学び 2026-09-05

海事代理士試験の勉強法 ― 過去問を「確信度」で回すと、何が変わるか

船舶の登記や船員の手続きを扱う国家資格、海事代理士。行政書士として受験準備をした経験から、科目の多い筆記試験を過去問でどう攻めるか、正誤だけでなく確信度を記録する理由を書きます。

海事代理士は、船舶の登記・登録や船員に関する手続きなど、海事に関する行政手続きを本人に代わって行う国家資格です。試験は国土交通省が実施し、筆記試験と口述試験があります。筆記は憲法・民法・商法といった一般法令に加えて、船舶法、船舶安全法、船員法、海上運送法、港則法、海上交通安全法など海事法令が並び、科目数は合わせて十八にのぼります。一科目ごとの出題は少なく、範囲は広い。これがこの試験の難しさです。

行政書士として不動産や相続の手続きを扱ってきた私がこの試験の準備を始めたのは、業務の幅を海事へ広げるためでしたが、勉強を始めてすぐに気づいたのは、法律の知識そのものより「科目の切り替え」が壁になることでした。船舶法の条文を読んだ次の瞬間に港則法の数字を答える。似た言葉が別の法律で少しずつ違う意味で使われる。範囲の広さは、暗記量よりも混同との戦いになります。

その対策として選んだのが、過去問を「正誤」だけでなく「確信度」と一緒に記録する方法です。答えを出すときに、自信を持って答えたのか、二択で迷ったのか、まったく見当がつかなかったのかを五段階で残します。すると、同じ「正解」が四種類に分かれます。自信を持って正解した問題、あやふやなまま当たった問題、自信を持って間違えた問題、判断できずに外した問題。この四つは、次にやるべきことがまるで違います。

自信を持って正解した問題は、しばらく手を離していい。あやふやに当たった問題は、本番では外れる可能性が高いので、根拠条文に戻って「なぜそうなるか」を固める。自信を持って間違えた問題は最優先です。思い込みで覚えているので、放っておくと本番でも同じ間違いを自信満々に繰り返します。判断できなかった問題は、そもそもその論点を学んでいないので、テキストからやり直します。

正誤と確信度の組み合わせで、次にやることを変える
組み合わせ起きていること次にすること
自信あり・正解分かっていて正解したしばらく手を離してよい
自信なし・正解まぐれで当たった可能性根拠条文に戻って固める
自信あり・不正解思い込みで覚えている(最優先)すぐに復習する
自信なし・不正解その論点をまだ学んでいないテキストからやり直す

この分類をすると、正答率という一つの数字では見えなかった弱点の形が見えてきます。私の場合、正答率が七割を超えていても、「自信あり誤答」が海事法令の特定の科目に固まっていました。そこだけを集中的に潰すと、正答率の伸びより先に「自信あり誤答」の数が減り、本番での取りこぼしが消えていきました。

もう一つ大事なのは、周回の記録を残すことです。一周目で判断できなかった問題が二周目で「あやふや正解」になり、三周目で「自信あり正解」になる。この推移が見えると、同じ問題を何度も解く単調な作業に意味が生まれます。逆に、何周しても「自信あり誤答」のままの問題は、テキストの読み方が間違っているか、条文の理解が根本からずれているサインなので、独学で抱え込まずに解説や条文の原文に当たります。

過去問は、国土交通省が公開している筆記試験の問題を使いました。解説は自分で条文を引きながら書き足し、根拠条文はe-Gov法令検索で確認する。この作業は時間がかかりますが、解説を「書く」こと自体が最も効く勉強でした。

当サイトの「過去問ループ」は、この勉強法をそのままアプリにしたものです。平成29年度から令和7年度までの142問を、正誤と五段階の確信度で記録し、復習すべき問題を優先順に並べ、科目ごとの現在地と周回ごとの変化を見返せます。海事代理士以外の資格試験にも通じる方法なので、「正答率は上がったのに合格点に届かない」という人は、一度、確信度を記録してみてください。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士) 内容確認日:2026-09-05

記事の内容は執筆時点の公開情報と実務経験に基づく一般的な解説です。個別の事案については、公式資料と専門家への相談で確認してください。

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