学び・資格 2026-09-09

宅建士試験の構造と勉強法 ― 50問の配分を知れば、どこで点を取るかが決まる

宅地建物取引士試験は、四肢択一50問・2時間。権利関係14問、法令上の制限8問、税その他3問、宅建業法20問、免除科目5問という配分が固定されているので、どの分野で何点取るかの設計が合否を分けます。試験の構造、合格ラインの決まり方、分野ごとの攻め方、過去問を確信度で回す方法、合格後の登録までを整理します。

目次を見る →

この記事の位置: 資格を選ぶ・勉強の形を決める → 勉強法の土台 → [宅建士] → 行政書士 → 海事代理士

「テキストを最初から読んでいるんですが、民法の途中で三か月経ちました」。四月に勉強を始めた人が、七月に相談に来ました。テキストは全体の三分の一。過去問は一問も解いていない。本試験は十月。私は、テキストを閉じてもらい、50問の配分を紙に書きました。業法20、権利関係14、法令8、税その他3、免除5。「業法の過去問から入ってください。テキストは、分からない肢のときだけ開く」。この記事は、その紙の話です。

宅地建物取引士(宅建士)の試験は、毎年10月の第3日曜日に行われる四肢択一50問、2時間のマークシート試験です。受験資格はなく、誰でも受けられます。私が受けたのはかなり前で、当時と今では出題の細部は変わっていますが、試験の「構造」は変わっていません。この構造を先に知ることが、勉強の設計になります。

50問の配分は固定です。権利関係(民法、借地借家法、区分所有法、不動産登記法)が14問。法令上の制限(都市計画法、建築基準法、農地法、国土利用計画法など)が8問。税・その他(不動産取得税、固定資産税、所得税、地価公示法、不動産鑑定評価基準)が3問。宅地建物取引業法が20問。そして免除科目(住宅金融支援機構、景品表示法、統計、土地・建物の知識)が5問です。毎年この配分で出るので、「どの分野で何点取るか」を最初に決められます。

宅建士試験の出題配分と、目標点の一例
分野出題数目標点の例特徴
宅建業法20問18条文知識。過去問で安定して取れる
権利関係(民法など)14問7〜8範囲が広い。深追いしない
法令上の制限8問6数字の暗記が中心
税・その他3問2税率・特例の暗記
免除科目5問3〜4登録講習修了者は免除(45問で受験)
合計50問36〜38合格点は例年35〜38点(相対評価)

合格ラインは固定ではなく、その年の受験者の成績で決まる相対評価です。例年、50問中35〜38点あたりが合格点で、合格率は15〜18パーセント前後で推移しています。つまり「7割5分取れば合格圏」という目安が立ちます。満点は要りません。12〜15問は落としていい試験です。

どこで点を取るか。実務の感覚と、多くの合格者の経験則が一致しているのは「宅建業法で落とさない」です。20問のうち18問以上を取る。業法は条文の知識がそのまま出るので、過去問を繰り返せば安定して得点できます。次に法令上の制限と税・その他の11問で8問前後。数字の暗記(建ぺい率、容積率、届出の期間、税率)が中心で、覚えれば取れます。免除科目5問は、登録講習を受けた人(宅建業に従事している人が対象)は免除され、45問で受験します。それ以外の人は統計と土地・建物の常識問題で3〜4問を取ります。ここまでで30点前後。残りを権利関係の14問で7〜8問取れば、合格点に届きます。

権利関係は、深追いしない、が鉄則です。民法は範囲が広く、判例の細かい知識を問う問題も出るので、満点を狙うと時間が溶けます。借地借家法と区分所有法、不動産登記法は毎年ほぼ同じ論点が出るので確実に取り、民法は基本的な条文と頻出の判例に絞ります。「権利関係で稼ぐ」発想は、多くの受験者を落としてきた発想です。

勉強法は、過去問を軸にします。宅建士試験は過去問の焼き直しが多く、10年分を三周すれば出題の型が身につきます。ただ、正誤だけを記録する周回には限界があります。海事代理士の勉強法の記事で書いた「確信度」の記録が、ここでも効きます。自信を持って間違えた問題(思い込み)を最優先で潰し、あやふやに当たった問題を根拠条文で固める。宅建業法の「思い込み」は本番で確実に失点するので、業法こそ確信度を記録する価値があります。

合格したあと、宅建士として名乗り、重要事項説明をするには、都道府県への登録と宅建士証の交付が要ります。登録には宅建業の実務経験2年以上が必要で、経験がない人は登録実務講習(2日程度の講習と修了試験)を受けて代えます。合格しただけでは「宅建士試験合格者」で、宅建士ではありません。

七月から十月までの三か月を、数字で書きます。七月、業法の過去問10年分(200問)を二周。一周目の正答率は48%、二周目は71%。分からない肢だけテキストの該当箇所を読む形で、テキストの業法の章は結局、通読せずに終わりました。八月、法令上の制限と税その他の過去問(10年分で110問)を二周、並行して業法三周目。法令の数字(建ぺい率、届出の期間、税率)は一枚の表にして、毎朝見た。九月、権利関係の9分野の過去問(10年分で約90問)を二周、業法四周目。免除科目は、統計は直前の一週間だけ、土地・建物は過去問五年分。十月の第一週に模試で39点。

本試験は、業法18問、権利関係8問、法令上の制限6問、税その他2問、免除科目4問で38点。合格点は36点でした。三か月前に「テキストの三分の一」だった人が、テキストを読むのをやめて、過去問の周回に切り替えた三か月で、38点。業法の四周で、確信度の記録では大○が一周目の31%から四周目の83%になっていて、本文に書いた「業法で落とさない」が、18問という形で出た結果です。

一つ、この人が最後まで苦手だった分野も書いておきます。権利関係の不動産登記法で、本試験では落としました。範囲が広く、過去問の焼き直しが少ない分野で、「取れたら加点」の扱いにして、時間をかけなかった。落として正解だった、と本人は言っています。その一問に使わなかった時間が、業法の四周目になっています。

最後に一つ。この試験で身につく知識は、不動産業で働く人だけのものではありません。用途地域、建ぺい率、接道義務、借地借家法、登記、税。この解説記事で書いている土地と不動産の記事は、ほぼ全部が宅建士試験の範囲です。自分の家や相続した土地のことを自分で判断できるようになる、という意味で、実務に就かない人にも価値のある資格だと思っています。

四月から七月までの三か月は、テキストの三分の一でした。七月から十月までの三か月は、過去問の周回で38点でした。同じ三か月で、違うのは、読むか、解くか、だけです。「50問の配分を先に知ることが、勉強の設計になる」と本文の最初に書きました。その人に渡した紙は、配分を書いただけの一枚で、それが、テキストを閉じる理由になりました。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

あわせてどうぞ

解説記事一覧