学び・資格 2026-09-09

行政書士試験の構造 ― 300点の配分と、180点を取るための考え方

行政書士試験は年1回、11月の第2日曜日、3時間で300点満点。法令等244点と基礎知識56点に分かれ、合計180点以上、かつ法令122点以上・基礎知識24点以上で合格です。配点の構造(行政法と民法で法令の8割近く)、記述式60点の扱い、足切りの怖さ、そして「180点を取る」ための科目ごとの目標点の置き方を、合格した立場で整理します。

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模試の結果を持って来た42歳の会社員がいました。法令等150点、基礎知識20点、合計170点。「あと10点で合格圏なんです」。違います、と言いました。この人は、10点足りないのではなく、基礎知識で4点足りない。法令で200点取っても、基礎知識が20点(5問)なら不合格です。彼は「そんなルール、知りませんでした」と言いました。構造を知っているかどうかで、勉強の量が倍違う、と本文に書いたのは、この人のためです。

行政書士試験は、私が最初に取った法律系の資格です。宅建士試験の記事と海事代理士の勉強法の記事で試験の構造の話を書いてきましたが、この試験は「構造を知っているかどうか」で勉強の量が倍違う、という意味で、三つの中で最も構造の理解が効きます。2026年9月時点の制度で書きます。

試験は年1回、11月の第2日曜日、午後1時から4時までの3時間です。受験資格はなく、誰でも受けられます。300点満点で、内訳は「法令等」244点と「基礎知識」56点。法令等は、憲法、行政法、民法、商法・会社法、基礎法学から出題され、五肢択一が40問(160点)、多肢選択が3問(24点)、記述式が3問(60点)。基礎知識(2024年度から「一般知識等」を改めたもの)は、行政書士法などの諸法令、一般知識、情報通信・個人情報保護、文章理解から、五肢択一14問(56点)です。

合格基準は三つを同時に満たすことです。合計180点以上(6割)、法令等が122点以上(5割)、基礎知識が24点以上(14問中6問)。相対評価ではなく絶対基準なので、周りが何点でも180点を取れば合格です。合格率は年によって10〜15%程度で推移していて、これは「6割を取るのが難しい」というより、「準備が足りないまま受ける人が多い」試験だと感じています。

構造で最も重要なのは、行政法と民法の重さです。行政法は、択一19問、多肢選択2問、記述1問で、合計112点前後。民法は、択一9問、記述2問で、76点前後。この二科目で法令等244点のうち約190点、全体の6割強を占めます。憲法(択一5問と多肢1問)、商法・会社法(択一5問)、基礎法学(択一2問)は、合わせても50点程度です。つまり、行政法と民法で8割取れれば、それだけで150点を超え、残りは基礎知識の足切りを超えることに集中できます。

記述式60点の扱いは、受験生が最も悩むところです。記述は3問、各20点で、40字程度で法律上の結論と理由を書く形式。行政法1問、民法2問です。採点は部分点があり、キーワードが入っていれば点が来ますが、白紙なら0点。実務では「記述で30点取れれば十分」と考えて、択一と多肢で150点を確保する設計にします。記述に頼る設計は、当日の問題との相性で合否が揺れるので勧めません。

300点の配分の目安(科目別・2026年9月時点)
法令等 244行政法 約112点 / 民法 約76点 / 憲法 約28点 / 商法・基礎法学 約28点
基礎知識 5614問×4点

科目別の点数は出題数から計算した目安で、年によって数問前後します。合格は合計180点以上、かつ法令122点以上・基礎知識24点以上。

足切りの怖さも書いておきます。基礎知識24点は、14問中6問正解です。法令で200点取っても、基礎知識が5問なら不合格。ここは範囲が広く対策が難しいので、文章理解の3問(国語の読解問題で、練習すれば安定して取れます)と、個人情報保護法・行政書士法など出題が読める分野で4〜5問を確保する、という守りの設計にします。時事的な一般知識は、取れれば加点、取れなくても足切りを超える、という位置づけです。

勉強の順番は、民法から入って行政法、が私の勧めです。民法は行政法より日常の感覚に近く、宅建士や海事代理士と重なる部分もあって入りやすい。行政法は、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法という「条文の試験」で、条文を読み込んで択一の過去問を繰り返せば、最も点が伸びる科目です。過去問ループの記事で書いた「確信度で周回する」やり方は、行政法の択一で特に効きます。憲法は判例、商法・会社法は深追いせず頻出のみ、基礎法学は捨てても構わない。

180点を取るための目標点の置き方(一例)
区分目標考え方
行政法(択一・多肢)80点前後条文と過去問で最も伸びる。8割を目指す
民法(択一)24点前後9問中6問。事例問題に慣れる
憲法・商法・基礎法学28点前後判例と頻出だけ。深追いしない
記述式(3問)30点前後部分点狙い。頼らない設計
基礎知識28〜32点足切り24点を確実に。文章理解3問は落とさない
合計190点前後10点の余裕を持つ

現場で、300点の内訳を一緒に見直しました。彼の150点の中身は、行政法が112点中80点、民法が76点中32点、憲法・商法・基礎法学で38点。記述は60点中0点でした。三問とも「時間がなくて白紙」。基礎知識は14問中5問で、文章理解は3問中1問、これも時間切れでした。つまり、この人の問題は知識ではなく、時間配分と、足切りの存在を知らなかったことでした。

設計を三つ変えました。一つ、解く順番。法令の択一を最初から順に解いていたのを、行政法→民法→基礎知識の文章理解→残りの基礎知識→憲法・商法→多肢選択→記述、に変える。文章理解を集中力のあるうちに解き、記述は最後に、残り時間で書けるところまで書く。二つ、記述の位置づけ。0点前提をやめ、部分点で30点を狙う。行政法の記述は条文のキーワード、民法の記述は結論と条文の要件、と型を決めて、毎週一問ずつ書く練習を足す。三つ、基礎知識は8問を目標に、文章理解3問と個人情報保護・行政書士法で4問を固める。一般知識の時事は、直前一か月だけ。

翌年の本試験。行政法86点、民法32点、憲法・商法・基礎法学42点で択一と多肢が160点、記述が24点、法令等184点。基礎知識は9問で36点。合計220点で合格でした。前年の模試と比べると、法令の択一は10点しか伸びていません。伸びたのは、記述の0点が24点になったことと、基礎知識の5問が9問になったこと。知識の量より、構造に合わせた設計の変更のほうが、点に直結しました。

最後に。行政書士試験は、合格すれば「独立して開業できる」国家資格です。宅建士は会社に勤めて使う資格、海事代理士は船舶の専門資格ですが、行政書士は、相続、許認可、契約書、と生活に直結する仕事を、自分の名前でできます。このサイトの解説記事の多くは、その資格で仕事をしている実務の中から書いています。180点は、その入口です。

「あと10点」と言った人は、実際には「あと4点」の壁の前に立っていました。その4点は、法令をあと10時間勉強しても埋まらず、文章理解の解く順番を変えることで埋まりました。この記事の二つ目の表に「目標点の置き方」を書いたのは、300点満点の試験を「どこで何点取るか」の設計図として見てほしいからです。180点は、知識の量ではなく、配分で取ります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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