土地・不動産 2026-09-30
マイホームを売ったときの3,000万円控除と軽減税率 ― 住まなくなってから「3年目の年末」までに売る
自分が住んでいた家を売って利益が出たら、譲渡所得から最高3,000万円を差し引けます。所有10年超なら税率も下がり、二つは重ねて使えます。ただし、住まなくなった家は「3年を経過する日の属する年の12月31日」までに売らないと使えず、親子・夫婦への売却も対象外です。7,800万円で売る家を例に、年内に売るか来年の春に売るかで税金がいくら違うかを計算します。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → [売るとき] → 貸す・借りる・特殊な権利
「来年の春に売ろうと思っています。急ぐ理由もないので」。9月の相談で、60代の男性はそう言いました。2001年に買った一戸建てに2023年6月まで住み、今は娘の近くの賃貸マンションで暮らしています。家は空いたままです。私が最初に確かめたのは、住まなくなった日でした。2023年6月なら、3,000万円の特別控除が使えるのは、2026年12月31日までの売却です。来年の春では、間に合いません。
自分が住んでいた家(マイホーム)を売って利益が出たとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例があります。「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。家を持っていた期間の長さは問いません。利益そのものの計算、つまり売った値段から取得費と譲渡費用を引くところは、不動産を売ったときの税金の記事で書いたとおりで、この特例は、その利益からさらに3,000万円を引くものです。
対象になるのは、今住んでいる家か、以前住んでいた家です。以前住んでいた家は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。2023年6月に出たなら、3年を経過する日は2026年6月で、その年の年末、2026年12月31日が期限です。住まなくなったあと、その家を貸していても、空き家にしていても構いません。家を取り壊して土地だけを売る場合は、取り壊してから1年以内に売買契約を結ぶこと、その間に土地を貸駐車場などに使っていないことが、さらに必要です。
時間の線。2023年6月に住まなくなる。3年を経過する2026年6月を過ぎ、その年の12月31日までが3,000万円控除と軽減税率を使える期間。2027年春の売却は期限の外で、特例は使えない。
取り壊して土地だけ売るときは、取り壊しから1年以内の契約も必要です。
買う人にも条件があります。親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売った場合は、この特例は使えません。生計を一にする親族、売ったあとその家で一緒に暮らす親族、内縁関係の人なども含まれます。「子に買ってもらえば家が家族に残るし、控除も使える」と考える人がいますが、この形は対象外です。また、売った年の前年と前々年に、この特例などを使っていないことも要件です。
3,000万円を引いてもなお利益が残る場合、もう一つの特例が重なります。売った年の1月1日に、土地も建物も所有期間が10年を超えていれば「軽減税率の特例」が使え、課税される譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が下がります。通常の長期譲渡は所得税15%(復興特別所得税を含めて15.315%)と住民税5%で合わせて20.315%ですが、軽減税率では所得税10%(同10.21%)と住民税4%で14.21%です。所有期間は売った年の1月1日で数えるので、2001年に買った家なら、2026年1月1日で24年を超えています。3,000万円控除と軽減税率は、重ねて使えます。
特例は、確定申告をしないと使えません。3,000万円を引いて税金がゼロになる場合でも、売った翌年の確定申告の期間(例年2月16日から3月15日)に、譲渡所得の内訳書を添えて申告します。国税庁の確定申告書等作成コーナーで金額を入れていけば、内訳書も一緒に作れます。売買契約の前日に、住民票の住所と売った家の住所が違う場合は、戸籍の附票の写しなど、そこに住んでいたことを示す書類も添えます。この男性のように、住民票をすでに娘の近くへ移している人は、ここで書類が一枚増えます。
似た名前の特例と取り違えないでください。親が住んでいた家を相続して売るときに使うのは、この特例ではなく「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円控除」で、建てた年や耐震の要件が別にあります(空き家の記事で書いています)。また、夫婦で持っている家に二人で住んでいたなら、この3,000万円控除は、持分を持つ一人ひとりが、自分の持分の利益からそれぞれ最高3,000万円まで引けます。名義を一人にしている家では、一人分だけです。
住宅ローン控除との関係にも注意がいります。新しく家を買って住宅ローン控除を受ける人は、入居した年とその前年・前々年、それに入居した年の翌年から3年目までの間に、古い家でこの特例を使うと、住宅ローン控除が受けられません。この男性は賃貸暮らしなので当てはまりませんでしたが、住み替えで新しい家を買う人は、どちらを取るかを先に比べてください。
この家の数字です。2001年に3,500万円(土地2,500万円・建物1,000万円)で買った木造住宅を、7,800万円で売る見込みです。建物は25年分の減価を引きます。1,000万円×0.9×0.031×25年=697万5,000円で、建物の取得費は302万5,000円。取得費は土地2,500万円と合わせて2,802万5,000円です。譲渡費用は、仲介手数料が(7,800万円×3%+6万円)×1.1=264万円(税込)、売買契約書の印紙税が3万円で、合計267万円。譲渡所得は、7,800万円−2,802万5,000円−267万円=4,730万5,000円になります。
3,000万円を引くと、課税される譲渡所得は1,730万5,000円。軽減税率の14.21%で、税金は約245万9,000円です(所得税と復興特別所得税が約176万7,000円、住民税が69万2,200円)。所有期間が10年以下で軽減税率が使えない人なら、3,000万円控除だけで20.315%をかけて約351万6,000円。もし来年の春に売っていたら、3,000万円控除も軽減税率も使えず、4,730万5,000円に20.315%で約961万円。年内に売るかどうかで、差は約715万円です。
特例なし(来春) 961万円、控除のみ(10年内) 351.6万円、控除+軽減(年内) 245.9万円
控除=3,000万円の特別控除、軽減=所有10年超の軽減税率。譲渡所得4,730万5,000円(売値7,800万円−取得費2,802万5,000円−譲渡費用267万円)で計算。
男性は、その場で仲介会社に電話をして、売り出しを10月に早めました。年内に引き渡しまで終えるのが一番はっきりしますが、引き渡しが年明けになる場合でも、年内に売買契約を結び、その契約の日を売った日として申告する方法があります。どちらの日で申告するかは、契約の前に税理士に確かめてください。価格を下げてでも年内に契約するか、は、下げ幅が715万円より小さいかどうかで決まります。
帰り際に男性は、「住まなくなった日なんて、覚えていませんでした」と言いました。住民票を移した日、郵便の転送を頼んだ日、電気を止めた日。どれも、その家に住まなくなった日を示す手がかりになります。この特例でいちばん大事な数字は、3,000万円ではなく、住まなくなった日です。家を出たら、その日を書き留め、3年目の年末に丸をつけておいてください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-30
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-30 確認)。
- 国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例 ― 3,000万円の特別控除。住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取り壊し後1年以内の契約、特別の関係がある人への売却は対象外、住民票の住所が違うときの書類
- 国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 ― 売った年の1月1日に所有期間10年超、課税長期譲渡所得6,000万円以下は所得税10%、3,000万円控除と重ねて使える
- e-Gov法令検索 地方税法 ― 附則34条の3(居住用財産の長期譲渡所得の住民税は、6,000万円以下の部分で道府県民税1.6%・市町村民税2.4%)