学び・資格 2026-10-03

行政書士試験の商法・会社法 ― 5問20点を捨てずに、設立・機関・商行為で2問を取りにいく

商法・会社法は択一5問・20点で「捨て科目」と呼ばれがちですが、合格基準の180点まであと4点、という年は珍しくありません。合格基準の三つの線、出題の中心(設立・株式・機関・商行為)、民法と逆になる規定、2020年に廃止された商事法定利率と商事消滅時効、直前2か月で過去問25問を回す計画を、実際の得点表で書きます。

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「商法は捨てました」。行政書士試験を受け終えた方が、自己採点の結果を持って来ました。合計176点。合格の基準の180点まで、4点足りません。択一1問が、ちょうど4点です。商法・会社法の5問は、5問とも勘で塗って、当たったのは0問でした。「1問でいいから取れていれば」。この記事は、その1問の話です。

行政書士試験の法令等は、憲法、行政法、民法、商法(会社法を含みます)、基礎法学から出題されます。商法・会社法は五肢択一の5問で、1問4点、合わせて20点です。行政法の112点、民法の76点と比べると小さく、範囲は会社法だけで条文が900を超えます。だから「捨て科目」と呼ばれます。

法令等244点の配点 ― 科目ごと(2026年10月時点の出題形式)
法令等244点の配点 ― 科目ごと(2026年10月時点の出題形式)行政法112点 択一19問・多肢2問・記述1問民法76点 択一9問・記述2問憲法28点 択一5問・多肢1問商法・会社法20点 択一5問基礎法学8点 択一2問

行政法 112点(択一19問・多肢2問・記述1問)、民法 76点(択一9問・記述2問)、憲法 28点(択一5問・多肢1問)、商法・会社法 20点(択一5問)、基礎法学 8点(択一2問)

択一は1問4点、多肢選択は1問8点、記述式は1問20点。合計244点。

合格の基準は三つあり、全部を満たす必要があります。法令等の得点が満点の50%以上(244点中122点以上)、基礎知識が40%以上(56点中24点以上、14問中6問)、試験全体で60%以上(300点中180点以上)です(行政書士試験研究センターの公表による。2026年10月時点)。商法・会社法の20点は法令等にも全体にも入るので、1問取れば、両方の得点に4点ずつ効きます。

私の考えは、「捨てない、ただし深追いしない」です。目標は5問中2問、8点。会社法の全体を読むのではなく、毎年のように出る所に絞ります。例年の出題は、商法総則・商行為から1問前後、残りが会社法、という配分が多く、会社法では、設立、株式、機関(株主総会・取締役・取締役会・監査役)が中心です。

設立では、まず二つの方法を区別します。発起人が設立時に発行する株式の全部を引き受ける発起設立と、発起人のほかに引受人を募集する募集設立です(会社法25条)。各発起人は1株以上を引き受けなければならず、定款は発起人全員が署名または記名押印して作り、公証人の認証を受けないと効力を生じません(26条・30条)。認証を受けた定款は、会社の成立前は、決められた場合を除いて変更できません。ここまでで、設立の問題の肢のいくつかは切れます。

株式では、「公開会社」という言葉の意味から入ります。会社法の公開会社は、上場している会社という意味ではなく、発行する株式の全部または一部に譲渡の制限が付いていない会社のことです(2条5号)。全部の株式に譲渡制限がある会社が「公開会社でない株式会社」で、中小企業の多くはこちらにあたります。取締役会を置く義務(327条1項)も、この定義から決まります。言葉の意味を取り違えると、知識は正しくても肢を逆に読んでしまいます。過去問を見ると、設立と機関の問題の多くは、この「公開会社かどうか」「取締役会を置くかどうか」の二つの分かれ道で答えが変わります。

機関では、数字と「置かなければならない」が問われます。公開会社や監査役会設置会社などは取締役会を置かなければならず(327条1項)、取締役会設置会社は、原則として監査役を置かなければなりません(同条2項)。取締役会設置会社の取締役は3人以上です。株主総会の普通決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決まり、特別決議は、出席した株主の議決権の3分の2以上で決まります(309条)。数字の組み合わせは、表にして一枚で持っておきます。

会社法の数字 ― 一枚で持っておく
項目内容条文
設立の方法発起設立(発起人が全部引受)/募集設立(引受人を募集)会社法25条
定款発起人全員が署名・記名押印、公証人の認証で効力26条・30条
取締役会を置く義務公開会社・監査役会設置会社など327条1項
普通決議議決権の過半数が出席し、出席議決権の過半数309条1項
特別決議議決権の過半数が出席し、出席議決権の3分の2以上309条2項

商法総則・商行為は、民法との違いだけを押さえます。商行為の代理人が本人のためにすることを示さなくても、その行為は本人に対して効力を生じます(商法504条)。民法の代理は、本人のためにすることを示す(顕名)のが原則なので、ここが逆です。商人間の留置権は、商行為によって自分の占有に入った債務者の物であれば、留置する物と債権との結びつき(牽連性)がなくても留置できます(521条)。一方で、2020年4月の民法改正で、商事法定利率(年6%)と商事消滅時効(5年)の規定は削除され、民法の規定に一本化されました。古い問題集でこの二つを覚えると、今の試験では逆に間違えます。

勉強の時間の配分の目安です。行政法と民法に全体の8割を使い、商法・会社法は直前期の2か月で、過去問5年分(25問)を2周する程度にします。正誤と確信度で回す方法なら、「大○」で取れた肢から順に手を離していけます。全部を分かろうとせず、五つの肢のうち二つか三つを確信を持って切れれば、5択は2択か3択になります。

25問は、肢にすると125肢です。最初の1周で、125肢を設立・株式・機関・商行為・その他の五つに仕分けし、その他(組織再編、持分会社、社債など)に入った肢は、2周目から外します。残った肢を2周すれば、出題の中心は一通り見たことになります。試験の当日は、3時間で全部を解くので、商法・会社法は1問2分ほどで区切り、分からない肢は切れた肢だけで判断して次へ進みます。ここで時間を使いすぎて、行政法の記述式を書く時間が減るほうが、失う点は大きくなります。

冒頭の方の得点を、科目ごとに並べ直しました。行政法は112点中84点、民法は76点中48点(記述式の部分点を含みます)、憲法は28点中16点、基礎法学は8点中4点、商法・会社法は20点中0点で、法令等は152点。基礎知識は56点中24点で、基準ちょうどでした。合計176点です。商法・会社法で1問取れていれば180点、2問なら184点でした。

この方の得点 ― 商法・会社法が0問・1問・2問のとき
実際(0問)1問取れたら2問取れたら
行政法・民法・憲法・基礎法学152点152点152点
商法・会社法0点4点8点
法令等の合計(基準122点)152点156点160点
基礎知識(基準24点)24点24点24点
全体の合計(基準180点)176点180点184点
基準を満たすか全体で4点不足三つとも満たす三つとも満たす

5問とも勘で塗った場合、五肢択一で1問当たる確率は5分の1なので、平均すれば1問は当たる計算です。ところが、この方は0問でした。勘は平均でしか働かず、年に1回の試験では、外れる年もあります。設立・機関・商行為の三つに絞って2問を取りにいくほうが、勘で1問を期待するより、得点の見通しが立ちます。

翌年の計画は、行政法と民法の配分はそのままにして、直前2か月に商法・会社法の過去問25問を入れる、にしました。前年と同じ出来で、商法・会社法で2問取れれば184点です。行政法と民法を伸ばすより、商法・会社法の0点を8点にするほうが、少ない時間で届く4点でした。直前2か月で25問を2周するのにかかる時間は、1問を解いて解説と条文を読むまでを10分とすると、25問×2周×10分で500分、約8時間20分です。週末に1時間ずつなら、2か月で足ります。

「捨てました」の4点は、捨てた科目の20点のうちの4点でした。全部を取りにいく必要はなく、5問のうち2問を取りにいく。商法・会社法は、捨てる科目ではなく、少しだけ拾う科目です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-03

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-03 確認)。

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