土地・不動産 2026-09-29
液状化しやすい土地の見分け方 ― ハザードマップ、土地の成り立ち、地盤調査の三段階
地震のとき、家そのものは壊れていないのに、土地が液状化して家が傾く。液状化は「ゆるい砂の地盤」「浅い地下水」「強い揺れ」の三つが重なると起きます。買う前に確かめる方法は三段階で、自治体の液状化ハザードマップ、国土地理院の地形分類図で土地の成り立ちを見る、そして地盤調査。宅建業者の重要事項説明で液状化は説明義務の対象ではない、という盲点も含めて書きます。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → [災害と地盤] → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「ハザードマップは見ました。浸水は大丈夫でした」。土地の購入前の相談で、男性はそう言いました。私が確かめたのは、別の地図でした。その土地は、国土地理院の治水地形分類図で「旧河道」、つまり昔の川の跡でした。浸水の色は付いていなくても、液状化の危険は別の話です。
液状化は、地震の揺れで、水を含んだゆるい砂の地盤が一時的に液体のようになる現象です。地面から水や砂が噴き出し、地盤が沈み、上に載っている家が傾きます。家の構造がどれだけ丈夫でも、土地が液状化すれば傾く。2011年の東日本大震災では千葉県浦安市などの埋立地で、2024年の能登半島地震では新潟市西区や石川県内灘町で、大きな被害が出ました。
起きる条件は三つです。一つ、砂質でゆるい地盤であること。二つ、地下水位が高い(地面から数メートル以内に水がある)こと。三つ、強い揺れ。三つが重なる場所は、土地の成り立ちでほぼ決まっています。埋立地、昔の川・池・沼を埋めた土地、海岸の砂丘のうしろの低地、川沿いの氾濫平野。
地面の断面図。上に家、その下にゆるい砂の層、砂の層の中に浅い地下水面。地震の揺れが加わると砂と水が混ざって液体のようになり、家が傾く。
埋立地、旧河道(昔の川)、旧池沼、砂丘のうしろの低地、氾濫平野に多い。土地の成り立ちで、ほぼ決まっている。
確かめ方の一段階目は、自治体の液状化ハザードマップです。国土交通省のハザードマップポータルサイトから市区町村を選ぶと、液状化の危険度を色分けした地図が見られます(作っていない自治体もあります)。ここで「危険度が高い」の色が付いていれば、次の段階に進む理由になります。付いていなくても、地図の精度はおおまかなので、安心の根拠にはまだなりません。
二段階目は、土地の成り立ちを見ることです。国土地理院の「治水地形分類図」や「土地条件図」で、その土地が旧河道・旧池沼・氾濫平野・埋立地のどれかに当たるかを確かめます。古い地図(明治・大正の地形図)と今の地図を重ねて、昔そこに川や池があったかを見る方法もあります。町名に「沼」「池」「新田」「浜」が付く土地は、成り立ちを疑う手がかりになります。冒頭の男性の土地は、この段階で旧河道と分かりました。
三段階目は、地盤調査です。住宅の場合、スクリューウエイト貫入試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)が一般的で、費用は数万円。ただ、この試験は地盤の硬さを見るもので、液状化の判定には向きません。液状化まで見るなら、ボーリング調査で土のサンプルを取り、粒の大きさと地下水位を調べます。費用は十数万円からで、売主や建築会社が既に持っていることもあるので、まず「調査データはありますか」と聞いてください。
ここで、盲点を一つ書きます。宅建業者の重要事項説明では、水害ハザードマップの説明が2020年8月から義務になりましたが、液状化は説明義務の対象に入っていません。業者が知っていれば伝えることはありますが、聞かなければ出てこないことが多い。「この土地の液状化の危険度と、地盤調査のデータはありますか」と、買主の側から聞くことが要ります。
| 段階 | 何を見る | どこで | 費用 | 分かること |
|---|---|---|---|---|
| ① ハザードマップ | 液状化の危険度の色分け | ハザードマップポータル→市区町村 | 無料 | おおまかな危険度(作っていない自治体もある) |
| ② 土地の成り立ち | 旧河道・旧池沼・埋立地か | 国土地理院 治水地形分類図・古い地形図 | 無料 | その土地が「液状化しやすい成り立ち」か |
| ③ 地盤調査 | 砂の層の厚さ・地下水位 | ボーリング調査(売主・建築会社のデータを先に確認) | 十数万円〜(既存データがあれば無料) | この土地そのものの判定 |
対策は、土地を選び直す以外にもあります。地盤改良(表層改良、柱状改良)や、支持層まで杭を打つ方法で、費用は数十万円から数百万円と幅があります。液状化しても家が傾きにくい基礎(べた基礎の強化、地盤の締固め)を建築会社と相談する道もあります。費用が土地の値段に見合うかは、調査の結果を見てから判断することになります。
男性の土地は、ボーリング調査のデータが売主の手元にあり、地下水位が地表から1.5メートル、砂質の層が厚いことが分かりました。液状化の危険度は高い、という判定でした。男性は、地盤改良に約200万円かかる見積もりを取り、その分を値引き交渉の材料にして、最終的に180万円の値引きで買いました。
地震保険との関係も書いておきます。地震保険は、液状化で建物が傾いたり沈んだりした場合も、損害の認定の対象です。傾きの角度や沈んだ深さで、全損・大半損・小半損・一部損の区分が決まります。ただし、保険金は建物の再建費用そのものではなく、火災保険の保険金額の半分が上限です。液状化の危険がある土地に建てるなら、地震保険は入っておく前提で、それでも足りない分を地盤改良で減らす、という組み立てになります。
マンションの場合は、事情が少し違います。多くのマンションは支持層まで杭を打っているので、建物そのものは液状化でも傾きにくい。浦安市の被害でも、建物は無事で、敷地の地面が沈んで配管や外構が壊れた、という形が多くありました。建物は大丈夫でも、水道やガスが数週間止まる。マンションを買うときも、敷地の成り立ちと、杭の有無・長さを管理組合の資料で確かめてください。
最後に、買う前に売主か仲介業者に聞く三つの質問を書きます。「この土地の液状化ハザードマップの危険度はどれですか」「地盤調査のデータはありますか。あれば見せてください」「近くで過去に液状化の被害はありましたか」。三つとも、聞かれなければ出てこないことが多い。重要事項説明の項目に入っていない以上、聞くのは買う側の仕事です。
宅建士の目で、値段の話も足しておきます。液状化の危険は、路線価や公示価格には直接は表れません。同じ道路に面していれば、旧河道でも台地でも路線価は同じです。表れるのは取引の場面で、地盤改良の見積もりが値引きの根拠になります。冒頭の男性が百八十万円の値引きを引き出せたのは、ボーリングのデータと改良の見積もりを持って交渉したからです。逆に、液状化の被害が出た地域は、被害のあと数年は買い手がつきにくく、売るときに効いてきます。自治体によっては、液状化対策の工事に助成を出しているところもあるので、危険度の高い土地を買うなら、住宅課か建築指導課で助成の有無も聞いてください。
土地の値段は、形と接道で決まる部分が大きい(旗竿地の記事)のですが、地盤はもう一つの見えない条件です。同じ広さ、同じ形でも、旧河道の土地と台地の土地では、家を建てたあとの安心が違う。買う前に、三つの地図と一つの調査で、地面の下を見ておいてください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-29
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-29 確認)。
- 国土交通省 ハザードマップポータルサイト ― 自治体の液状化ハザードマップへの入口。「わがまちハザードマップ」から市区町村を選ぶ
- 国土地理院 治水地形分類図 ― 旧河道・旧池沼・氾濫平野など、土地の成り立ち(地形分類)を確かめる地図