土地・不動産 2026-09-08

路線価図の読み方 ― 数字とアルファベットの意味、相続税評価額の出し方

国税庁が毎年7月に公表する路線価図。道路に書かれた「300D」のような記号の意味、路線価から相続税評価額を出す計算、奥行や形による補正、路線価がない地域の倍率方式まで。相続税がかかりそうか自分で当たりをつけるための読み方を整理します。

目次を見る →

この記事の位置: [まず読む:値段と書類の読み方] → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「うちは相続税がかかるらしいんです」。母を亡くした男性が、スマホの画面を見せました。国税庁の路線価図で、実家の前の道路に「250D」。男性は250万円と読んで、面積の180平米を掛け、「4億5,000万円」と青ざめていました。単位は千円なので、25万円×180平米で4,500万円。桁が二つ違います。そして、その4,500万円は、特例で900万円になる土地でした。この記事は、その画面の読み方の話です。

相続税がかかるかどうかを自分で見積もるとき、最初に見るのが路線価図です。国税庁が毎年7月初めに公表し、その年の1月1日時点の価格として、翌年6月までの相続・贈与の評価に使います。国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のサイトで、都道府県から市区町村、地図の順にたどると、自分の土地の前の道路に数字が書かれた図が出てきます。

道路に書かれた「300D」のような記号は、数字が路線価、アルファベットが借地権割合です。路線価は1平方メートルあたりの価格で、単位は千円。「300」なら1平方メートルあたり30万円です。公示価格のおおむね8割の水準に設定されています。アルファベットはAからGまであり、その道路に面する土地を借地として使っている場合の借地権の割合を示します。Aが90パーセント、Bが80、Cが70、Dが60、Eが50、Fが40、Gが30パーセントです。都心の商業地はAやB、郊外の住宅地はDやEが多く、自分の土地が借地なら、更地価格にこの割合を掛けたものが借地権の評価になります。

路線価図のアルファベット(借地権割合)
記号借地権割合多い地域
A90%都心の商業地
B80%商業地・駅前
C70%商業地・繁華な住宅地
D60%市街地の住宅地
E50%郊外の住宅地
F40%郊外・農村部寄り
G30%農村部

路線価が分かれば、評価額の基本形は「路線価 × 奥行価格補正率 × 面積」です。たとえば路線価30万円、奥行が標準的で補正率1.00、面積200平方メートルなら、30万円×1.00×200で6,000万円。これがその土地の相続税評価額の出発点です。

ここから補正が入ります。奥行が長すぎる、または短すぎる土地は「奥行価格補正率」で減額されます。角地で二つの道路に面していれば「側方路線影響加算」で増額、正面と裏の両方に道路があれば「二方路線影響加算」で増額。形が悪ければ「不整形地補正」、間口が狭ければ「間口狭小補正」、間口に比べて奥行が長すぎれば「奥行長大補正」で、それぞれ減額されます。旗竿地の記事で触れたように、土地の形が価格に効く仕組みは、この補正率として制度に組み込まれています。補正率の表は国税庁のサイトで公開されていて、地区区分(普通住宅地区、普通商業・併用住宅地区など)ごとに数字が違います。地区区分は路線価図の中で、数字を囲む記号(丸、楕円、四角など)で表されています。

路線価が書かれていない地域もあります。主に市街地から離れた住宅地や農村部で、この場合は「倍率方式」を使います。固定資産税評価額に、同じサイトの「評価倍率表」に載っている倍率(住宅地なら1.1倍前後が多い)を掛けて評価額を出します。固定資産税評価証明書の記事で書いたとおり、倍率地域では評価証明書の数字がそのまま計算の土台になります。

評価額が出たら、次は特例です。亡くなった人が住んでいた土地を配偶者や同居の子が相続する場合、「小規模宅地等の特例」で330平方メートルまでの部分の評価額を80パーセント減額できます。6,000万円の土地なら1,200万円で評価される計算で、相続税がかかるかどうかの分かれ目になることが多い特例です。適用には申告が必要で、要件も細かいので、該当しそうなら税理士に相談してください。

計算例 ― 路線価30万円、200平方メートル、同居の子が相続(小規模宅地等の特例を適用)
路線価 × 面積評価額 6,000万円
特例適用後(80%減)課税対象 1,200万円 / 減額 4,800万円

特例の適用には相続税の申告が必要。要件(居住・同居・保有の継続など)は個別に確認。

路線価図を読むときに覚えておいてほしいことが二つあります。一つ、路線価は税金のための数字であって、売れる値段ではありません。四つの地価の記事で書いたとおり、実勢価格とは別物です。二つ、路線価図の数字を面積に掛けただけの金額で相続税を心配する前に、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を思い出してください。相続人が三人なら4,800万円までは相続税がかかりません。土地6,000万円が特例で1,200万円になれば、他の財産と合わせても基礎控除に収まる家は多いはずです。

その場で、一緒に計算しました。路線価25万円、奥行は18メートルで普通住宅地区の補正率1.00、面積180平米。25万円×1.00×180で4,500万円。角地ではなく、形も長方形なので、加算も減額もなし。ここまでが出発点です。次に特例。男性は母と同居していて、この家に住み続けるので、小規模宅地等の特例の対象。330平米までの部分が80%減額され、4,500万円×0.2で900万円。母の財産は、この土地と建物(固定資産税評価額380万円)と預金1,900万円で、合計3,180万円。相続人は男性一人で、基礎控除は3,000万円+600万円×1人=3,600万円。3,180万円は3,600万円の中に収まり、相続税はかかりません。ただし、特例を使って収まる場合は、税額ゼロでも申告が要ります。ここは税理士に頼み、申告の報酬は15万円でした。

Dの意味も、その場で確かめました。この道路は借地権割合60%。男性の家は自分の土地なので関係ありませんが、隣の家は借地で、隣の人が亡くなれば、借地権の評価は更地の4,500万円×60%で2,700万円、地主側の底地は残りの1,800万円。同じ道路の「D」一文字が、隣と男性の家で、まるで違う数字になります。

一件、倍率地域の例も書いておきます。別の相談で、実家が市街地から離れた集落にあり、路線価図に道路の数字がない。評価倍率表で、その地域の宅地は「1.1」。固定資産税評価額が620万円だったので、620万円×1.1で682万円。こちらは、路線価図を見ても何も書いていないことで慌てた相談で、「書いていない」は「評価しない」ではなく「倍率で評価する」の合図です。

当サイトの「土地価格スキャン」は公示価格ベースです。周辺の標準地などの価格の中央値を「基準単価」にして、面積と、形・都市計画・接道の補正を掛けて参考価格を出します。路線価は公示価格のおおむね8割なので、相続税の当たりをつけるなら、スキャンの基準単価に0.8を掛けたものを路線価の代わりにして、上の計算に当てはめると近づきます。参考価格のほうには補正がすでに掛かっているので、そこにさらに0.8を掛けると低く出すぎることがあります。

「4億5,000万円」と読んだ男性は、その日、「900万円」で帰りました。同じ画面の同じ数字で、桁が二つ、そして特例で五分の一。この記事の二つ目の図の計算例(路線価30万円・200平米)は、その日の計算と同じ手順で、数字だけを変えたものです。路線価図は、読み方を知らないと怖い書類で、知ってしまえば、相続税がかかるかどうかを自分で当てられる書類です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-04

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

あわせてどうぞ

解説記事一覧