学び・資格 2026-09-05

海事代理士試験の勉強法 ― 過去問を「確信度」で回すと、何が変わるか

船舶の登記や船員の手続きを扱う国家資格、海事代理士。行政書士として受験準備をした経験から、科目の多い筆記試験を過去問でどう攻めるか、正誤だけでなく確信度を記録する理由を書きます。

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二周目の終わりに、正答率が73%になりました。合格ラインは6割なので、数字だけ見れば通っている。ところが、その週に解いた模擬形式の一回分は、52%でした。同じ知識で、なぜ20ポイントも違うのか。答えは、73%の中身にありました。「たぶんこっち」で当てた問題が、全体の三割を占めていた。本番の形で解くと、その三割が半分落ちる。この記事は、正答率という一つの数字の裏にあった、その三割の話です。

海事代理士は、船舶の登記・登録や船員に関する手続きなど、海事に関する行政手続きを本人に代わって行う国家資格です。試験は国土交通省が実施し、筆記試験と口述試験があります。筆記は憲法・民法・商法といった一般法令に加えて、船舶法、船舶安全法、船員法、海上運送法、港則法、海上交通安全法など海事法令が並び、科目数は合わせて二十にのぼります。一科目ごとの出題は少なく、範囲は広い。これがこの試験の難しさです。

行政書士として不動産や相続の手続きを扱ってきた私がこの試験の準備を始めたのは、業務の幅を海事へ広げるためでしたが、勉強を始めてすぐに気づいたのは、法律の知識そのものより「科目の切り替え」が壁になることでした。船舶法の条文を読んだ次の瞬間に港則法の数字を答える。似た言葉が別の法律で少しずつ違う意味で使われる。範囲の広さは、暗記量よりも混同との戦いになります。

その対策として選んだのが、過去問を「正誤」だけでなく「確信度」と一緒に記録する方法です。一問一答の○×なので、押すボタンは五つ。完全に知っていると思えば大きな○か大きな×。ちょっと自信はないが、たぶんこれだったよな、なら小さな○か小さな×。まったく知らない、初見です、と言い切る「?」。つまり、自信の度合いとしては「完全に知っている」「たぶん」「初見」の三段階で、それを○×に掛けたものが五つのボタンです。すると、同じ「正解」が二種類に、「不正解」も二種類に分かれ、そこに「?」が加わります。大きいほうで当てた問題、小さいほうで当てた問題、大きいほうで外した問題、小さいほうで外した問題、そして「?」。次にやるべきことが、まるで違います。

大きいほうで当てた問題は、しばらく手を離していい。小さいほうで当てた問題は、本番では外れる可能性が高いので、根拠条文に戻って「なぜそうなるか」を固める。大きいほうで外した問題は最優先です。思い込みで覚えているので、放っておくと本番でも同じ間違いを自信満々に繰り返します。「?」の問題は、そもそもその論点を学んでいないので、テキストからやり直します。

押したボタンと正誤の組み合わせで、次にやることを変える
押したボタン・結果起きていること次にすること
大きな○/× で正解分かっていて正解したしばらく手を離してよい
小さな○/× で正解まぐれで当たった可能性根拠条文に戻って固める
大きな○/× で不正解思い込みで覚えている(最優先)すぐに復習する
小さな○/× で不正解迷って外した解説を読んで、もう一度出す
?その論点をまだ学んでいないテキストからやり直す

この分類をすると、正答率という一つの数字では見えなかった弱点の形が見えてきます。私の場合、正答率が七割を超えていても、「自信あり誤答」が海事法令の特定の科目に固まっていました。そこだけを集中的に潰すと、正答率の伸びより先に「自信あり誤答」の数が減り、本番での取りこぼしが消えていきました。

もう一つ大事なのは、周回の記録を残すことです。一周目で「?」だった問題が二周目で「小さな○で正解」になり、三周目で「大きな○で正解」になる。この推移が見えると、同じ問題を何度も解く単調な作業に意味が生まれます。逆に、何周しても「自信あり誤答」のままの問題は、テキストの読み方が間違っているか、条文の理解が根本からずれているサインなので、独学で抱え込まずに解説や条文の原文に当たります。

過去問は、国土交通省が公開している筆記試験の問題を使いました。解説は自分で条文を引きながら書き足し、根拠条文はe-Gov法令検索で確認する。この作業は時間がかかりますが、解説を「書く」こと自体が最も効く勉強でした。

確信度を記録し始めてからの、私の数字を書きます。三周目の142問で、大○で正解が61問、小○で正解が43問、小×で不正解が14問、大×で不正解が9問、?が15問。正答率は104÷142で73%。ただ、本番で当てにできるのは大○の61問だけで、43%。合格ラインの60%には、17ポイント足りない。数字の見え方が、73%から43%に変わった週が、勉強の中身が変わった週です。

やったことは、小○の43問と、大×の9問の扱いを分けることでした。小○は「当たったが根拠が言えない」問題で、条文に戻って根拠を一行で書く。43問中、根拠を書けたのが31問、書けなかった12問はテキストからやり直し。大×の9問は「自信を持って間違えた」問題で、これが一番危ない。9問のうち7問が、船舶安全法と船員法の「日数」と「トン数」の混同でした。たとえば、船員手帳の再交付の期限と、雇入契約の届出の期限を、逆に覚えていた。この9問だけを、条文の数字を並べた一枚の表にして、毎朝見ました。

五周目で、大○が98問、小○が22問、小×が8問、大×が2問、?が12問。正答率は120÷142で85%、本番で当てにできる大○は69%。ここで初めて、合格ラインを大○だけで超えました。本番の筆記は、20科目の合計で約71%。模擬形式の52%から、大○の69%に近い数字で、小○を大○に変える作業が、そのまま本番の点になった形です。

当サイトの「過去問ループ」は、この勉強法をそのままアプリにしたものです。平成29年度から令和7年度までの142問を、大○・小○・?・小×・大×の五つのボタンで記録し、復習すべき問題を優先順に並べ、科目ごとの現在地と周回ごとの変化を見返せます。海事代理士以外の資格試験にも通じる方法なので、「正答率は上がったのに合格点に届かない」という人は、一度、確信度を記録してみてください。

二周目の73%と、模擬形式の52%の差は、「たぶんこっち」の三割でした。確信度を記録すると、その三割が見える。見えたら、根拠を一行書いて大○に変える。それだけの作業で、五周目に大○が69%になり、本番が71%でした。「正答率は上がったのに合格点に届かない」人に確信度を勧める理由は、この20ポイントの差にあります。正答率ではなく、大○の率を追ってください。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-06

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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