離婚・家族 2026-09-14
離婚とお金にかかる税金 ― 財産分与・慰謝料・養育費は課税されるのか
離婚で受け取るお金には、税金がかからないものと、かかるものがあります。財産分与と慰謝料は原則非課税、養育費も非課税。ただし、不動産で渡すと渡す側に譲渡所得税、分与が過大だと贈与税、子の扶養控除は一人分しか使えない。ひとり親控除、住宅の3,000万円控除、不動産取得税・登録免許税まで、離婚のお金と税金の関係を一枚に整理します。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → [離婚の中身を決める] → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
離婚協議書の案を持って来た夫婦がいました。自宅(夫名義、査定3,200万円、ローンなし)を妻に財産分与し、妻と子が住み続ける。協議書の日付は、離婚届の提出日の一週間前。「先に名義を変えてから、離婚届を出そうと思って」。その順番だと、夫に譲渡所得税がかかる可能性があります。自宅を配偶者に渡す場合、居住用の3,000万円控除が使えない。離婚成立の後に渡せば、使える。この記事は、その一週間の順番の話です。
離婚の相談で、税金の質問はほぼ毎回出ます。「財産分与で1,000万円もらったら贈与税がかかるのか」「慰謝料は所得になるのか」「養育費をもらっていると扶養控除はどうなるのか」。答えは、原則としてどれもかからない、ただし例外がある、です。この記事は、離婚で動くお金を一つずつ、受け取る側と渡す側に分けて書きます。
財産分与から。受け取る側に贈与税はかかりません。財産分与は、婚姻中に二人で築いた財産の清算であって、贈与ではないからです。例外は二つで、分与された財産が婚姻中の共有財産の額に比べて過大な場合(その過大な部分)と、贈与税や相続税を免れるための離婚と認められる場合です。財産分与の基本の記事で書いた2分の1の原則の範囲で分ける分には、贈与税の心配はいりません。所得税もかかりません。
渡す側は、渡す財産の種類で変わります。現金・預貯金を渡す分には税金はありません。不動産や株式など、値上がりしている財産を渡すと、渡した時点の時価で「譲渡した」ものとして扱われ、取得費との差額に譲渡所得税がかかります。自宅を渡す場合、居住用財産の3,000万円特別控除が使えますが、この特例は配偶者への譲渡には適用されないため、離婚成立後に分与するのが順番です。離婚と住宅ローンの記事で書いた通り、家の分与は税金の面でも「離婚成立の後」です。
慰謝料は、受け取る側に所得税も贈与税もかかりません。心身に加えられた損害に対する賠償金は非課税、という所得税法の扱いです。ただし、社会通念上相当な額を超える部分は贈与と見られる可能性があります。慰謝料を不動産で払う場合は、財産分与と同じく、払う側に譲渡所得税がかかります。
養育費は、受け取る側に税金はかかりません。扶養義務に基づく生活費・教育費で、通常必要と認められる範囲であれば非課税です。ただし、将来分をまとめて一括で受け取ると、通常必要な範囲を超えた部分が贈与と見られる可能性があるので、一括払いにする場合は税務署か税理士に確認してください。年金分割も、分割された記録に基づいて将来受け取る年金が課税されるだけで、分割そのものに税金はかかりません。
扶養控除は、離婚後によく揉めます。子の扶養控除(16歳以上、38万円〜)は、子一人につき父母のどちらか一方しか使えません。同居している親だけでなく、別居して養育費を払っている親も「生計を一にする」として扶養控除の対象にできる扱いですが、両方が申告すると重複になり、後で修正を求められます。どちらが使うかは、離婚協議書に書くことの記事の項目に一行加えて、先に決めておくことです。実務では、養育費を払う側が扶養控除を使い、その分を養育費に上乗せする、という調整をすることもあります。
ひとり親控除は、離婚後に子を育てる側が使える所得控除で、35万円です。要件は、生計を一にする子(総所得48万円以下)がいること、本人の合計所得が500万円以下であること、事実婚の相手がいないこと。性別は問いません。年末調整や確定申告で申告しないと適用されないので、離婚した年の年末調整で忘れないでください。ひとり親家庭の支援制度の記事で書いた児童扶養手当などとは別の制度です。
不動産を分与で受け取ったときの税金も書いておきます。不動産取得税は、財産分与が清算的なものであれば原則かかりません(慰謝料や扶養の趣旨で渡された不動産にはかかる場合があります)。登録免許税は、所有権移転登記で固定資産税評価額の2%かかります。翌年からの固定資産税は、受け取った側の負担です。
数字を書きます。夫が自宅を買ったのは14年前、土地と建物で2,400万円。査定3,200万円で妻に分与すると、譲渡所得は3,200万円から取得費(建物の減価償却を引いて約2,150万円)と諸費用を引いた約1,000万円。長期譲渡で約20%、約200万円の所得税と住民税。離婚前に分与すれば、配偶者への譲渡なので3,000万円控除は使えず、この200万円がかかる。離婚届を出した翌日に分与すれば、元配偶者への譲渡で、控除が使えて、税額ゼロ。協議書の日付を離婚届の日の後にし、所有権移転登記も離婚届の受理後に。それだけで200万円が変わりました。
| お金 | 受け取る側 | 渡す側 |
|---|---|---|
| 財産分与(現金) | 非課税(過大な部分は贈与税) | 課税なし |
| 財産分与(不動産・株式) | 非課税。登録免許税2%、不動産取得税は原則なし | 譲渡所得税(自宅は離婚後なら3,000万円控除) |
| 慰謝料 | 非課税(相当額を超える部分は贈与税) | 現金なら課税なし。不動産なら譲渡所得税 |
| 養育費 | 非課税(一括払いは要確認) | 課税なし。扶養控除はどちらか一方 |
| 年金分割 | 将来の年金として課税 | ― |
妻の側の税金も、その場で書き出しました。贈与税、なし(共有財産の清算の範囲。この夫婦の共有財産は自宅3,200万円と預金900万円で、妻が自宅、夫が預金900万円と、妻から夫へ代償金250万円、で2分の1に近い配分)。不動産取得税、清算的な財産分与なので原則なし。登録免許税、固定資産税評価額1,900万円の2%で38万円。翌年からの固定資産税、年約11万円。妻が「もらう側は税金がかからないと聞いていた」と言ったので、「贈与税と所得税はかからない。登記の38万円と、毎年の固定資産税はかかる」と分けて伝えました。
扶養控除も、この家で決めました。子は17歳で、扶養控除の対象。妻は年収180万円のパート、夫は年収650万円。夫が扶養控除を使えば、所得税と住民税で年約11万円の減。妻が使っても、妻の所得税がほぼゼロなので効果は小さい。夫が扶養控除を使い、その分として養育費を月5,000円上乗せする、で合意。協議書に「子の扶養控除は甲(夫)が申告する」の一行を入れました。この一行がないと、翌年の年末調整で両方が申告して、税務署から修正を求められるところでした。
まとめると、離婚で受け取るお金は、財産分与・慰謝料・養育費とも原則非課税。税金が問題になるのは、不動産で渡す側の譲渡所得税、過大な分与の贈与税、扶養控除の重複、ひとり親控除の申告漏れ、の四つです。金額が大きい(不動産や退職金が動く)場合は、離婚協議書を作る前に税理士に一度見てもらうと、順番の間違いで余計な税金を払うことを防げます。
協議書の日付を一週間ずらして、200万円が消えました。「家の分与は税金の面でも離婚成立の後」と本文に書いた順番は、この夫婦では、協議書の日付欄の一週間でした。「金額が大きい場合は協議書を作る前に税理士に」と最後に書きました。この夫婦は、協議書を作る前に来たので、間に合いました。名義を変えたあとに来ていれば、200万円は、戻りません。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-16 確認)。
- 国税庁 タックスアンサー No.4414「離婚して財産をもらったとき」 ― 財産分与に贈与税がかからない原則と、例外
- 国税庁 タックスアンサー No.1171「ひとり親控除」 ― 控除額35万円と、所得・事実婚の要件
- 国税庁 タックスアンサー No.1180「扶養控除」 ― 生計を一にする要件。別居の親が養育費を払っている場合の扱い