土地・不動産 2026-09-09

仲介手数料の上限 ― 「3%+6万円」の計算と、800万円以下の物件の特例

不動産の売買で不動産会社に払う仲介手数料には、法律で上限があります。売買価格400万円超なら「価格×3%+6万円」に消費税。これは上限であって定価ではありません。計算の仕組み、3,000万円の物件での金額、2024年7月に広がった800万円以下の低額物件の特例(最大30万円)、支払い時期、両手仲介の意味、値引き交渉の現実を整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → [買う前に確認すること] → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「手数料が30万円って、高くないですか」。相続した田舎の古家を売ることになった50代の男性が、不動産会社の見積もりを持って来ました。売値は450万円。家は築50年で、土地だけの値段です。450万円の3%+6万円なら19万5,000円のはずなのに、30万円と書いてある。「ぼったくりでしょうか」。違います、と答えました。むしろ、その30万円がなければ、この家はたぶん売れませんでした。この記事は、その理由から始めます。

不動産を売るときも買うときも、不動産会社に仲介手数料を払います。金額には法律(宅地建物取引業法に基づく国土交通省の告示)で上限が決まっていて、会社が自由に決められるものではありません。ただ、計算の仕組みを知っている人は少なく、「3%+6万円」の意味を説明できる人はもっと少ない。整理します。

上限は、売買価格を三つの区分に分け、それぞれに料率を掛けて合計します。200万円以下の部分は5%、200万円超400万円以下の部分は4%、400万円超の部分は3%。これに消費税がかかります。この三段階を毎回計算するのは面倒なので、400万円を超える物件では「価格×3%+6万円」という速算式を使います。6万円は、200万円以下の部分の5%と3%の差(2%×200万円=4万円)と、200〜400万円の部分の4%と3%の差(1%×200万円=2万円)を足したものです。つまり速算式は三段階計算と同じ結果になります。

3,000万円の物件なら、3,000万円×3%+6万円=96万円、消費税10%を加えて105万6,000円。これが上限です。売主と買主それぞれが、自分が依頼した不動産会社に、この上限までを払います。一つの会社が売主と買主の両方を仲介する「両手仲介」なら、その会社は双方から受け取ることになり、合計で200万円を超えます。

仲介手数料の上限(売買・税別、2026年9月時点)
売買価格上限の計算例
200万円以下の部分5%200万円 → 10万円
200万円超〜400万円以下の部分4%400万円 → 10万円+8万円=18万円
400万円超の部分3%(速算:価格×3%+6万円)3,000万円 → 96万円
800万円以下の物件(特例)売主・買主それぞれ最大30万円500万円 → 通常21万円のところ最大30万円

2024年7月に、低額な物件の特例が広がりました。それまで「400万円以下の物件は売主から最大18万円」だった特例が、「800万円以下の物件は売主・買主それぞれから最大30万円(税別)」になりました。地方の空き家や農地付きの古家など、数百万円で取引される物件は、通常の計算だと手数料が十数万円にしかならず、不動産会社が動かない、という問題があったためです。空き家の記事で書いた「売ろうにも仲介してくれる会社がない」状況は、この特例で少し改善しています。逆に言えば、500万円の物件を売るときに「手数料30万円」と言われても、それは違法ではありません(特例の上限内です)。ただし、この特例を使うには、媒介契約を結ぶ前に、依頼者に説明して合意を得ることが要件です。

3,000万円の物件を両手仲介した場合の手数料(税別)
売主から96万円
買主から96万円

一つの会社が両方を仲介すると合計192万円(税込211万2,000円)。それぞれ別の会社なら各社96万円。

支払い時期は、法律で決まっているわけではなく、売買契約時に半分、決済・引渡し時に残り半分、という慣行が一般的です。契約時に全額という会社もありますが、決済前に契約が解除になった場合の扱いが揉めやすいので、半分ずつか決済時一括を勧めています。媒介契約書に支払い時期が書いてあるので、契約前に確認してください。

「上限」であって「定価」ではない、という点も書いておきます。法律は上限を決めているだけで、それより低い額で仲介する会社もありますし、交渉して下がることもあります。ただ、実務の感覚では、売却の仲介で手数料を値切ると、会社側の熱量が下がることがあり、売れにくい物件ではお勧めしません。売れやすい物件で複数社が競っているなら、交渉の余地があります。買主側では、「仲介手数料無料」「半額」を打ち出す会社があり、これは売主側からの手数料(両手)で成り立っている仕組みなので、その会社が扱う物件に限られる、という制約を理解したうえで使うものです。

現場の話です。この男性の家は、駅から車で20分、買い手は近所の人か、家庭菜園をしたい人くらい。不動産会社にとっては、売れるまでに何度も現地に行き、境界を確かめ、残置物の処分を手配し、それで受け取れる手数料が19万5,000円(税別)では、人件費が出ません。だから昔は「うちでは扱えません」と断られる物件でした。2024年7月の特例で、800万円以下の物件は売主から最大30万円(税別)を受け取れるようになり、この会社は「30万円なら受けます」と言った。私は男性に、特例の説明を受けて合意したかを確かめました。媒介契約の前に説明を受け、契約書に特例の記載がある。それなら適法で、そして現実的な額でした。

数字を並べます。450万円の物件で、通常の計算なら19万5,000円+消費税で21万4,500円。特例なら30万円+消費税で33万円。差は11万5,500円。男性が「その差で会社が動いてくれるなら安い」と言えたのは、それまでに二社に断られていたからです。売れない家の固定資産税と草刈りの費用は、年に数万円ずつ出ていきます。二年放置すれば、手数料の差額はそこで消えます。

もう一つ、両手の話も現場で出ました。買主は、同じ会社が見つけてきた近所の人でした。会社は買主からも手数料を受け取ります。買主側は特例の対象になる合意があれば30万円(税別、税込33万円)まで、なければ通常計算で19万5,000円(税別、税込21万4,500円)。売主からの30万円と合わせて、会社に入るのは税別で49万5,000円から60万円(税込で54万4,500円から66万円)の取引です。「両手だから値引きしてくれ」と男性は言いかけましたが、私は止めました。売れにくい物件で、動いてくれる会社の熱量を下げるのは、売主の得にならないからです。値引き交渉は、複数の会社が「うちで売らせてほしい」と言う物件でやるものです。

最後に、賃貸の仲介手数料は別の仕組みで、貸主と借主の合計で家賃の1か月分(税別)が上限です。借主から1か月分を取る場合は、原則として借主の承諾が要る、というのが告示の建前ですが、実務では借主負担1か月分が広く行われています。売買とは違う計算だということだけ、押さえておいてください。

決済のあと、男性が「30万円が高いのか安いのか、最初は分からなかった」と言いました。分からなくて当然で、上限の計算式を知っている人のほうが少ない。この記事の表は、そのために置いています。手数料の見積もりを見たら、まず物件価格が800万円以下かを見る。以下なら30万円までは特例の範囲、超えていれば3%+6万円が上限。それだけ分かれば、「高い」か「適法か」の区別がつきます。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-30

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-30 確認)。

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