学び・資格 2026-09-27

過去問は一肢ずつ○×にする ― 正解の番号ではなく、肢の数で数える勉強法

過去問を三周して正答率85%なのに、模試では6割台。よくある原因は、正解の番号を覚えてしまい、残りの肢の判断があやふやなまま周回していることです。五肢択一の一問を五つの○×問題に分け、×の肢は誤りの箇所を正しい言葉に直し、確信度も肢に付ける。時間がかかる分、全部ではなく「自信のない問題」だけを分けるやり方と、95問を475肢に分けた受験生の数字を書きます。

目次を見る →

この記事の位置: 資格を選ぶ・勉強の形を決める → [勉強法の土台] → 宅建士 → 行政書士 → 海事代理士

「過去問は三周しました。三周目の正答率は85%です」。行政書士試験の受験生が、模試の結果と一緒に言いました。模試の行政法の択一は、19問中12問で63%。過去問で85%取れる人が、本番に近い問題で6割台に落ちる。一緒に過去問を一問解いてもらうと、原因はすぐに分かりました。問題文を読み終わる前に「これは4番」と答えたのです。正解の番号を、覚えていました。

五肢択一の一問は、五つの○×問題の束です。正解の番号を当てても、ほかの四つの肢の判断が合っているとは限りません。本試験では、過去問と同じ論点が、別の言い回しの肢で、別の問題の中に出ます。番号を覚えた周回は、その肢に出会ったときに何も残っていません。過去問の正答率が高いのに本番で点が伸びない人の多くは、問題の単位で数えていて、肢の単位で数えていないのです。

やり方は単純です。一問を肢に分け、それぞれに○か×を付け、その根拠を一行書きます。根拠は、条文の番号か、判例の結論か、数字です。×の肢は、どこが誤りかに線を引き、正しい言葉に直します。たとえば宅建業法の「専任媒介契約の有効期間は6か月以内である」は×で、「6か月」に線を引いて「3か月」と書く。直した一文は、そのまま正しい知識の一文になります。

一問を五つの○×に分ける ― ×の肢は、正しい言葉に直す
一問を五つの○×に分ける ― ×の肢は、正しい言葉に直す左に五肢択一の一問。そこから五本の矢印が右の五つの肢に分かれ、それぞれに○か×と根拠を一行ずつ書く。×の肢は誤りの箇所に線を引き、正しい言葉に直す。受験生は正解の番号ではなく、肢の数で数える。 一問(五肢択一) 肢1 ○ 根拠:条文の番号肢1 ○ 根拠:条文の番号 肢2 × 「6か月」→「3か月」肢2 × 「6か月」→「3か月」 肢3 ○ 根拠:判例の結論肢3 ○ 根拠:判例の結論 肢4 × 誤りに線、正しく直す肢4 × 誤りに線、正しく直す 肢5 ○ 根拠:数字肢5 ○ 根拠:数字 肢の数で数える

左に五肢択一の一問。そこから五本の矢印が右の五つの肢に分かれ、それぞれに○か×と根拠を一行ずつ書く。×の肢は誤りの箇所に線を引き、正しい言葉に直す。受験生は正解の番号ではなく、肢の数で数える。

全部の問題を分けると時間が足りなくなります。分けるのは「自信なし」と「自信があったのに間違えた」問題だけにします。

根拠の一行は、短くていい代わりに、あとで引ける形にします。行政不服審査法の肢なら「18条1項:知った日の翌日から3か月」、国家賠償法の肢なら「2条:営造物の瑕疵は過失不要」、宅建業法の数字の肢なら「34条の2:専任は2週間に1回以上」。条文の番号か、判例の結論か、数字のどれか一つが入っていれば、次の周回で迷ったときに、テキストの該当箇所へすぐ戻れます。

数え方も変わります。五肢択一の95問は475肢、四肢択一の200問は800肢です。正答率を肢の単位で出すと、問題の単位よりはっきり下がります。冒頭の受験生の場合、行政法の過去問5年分(択一95問)で、問題の単位は85%、肢の単位では71%でした。この14ポイントの差が、「番号で当てていた分」です。

○の肢にも根拠を書くのは、当たった理由を確かめるためです。「なんとなく正しそう」で○にした肢は、次に言い回しを変えて出されたときに、×に転びます。根拠が一行書ける○の肢と、書けない○の肢は、同じ○でも別のものです。この受験生の場合、○の肢のうち根拠を書けなかったものが、全体の二割ほどありました。

確信度も、肢に付けます。過去問ループで使っている五段階の確信度(自信あり、たぶん、半々、たぶん違う、分からない)を、ノートの肢の横に一文字で書く。確信度で回す方法の由来の記事で書いたとおり、怖いのは「自信を持って間違えた」肢で、これは肢の単位でないと見つかりません。正解の番号を当てた問題の中に、自信を持って間違えた肢が隠れていることがあるからです。

この方法が一番効くのは、個数問題と組合せ問題です。宅建業法の「正しいものはいくつあるか」、行政書士試験の「正しいものの組合せはどれか」は、消去法が使えず、一肢でも判断を誤ると落ちます。宅建業法の攻め方の記事で書いた受験生の個数問題の失点は、四つの肢のうち三つに自信があり、一つがあやふやな状態でした。肢の単位で根拠を言えるようにしておけば、この形の問題は取れる問題に変わります。

組合せ問題では、肢の単位で判断できると、解く速さも上がります。「ア・イ・ウ・エ・オのうち正しいものの組合せ」で、アが×だと確信できれば、アを含む選択肢はすべて消える。一つの肢に確信があるだけで、五つの選択肢が二つか三つに減ります。反対に、どの肢にも確信が無いと、全部の組合せを検討することになり、時間も点も失います。

弱点は、時間です。問題の単位なら一問1〜2分で済むところが、肢に分けて根拠を書くと一問5〜8分かかります。95問全部を分けると、10時間を超えます。そこで、全部は分けません。一周目は普通に問題の単位で解き、確信度を付ける。二周目から、「自信なし」と「自信があったのに間違えた」問題だけを肢に分けます。逆算の勉強計画の記事で書いた「残り周回数」の計算にも、この分け方なら収まります。

冒頭の受験生の数字です。95問のうち、一周目で「自信なし」か「自信ありで誤答」だったのは38問。この38問を190肢に分けて、根拠を一行ずつ書きました。かかったのは二週間、一日1時間ほどです。190肢のうち、×の肢に正しい言葉を書き込んだのが74肢。その74肢を一枚ずつのカードにして、通勤の電車で回しました。

この受験生の行政法(過去問5年分・択一95問)
数え方数正答率・結果
問題の単位(三周目)95問85%
肢の単位(三周目)475肢71%
肢に分けた問題(自信なし・自信ありで誤答)38問 → 190肢二週間、一日1時間ほど
正しい言葉に直した×の肢74肢カードにして通勤で周回
次の模試の行政法の択一19問12問 → 16問

カードの表には正しく直した一文、裏には元の誤った肢の文と、過去問の年度と問題番号を書きます。表だけを読んで覚えるのではなく、裏の誤った文を見て「どこが違うか」を言えるかで確かめる。直前の一か月は、この74枚だけを毎日回し、答えられたカードを抜いていって、本試験の前の週には11枚が残りました。

分けすぎにも気をつけます。根拠の一行を、テキストの説明を写した数行にしてしまうと、一肢に10分かかり、ノートがテキストの写しになります。書くのは、次に同じ肢を見たときに○×を決められる最小の一言だけです。条文を全部写したくなったら、その肢は、テキストのその箇所を読み直す印を付けるだけにして、先へ進みます。

四肢択一と五肢択一でも、少し使い方が変わります。宅建士試験は四肢なので一問が四つの肢、行政書士試験は五肢なので五つの肢。五肢のほうが分ける手間は1.25倍になりますが、そのぶん組合せ問題が多く、一つの肢の確信が選択肢を減らす効き目も大きくなります。どちらの試験でも、分けるのは「自信なし」の問題だけ、という線は同じです。次の模試の行政法の択一は、19問中16問でした。

正解の番号を覚えることは、勉強した感覚だけを残します。肢に分けて、根拠を一行書き、×を正しい言葉に直す。手間は増えますが、覚えるものの単位が、試験で問われる単位と同じになります。「三周したのに」と言った受験生は、四周目を、95問ではなく190肢で回しました。過去問の冊子は同じでも、数える単位を変えるだけで、見えてくる弱点が変わります。まず、手元の過去問の中から「自信なし」の一問を選び、肢に分けて、根拠を一行ずつ書いてみてください。その一問に何分かかったかが、この方法をどこまで使うかを決める目安になります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-27

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-27 確認)。

あわせてどうぞ

解説記事一覧