土地・不動産 2026-10-27
マンションの窓とベランダから子どもが落ちないように ― 補助錠を窓枠に付けてよいか、室外機と物置が足場になる、管理組合ができること
8階に住む3歳と6歳の子の母親が、窓に補助錠を付けたいと管理会社に聞いたら「窓枠は共用部分です」と言われて止まっていました。子どもの転落は3〜8歳を中心に起き、夏に多いと消費者庁は注意を呼びかけています。標準管理規約で窓枠とベランダがどう扱われるか、穴を開けない補助錠と理事長の承認が要る工事の違い、室外機の上に立つと手すりがどこまで低くなるか、管理組合で決めておけることを書きます。
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「窓に補助錠を付けたいと管理会社に電話したら、窓枠は共用部分なので勝手に工事はできません、と言われて。それきりになっているんです」。築18年のマンションの8階に住む30代の母親が相談に来ました。子どもは3歳と6歳。上の子が最近、ベランダのエアコンの室外機によじ登って、手すりから下をのぞいていたのを見て、血の気が引いたといいます。
2026年10月、経済誌のサイトに、マンションでの子どもの転落事故を、家庭の対策と管理組合の協力で防ごうという、マンション管理士の記事が載りました。消費者庁も、窓やベランダからの転落は3〜8歳を中心に起きていて、9歳以下の子どもが建物から落ちて亡くなったのは令和2年までの5年間で21人、夏に多い、と注意を呼びかけています。窓を開ける季節に、子どもが一人になる数分で起きる事故です。
まず、建物の決まりです。建築基準法施行令126条は、2階以上のバルコニーなどの周りに、高さ1.1メートル以上の手すり壁や柵を付けるよう求めています。大人が寄りかかっても落ちない高さです。ところが、子どもは台に乗ります。室外機、物置、植木鉢の台、踏み台、段ボール。足場が一つあれば、1.1メートルの手すりは、子どもの腰の高さまで下がってしまいます。
次に、マンションの決まりです。多くのマンションが手本にしている国土交通省の標準管理規約では、窓枠と窓ガラスは「専有部分に含まれない」とされています(7条)。つまり、窓枠は建物全体の持ち物(共用部分)で、各住戸はそれを専用に使う権利(専用使用権)を持っているだけです。ベランダも同じで、共用部分を各住戸が専用に使っています(14条)。管理会社の「窓枠は共用部分」という答えは、ここから来ています。
では、補助錠は付けられないのか。分かれ目は、窓枠に穴を開けるかどうかです。窓のレールにはさんで締めるだけの補助錠は、外せば元どおりになり、共用部分に手を加える工事にはあたらない、と扱う組合が多いです。一方、ねじで窓枠に固定する補助錠や、窓に開き止めの金具を付ける工事は、共用部分に手を加えることになります。標準管理規約では、共用部分の保存行為は理事長に申請して承認を受けた場合などに限られ(21条)、窓の改良工事も、管理組合が速やかにできないときに、理事長の書面による承認を受けて各住戸の負担で行う形です(22条)。自分のマンションの規約が同じかどうかは、規約と使用細則で確かめます。
ベランダには、もう一つの事情があります。ベランダは火事のときの逃げ道で、隣との間の仕切り板(破って通る板)や、下の階へ降りるはしごのふた(避難ハッチ)があります。使用細則で、物置や大きな物を置くことを禁じているマンションが多いのはそのためです。室外機だけは動かせませんが、手すりから離れた位置に置き直せないか、管理会社に相談する余地はあります。
窓の中にも、足場はあります。窓の前に置いたベッドやソファ、低い棚、出窓。消費者庁は、窓枠や出窓に座らせない、窓や網戸に寄りかからせない、とも呼びかけています。網戸は虫を防ぐためのもので、子どもの体重を支えるようには作られていません。夏に窓を開けて網戸だけにしている部屋で、ソファから窓へよじ登る、という流れが一番危ないのです。家具の配置を一度、子どもの目の高さで見直すと、足場になっている物が見えてきます。
もう一つは、「少しの間だけ」です。ごみを出しに行く数分、下の子を寝かしつけている間、宅配便を受け取りに玄関に出ている間。転落は、大人が目を離したその短い時間に起きます。窓を開けた部屋やベランダに、小さな子どもだけを残さない。補助錠は、その数分の守りになります。
この家の数字です。室外機の高さを測ると60センチ、手すりの高さは115センチでした。室外機の上に立つと、手すりの上端までは55センチしか残りません。6歳の子が乗れば、手すりは腰より下になります。そこで、窓の補助錠を、子どもの手が届かない上のほうに付けることにしました。ベランダに出る掃き出し窓が2か所、腰の高さの窓が4か所で、レールにはさむ型の補助錠を1個1,500円(税込)で6個、合わせて9,000円です。ベランダの物置は玄関の収納に移し、室外機の前には何も置かないことにしました。
ベランダの断面。床から高さ115センチの手すり。手すりの手前に高さ60センチの室外機。室外機の上に子どもが立つと、手すりの上端まで55センチ。左の窓には、子どもの手が届かない上の位置に補助錠。窓枠とベランダは共用部分で、各住戸は専用使用権を持つ。穴を開けない補助錠は工事にあたらないと扱う組合が多く、ねじで止めるなら理事長の承認が要る。
高さは2026年10月にこの家で測った値。手すりの1.1メートル以上は建築基準法施行令126条。補助錠の扱いは各マンションの規約と使用細則で確かめてください。
管理会社には、レールにはさむ型ならどうか、ともう一度聞き直してもらいました。答えは「工事にあたらないので申請は不要」。最初の電話では「窓に補助錠」としか伝わっておらず、ねじ止めの工事だと受け取られていたのです。問い合わせるときは、どんな物を、どう付けるのかまで伝えると、答えが変わることがあります。
| 対策 | 数 | 金額 |
|---|---|---|
| レールにはさむ補助錠(1個1,500円・税込) | 掃き出し窓2か所+腰窓4か所 | 9,000円 |
| ベランダの物置を玄関の収納へ移す | 1台 | 0円 |
| 室外機の前に物を置かない | ― | 0円 |
| 合計 | 9,000円(税込) |
管理組合ができることもあります。この母親は理事会に手紙を出し、次の三つが決まりました。一つ目、夏の前に、掲示板と配布物で、窓とベランダの転落に注意を呼びかける。二つ目、使用細則に、穴を開けない補助錠は申請なしで付けてよいと書き足す(一軒ずつ問い合わせなくて済むように)。三つ目、大規模修繕の点検の項目に、手すりのぐらつきやさびを入れる。手すりは共用部分なので、傷んでいれば組合が直します。
共用部分そのものにも、目を向ける場所があります。共用廊下や階段の窓、屋上へ出る扉、自転車置き場の屋根に登れる塀。子どもが一人で入れる場所に、足場と開く窓がそろっていないか。管理会社の点検のときに、理事が一度一緒に歩いて見ておくと、気づくことがあります。
賃貸のマンションに住んでいる場合も、考え方は同じです。窓枠に穴を開ける工事には大家さんの承諾が要り、レールにはさむ型なら、退去のときに外せば元に戻ります。退去のときの原状回復と敷金の記事に書いたとおり、借りた人が負担するのは、通常の使い方を超えて傷めた部分です。付ける前に管理会社に一言伝えておけば、退去のときにもめる種も残りません。
私は宅建士として中古マンションの売買にかかわるとき、ベランダの手すりの高さと、手すりの前に何が置かれているかを見ます。数字の上では基準を満たしていても、室外機の置き場所一つで、実際の安全はずいぶん変わるからです。
窓に補助錠を上のほうに付ける。手すりの前に足場を置かない。子どもだけを、窓の開いた部屋やベランダに残さない。どれも費用は小さく、一度やれば続く対策です。規約で迷ったら、何をどう付けるのかを書いて管理会社と理事会に聞いてください。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-28
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。
参考(公式)
この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-28 確認)。
- 消費者庁「子どもの転落事故に注意!」(2022年7月20日) ― 窓・ベランダからの転落は3〜8歳を中心に発生。9歳以下が建物から転落して亡くなったのは令和2年までの5年間で21人で、夏に多い。補助錠を子どもの手の届かない位置に、足場になる物を置かない、子どもだけにしない
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 ― 126条1項(屋上広場や2階以上のバルコニーなどの周囲には、高さ1.1メートル以上の手すり壁・さく・金網)
- 国土交通省「マンション標準管理規約」 ― 令和7年改正の単棟型の7条(窓枠・窓ガラスは専有部分に含まれない)、14条(バルコニー等の専用使用権)、21条(共用部分の保存行為は理事長の承認が要る)、22条(窓ガラス等の改良)