土地・不動産 2026-09-09

農地転用 ― 畑に家を建てる、農地を売るときの農地法4条・5条の手続き

農地を農地以外(宅地、駐車場、太陽光など)にするには、農地法の許可か届出が要ります。自分で転用するのが4条、転用目的で売買・貸借するのが5条。市街化区域内なら農業委員会への届出で済み、それ以外は都道府県知事の許可で、農地の区分(農用地区域内、第1種〜第3種)によって許可の可否がほぼ決まります。手続きの流れ、期間、必要書類、転用後の地目変更登記、相続した農地を転用する場合を整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → [建てられるか・どれだけ建つか] → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「実家の畑に、息子の家を建てたいんです」。60代の男性が、相続した畑の登記事項証明書を持って来ました。畑は実家の隣、市街化調整区域。「自分の土地に自分の息子の家を建てるのに、許可がいるんですか」。いります。しかも、その畑がどの区分かで、許可が出るまでの期間が、六週間にも二年にもなります。私が最初に言ったのは「農業委員会に、この畑の区分を聞きに行きましょう」でした。

農地の記事で、農地の相続そのものは許可不要で届出だけ、と書きました。しかし、相続した農地を「農地でなくす」となると、話は別です。畑に家を建てる、駐車場にする、宅地として売る。これらは農地転用で、農地法の許可か届出が要ります。許可なく転用すると、原状回復命令や罰則の対象になり、売買契約も効力を生じません。

農地法の条文で整理します。3条は、農地を農地のまま売買・貸借する場合(農業委員会の許可)。4条は、自分の農地を自分で転用する場合。5条は、転用する目的で農地を売買・貸借する場合。畑に自分の家を建てるなら4条、畑を宅地として買主に売るなら5条です。相続した農地に自分の家を建てる相談は4条、相続した農地を分譲業者に売る相談は5条になります。

手続きは、土地が市街化区域内かどうかで大きく分かれます。市街化調整区域の記事で書いた区分でいう市街化区域内の農地は、転用が前提の区域なので、農業委員会への「届出」で足ります。届出は、受理されれば効力が生じ、通常1〜2週間です。市街化区域の外(市街化調整区域、非線引き区域)の農地は、都道府県知事(権限移譲されている市町村では市町村長)の「許可」が要ります。農業委員会が受け付けて意見を付し、都道府県が判断する流れで、1〜2か月、大きな案件はそれ以上かかります。4haを超える転用は農林水産大臣との協議になります。

許可の可否は、その農地の「区分」でほぼ決まります。農業振興地域の「農用地区域内農地」(青地)は、原則として転用不許可で、転用するには先に農用地区域から除外する手続き(農振除外、半年から一年)が要ります。「甲種農地」(市街化調整区域内の特に良好な農地)と「第1種農地」(10ha以上の集団的農地、土地改良事業の対象地など)は、原則不許可。「第2種農地」(市街地に近い小さな農地、生産性の低い農地)は、代替地がなければ許可。「第3種農地」(市街地の中や、駅・役所から近い農地)は、原則許可。自分の農地がどの区分かは、農業委員会で聞けば分かります。この区分を知らずに「畑があるから家を建てよう」と計画すると、農振除外から始まって二年がかり、あるいは不許可、ということになります。

必要書類を書いておきます。許可申請書、土地の登記事項証明書、公図、位置図、転用の事業計画書(何を、いつ、どう造るか)、土地利用計画図(配置図)、資金計画と資金の証明(残高証明、融資の内定)、転用後の排水計画、隣接する農地の所有者や水利組合の同意書(求められる地域があります)。5条なら売買契約書(許可を条件とする停止条件付き)も。事業計画と資金の裏付けが求められるのは、「転用の許可だけ取って放置する」ことを防ぐためです。

農地の区分と転用の可否(市街化区域外)
区分内容転用
農用地区域内農地(青地)農業振興地域整備計画で農用地とされた農地原則不許可。先に農振除外(半年〜1年)
甲種農地市街化調整区域内の特に良好な農地原則不許可
第1種農地10ha以上の集団農地、土地改良事業の対象地など原則不許可(例外あり)
第2種農地市街地に近い小規模農地、生産性の低い農地代替地がなければ許可
第3種農地市街地の中、駅・役所に近い農地原則許可
(市街化区域内の農地)届出のみ(1〜2週間)

転用が終わったら、登記の地目を変えます。地目の記事で書いた地目変更登記は、転用の許可書(または届出の受理通知)と、現況(建物が建った、造成が終わった)を添えて、土地家屋調査士または本人が法務局に申請します。転用の許可を受けても、地目変更登記をしなければ、登記上は農地のままで、売買や担保設定で支障が出ます。固定資産税も、現況が宅地になれば宅地として課税されます。

現場の経過です。農業委員会で確かめると、その畑は「農用地区域内農地」、いわゆる青地でした。農振除外の手続きが先に要り、除外の申出は年に一〜二回しか受け付けない市町村が多く、除外の決定まで半年から一年、そのあとに4条の許可申請でさらに二〜三か月。最短でも一年、普通は一年半から二年。息子は来年の春に結婚する予定でした。

そこで、別の畑を見ました。男性は実家の裏にもう一枚、道路沿いの小さな畑を相続していました。農業委員会で聞くと、こちらは「第3種農地」。市街地に近く、周りに住宅が建ち始めている区域で、転用は原則許可。青地の畑に家を建てる計画を、道路沿いの畑に変えました。4条の許可申請に必要だったのは、申請書、登記事項証明書、公図、位置図、家の配置図、資金計画(住宅ローンの事前審査の結果)、排水計画、隣接農地の所有者の同意書。申請から許可まで六週間。息子の家は、翌年の春に間に合いました。

相続した農地を転用するまで

  1. 1 相続登記+農業委員会へ相続の届出(農地法の許可は不要)
  2. 2 農地の区分を農業委員会で確認(青地なら農振除外から)
  3. 3 事業計画・資金計画を作り4条/5条を申請(市街化区域内は届出)
  4. 4 許可(1〜2か月)→ 工事(許可条件どおりに)
  5. 5 地目変更登記(許可書+現況で法務局へ)

もう一つ、売る側の例です。相続した畑を「宅地として分譲業者に売りたい」という相談で、こちらは5条です。畑は第2種農地で、「代替地がなければ許可」の区分。業者が事業計画と資金計画を出し、農業委員会の意見を経て、県の許可まで約三か月。売買契約は「許可を条件とする」停止条件付きで先に結び、許可が出てから決済、というのが実務の順番です。許可が出る前に代金を受け取ったり、登記を動かしたりはできません。この畑は、青地なら売れなかった畑でした。

相続した農地を転用する場合の流れを、まとめます。相続登記(農地法の許可は不要、農業委員会に相続の届出)→ 農地の区分を農業委員会で確認 → 転用の見込みがあれば、事業計画と資金計画を作って4条または5条の申請 → 許可 → 工事 → 地目変更登記。区分が農用地区域内なら、その前に農振除外。相続した農地を「農地として売る」なら3条の許可で、買主は農業をする人に限られます。「農地でない土地として売る」なら5条で、買主の転用計画と資金が審査の対象です。農地は、相続した時点では、まだ使い道が決まっていない土地です。区分を確かめることから、その使い道の検討が始まります。

最初の日、男性は「自分の土地なのに」と言いました。農地は、所有者の土地であると同時に、農業の基盤として法律が守っている土地です。だから、使い道を変えるには許可が要り、その許可は畑の区分で決まる。青地の畑に二年かけるか、隣の第3種の畑に六週間で建てるか。この記事に「区分を確かめることから使い道の検討が始まる」と書いたのは、その最初の一歩が、農業委員会の窓口で十分で終わるからです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-15

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

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