学び・資格 2026-10-05
宅建の登録講習と5問免除 ― 受けられる人、効き目の3年、免除で何点得をするか
宅建業の会社で働く人は、登録講習を修了すると宅建士試験の5問が免除され、45問で受験できます。受けられる人の条件、免除される5問の中身、修了試験合格から3年という効き目、申込みの順番を整理したうえで、過去10年の合格基準点(修了者はいつも5点低い)から「免除で得をするのは、免除科目で落としていた分だけ」という見方を、模試の点数に当てはめて確かめます。
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不動産会社に入って半年の20代の男性から、試験の相談を受けました。「会社から登録講習を受けろと言われています。5問免除って、そんなに得なんですか。講習に使う時間で民法をやったほうがいい気もして」。答えは「あなたが免除科目で何点取れているか次第」です。この記事では、登録講習の仕組みと、免除が何点ぶんの意味を持つのかを、合格基準点の数字で確かめます。
登録講習は、宅地建物取引業法16条3項にもとづく講習で、国土交通大臣の登録を受けた機関(登録講習機関)が行います。受けられるのは、宅建業の会社で働いている人だけです。会社が発行する従業者証明書(宅建業法48条1項で、従業者に持たせることになっている証明書)を、申込みから講習を終えるまで持っていることが条件で、学生やほかの業種の人は受けられません。流れは、テキストでの通信学習、教室でのスクーリング、最後に修了試験。修了試験に合格すると、修了者として扱われます。受講料や日程は機関ごとに決めているので、国土交通省の一覧から各機関の案内を見て確かめます。
免除されるのは50問のうち5問で、例年は問46から問50です。宅建業法施行規則8条が定める出題の7項目のうち、1号「土地・建物の形質や構造」と5号「宅地・建物の需給に関する法令と実務」にあたる問題で、中身は住宅金融支援機構、景品表示法(不動産広告の決まり)、統計、土地、建物の五つです。免除の効き目は、修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験です。注意したいのは順番で、講習を受けている途中では、修了者として試験に申し込めません。その年の試験で免除を使うなら、試験の申込みより前に修了試験まで終わる日程の機関を選びます。
五つの中身を、もう少し具体的に書きます。住宅金融支援機構は、民間の住宅ローンを買い取って証券にする仕組み(フラット35)が中心。景品表示法は、不動産広告の決まりで、「駅から徒歩5分」の1分は道のり80メートルで数える、といった業界のルール(公正競争規約)も出ます。統計は、地価公示や住宅の着工戸数など、その年に公表された数字。土地は、低地・台地・扇状地のような地形と災害の関係。建物は、木造や鉄筋コンクリート造の構造と材料です。どれも、宅建業の会社で働いていれば日々の仕事で触れる中身なので、実務に就いている人に免除が認められている、と考えると覚えやすいはずです。
免除の意味は、合格基準点を並べると見えてきます。不動産適正取引推進機構が公表している過去10年の合格基準点は、一般の受験者が50問中33〜38点、修了者が45問中28〜33点です。そして同じ回の試験なら、修了者の基準点はいつもちょうど5点低くなっています(2021年12月の試験は、修了者の基準点の掲載がありません)。直近の令和7年度(2025年10月の試験)は、一般が50問中33点、修了者が45問中28点でした。つまり免除は、「5問を全部正解した扱いにしてもらう」のと同じです。
一般(50問):H28 35点、H29 35点、H30 37点、R1 35点、R2(10月) 38点、R3(10月) 34点、R4 36点、R5 36点、R6 37点、R7 33点/修了者(45問):H28 30点、H29 30点、H30 32点、R1 30点、R2(10月) 33点、R3(10月) 29点、R4 31点、R5 31点、R6 32点、R7 28点
出典は不動産適正取引推進機構の試験実施概況。令和2年度・3年度は10月の試験を載せています。どの回も、修了者の基準点は一般よりちょうど5点低くなっています。
ここから、得をする点数が決まります。免除科目の5問で毎回5問取れる人には、免除の得は0点です。3問しか取れない人には2点、1問なら4点の得になります。合格点の前後は1点の差で合否が分かれる試験なので、2点は小さくありません。ただ、免除科目はもともと点の取りやすい分野でもあるので、免除があるから受かる、免除がないから落ちる、というほどの差にはなりにくいのも事実です。
時間の面も見ておきます。統計は毎年数字が変わるので、試験の直前に最新の地価公示や住宅着工の数字を覚え直す必要があります。景品表示法と住宅金融支援機構は範囲が狭いものの、ほかの科目とのつながりが薄く、それだけで覚える分野です。免除を受ければ、この直前期の暗記がまるごと要らなくなり、その時間を権利関係や宅建業法に回せます。講習に使う時間(通信学習とスクーリング)と、直前期に浮く時間を比べて決めるのが筋です。
名前の似た講習と取り違えないようにします。「登録実務講習」は、試験に合格したあと、宅建業の実務経験が2年に満たない人が、宅建士の登録をするために受ける講習です。試験の免除とは関係がなく、受ける時期も合格の後です。登録講習は試験の前、登録実務講習は合格の後、と覚えておけば混ざりません。合格後の流れは、合格したあとの登録の記事に書きました。会社で「講習を受けて」と言われたら、どちらの講習のことかを最初に確かめてください。
45問で受けるときの組み立ても変わります。宅建士試験の構造と勉強法の記事で書いた科目ごとの目標から、免除科目の欄を消して、残り45問で基準点を取りにいきます。基準点は年によって5点ほど動くので、過去10年で修了者の基準点が一番高かった年(45問中33点)でも届くように組んでおくと、本番の年の上下に振り回されません。
この人の場合です。直近の模試2回の結果を、科目ごとに並べてもらいました。権利関係が14問中8問、法令上の制限が8問中6問、税と価格の評定が3問中2問、宅建業法が20問中16問、免除科目が5問中3問。合わせて50問中35点です。免除を受けると、免除科目の3問を除いた45問中32点になります。令和7年度の基準点に当てはめると、一般で受ければ35点対33点で2点の余裕、修了者として受ければ32点対28点で4点の余裕。免除で増える余裕は2点で、これは免除科目で落としていた2問ぶんそのものです。
| 科目(問題数) | 一般で受ける(50問) | 修了者で受ける(45問) |
|---|---|---|
| 権利関係(14問) | 8点 | 8点 |
| 法令上の制限(8問) | 6点 | 6点 |
| 税・価格の評定(3問) | 2点 | 2点 |
| 宅建業法(20問) | 16点 | 16点 |
| 免除科目(5問) | 3点 | 免除 |
| 合計 | 35点 | 32点 |
| 令和7年度の基準点 | 33点 | 28点 |
| 基準点との差 | +2点 | +4点 |
そのうえで、二つ決めました。一つ、講習は受ける。会社が受講料を持ち、試験の申込み前に修了試験を終えられる日程の機関がありました。二つ、浮いた時間は、点数が伸びきっていない権利関係に回す。権利関係の8問を10問にできれば45問中34点になり、過去10年で一番高かった修了者の基準点(33点)も超えます。「免除は保険、勝負は権利関係」というのが、この人と決めた方針です。
登録講習は、宅建業で働く人にだけ開かれた近道ですが、近道の長さは人によって違います。免除科目で何点取れているかを先に数えれば、講習に使う時間に見合うかどうかが分かります。模試を一回受けて、問46から問50だけの点数を別に数える。判断の材料は、それで足ります。勉強の計画は逆算の勉強計画の記事、過去問の回し方は一肢ずつ○×にする勉強法の記事とあわせて読んでください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-05
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-05 確認)。
- 不動産適正取引推進機構「登録講習修了者について」 ― 修了試験合格後3年以内に行われる試験で5問免除、受講は宅建業の従業者(従業者証明書)に限る、受講中は修了者として申し込めない
- 不動産適正取引推進機構「試験実施概況(令和7年度以前10年間)」 ― 一般受験者と登録講習修了者の合格基準点(令和7年度は50問中33点・45問中28点)