離婚・家族 2026-09-15
離婚の相談先の選び方 ― 弁護士・行政書士・司法書士・法テラス・自治体、誰に何を頼めるか
離婚の相談先は一つではありません。相手と交渉して調停や裁判に出るのは弁護士、合意した内容を協議書や公正証書にするのは行政書士、家の名義変更の登記は司法書士、税金は税理士。お金がなければ法テラス、まず話を聞いてほしいなら自治体の相談窓口、手続きの質問なら家庭裁判所の家事手続案内。どこに行けばよいかを、状況別に書きます。
この記事の位置: [別居前・離婚を考え始めたら] → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
最初に行ったのは弁護士事務所でした。30分5,000円で、「離婚自体は合意しているんですね。協議書の作成は10万円からです」。次に行ったのは市の女性相談窓口で、「協議書は行政書士さんの範囲ですね」。三つ目が私の事務所。夫婦で話はまとまっていて、あとは書面にするだけ。協議書と公正証書で、私の報酬と公証人の手数料を合わせて約6万5,000円。女性は「最初からここに来ればよかった」と言いました。ただ、逆の順番で困った人も、同じ月にいます。この記事は、その二人の話です。
相続の相談先の選び方の記事と同じ構造で、離婚の相談先を書きます。離婚は、相談先を間違えると時間とお金を無駄にしやすい分野です。弁護士に協議書の清書だけを頼めば高くつき、行政書士に相手との交渉を頼んでも受けられません。誰が何をできるかを先に知っておくと、動きが速くなります。
弁護士は、相手との交渉、調停・審判・訴訟への出席と代理、の全部ができる唯一の資格です。相手が話し合いに応じない、DVがある、財産が多い、親権で争いになりそう、という場合は最初から弁護士です。費用は、初回相談は無料か30分5,000円程度、依頼すると着手金20〜40万円程度と、終わったときの報酬金(得た経済的利益の一定割合)が目安です。事務所と事案で幅があるので、依頼前に見積もりを書面でもらいます。
法テラス(日本司法支援センター)は、収入と資産が一定以下の人向けに、無料の法律相談(同じ問題で3回まで)と、弁護士費用の立替え(分割で返す)をしています。ひとり親になる予定で収入が少ない人は、まずここです。窓口は全国にあり、電話でも案内を受けられます。
行政書士は、合意した内容を離婚協議書にする、公正証書の文案を作って公証役場との段取りをする、離婚後の各種届出の書類を作る、が仕事です。相手との交渉や、調停への出席はできません。費用は協議書だけなら3〜4万円、公正証書込みで5〜10万円程度が目安です。夫婦で話がまとまっていて、それを効力のある書面にしたい、という段階で頼む相手です。
司法書士は、財産分与で家の名義を変えるときの所有権移転登記が仕事です。登記は自分でもできますが、住宅ローンが絡む場合は金融機関との書類のやり取りが増えるので、頼む人が多いです。税理士は、財産分与で不動産や退職金が動く場合の譲渡所得税や、扶養控除・ひとり親控除の相談先です。離婚と税金の記事の内容を、自分の数字で確かめたいときに使います。
お金のかからない相談先も多くあります。家庭裁判所の「家事手続案内」は、調停の申立て方法や書類について無料で教えてくれます(法律相談ではなく、手続きの案内です)。自治体の女性相談窓口、男女共同参画センター、ひとり親家庭の相談窓口は、離婚を迷っている段階で話を聞いてもらえ、支援制度の案内も受けられます。養育費相談支援センターは養育費の取り決めと不払いの相談、配偶者暴力相談支援センターはDVの相談と保護命令の案内です。
順番の目安を書きます。まだ離婚するか迷っている段階なら、自治体の相談窓口か法テラスで話を聞いてもらう。相手と話し合えそうなら、決めることを整理してから行政書士に協議書と公正証書を頼む。話し合えない、争いになりそうなら弁護士。お金が心配なら法テラスを通す。手続きの細かい質問は家庭裁判所の家事手続案内。この順で動けば、無駄が少ないです。
| 相談先 | 頼めること | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 交渉、調停・訴訟の代理、全部 | 着手金20〜40万円+報酬金 |
| 法テラス | 無料相談(3回まで)、弁護士費用の立替え | 収入・資産の要件あり |
| 行政書士 | 協議書、公正証書の文案と段取り | 3〜4万円/公正証書込み5〜10万円 |
| 司法書士 | 家の名義変更の登記 | 数万円+登録免許税 |
| 税理士 | 譲渡所得税、扶養控除・ひとり親控除 | 相談料は事務所による |
| 家裁の家事手続案内・自治体窓口 | 手続きの案内、話を聞く、支援制度 | 無料 |
一人目は、上に書いた女性です。夫婦で、親権、養育費月5万円、財産分与(預金を半分ずつ)、面会交流月1回、と全部決めていた。私がやったのは、その合意を条項の形にし、養育費の終期と支払日を確定し、公正証書の文案を作って公証役場との日程を取ること。二週間で公正証書ができ、費用は私の報酬5万円と公証人手数料約1万5,000円。弁護士の10万円は、交渉や調停の代理が要る場合の値段で、この女性には要らない機能でした。
二人目は、逆でした。私のところに来て、「協議書を作ってほしい」。話を聞くと、夫は離婚に応じておらず、養育費の話もできていない。財産は、夫名義の会社の株式と、二つの不動産。これは、合意がないので協議書にできず、相手との交渉は行政書士にはできない。財産が複雑で、株式の評価も要る。私は、その場で弁護士を紹介しました。着手金30万円、調停に進み、一年で成立。この人が最初に私に来たことで失ったのは、初回相談の一時間だけでしたが、もし「協議書を作ります」と受けていたら、合意のない協議書を作ろうとして、数か月を失っていたところです。
二人の違いを、一つの質問で分けられます。「相手と、話し合いはできていますか」。できていれば、決めることを整理して、行政書士に書面を頼む。できていなければ、弁護士(お金が心配なら法テラス)。迷っている段階なら、自治体の窓口。この記事の表は、その質問への答えごとに、相談先を並べたものです。
相談先を選ぶのは、それ自体が最初の一歩です。誰に何を聞けばよいかが分かれば、離婚の手続きの大半は、専門家と役所の窓口が案内してくれます。全部を自分で理解してから動く必要はありません。
三つ目の事務所で約6万5,000円で終わった女性と、私のところから弁護士に回って一年かかった人。どちらも、最初の一か所が違っていました。「誰に何を頼めるかを先に知っておくと、動きが速くなる」と本文の最初に書きました。速くなる、の中身は、女性の場合は二か所分の時間、もう一人の場合は、合意のない協議書を作ろうとして失うはずだった数か月です。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。