学び・資格 2026-09-09

行政書士試験の記述式対策 ― 40字で3問、60点を「30点取る設計」にする

行政書士試験の記述式は、民法2問・行政法1問を各40字程度で答える3問60点。配点は大きいのに、採点基準が公表されず、年によって厳しさが変わると言われる、いちばん計算しにくい部分です。択一の知識をそのまま書く「型」、部分点の取り方、白紙を作らない練習、過去問ループの択一周回と組み合わせる手順を、合格した立場で書きます。

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再現答案を見せてもらったことがあります。前年に176点で落ちた受験生の、記述式の3問です。1問目は白紙。2問目は「損害賠償を請求できる」の一文だけで11字。3問目は、正しい制度の名前が書いてあるのに、相手方が逆でした。三問の合計は、本人の推定で6点。あと4点で合格だった人の、60点分の答案がこれでした。この記事で「白紙は最悪」と書いたのは、この1問目のことです。

行政書士試験の構造の記事で、記述式は「30点取れれば十分、頼らない設計にする」と書きました。この記事は、その30点をどう取るか、の話です。記述式は300点満点のうち60点で、配点の2割。しかし採点基準は公表されず、部分点の付き方も分からない。受験生が一番不安になる部分で、だからこそ、不安に見合わない時間をかけてしまう部分でもあります。

まず、記述式の正体を書きます。問題は3問、各20点。行政法1問、民法2問。事例が示され、「誰に対して、どのような請求ができるか、40字程度で記述しなさい」という形で問われます。答えは、択一で問われる知識と同じです。違うのは、五つの選択肢から選ぶのではなく、自分で文にすること。つまり、記述式は「択一の知識を、40字の文に組み立てる試験」です。新しい知識は要りません。

書く「型」を持つことが、対策の中心です。40字程度なら、書けることは三つか四つの要素だけです。誰が(主体)、誰に対して(相手方)、何を(請求・行為)、どういう理由・根拠で(条文・制度の名前)。この四つを、「Aは、Bに対し、〇〇を理由として、△△を請求することができる。」という一文に入れる。事例を読んだら、まずこの四つの空欄を埋め、それから文にする。字数は結果としてついてきます。

部分点の取り方は、この型から導けます。採点は、キーワードごとに点が付く方式と考えられています(公表はされていませんが、模範解答と受験者の再現答案の分析から、そう推測されています)。「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者」「取消訴訟の出訴期間」「無権代理人の責任」といった、制度の名前や条文の用語が入っているかどうかで点が動く。逆に言えば、結論が違っていても、事例が指している制度の名前が正しく書けていれば部分点が入る可能性がある。だから、白紙は最悪です。分からなくても、事例が指していそうな制度の名前と、四つの要素のうち分かるものを書く。

40字の型(四つの要素)
要素問い例(民法・無権代理)
主体誰がBは
相手方誰に対して無権代理人Aに対し
根拠どの制度・条文を理由に無権代理人の責任(民法117条)に基づき
請求・結論何を履行または損害賠償を請求できる

練習の順序は、択一が先です。過去問ループの記事で書いた確信度の周回で、民法と行政法の択一を回す。そのなかで「自信あり」で正解できる肢は、そのまま記述の材料になります。択一の周回で「なぜこの肢が正しいか」を一言で言える状態になったら、記述の練習に入る。記述の問題集を開いて、答えを見る前に四つの要素を書き出し、40字にまとめ、模範解答とキーワードを照合する。この照合で「制度の名前が違う」「相手方が違う」を潰していく。1問あたり10分、1日3問で、試験までに過去問と予想問題を一通り回せば足ります。

出題される分野には、傾向があります。民法は、意思表示(詐欺・錯誤・心裡留保)、代理(無権代理・表見代理)、物権変動(対抗要件・第三者)、債権(債務不履行・解除・相殺・保証)、不法行為、親族・相続の中から。行政法は、行政手続法の申請・不利益処分、行政不服審査法の審査請求、行政事件訴訟法の取消訴訟(原告適格・出訴期間・執行停止)、国家賠償法の1条・2条。この範囲の「典型事例と結論」を、型に沿って書けるようにしておく。

記述式の練習の流れ
段階すること目安
1民法・行政法の択一を確信度で周回し、「自信あり×正解」を増やす試験の4か月前まで
2記述問題集で、答えを見る前に四つの要素を書き出す1日3問・10分ずつ
3模範解答とキーワードを照合し、制度の名前と相手方の誤りを潰す同上
4当日は択一のあとに記述、3問で30分、白紙を作らない本番

当日の書き方も一つ。問題用紙の余白に四つの要素を書いてから、解答用紙に清書する。いきなり書き始めると、40字を超えて削り直すことになり、時間を失います。記述式は3問で30分を目安に、択一を先に終えてから取りかかる。時間切れで白紙、が最も避けるべき結果です。

現場で、その三問をやり直してもらいました。1問目は行政法で、事例は「処分の取消しを求めたいが、出訴期間が過ぎている」。本人は事例を読んで「分からない」と白紙にしていましたが、四つの要素を空欄にして聞くと、「誰が=原告、誰に=処分庁、何を=無効確認の訴え、根拠=出訴期間の制限がない」と、口では全部答えられました(答案にするときは、訴えの被告は処分をした行政庁が属する国または公共団体になる、という点まで書きます。行政事件訴訟法38条・11条)。知識はあった。文にする手順がなかっただけで、型に沿って書き直すと38字で、模範解答とキーワードが三つ一致しました。

2問目は民法で、「損害賠償を請求できる」の11字は、結論だけです。誰に対して、どの制度で、が抜けている。事例は無権代理で、正しくは「Bは、無権代理人Cに対し、民法117条の責任として履行または損害賠償を請求できる」。本人が書いた11字には制度の名前も相手方もなく、部分点はほぼ入りません。同じ知識を四つの要素で書き直すと、42字。3問目は相手方が逆だっただけで、「AはBに対し」を「BはAに対し」に直せば済む間違いでした。事例の登場人物を、余白に矢印で書いていれば起きなかった逆転です。

翌年、この人は同じ型で、1問あたり10分、1日3問を四か月続けました。過去問と予想問題で合計約350問。本試験の記述は、自己採点で3問合計36点。前年の6点から30点増えました。択一は前年から8点しか伸びていません。合計214点で合格。記述式の60点を「取りにいく」のではなく、「白紙と結論だけ、をなくす」だけで、この人は記述の点を30点上積みしました。

最後に、記述に自信がついたからといって、目標を30点から上げる必要はありません。採点の厳しさは年によって変わると言われていて、択一で稼いだ点を記述の変動で失わない設計が、合格の確率を上げます。記述は、択一の知識を文にできれば取れる。文にできない知識は、択一でも危うい。記述の練習は、択一の理解を深める練習でもある、と思っておくと、時間の使い方が落ち着きます。

前年の再現答案の三問は、白紙、結論だけ、相手方の逆転、でした。三つとも知識の不足ではなく、書く手順の不在です。この記事の一つ目の表に置いた「40字の型」は、その人と一緒に余白に書いた四つの空欄そのものです。記述式が不安な人は、まず自分の再現答案を見てください。知識が足りないのか、手順が足りないのか。多くの場合、後者です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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