土地・不動産 2026-09-09
土地の分筆と合筆 ― 一つの土地を分ける、複数の土地を一つにする登記
相続した土地を兄弟で分けたい、一部だけ売りたい、逆に何筆にも分かれた土地を一つにまとめたい。そのための登記が分筆と合筆です。分筆に必要な境界確定測量とその費用(数十万円から100万円超)、土地家屋調査士の役割、登録免許税、合筆できない5つの条件、遺産分割で分筆する場合の順番と落とし穴を整理します。
この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → 建てられるか・どれだけ建つか → [境界・隣地・道] → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利
「兄と半分ずつなので、共有で登記しようと思います」。相続した土地約330平米(100坪)を、兄弟二人で分ける相談でした。共有で登記すれば、今日決められる。分筆すれば、測量と境界確認で半年と数十万円。弟は共有を選びかけていて、私は、共有で登記した土地が20年後にどうなるかの話をしました。兄が亡くなり、兄の妻と子が持分を相続し、共有者が四人になる。弟は、その日、分筆を選びました。この記事は、その半年の話です。
相続した100坪の土地を、長男と次男で半分ずつにしたい。こういう相談で、まず説明するのが「土地は一筆単位でしか登記できない」ということです。一筆の土地を二人の名義にすれば共有になり、共有の記事で書いたとおり、あとで身動きが取れなくなります。二人がそれぞれ自分の土地として持つには、一筆を二筆に分ける「分筆登記」をしてから、それぞれの筆を相続登記します。逆に、何筆にも分かれた土地を一つにまとめるのが「合筆登記」です。
分筆登記は、土地の表示に関する登記で、土地家屋調査士の仕事です(司法書士ではありません)。手順は、まず現地の測量と境界の確認。分筆するには、分ける土地全体の境界が確定している必要があり、隣接する土地の所有者全員と道路管理者(市町村など)の立ち会いで境界を確認し、確認書を取り交わします。公図の記事で書いた「地積測量図がない」古い土地では、この境界確定測量が最も時間と費用のかかる工程で、隣地の数と協力の度合いによって、数か月から一年、費用は数十万円から100万円を超えることもあります。境界が確定したら、分筆線を決めて地積測量図を作り、法務局に申請します。登録免許税は、分筆後の筆数×1,000円です。
分筆線の引き方には、実務上の注意があります。二筆ともに道路に接するようにしないと、接道義務の記事で書いた「建て替えられない土地」を自分で作ることになります。旗竿地の記事のような形で分けるなら、竿の幅(2m以上)と、その形で将来売れるかを考える。また、分筆で一筆あたりの面積が小さくなると、市町村によっては最低敷地面積の制限(用途地域で定められることがあります)に引っかかることがあります。分筆は「線を引く」だけの作業に見えて、その線が土地の価値を決めます。
合筆登記は、複数の筆を一つにする登記で、これも土地家屋調査士(または所有者本人)が申請します。測量は原則不要で、登録免許税は合筆後の土地一筆につき1,000円と安い。ただし、合筆にはできない条件があります。地番区域(大字など)が違う、互いに接していない、地目が違う、所有者が違う(共有なら持分も同じでなければならない)、所有権以外の権利(抵当権など)の登記があって内容が違う。この五つのどれかに当たると、合筆できません。相続した土地が宅地と畑の二筆なら、地目の記事で書いた地目変更を先にして揃えないと合筆できない、というのが典型です。
遺産分割で分筆する場合の順番を、具体的に書きます。まず、相続人全員で「この土地をこう分ける」という分割線を決め、遺産分割協議書に書きます。ただし、協議書には「分筆後の土地」を書く必要があるので、実務では、先に亡くなった人の名義のまま(相続人全員から委任を受けて)分筆登記をし、分筆後の地番が確定してから協議書を作り、それぞれの筆を各相続人に相続登記する、という順番になります。分筆前に協議書を作るなら、「分筆予定の図面」を添付して、分筆後にその図面どおりの筆を取得する、という書き方をします。協議書の記事で書いた「登記が通る書き方」は、分筆が絡むと一段難しくなり、ここは土地家屋調査士と司法書士(または行政書士)の連携が必要です。
| 条件 | 例 | 対処 |
|---|---|---|
| 地番区域が違う | 大字が違う | 合筆不可 |
| 接していない | 間に道路や他人の土地がある | 合筆不可 |
| 地目が違う | 宅地と畑 | 地目変更登記で揃えてから |
| 所有者(持分)が違う | 一筆は単独、一筆は共有 | 所有権移転で揃えてから |
| 所有権以外の権利の登記が違う | 一筆にだけ抵当権 | 抵当権抹消などで揃えてから |
費用感を書いておきます。境界がすでに確定していて地積測量図がある土地の分筆なら、調査士の報酬と実費で十数万円から数十万円。境界確定から必要なら、上に書いたとおり数十万円から100万円超。この費用を相続財産から出すか、分筆で土地を取得する相続人が負担するかは、協議書で決めておかないと揉めます。
相続した土地を分筆して兄弟で分ける流れ
- 0か月 地積測量図の有無を確認、土地家屋調査士に相談(測量図がなければ境界確定から)
- 1〜6か月 境界確定測量(隣地・道路管理者の立ち会い)(数十万〜100万円超、隣地の協力次第)
- 確定後 分筆線を決めて分筆登記(被相続人名義のまま。登録免許税 筆数×1,000円)
- 分筆後 分筆後の地番で遺産分割協議書を作成(分筆費用の負担も協議書に)
- 協議後 各筆をそれぞれの相続人に相続登記(登録免許税 評価額の0.4%)
半年の中身です。土地は間口16メートル、奥行き約20メートル、前面道路は幅6メートルの公道。まず、地積測量図の有無。法務局で調べると、昭和52年の地積測量図があり、ただし現在の精度基準では使えない古い図面で、境界確定測量からやり直し。隣接地は三筆と道路。隣接地の所有者は全員在住で、立ち会いは二か月で終わり、道路管理者(市)の立ち会いを含めて確定まで四か月。測量と境界確定の費用は約48万円。ここまでが、分筆の費用の大半です。
分筆線は、間口を8メートルずつに分ける南北の線にしました。二筆とも間口8メートルで道路に接し、接道義務は問題なし。この市の最低敷地面積は用途地域で100平米で、一筆165平米ずつなので問題なし。もう一つの案として、道路側と奥側に東西の線で分ける案もありましたが、奥側の筆が旗竿地になり、竿の幅を2.5メートル取ると奥の筆の有効面積が減る。南北の線なら、二筆とも整形地で、将来売るときの値段も同じ。分筆線を決めるのに、兄弟と三回打ち合わせました。
順番も書きます。亡くなった父の名義のまま、兄弟二人が土地家屋調査士に委任して分筆登記。分筆後の地番が「123番1」と「123番2」に確定してから、遺産分割協議書を作り、兄が123番1、弟が123番2、と書いて、それぞれ相続登記。分筆登記の登録免許税は2筆で2,000円、調査士の報酬は測量込みで約58万円、相続登記の登録免許税は各筆の評価額(約620万円ずつ)の0.4%で約2万5,000円ずつ。合計で約63万円を、相続財産の預金から出す、と協議書に書きました。
分筆は、相続で土地を「共有にしない」ための最も確実な方法です。費用と時間はかかりますが、共有で先送りしたときに次の世代が払う費用と手間に比べれば、生きているうちに線を引くほうが安い。相続登記ナビで相続登記の準備をする人が土地を分ける予定なら、まず地積測量図の有無を確認してください。
共有で登記すれば今日終わっていた土地は、半年と約63万円で、兄弟がそれぞれ自分の土地として持つ二筆になりました。弟は、その後、自分の筆を売り、兄は自分の筆に家を建てています。共有だったら、弟が売ることに兄の同意が要り、兄が建てることに弟の同意が要る。「生きているうちに線を引くほうが安い」と本文の最後に書きました。63万円が、その線の値段です。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-06
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。