土地・不動産 2026-09-09
固定資産税の縦覧と審査申出 ― 評価が高すぎると思ったら、4月に確かめて3か月以内に申し出る
固定資産税の納税通知書は、届いたまま払う人がほとんどです。しかし、評価額は間違っていることがあり、確かめる仕組みもあります。毎年4月の「縦覧」で、同じ市町村の他の土地・家屋の評価額と比べられ、自分の評価に不服があれば、納税通知書を受け取ってから3か月以内に「審査申出」ができます。縦覧と閲覧の違い、審査申出ができる年度、実際に見つかる誤りの例、還付の範囲を整理します。
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「隣と同じくらいの土地なのに、うちの固定資産税が三倍近いんです」。4月に、納税通知書を持った男性が来ました。隣は同じ通りの、同じくらいの面積の土地に家が建っている。男性の土地にも、8年前に建てた家がある。通知書を見ると、土地の課税標準額が、評価額の7割でした。住宅が建っている土地なら、課税標準は評価額の6分の1になるはずです。この記事は、その6分の1がなかった話です。
固定資産税評価証明書の記事で、評価額がどう決まるかを書きました。この記事は、その評価額が「間違っているかもしれない」ときの話です。固定資産税は、市町村が評価して、市町村が税額を計算して、納税通知書を送ってくる賦課課税です。自分で申告するわけではないので、評価の中身を見る機会がなく、間違っていても気づきません。実際、家屋の評価の誤り(取り壊した建物への課税、床面積の誤り、住宅用地の特例の適用漏れ)が、ときどき報道されます。確かめる仕組みを使ってください。
仕組みは二つあります。一つ、「閲覧」。自分の土地と家屋の固定資産課税台帳を、市町村の窓口でいつでも見られます。評価額、課税標準額、税額の内訳。納税通知書に付いている課税明細書と同じ内容ですが、地目、地積、家屋の構造と床面積、住宅用地の特例の適用状況などが詳しく載っています。二つ、「縦覧」。毎年4月1日から、第1期の納期限(多くの市町村で4月末か5月末)まで、「土地価格等縦覧帳簿」と「家屋価格等縦覧帳簿」を見られます。ここには、同じ市町村内の他の土地と家屋の評価額が載っていて、自分の評価額が近隣と比べて妥当かを確かめられます。他人の評価額を見られる、年に一度の期間です。
縦覧で見るのは、こういう点です。同じ道路に面した、同じくらいの面積の土地の評価額が、自分の土地と大きく違わないか。同じ年代・同じ構造・同じくらいの床面積の家屋の評価額と比べて、自分の家屋が高すぎないか。路線価図の記事で書いた固定資産税路線価(公示地価の7割が目安)に面積を掛けた額と、自分の土地の評価額が大きくずれていないか。住宅用地の特例の記事で書いた6分の1・3分の1が、住宅が建っている土地に適用されているか。取り壊した建物、増築していない家屋の床面積、が正しいか。
| 何が見られる・できる | いつ | どこで | |
|---|---|---|---|
| 閲覧 | 自分の土地・家屋の課税台帳(評価額、地積、床面積、特例の適用) | 通年 | 市町村の税務課 |
| 縦覧 | 同じ市町村内の他の土地・家屋の評価額との比較 | 4月1日〜第1期納期限 | 市町村の税務課 |
| 審査申出 | 評価額への不服の審査 | 納税通知書の受領翌日から3か月以内(原則、評価替えの年度) | 固定資産評価審査委員会 |
| 審査請求 | 税額計算(特例・税率)の誤り | 納税通知書の受領翌日から3か月以内 | 市町村長 |
不服があれば、「審査申出」です。固定資産評価審査委員会(市町村に置かれた第三者機関)に対して、納税通知書を受け取った日の翌日から3か月以内に、書面で申し出ます。審査委員会が評価を審査し、誤りがあれば評価額が修正され、税額も直ります。ただし、審査申出ができるのは「評価額」についてで、原則として評価替えの年度(基準年度、3年に一度。直近は2024年度、次は2027年度)に限られます。評価替え以外の年度は、地目の変更や家屋の新築・増改築など、評価額が変わった場合に限って申し出られます。評価額ではなく、税額の計算(特例の適用、税率など)の誤りは、審査委員会ではなく市町村長への「審査請求」で争います。どちらに当たるかは、市町村の税務課に聞けば教えてくれます。
審査申出の前に、まず市町村の税務課に相談することを勧めます。明らかな誤り(取り壊した建物への課税、床面積の間違い、特例の適用漏れ)は、審査申出をしなくても、税務課が確認して修正してくれることが多い。修正されれば、払いすぎた税金は還付されます。還付の範囲は、地方税法上は5年分ですが、市町村の要綱で10年、20年とさかのぼって返す運用をしているところもあります。
実務で見つかる誤りの例を挙げます。一つ、住宅用地の特例の適用漏れ。家を建てたのに、土地が「非住宅用地」のまま4倍余りの課税になっている。二つ、取り壊した建物への課税。建物を壊して滅失登記をしていないと、市町村が把握できず、課税が続く。三つ、家屋の床面積や構造の誤り。増築した部分が反映されていない(これは逆に安くなっている)、あるいは登記と現況が違う。四つ、土地の地目や利用状況の誤り。地目の記事で書いた登記と現況の差が、課税に影響している。五つ、私道や公衆用道路の非課税の適用漏れ。私道の記事で書いた、道路として使われている土地は非課税の申告ができる。
現場の確認です。まず市役所の税務課で、課税台帳を閲覧しました。土地の欄は「非住宅用地」。家を建てて8年、ずっと住宅用地の特例が適用されていませんでした。原因は、家を建てたとき、前の建物(倉庫)の滅失登記と新築の登記はしたが、市役所が土地の利用状況を「倉庫の敷地」のまま更新していなかったことでした。税務課は台帳を見て、その場で誤りを認めました。
| 誤り | 確かめ方 |
|---|---|
| 住宅用地の特例の適用漏れ | 課税明細書の「小規模住宅用地」「一般住宅用地」の区分 |
| 取り壊した建物への課税 | 課税明細書に建物が残っていないか。滅失登記の有無 |
| 家屋の床面積・構造の誤り | 台帳の床面積と登記・現況の照合 |
| 地目・利用状況の誤り | 台帳の地目と現況 |
| 私道・公衆用道路の非課税の適用漏れ | 道路として使われている部分の課税の有無 |
金額を計算しました。土地の評価額は1,800万円。住宅用地の特例(200平米までは6分の1)を適用すれば、課税標準は300万円、税率1.4%で年4万2,000円。実際に払っていたのは、非住宅用地として課税標準が評価額の7割の1,260万円、年17万6,400円。差額は年13万4,400円、8年で107万5,200円です(都市計画税は含めていません)。還付は、地方税法上は5年分。この市は要綱で10年までさかのぼる運用をしていたので、8年分全額、107万5,200円が戻りました。審査申出はしていません。税務課への相談で済んだ例です。
別の例も一つ。取り壊した建物への課税が続いていた件です。3年前に取り壊した離れの建物が、滅失登記をしていなかったため、市役所が把握できず、毎年2万円弱の課税が続いていました。こちらも税務課への相談で修正され、3年分が還付されました。滅失登記は、建物を壊してから1か月以内に法務局に出す義務があり、これをしないと、登記上も課税上も建物が残り続けます。
縦覧に行った例も書きます。評価替えの年に、自分の土地の評価額が、同じ通りの他の土地と比べてどうか、縦覧帳簿で確かめた人がいました。結果、自分の土地だけが「角地」の加算を受けていたが、実際には角地ではなかった(隣接する道は道路ではなく水路だった)。これは審査申出をして、審査委員会で評価額が修正されました。納税通知書を受け取ってから3か月以内、という期限のある手続きです。
最後に、確かめる習慣を一つ。納税通知書が届いたら、課税明細書の「評価額」「課税標準額」「特例の適用」の欄を、去年のものと並べて見る。評価替えの年(2027年度が次)は、4月の縦覧に行って近隣と比べる。相続した土地と家屋は、名義が変わった最初の年に、閲覧で台帳の内容を確かめる。固定資産税は毎年かかる税金で、誤りも毎年続きます。一度確かめておく価値は、あります。
4月に来た男性は、隣と比べただけでした。比べなければ、8年間そのままでした。固定資産税は、市町村が計算して送ってくる税金で、間違っていても誰も教えてくれません。この記事の最後に「確かめる習慣」と書いたのは、去年の通知書と並べる、縦覧に行く、名義が変わった年に台帳を見る、という三つの習慣が、107万円余りの差になるからです。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。