時間のうち、測量士補に使ったのは約150時間。残りの約150時間を、午後の部の書式(申請書と図面を書く問題)に回せました。その年の調査士は書式で点が足りず不合格、翌年に合格。「測量士補がなかったら、午前と午後を両方抱えて、書式まで手が回らなかった」と言っていました。
注意が一つあります。試験に受かっただけでは、測量士補を名乗って仕事はできません。国土地理院に登録を申請し、登録免許税を納めて名簿に載り、初めて測量士補です。合格したあとの登録の記事で書いたとおり、どの資格でもこの一手間があります。ただし、調査士の午前の部の免除に必要なのは「測量士補となる資格がある」ことなので、免除だけが目的なら、登録をしなくても使えます。登録するかどうかは、測量の仕事をするかどうかで決めてください。
測量士補は、単独で独立できる資格ではありません。それでも、択一だけ、受験資格なし、18問で合格という形は、資格の選び方の記事で「最初の一つに向いている」と書いた条件にそのまま当てはまります。調査士を目指す人には近道として、境界や土地の相談をする人には図面を読む道具として。私は、合格した日より、初めて地積測量図の座標を自分で検算できた日のほうを覚えています。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-28
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-28 確認)。
- 国土地理院「測量士・測量士補試験及び登録」 ― 受験案内、試験日、合格基準(1問25点・700点満点・450点以上)、登録の手続き
- 国土地理院「測量士・測量士補試験問題・解答例及び実施結果」 ― 過去5年の問題と解答、受験者数・合格者数・合格率
- 法務省「土地家屋調査士試験」 ― 試験の日程と、筆記試験の午前の部の免除