土地・不動産 2026-09-09
用途地域と建ぺい率・容積率 ― その土地に、どれだけの大きさの家が建つのか
同じ100平方メートルの土地でも、建てられる家の大きさは場所で違います。13種類の用途地域が「何を建てていいか」を決め、建ぺい率と容積率が「どれだけ建てていいか」を決める仕組み。計算例、角地の緩和、高さの制限、調べ方を、宅建士の実務目線で整理します。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → [建てられるか・どれだけ建つか] → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「都市計画図に200って書いてあるので、延べ床200平米まで建ちますよね」。相続した土地100平米に、二世帯住宅を建てたい男性の、最初の言葉です。用途地域は第一種住居地域、建ぺい率60%、容積率200%。ただ、前面道路は幅4メートル。住居系の前面道路制限で、4×0.4=160%。都市計画の200%と道路の160%の小さいほうで、上限は160平米。男性が描いていた二世帯の図面は、延べ床195平米でした。この記事は、その35平米の話です。
土地を買う、相続した土地に家を建てる、隣にマンションが建つと聞いた。どの場面でも最初に見るのが「用途地域」と「建ぺい率・容積率」です。用途地域は、その土地に何を建てていいかを決める区分で、建ぺい率と容積率は、どれだけの大きさまで建てていいかを決める数字です。この二つで、土地の使い方の上限がほぼ決まります。
用途地域は都市計画法で13種類あります。住居系が8つ(第一種・第二種低層住居専用、田園住居、第一種・第二種中高層住居専用、第一種・第二種住居、準住居)、商業系が2つ(近隣商業、商業)、工業系が3つ(準工業、工業、工業専用)。名前のとおり、低層住居専用地域では高い建物や大きな店舗は建てられず、商業地域ではほぼ何でも建ちます。自分の土地の用途地域は、市町村の都市計画図(多くの自治体がウェブで公開)で地番から調べられます。
| 系統 | 用途地域 | 建てられるものの目安 |
|---|---|---|
| 住居系 | 第一種・第二種低層住居専用、田園住居 | 低層の住宅が中心。高さ10〜12mの上限。小規模な店舗は限定的 |
| 住居系 | 第一種・第二種中高層住居専用 | マンションも可。店舗・事務所は規模に制限 |
| 住居系 | 第一種・第二種住居、準住居 | 住宅に加え、店舗・事務所・ホテルなども規模に応じて可 |
| 商業系 | 近隣商業、商業 | 店舗・事務所・商業施設。商業地域はほぼ制限なし |
| 工業系 | 準工業、工業、工業専用 | 工場中心。工業専用地域には住宅を建てられない |
建ぺい率は「敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見た面積)の割合」です。100平方メートルの土地で建ぺい率60パーセントなら、建物の1階の面積は最大60平方メートル。残りの40平方メートルは庭や駐車場、隣地との隙間になります。火災時の延焼を防ぎ、日当たりと風通しを確保するための数字で、用途地域ごとに30〜80パーセントの範囲で都市計画で定められています。
容積率は「敷地面積に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合」です。100平方メートルの土地で容積率200パーセントなら、延べ床面積は最大200平方メートル。2階建てなら各階100平方メートル、建ぺい率が60パーセントなら1階60・2階60・3階60で180平方メートル、という組み合わせになります。容積率には「前面道路の幅員による制限」もあり、道路の幅が12メートル未満の場合、住居系では幅員(メートル)×0.4、その他では×0.6と、都市計画の容積率のうち小さいほうが上限になります。幅4メートルの道路に面した住居系の土地なら、容積率は4×0.4で160パーセントが上限です。都市計画図に「200」と書いてあっても、道路が狭ければ160までしか使えない。ここは見落とされやすい点です。
| 建築面積の上限(建ぺい率60%) | 1階 60㎡ / 空地 40㎡ |
|---|---|
| 延べ床の上限(都市計画200%) | 延べ床 200㎡ |
| 道路幅員4m × 0.4 → 160% | 実際の上限 160㎡ / 使えない 40㎡ |
都市計画の容積率と、前面道路の幅員から出る容積率の、小さいほうが上限になる。
緩和もあります。角地(二つの道路に接する敷地)や、防火地域内の耐火建築物は、建ぺい率が10パーセントずつ加算されます。容積率では、地下室や車庫の床面積の一部を延べ床面積から除ける規定があります。逆に、高さの制限(絶対高さ、道路斜線、隣地斜線、北側斜線、日影規制)で、容積率いっぱいまで使えないこともあります。低層住居専用地域では高さ10メートルまたは12メートルの絶対制限があり、3階建てが難しい場合があります。
土地の値段への効き方は直接的です。同じ面積なら、容積率が高い土地ほど多くの床面積を建てられるので、地価は高くなります。路線価図の記事で触れた地区区分(普通住宅地区、普通商業・併用住宅地区など)も、この用途地域とおおむね対応しています。用途地域が住居専用から商業に変われば、建てられるものが変わり、地価の桁が変わります。
実務で確認する順番は、用途地域、建ぺい率・容積率、前面道路の幅員、高さ制限と日影規制、そして防火・準防火地域の指定、です。この五つを都市計画図と役所の窓口で押さえてから、設計者に「この土地にどんな家が建つか」を聞くと、話が早く進みます。中古住宅の重要事項説明にも、この五つは必ず書かれています。
数字を順に書きます。敷地100平米、建ぺい率60%で、1階の建築面積は最大60平米。容積率は、都市計画で200%、前面道路4メートルで160%、小さいほうの160%で、延べ床は最大160平米。3階建てにすれば、60+60+40で160平米。ただ、第一種住居地域には日影規制があり、この市では「5メートルの範囲で4時間、10メートルで2.5時間」。設計者の日影図で、3階建ての北側を一部下げる必要が出て、実際に建てられたのは、1階58平米、2階58平米、3階38平米の154平米。当初の195平米から41平米減で、二世帯のうち親世帯の部屋を一つ減らしました。
緩和で取り戻した分もあります。角地ではないので建ぺい率の10%加算はなし。ただ、車庫を1階に組み込み、車庫部分の床面積(延べ床の5分の1まで)を容積率の計算から除ける規定を使い、車庫14平米を除外。延べ床の上限は、160平米に車庫の除外分を足して、実質174平米まで。日影規制で3階が制限されていたので、この分は2階の張り出しで使い、最終的に延べ床は車庫込みで168平米。当初の195平米には届きませんが、154平米からは14平米戻しました。
逆の例も一つ。別の相談で、同じ100平米の土地が、幅6メートルの道路に面していた。6×0.4=240%で、都市計画の200%がそのまま使え、延べ床200平米。道路の幅が2メートル違うだけで、建てられる床面積が40平米違う。「都市計画図に200と書いてあっても、道路が狭ければ160までしか使えない」と本文に書いた差が、この40平米です。土地の値段も、この差を織り込んでいて、幅6メートルの道路に面した土地は、同じ町内で平米あたり1割ほど高く取引されていました。
土地価格スキャンで面積を出したあと、「その面積にどれだけ建つか」を知りたいときは、面積に建ぺい率と容積率を掛けてください。囲んだ土地が100平方メートル、建ぺい率60・容積率200なら、1階60平方メートル・延べ200平方メートルが上限、という桁がすぐに出ます。
「200って書いてあるので」の答えは、道路の幅で160、日影規制で154、車庫の除外で168、でした。図面の195平米は、最初から建たない数字でした。「用途地域、建ぺい率・容積率、前面道路の幅員、高さ制限と日影規制、防火地域」の五つを先に押さえる、と本文に書いた順番のうち、この土地では三つ目と四つ目が効きました。都市計画図の数字は、上限の上限で、実際の上限は、道路と影が決めます。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。