土地・不動産 2026-10-05

不動産の売買契約書と印紙税 ― 2,800万円なら1通1万円、2通作れば2通分、貼り忘れは3倍

不動産を売る契約の日には、契約書に貼る収入印紙(印紙税)がかかります。税額は契約金額の区分で決まり、2027年3月までに作る契約書は軽減後の額。原本を何通作るかで合計が倍になり、貼り忘れると過怠税で3倍。一方、個人が実家を売るときの領収書には印紙が要らないことがあります。区分の表、消費税の扱い、譲渡費用としての扱いを、相続した実家を姉妹で売った例の金額で整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → [売るとき] → 貸す・借りる・特殊な権利

相続した実家を売ることになった60代の女性が、仲介の会社から届いた「契約日のご案内」を持って来ました。持ち物の欄に「収入印紙 1万円分」とあります。「税金は売れてから払うものだと思っていました。契約の日にも払うんですか」。払います。ただしこれは儲けにかかる税金ではなく、契約書という紙にかかる税金(印紙税)です。いくらになるか、誰が払うか、貼り忘れたらどうなるかを、順に書きます。

印紙税は、法律で決められた種類の文書を作ったときにかかる税金で、収入印紙を文書に貼り、印鑑やサインで印紙と紙にまたがるように消して(消印)納めます。不動産の売買契約書は、その代表です。税額は契約書に書かれた金額で決まります。さらに不動産の売買契約書には軽減措置があり、2014年4月1日から2027年3月31日までに作る契約書は、本来の税額より低い額になります(2026年10月時点の制度)。

よく出てくる区分を書くと、契約金額が500万円を超え1,000万円以下なら5,000円、1,000万円を超え5,000万円以下なら1万円、5,000万円を超え1億円以下なら3万円です。区分の境目は「以下」で決まるので、ちょうど5,000万円の契約書は1万円、5,001万円なら3万円になります。契約金額が1万円未満の契約書には、印紙は要りません。

不動産の売買契約書の印紙税(1通あたり)
契約金額本来の税額軽減後(2027年3月31日までに作る契約書)
100万円超〜500万円以下2,000円1,000円
500万円超〜1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超〜5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超〜1億円以下6万円3万円
1億円超〜5億円以下10万円6万円

2通作れば、2通分かかります。売主と買主がそれぞれ原本を持つ形にすると、1通ずつに印紙が要るので、2,800万円の契約なら1万円が2通で2万円です。法律上は、契約書を一緒に作った売主と買主が連帯して納める立場にあり、実務では、それぞれが自分の持つ1通の印紙代を負担するのが一般的です。原本を1通だけ作って買主が持ち、売主はコピーを持つ形にすれば、印紙は1通分で済みます。コピーには印紙は要りません(ただし、コピーに改めて署名や押印をすると、契約書として印紙が要る扱いになることがあります)。どちらの形にするかは、契約の前に仲介の会社を通じて決めておきます。

原本を何通作るかで、印紙の合計が変わる(売買代金2,800万円の場合)
原本を何通作るかで、印紙の合計が変わる(売買代金2,800万円の場合)左に売主の姉妹二人、右に買主。原本を売主用と買主用の2通作ると、1通ごとに1万円の印紙が要り、合計2万円。売主用の1万円は姉妹で5,000円ずつ。原本を1通にして相手はコピーを持てば印紙は1万円で済む。個人の売主が書く手付金と残代金の領収書には、営業に関しない受取書として印紙が要らない。 売主(姉) 売主(妹) 買主 売主用 原本 印紙1万円印紙1万円 姉妹で5,000円ずつ姉妹で5,000円ずつ 買主用 原本 印紙1万円印紙1万円 2通で2万円2通で2万円 原本1通+コピー原本1通+コピー 印紙は1万円(コピーは不要)印紙は1万円(コピーは不要) ※コピーに署名押印し直すと課税されることも※コピーに署名押印し直すと課税されることも 領収書(手付金・残代金)領収書(手付金・残代金) 個人の売主なら印紙なし個人の売主なら印紙なし 営業に関しない受取書は非課税営業に関しない受取書は非課税

左に売主の姉妹二人、右に買主。原本を売主用と買主用の2通作ると、1通ごとに1万円の印紙が要り、合計2万円。売主用の1万円は姉妹で5,000円ずつ。原本を1通にして相手はコピーを持てば印紙は1万円で済む。個人の売主が書く手付金と残代金の領収書には、営業に関しない受取書として印紙が要らない。

税額は2027年3月31日までに作る契約書の軽減後の額です。印紙を貼り忘れると過怠税で3倍(自分から申し出れば1.1倍)になります。

消費税の扱いも一つあります。土地の売買には消費税がかからず、個人が自分の家を売る場合は建物にもかかりません。会社が売主の物件で、建物の消費税額が契約書にはっきり分けて書かれていれば、その消費税額を除いた金額で区分を判定します。「消費税込み」とだけ書かれている場合は、込みの金額で判定します。

貼り忘れたときです。印紙を貼らずに契約書を作り、税務調査で見つかると、本来の印紙税の3倍の過怠税(本来の額と、その2倍の額の合計)がかかります。調査の前に自分から税務署に申し出れば、1.1倍に軽くなります。貼っても消印をしなかったときは、その印紙の額面と同じ額の過怠税です。過怠税は、所得税の必要経費にも法人税の損金にもなりません。なお、印紙を貼り忘れても、契約そのものが無効になるわけではありません。印紙は税金の納め方であって、契約が成り立つ条件ではないからです。

契約のあとで値段を変えたときも、印紙がかかることがあります。買主の住宅ローンの審査や、引渡し前の不具合の見つかり方によっては、売買代金を変える覚書(変更契約書)を作ります。元の契約書があることがはっきりしている場合、代金を増やす覚書なら、増えた金額で区分を判定します。減らす覚書は、金額の記載のない契約書と同じ扱いで200円です。逆に、印紙を多く貼りすぎたり、印紙の要らない文書に貼ってしまったりしたときは、税務署で手続きをすれば払い戻し(還付)を受けられます。迷ったら、貼る前に仲介の会社か税務署に確かめるのが近道です。

印紙の買い方と消し方も書いておきます。収入印紙は、郵便局や法務局の窓口などで買えます。1万円の印紙は置いていない店もあるので、契約日の前に郵便局で用意しておくと安心です。貼ったら、印紙と契約書の紙にまたがるように、印鑑かサインで消します。消すのは売主でも買主でもよく、契約の場では仲介の会社が「こちらに押印を」と案内することが多いはずです。消印を忘れると、先に書いたとおり額面と同じ額の過怠税になるので、貼ったその場で済ませます。

逆に、印紙が要らない書類もあります。代金を受け取ったときの領収書(金銭の受取書)は、本来は印紙税がかかる文書ですが、営業に関しない受取書は非課税です。国税庁は、個人が自宅を売る場合のように、商人ではない個人の行為は営業に当たらないとしています。相続した実家を個人が一度売るような場合も、営業には当たらないと考えられるので、売主が書く手付金や残代金の領収書に印紙は要りません。一方、仲介の会社が出す仲介手数料の領収書は、会社の営業として出すものなので、会社の側で印紙を貼ります。

売主が払った印紙代は、売ったあとの所得税の計算で「譲渡費用」として、儲けから差し引けます。不動産を売ったときの税金の記事で書いた計算式の、譲渡費用の欄に入るお金です。仲介手数料や測量費と一緒に、契約書の控えと、印紙を買ったときのレシートを残しておきます。

この家の場合です。売主は女性と妹の二人で、実家を2分の1ずつの共有で相続していました。売買代金は2,800万円(個人の売主なので消費税なし)。売主二人と買主で1通ずつ、計3通の原本を作る案もありましたが、売主側は1通を姉妹で持つことにして、原本は売主用と買主用の2通にしました。印紙は売主用が1万円、買主用が1万円。売主用の1万円は、姉妹で5,000円ずつ負担しました。印紙は姉が前の週に郵便局で買っておき、契約の席で貼って、姉妹二人の印鑑で消印しました。手付金280万円と残代金2,520万円(合わせて2,800万円)の領収書は、売主が二人とも個人なので印紙なし。もし原本を3通にしていたら、印紙は合計3万円で、売主側の負担は2万円になっていました。

この家の印紙税(売買代金2,800万円、原本2通)
書類印紙負担した人
売買契約書(売主用の原本)1万円姉5,000円・妹5,000円
売買契約書(買主用の原本)1万円買主
手付金280万円の領収書0円―(個人の売主)
残代金2,520万円の領収書0円―(個人の売主)
合計2万円
(参考)原本を3通にした場合3万円売主側は2万円

印紙税は、売買の諸費用の中では小さいほうですが、通数で倍になり、貼り忘れれば3倍になる税金です。何通作るかを契約の前に決め、領収書は印紙の要否を確かめ、払った印紙代は譲渡費用として控えを残す。契約書の控えと印紙のレシートは、翌年の確定申告まで、売買の書類と一緒に一つの封筒にまとめておくと探さずに済みます。軽減措置の期限(2027年3月31日)より後に作る契約書は、延長がなければ本来の税額になります。仲介手数料の計算は仲介手数料の記事に、売却全体の段取りは売却の流れの記事にまとめました。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-05

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-05 確認)。

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