学び・資格 2026-09-09

「確信度で回す」はどこから来たか ― 元ネタはなく、十数年前に自分のために作ったPHPの過去問システム

過去問ループの「大きな○・小さな○・?・小さな×・大きな×」は、何かの学習理論を元にしたものではありません。十数年前、司法書士試験を受けようとして、6か月の準備期間のうち3か月を使って、PHPとMySQLで自分のためだけに作った過去問システムが原型です。裁断機とScanSnapで過去問を取り込み、五つのボタンで答え、点を1・0.6・0.4・0.2・0で付け、1点が取れなかった問題だけを回す。その設計と、当時の結果(択一は合格ライン、記述で撃沈)を書きます。

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家の書斎に、業務用の裁断機があります。刃の幅が30センチ、重さが十数キロ。十数年前に買ったもので、いまは年に数回、書類を裁つくらいにしか使いません。この裁断機で最初に裁ったのは、司法書士試験の過去問集でした。背表紙を落として、ScanSnapに通して、OCRにかける。その日から三か月、私は試験勉強ではなく、試験勉強の道具を作っていました。この記事は、その三か月と、そのあとの三か月の話です。

過去問ループと暗記シートスクラッチの「答える前に自信を記録する」方法について、「どの本やどの理論を元にしたのか」と聞かれることがあります。答えは、元ネタはありません。自分で考えました。あとから、認知心理学に似た考え方があることを知りましたが、それは偶然の一致で、作ったときは自分の発明だと思っていました。その経緯を書きます。

十数年前、司法書士試験を受けようと決めました。準備期間は6か月。宅建士の民法の知識はあったものの、司法書士の範囲は広く、過去問の量も多い。紙の過去問集を回すやり方では、どの問題を何回解いて、どれが分かっていてどれが分かっていないのかが、すぐに分からなくなる。そこで、勉強の前に、自分の勉強を記録する仕組みを作ることにしました。

作ったのは、PHPとMySQLで動く、自分専用の過去問システムです。パソコンとiPhoneの両方で使える画面にして、通勤中も回せるようにした。SQLは当時まったく分かっておらず、検索しながら書きました。過去問の取り込みは、市販の過去問集を業務用の裁断機で裁断し、ScanSnapでスキャンして、OCRで文字にして流し込む。裁断機は今も家にあります。この仕組みを作るのに、6か月のうち3か月を使いました。

仕組みの中身は、いま公開している過去問ループとほぼ同じです。問題を読んで、押すのは五つのボタンだけ。絶対に○だと思ったら大きな○、たぶん○なら小さな○、絶対に×なら大きな×、たぶん×なら小さな×、まったく分からなければ「?」。○×を選ぶのと同じ手間で、自信まで記録に残ります。点は、大きいほうで当たれば1点、小さいほうで当たれば0.6点くらい、「?」は0.4点くらい、小さいほうで外せば0.2点、大きいほうで外せば0点、という具合に付けて(当時の細かい数字は覚えていませんが、この階段でした。いまの過去問ループでは1・0.5・0.3・0.1・0にしています)、合計を100点満点に直して表示する。

この点の付け方で、何が見えるか。正解した問題でも、大きな○で当てた1点と、小さな○で当てた0.6点は違う。前者は分かっている、後者は当たっただけ。不正解でも、小さな×で外した0.2点と、大きな×で外した0点は違う。前者は迷った、後者は思い込み。正答率という一つの数字では見えない、「分かっているつもりで間違えている問題」が、0点の列として浮かび上がります。それを先に潰す。当時、それを自分のために作った理由は単純で、覚える時間が足りなかったからです。全部を均等に復習する時間はなく、思い込みだけを直す時間ならあった。

五つのボタンと点の階段
押すボタン意味当たったとき外れたとき
大きな○/大きな×絶対にこっち1点(分かっている。しばらく出さない)0点(思い込み。最優先で復習)
小さな○/小さな×たぶんこっち0.5点(当たっただけ。もう一度出す)0.1点(迷って外した。復習)
?まったく分からない0.3点0.3点

「一周」の数え方も、このときに決めました。全問を解いたら一周。日を改めて(少なくとも一日以上空けて)もう一度全問解いたら二周目。同じ日に、1点が取れなかった問題だけを何度も回すのは、周には数えません。一周が終わると、1点を取れなかった問題だけが並ぶボタンがあって、それを回す。さっき解いたばかりなので、点は9割近くに上がる。もう一度押すと、残った一割ほどが並ぶ。それも回して、全部1点になったら、その日は上がり。ただし、記録に残す点数は、最初の一周の点だけです。復習で上げた100点を残しても、実力の記録にはならないからです。この「その日の復習は記録しない、周の点だけ残す」という決め方は、いまの過去問ループにもそのまま入っています。

結果を書いておきます。システムを作るのに3か月かかったので、勉強に使えたのは残りの3か月でした。択一は、合格ラインまで届きました。ところが、司法書士試験には記述式(登記申請書を書く問題)があり、それを一切やっていなかった。当然、書けず、記念受験のような形で終わりました。システムは択一を回すことに完全に特化していて、記述の練習は別に要る。そのことを、身をもって覚えました。行政書士の記述対策の記事で「記述は択一の周回だけでは足りない」と書いているのは、この経験からです。

一日の流れと「周」の数え方

  1. 一周目 全問を解く(点数を記録)(この点だけが残る)
  2. 同じ日 1点が取れなかった問題だけを回す(9割近くまで上がる。周には数えない)
  3. 同じ日 残った一割ほどを回す(全部1点で、その日は上がり)
  4. 翌日以降 日を改めて全問を解く(これが二周目。周ごとの点の変化を見る)

そのシステムは、その後、海事代理士の筆記の準備でも使いました。海事代理士の勉強法の記事に書いた「確信度で回す」は、このPHPの仕組みを、手で動かした話です。そして、KuraLabを作ることになったとき、最初に「これを公開する形に作り直そう」と思ったのが、過去問ループでした。当時は自分一人のための道具だったものを、資格ごとに問題集を分けて、誰でも使える形にした。暗記シートスクラッチは、同じ「自信を先に記録する」考え方を、参考書の赤字に持ち込んだものです。

あとから知った話も、一応書いておきます。認知心理学には、「自分がどれだけ分かっているかの見積もりは当てにならない」というメタ認知の研究、「読み直すより思い出す練習のほうが定着する」というテスト効果の研究、選択式のテストで答えと一緒に自信を答えさせる確信度採点という評価法があります。私のやり方は、結果としてそれらと同じ方向を向いていますが、それを読んで作ったのではありません。時間がない受験生が、自分の弱点を先に見つけるために組んだ、実用の仕組みです。理論の裏付けがあると分かったのは、あとからの安心でした。

作っていた三か月の数字を書きます。取り込んだ過去問は、択一の肢に分けて約9,000肢。OCRの誤読は肢ごとに直し、一日に200肢ほど。テーブルは三つで、問題、回答の記録、周の記録。画面は、問題文と五つのボタン、それだけ。iPhoneで開いたときにボタンが親指で押せる大きさになるまで、CSSを何度も直しました。当時の私は、PHPは書けてもSQLは書けず、「前回の周で1点でなかった問題を出す」というクエリ一つに、二日かけました。作りながら、「これは勉強なのか」と何度も思いました。勉強ではない。でも、これがないと、9,000肢を回せない。

残りの三か月の数字も書きます。一周目は、9,000肢を26日で回して、100点満点で41点。大きな○か×で当てた肢は全体の三割ほどで、「?」が四割。二周目は19日で58点。三周目は14日で71点。四周目の途中で試験日が来ました。「大きいほうで外した」0点の肢は、一周目に約900、三周目で約210。この900から210への減りが、正答率の伸びより、私には手応えでした。思い込みで覚えていた肢が、三分の一以下になった。本番の択一は、自己採点で合格ラインをわずかに超え、記述は、白紙に近い状態で出しました。

一つ、いまでも覚えている肢があります。民法の物権で、「登記を備えなければ第三者に対抗できない」という一文に、一周目も二周目も大きな○を押して、二回とも外していました。例外のある肢でした。三周目で小さな○にして、また外して、そこで初めて条文を引きました。大きな○を二回押して二回外した、というのは、自分が「分かっている」と思い込んでいた強さの記録で、この肢のことを、いまでも過去問ループの「落とし穴」の説明を書くときに思い出します。

自分で作った仕組みで、自分の試験を受ける。司法書士は届きませんでしたが、宅建士、行政書士、海事代理士は、この考え方で取りました。十数年前のPHPのコードは、もう動かしていません。でも、五つのボタンと、点の階段と、周の数え方は、そのまま過去問ループの中に生きています。

裁断機は、いまも書斎にあります。司法書士には届かず、システムは記述を教えてくれませんでした。ただ、三か月で作った五つのボタンと点の階段と周の数え方は、そのあと宅建士、行政書士、海事代理士の三つを通り、いまは過去問ループの中で、私以外の人の肢を回しています。「元ネタはありません」と本文の最初に書きました。元ネタは、時間がなかった一人の受験生と、一台の裁断機です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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