学び・資格 2026-09-27
宅建士試験の宅建業法の攻め方 ― 20問で18問、「数字の表」と「誰が誰に売るか」で取る
宅建士試験の50問のうち20問が宅建業法です。範囲が決まっていて過去問の焼き直しが多いので、ここで18問を取るのが合格の骨格になります。落とす原因はほぼ二つ、数字の取り違えと個数問題。媒介契約の期間・報告・登録の数字を一枚の表にし、8種制限は「売主が業者で買主が素人のときだけ」という向きで覚える。3,000万円の家の例で、手付・保全措置・報酬の上限を金額に直して整理します。
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模試の答案を持って来た受験生は、宅建業法が20問中14問でした。「業法は簡単だと聞いていたのに」。落とした6問を一緒に見ると、4問が「正しいものはいくつあるか」を問う個数問題、2問が数字の取り違えでした。専任媒介契約の報告を「1週間に1回以上」と答えていて、これは専属専任媒介契約の数字です。知識が無いのではなく、似た数字が頭の中で混ざっている。業法の失点は、ほとんどがこの形です。
宅建士試験の構造と勉強法の記事で、50問の配分と「宅建業法で落とさない」という骨格を書きました。この記事はその中身、20問の業法で18問を取る組み立ての話です。業法は50問の4割を占め、条文の知識がそのまま問われ、過去問の焼き直しが多い。権利関係のように「みんな解けない難問」がほとんど出ないので、落とした1問がそのまま合否に響く科目でもあります。
範囲は大きく六つに分けて覚えます。一、免許(知事免許と大臣免許、有効期間5年、欠格事由)。二、宅建士(登録、宅建士証の有効期間5年、事務所ごとの設置人数)。三、営業保証金と保証協会(供託する額と、分担金の額)。四、媒介契約と広告。五、重要事項説明(35条)と契約書面(37条)。六、8種制限と報酬。これに監督処分・罰則と、住宅瑕疵担保履行法が例年1問ほど加わります。どの分野も、過去問10年分で出題の型がほぼ出そろいます。
過去問を解く順番は、テキストの章の順ではなく、取引の場面に近い順にしています。8種制限、媒介契約、35条と37条の書面、報酬を先に回し、免許、宅建士、保証金をあとにする。前の四つは「家を売る場面」で一続きの話になるので、場面を思い浮かべながら覚えられます。後ろの三つは制度の手続きの話で、場面が無いぶん、数字の表で覚える割合が増えます。
数字は、一枚の表にまとめて毎朝見ます。混ざりやすいのは媒介契約です。一般媒介は有効期間の制限がなく、報告の義務もありません。専任媒介は有効期間3か月以内、報告は2週間に1回以上、指定流通機構への登録は契約から7日以内。専属専任媒介は有効期間3か月以内、報告は1週間に1回以上、登録は5日以内(どちらも休業日を除く)。冒頭の受験生が混ぜたのは、この表の二段目と三段目でした。表の形で覚えると、「専属専任のほうが縛りが強いので、数字が短い」という向きで、どちらがどちらかを思い出せます。
| 種類 | 有効期間 | 報告の義務 | 指定流通機構への登録 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 制限なし | なし | 義務なし |
| 専任媒介 | 3か月以内 | 2週間に1回以上 | 7日以内 |
| 専属専任媒介 | 3か月以内 | 1週間に1回以上 | 5日以内 |
お金の数字も、同じ表に入れます。宅建業者が事業を始めるときに預けるお金です。営業保証金なら、本店(主たる事務所)で1,000万円、支店(従たる事務所)一つごとに500万円を供託します。保証協会に入れば、代わりに弁済業務保証金分担金を納め、本店で60万円、支店一つごとに30万円。本店と支店二つの業者なら、営業保証金は2,000万円、分担金は120万円です。「1,000と500」「60と30」は、どちらも本店が支店の2倍、と覚えると混ざりません。預け先(営業保証金は本店の最寄りの供託所、分担金は保証協会)と、支店を増やしたときの期限も、この表の横に書き足します。
| 本店 | 支店二つ | 合計 | |
|---|---|---|---|
| 営業保証金(供託所に供託) | 1,000万円 | 500万円×2=1,000万円 | 2,000万円 |
| 弁済業務保証金分担金(保証協会に納付) | 60万円 | 30万円×2=60万円 | 120万円 |
8種制限は、数字より先に「誰が誰に売るか」で覚えます。8種制限が働くのは、売主が宅建業者で、買主が宅建業者でない場合だけです。業者どうしの売買には働かず、業者が素人から買う場合にも働きません。素人の買主を守るための制限なので、守られる側が素人であることが条件になる、と理解すると、「業者間の取引で手付を代金の3割にした。違反か」のような問題に迷わなくなります。
上の段は、宅建業者の売主が会社員の買主に家を売る場面で、8種制限が働く。下の段は、業者どうしの売買と、業者が素人から買う場合で、どちらも8種制限は働かない。
2026年9月時点の宅地建物取引業法で書いています。
8種制限の中身は、クーリング・オフ、損害賠償額の予定等の制限、手付の額の制限、手付金等の保全措置、契約不適合責任の特約の制限、自分の物でない物件の売買の制限、割賦販売の解除等の制限、所有権留保等の禁止の八つです。数字が出るのは、クーリング・オフの8日(書面で告げられた日から)、手付の上限(代金の10分の2)、損害賠償の予定と違約金を合わせた額の上限(同じく代金の10分の2)、保全措置が要る額(未完成物件は代金の5%か1,000万円を超えるとき、完成物件は10%か1,000万円を超えるとき)、契約不適合責任の通知期間の特約(引渡しから2年以上なら有効)です。
35条と37条の比べ方も、表の一行にしておきます。重要事項説明は契約の前に、宅建士が、買主や借主に説明する。37条書面は契約のあとに遅滞なく、契約の両当事者に交付する。どちらも宅建士の記名が要り、2022年5月の改正で押印は不要になり、相手の承諾があれば電磁的方法でも交付できるようになりました。「前か後か」「誰に」「説明か交付か」の三つで並べると、ひっかけの肢はほぼこの三つのどれかをずらしています。
個数問題は、知識より解き方の問題です。四つの肢のうち「正しいものはいくつあるか」を問うので、一肢でも判断を誤ると落ちます。消去法が使えません。対策は、過去問の段階から一肢ずつ○×を確定させる練習をすることで、そのやり方は一肢ずつ○×にする勉強法の記事に書きました。この受験生の個数問題4問の失点は、どれも「三つは自信があり、一つがあやふや」な状態で、あやふやな一肢の根拠を言えれば取れた問題でした。
ここで、3,000万円の中古住宅を例に、数字を金額に直します。売主が宅建業者、買主が会社員の売買です。手付の上限は代金の10分の2で600万円、損害賠償の予定と違約金も合わせて600万円までです。完成物件なので、手付金等が300万円(代金の10%)を超えると保全措置が要ります。仲介した業者が受け取れる報酬の上限は、400万円を超える部分の速算で「代金×3%+6万円」、つまり96万円に消費税10%を足して105万6,000円です。売主と買主の両方から受け取る場合は、それぞれからこの額までです。
| 項目 | 決まり | この家の金額 |
|---|---|---|
| 手付の上限 | 代金の10分の2 | 600万円 |
| 損害賠償の予定+違約金の上限 | 合わせて代金の10分の2 | 600万円 |
| 保全措置が要る手付金等 | 代金の10%か1,000万円を超えるとき(完成物件) | 300万円を超えたら |
| 仲介の報酬の上限(一方から) | 代金×3%+6万円+消費税 | 105万6,000円 |
| 両方から受け取る場合の合計の上限 | 売主・買主それぞれ上の額まで | 211万2,000円 |
配分を変えた三か月の数字です。業法の過去問10年分(200問)を、表の数字と8種制限の向きを確かめながら二周。三周目は、自信がなかった問題だけを一肢ずつ分けて、800肢のうち判断があやふやだった172肢に根拠を一行ずつ書きました。二回目の模試で業法は17問、本試験は19問。落とした1問は、住宅瑕疵担保履行法の細かい数字でした。
業法は、覚える量が多いように見えて、覚える形が決まっている科目です。数字は表に、8種制限は向きに、個数問題は一肢ずつに。14問だった受験生が最後に言ったのは「業法は簡単ではなかった。形が決まっていただけだった」でした。宅建士試験の民法の記事で書いた「民法は8問でいい」は、この18問があって初めて成り立つ組み立てです。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-27
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-27 確認)。
- 不動産適正取引推進機構(宅地建物取引士資格試験) ― 試験の実施要領、過去の試験問題と正解番号、合格基準点
- e-Gov 法令検索 ― 宅地建物取引業法の原文。34条の2(媒介契約)、35条(重要事項説明)、37条(書面の交付)、37条の2〜43条(8種制限)、46条(報酬)