学び・資格 2026-09-27
行政書士試験の行政法の攻め方 ― 112点を「三つの法律の比べ方」と「数字の表」で取る
行政書士試験の行政法は、択一19問・多肢選択2問・記述1問で112点前後。300点満点の4割近くを一科目で占めます。行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法の三つは、期間・相手・手続きを横に並べて比べると混ざらなくなり、地方自治法は直接請求の数字を表にすると取れる科目に変わります。模試で択一11問だった人が16問に上げた順番を書きます。
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模試の行政法が択一19問中11問だった人の答案には、同じ種類の間違いが並んでいました。審査請求の期間を「処分を知った日から6か月」、取消訴訟の出訴期間を「3か月」と答えている。二つの数字が逆です。本人は「両方覚えたはずなのに」と言いました。覚えてはいたのです。ただ、別々の日に、別々のノートで覚えていた。行政法の失点の多くは、知らないことより、似たものどうしが混ざることから来ます。
行政書士試験の構造の記事で、行政法と民法で法令等244点の8割近くを占める、と書きました。行政法の内訳は、五肢択一19問(76点)、多肢選択2問(16点)、記述式1問(20点)で、合わせて112点前後。一つの科目で300点満点の4割近くになります。ここで8割を取る設計が、合格の骨格です。
一般的な法理論 12点(択一3問)、行政手続法 12点(択一3問)、行政不服審査法 12点(択一3問)、行政事件訴訟法 12点(択一3問)、国家賠償法 8点(択一2問)、地方自治法 12点(択一3問)、総合(複数の法律) 8点(択一2問)、多肢選択 16点(2問)、記述式 20点(1問)
年によって出題数は多少ずれます。2026年9月時点の出題形式で書いています。
択一19問の並びは、近年はおおむね決まっています。行政法の一般的な法理論が3問、行政手続法3問、行政不服審査法3問、行政事件訴訟法3問、国家賠償法(損失補償を含む)2問、地方自治法3問、複数の法律にまたがる問題が2問。年によって多少ずれますが、この目安で過去問を分けると、どこが弱いかが数字で見えます。冒頭の人は、不服審査法と訴訟法の6問で2問しか取れていませんでした。
勉強の中心は、三つの法律を横に並べることです。行政手続法は処分をする前のルール、行政不服審査法は処分のあとに行政に見直しを求める手続き、行政事件訴訟法は処分のあとに裁判所に判断を求める手続き。この順番で時間の流れに置くと、それぞれの条文がどこの場面の話かが決まります。そのうえで、期間・誰に・誰を相手に、を一枚の表にします。
一般的な法理論の3問は、条文ではなく考え方の問題です。行政行為の効力(公定力、不可争力、執行力、不可変更力)、取消しと撤回の違い(最初から違法だったものを遡って消すのが取消し、あとの事情で将来に向けて効力を失わせるのが撤回)、行政指導や行政計画の扱い。ここは用語の意味を一行で言える状態にしておけば、3問中2問は取れる分野です。
期間の表はこうです。審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年。再調査の請求も3か月です。取消訴訟は、処分があったことを知った日から6か月、処分の日から1年。「行政に言うのは3か月、裁判所に行くのは6か月」と、手続きの重さと期間の長さを結び付けて覚えると、逆にはなりません。審査請求の相手は、原則として処分をした行政庁の最上級行政庁。取消訴訟の被告は、処分をした行政庁が所属する国や公共団体です。
| 審査請求(行政に見直しを求める) | 取消訴訟(裁判所に求める) | |
|---|---|---|
| 知った日から | 翌日から3か月 | 6か月 |
| 処分の日から | 翌日から1年 | 1年 |
| どこへ | 原則、最上級行政庁 | 裁判所 |
| 相手(被告) | ― | 処分をした行政庁が所属する国・公共団体 |
行政事件訴訟法は、訴訟の種類の地図も一枚にします。処分に不服があるときの抗告訴訟には、取消訴訟、無効等確認訴訟、不作為の違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止め訴訟があり、ほかに当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟があります。問題文の事例が「処分がすでにされたのか、まだされていないのか、申請に返事がないのか」を先に見分けると、どの訴訟の話かが決まり、要件の肢を読む前に半分の選択肢が消えます。
行政手続法は、申請に対する処分と不利益処分の比べ方で問われます。申請に対する処分では、審査基準を定めて公にすることが義務、標準処理期間は定めるよう努める(定めたら公にする)。不利益処分では、処分基準を定めて公にするよう努める。不利益処分のうち、許認可の取消しや資格・地位を奪う処分などは聴聞、それ以外は弁明の機会の付与。「義務か努力義務か」「聴聞か弁明か」の二つの軸で、肢のひっかけのほとんどが作られています。意見公募手続の意見提出期間が30日以上、という数字もここに入ります。
地方自治法は、数字の表にすると取れる分野です。直接請求は、条例の制定改廃と事務の監査が有権者の50分の1以上の署名で、請求先はそれぞれ長と監査委員。議会の解散と、議員や長の解職は原則3分の1以上で、請求先は選挙管理委員会。住民監査請求は住民なら一人でもでき、財務会計上の行為から1年以内。住民訴訟は、監査請求を経たうえで、監査結果の通知から30日以内。この表は、冒頭の人が最後まで毎朝見ていた一枚です。
| 請求 | 必要な署名 | 請求先 |
|---|---|---|
| 条例の制定・改廃 | 有権者の50分の1以上 | 長 |
| 事務の監査 | 有権者の50分の1以上 | 監査委員 |
| 議会の解散 | 原則3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
| 議員・長の解職 | 原則3分の1以上 | 選挙管理委員会 |
国家賠償法は、条文が短く、判例の結論で問われます。1条は公務員の公権力の行使による損害で、故意・過失が要る。2条は道路や河川などの営造物の設置・管理の瑕疵による損害で、過失は要らない。判例は、宅建士試験の民法の記事で書いたのと同じで、理由づけより「この事例なら、こう」の対応を覚えます。
多肢選択の2問は、判例や条文の文章に四つの空欄があり、20ほどの語句から当てはまるものを選ぶ形式です。空欄一つが2点なので、一問8点のうち、分かる空欄だけでも点になります。択一の周回で判例の結論を「事例と結論の対応」で覚えていれば、空欄の前後の文から語句を絞れます。多肢のための特別な勉強は、ほとんど要りません。
記述式の1問は、訴訟の種類・被告・期間を40字程度で書かせる形が多く見られます。つまり、上の表をそのまま言葉にできれば、部分点が来る設計です。「誰を被告として、どのような訴訟を、いつまでに提起すべきか」という問いに、「国を被告として、処分の取消訴訟を、処分を知った日から6か月以内に提起する。」と書ける形を、週に一問ずつ練習しました。
時間の配分も書いておきます。この人は会社員で、平日は一日1時間半、休日は4時間。そのうち行政法に平日1時間、休日2時間をあて、残りを民法と基礎知識に回しました。行政法の中では、最初の一か月を三つの法律の表づくりと不服審査法・訴訟法の過去問に、次の一か月を手続法と地方自治法に、最後の一か月を全体の周回と記述の練習にあてています。
冒頭の人の数字です。三つの法律の表と地方自治法の表を作ってから、過去問5年分の行政法(択一95問)を二周。不服審査法と訴訟法の6問の枠では、次の模試で5問、本試験で5問。行政法全体では、択一16問(64点)、多肢選択で12点、記述で14点、合わせて90点でした。模試のときの推計60点前後から、30点ほど上がった計算です。
行政法は、条文の数は多くても、問われる形が少ない科目です。前か後か、行政か裁判所か、義務か努力義務か。その三つの比べ方で並べ直すだけで、覚えていた知識が点に変わります。「覚えたはずなのに」と言った人に足りなかったのは、知識ではなく、並べ方でした。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-27
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-27 確認)。
- 行政書士試験研究センター ― 試験の実施要領、試験科目と出題形式、過去の試験問題
- e-Gov 法令検索「行政不服審査法」 ― 18条(審査請求期間:処分を知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年)
- e-Gov 法令検索「行政事件訴訟法」 ― 14条(取消訴訟の出訴期間:処分を知った日から6か月、処分の日から1年)