学び・資格 2026-09-09

宅建士試験の民法の攻め方 ― 権利関係14問で「8問取れば勝ち」の組み立て

宅建士試験の権利関係は14問。民法10問に、借地借家法2問、区分所有法1問、不動産登記法1問。ここで満点を狙うと、宅建業法と法令上の制限の時間を食われて総崩れになります。目標は8〜9問。頻出の論点に絞り、判例の結論を覚え、借地借家法と区分所有法で確実に取り、民法の難問は捨てる。範囲の広さに負けないための、順番と捨て方を書きます。

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模試の結果を持って来た受験生は、権利関係が14問中12問でした。「民法、得意なんです」。宅建業法は20問中13問。合計36点で、その年の模試の合格ライン37点に1点足りない。私は、その人の勉強時間の配分を聞きました。民法に六割、業法に二割。「民法が得意なのではなく、民法に時間をかけているんです」。この記事は、その配分を逆にした三か月の話です。

宅建士試験の記事で、50問の配分と「宅建業法で稼ぐ」構造を書きました。この記事は、受験生が最も時間を失う科目、権利関係(民法など)の話です。14問のうち、民法が10問前後、借地借家法が2問、区分所有法が1問、不動産登記法が1問。範囲は民法全体で、条文は1,000条を超え、判例は無数にある。ここで満点を目指した人が、宅建業法の20問を落として不合格になる。私が見てきた不合格のパターンで、一番多いものです。

最初に決めるのは、目標点です。権利関係は14問中8〜9問。宅建業法で18〜19問、法令上の制限で6問前後、税その他で5問前後を取れば、合計で37〜39点になり、合格ラインを超えます。権利関係で8問取るために必要な勉強と、12問取るために必要な勉強では、量が3倍違います。その差の時間を、宅建業法に回す。これが組み立ての骨格です。

8問をどこで取るか。まず、民法以外の4問です。借地借家法の2問は、出題範囲が狭く(借地権の存続期間と更新、建物買取請求、定期借地権、借家の更新と正当事由、定期建物賃貸借、造作買取請求など)、過去問の繰り返しで2問とも取れます。借地権の記事で書いた内容は、この2問の土台です。区分所有法の1問も、範囲が狭く(集会の決議要件、規約、管理組合、共用部分)、取れます。不動産登記法の1問は、範囲が広く難しい年があるので、取れたら加点と考えます。ここで3問。

民法10問のうち5〜6問を取ります。頻出の論点に絞ります。意思表示(詐欺・強迫・錯誤・心裡留保・虚偽表示と第三者)、代理(無権代理・表見代理・自己契約)、時効(取得時効・消滅時効・完成猶予と更新)、物権変動(対抗要件・登記の要否・二重譲渡)、抵当権(効力の範囲・法定地上権・抵当権消滅請求)、債務不履行と解除、契約不適合責任、賃貸借(敷金・原状回復・転貸)、相続(法定相続分・遺留分・遺産分割)。この9分野で、毎年6〜8問が出ます。過去問10年分をこの分野に絞って、確信度で回す。過去問ループの記事で書いた周回の方法は、民法で最も効きます。

権利関係14問の目標の置き方
区分出題数目標方針
借地借家法2問2問範囲が狭い。過去問で確実に
区分所有法1問1問集会・規約・共用部分に絞る
不動産登記法1問0〜1問取れたら加点
民法(頻出9分野)6〜8問5〜6問過去問10年分を確信度で周回
民法(難問)2〜3問0問30秒で方針が立たなければ飛ばす
合計14問8〜9問25分以内で切り上げる

判例の扱いを書いておきます。宅建の民法は、条文の知識より「判例の結論」を問う問題が多い。「AがBに土地を売り、BがCに転売した。AB間の契約がAの錯誤で取り消された場合、Cは…」という事例で、判例がどう結論づけたかを知っているか。判例の理由づけまで理解する必要はなく、事例と結論の対応を覚える。テキストの判例は、「この事例なら、こう」の形で読む。理由を深追いすると、時間が溶けます。

民法の頻出9分野
分野よく出る論点
意思表示詐欺・強迫・錯誤・心裡留保・虚偽表示と第三者の保護
代理無権代理、表見代理、自己契約・双方代理
時効取得時効の要件、消滅時効の期間、完成猶予と更新
物権変動登記の対抗要件、二重譲渡、登記がなくても対抗できる場合
抵当権効力の及ぶ範囲、法定地上権、抵当権消滅請求、根抵当
債務不履行・解除履行遅滞、損害賠償、解除の要件と効果
契約不適合責任追完請求、代金減額、期間制限
賃貸借敷金、原状回復、転貸・譲渡、修繕
相続法定相続分、遺留分、遺産分割、相続放棄

捨てる問題も決めておきます。毎年、民法で2〜3問、受験生の大半が解けない難問が出ます。細かい条文の知識、マイナーな判例、複雑な事例。これは「みんな解けない」問題で、合否に影響しません。試験当日、問題を見て30秒で方針が立たなければ、印を付けて飛ばす。権利関係は問1から問14で、試験の最初に来るので、ここで時間を使いすぎると、後ろの宅建業法に響きます。権利関係は25分以内、と時間を決めて、残りは後回しにする。

勉強の順番は、こうです。一、借地借家法と区分所有法を先に固める(範囲が狭く、確実に取れる)。二、民法の9分野を、過去問から入る(テキストを最初から読まない)。三、確信度で周回して「自信あり×正解」の分野を増やし、「自信なし」の分野だけテキストに戻る。四、直前期は、宅建業法と法令上の制限に時間を移し、民法は9分野の確認だけにする。民法を「勉強した気になる科目」から「8問取る科目」に変える順番です。

配分を逆にしてからの数字です。九月から本試験までの三か月、民法は週に三時間、9分野の過去問の周回だけ。業法は週に十時間、過去問10年分を確信度で回す。模試の二回目(十月初め)で、権利関係は9問に下がり、業法は18問に上がった。法令上の制限6問、税その他4問、免除科目4問で、合計41点。三か月前の36点から5点上がり、内訳を見ると、民法で3点落として、業法で5点、法令で2点上げた形です。本試験は、権利関係8問、業法19問、法令上の制限7問、税その他3問、免除科目4問で41点。合格点は37点でした。

民法で落とした3点の中身も書きます。三か月前の12問は、9分野の外の問題(担保物権の細かい条文と、債権譲渡の判例)を2問当てていて、これは時間をかけた分の得点でした。9分野に絞ると、その2問は「捨てる問題」になる。実際、本試験では、9分野の外から3問出て、そのうち2問を落とし、1問は肢の消去で当てました。「みんな解けない問題」を捨てて、その時間を業法に回した。本文で書いた「12問取るために必要な勉強は、8問の3倍」の3倍分が、業法の5点になった計算です。

一つ、時間配分の話も書いておきます。本試験は権利関係が問1から問14で、この人は三か月前の模試で、問14まで38分かけていました。本番では、25分で切り上げるルールにし、問7の難問(30秒で方針が立たない)と問11を飛ばして、残りを先に解き、最後に戻った。戻ったときに問11は解けて、問7は解けなかった。飛ばした13分が、業法の見直しに回り、業法で一問、マークミスを見つけました。

最後に一つ。民法で覚えた知識は、宅建士試験のあとも使えます。行政書士試験の記事で書いたとおり、行政書士の民法は宅建の民法の延長にあり、資格の選び方の記事で書いた「段階的に法律系を取る」道の入口が、ここです。宅建で民法を8問取れる状態は、次の資格の準備がすでに始まっている状態でもあります。

「民法が得意」と言った人は、民法を12問から8問に減らして、合計を36点から41点に上げました。「権利関係で稼ぐ発想は、多くの受験者を落としてきた発想」と本文に書いたとおりで、この人の36点は、その発想の点数でした。一つ目の表の「目標の置き方」は、その人の配分を逆にした表です。民法は、得意でも、8問でいい。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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