土地・不動産 2026-10-13

中古マンションは「管理」を見て買う ― 重要事項調査報告書の5つの数字と、200万円安い部屋の正体

中古マンションの値段は、広さや駅からの距離で決まりますが、住んでからの出費は管理で決まります。修繕積立金の残高、マンション全体の滞納、長期修繕計画、一時金や値上げの予定、売主自身の滞納。仲介業者を通せば、管理会社が作る「重要事項調査報告書」で多くが分かります。国の管理計画認定の基準も物差しになります(2026年10月時点で見直し中)。200万円安い部屋の10年間の出費を、表で並べます。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → [買う前に確認すること] → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「同じ駅、同じ築年数、同じくらいの広さで、二つの部屋が200万円違います。安いほうでいいですよね」。中古マンションを探している30代の夫婦が、二つの物件の資料を持ってきました。私は宅地建物取引士として、売買の重要事項説明をする立場にいます。資料をめくって最初に見たのは、部屋の写真ではなく、管理会社が出した「重要事項調査報告書」の数字でした。この記事は、そのとき見た順番を書いたものです。

マンションを買うと、部屋(専有部分)だけでなく、廊下や外壁、屋上などの共用部分も、ほかの持ち主と一緒に持つことになります。共用部分の修理のお金は、毎月の修繕積立金で貯め、足りなければ一時金を集めるか、借り入れます。だから、買う前の管理の状態が、買ったあとの出費を決めます。大規模修繕の見積の記事で、一戸30万円の一時金の例を書きました。あの30万円を払うのは、決議のあとに部屋を買った人かもしれません。

管理の状態は、重要事項説明で一部が分かります。宅地建物取引業法の施行規則(16条の2)は、マンションの部屋を売るとき、修繕積立金についての規約の定めとすでに積み立てられている額、滞納があればその額、管理費の額、管理を任せている会社などを説明するよう定めています。仲介業者は、この情報を管理会社に頼んで、「重要事項調査報告書」という書類で受け取ります(発行は有料のことが多く、ふつうは売主側の業者が取り寄せます)。買主は、契約の前に、この報告書そのものを見せてもらうよう頼めます。

報告書で見る数字は五つです。一つ目、修繕積立金の残高(管理組合が貯めている総額)。二つ目、マンション全体の滞納額。三つ目、長期修繕計画があるかと、最後に見直した年。四つ目、大規模修繕の予定と、一時金や積立金の値上げを決めたり検討したりしているか。五つ目、その部屋の売主自身の滞納です。五つ目は、買った人に引き継がれます(区分所有法8条。前の持ち主の滞納でも、管理組合は買った人に請求できます)。

重要事項調査報告書の五つの数字と、買ったあとの出費
重要事項調査報告書の五つの数字と、買ったあとの出費左に重要事項調査報告書。そこから五つの数字が、買ったあとの出費につながる。①修繕積立金の残高は一時金の大きさに、②マンション全体の滞納は値上げの圧力に、③長期修繕計画の見直し年は計画の当てになり具合に、④一時金・値上げの決議は、決議のあとに買えば自分が払うことに、⑤売主自身の滞納は買った人が引き継ぐこと(区分所有法8条)に。物差しは管理計画認定の基準。 調査報告書 報告書の数字報告書の数字 買ったあとの出費買ったあとの出費 ① 修繕積立金の残高① 修繕積立金の残高 ② 全体の滞納② 全体の滞納 ③ 長期修繕計画の見直し年③ 長期修繕計画の見直し年 ④ 一時金・値上げの決議④ 一時金・値上げの決議 ⑤ 売主自身の滞納⑤ 売主自身の滞納 一時金の大きさ一時金の大きさ 値上げの圧力値上げの圧力 計画の当てになり具合計画の当てになり具合 決議後に買えば自分が払う決議後に買えば自分が払う 買った人が引き継ぐ(8条)買った人が引き継ぐ(8条) 物差し:管理計画認定の基準(滞納は1割以内、30年以上の計画に大規模修繕2回以上など)物差し:管理計画認定の基準(滞納は1割以内、30年以上の計画に大規模修繕2回以上など)

左に重要事項調査報告書。そこから五つの数字が、買ったあとの出費につながる。①修繕積立金の残高は一時金の大きさに、②マンション全体の滞納は値上げの圧力に、③長期修繕計画の見直し年は計画の当てになり具合に、④一時金・値上げの決議は、決議のあとに買えば自分が払うことに、⑤売主自身の滞納は買った人が引き継ぐこと(区分所有法8条)に。物差しは管理計画認定の基準。

数字の良し悪しを測る物差しとして、国の「管理計画認定制度」の基準が使えます。2022年に始まった、管理がしっかりしたマンションを自治体が認定する制度です。たとえば、3か月分以上の修繕積立金の滞納額が全体の1割以内であること、長期修繕計画の期間が30年以上で、残りの期間に大規模修繕が2回以上入っていること、将来の一時金の徴収を予定していないこと、などです。国土交通省は2026年2月の検討会で、長期修繕計画の見直しの期限を今の「7年以内」から「5年以内」に縮めるなどの見直し案を示していて、2027年4月ごろの施行が予定されています(2026年10月時点。案の段階です)。認定を受けているかどうかより、この物差しに照らして目の前の数字がどうかを見るのが実用的です。

書類に出ないことは、総会の議事録で見ます。直近2〜3年分を見せてもらうと、積立金の値上げが何度も否決されている、理事のなり手がいない、管理会社を替える話が出ている、といった様子が分かります。報告書の数字は「今」の姿で、議事録は、その数字がこれからどう動くかの手がかりです。売主が持っていなければ、仲介業者を通じて管理会社に頼みます。

お金の受け渡しで、よく聞かれることも書いておきます。売主がそれまで払ってきた修繕積立金は、部屋を売っても売主に返ってきません。管理組合のお金として、部屋と一緒に次の持ち主に引き継がれます。積立残高が厚いマンションの値段が高めなのは、その貯金ごと買うからだ、と考えると分かりやすいです。反対に、売主に滞納があるときは、引渡しの日に売買代金の中から管理組合に払ってもらい、精算を済ませてから引き渡しを受けるのがふつうの段取りです。管理費と積立金の月の途中の分は、引渡しの日で日割りにして、売主と買主で分けることが多いです。

夫婦が持ってきた二つの物件です(どちらも築30年、50戸、70平方メートル前後)。Aは価格3,280万円、管理費が月1万2,000円、修繕積立金が月1万8,000円。管理組合の積立残高は1億500万円、滞納は全体で38万円、長期修繕計画は2年前に見直し済みで、一時金の予定はありません。Bは価格3,080万円、管理費が月1万円、修繕積立金が月9,000円。積立残高は2,800万円、滞納は全体で320万円、長期修繕計画は9年前に作ったままでした。報告書の備考欄には「3年後の大規模修繕に向け、一時金の徴収を検討中」とあり、議事録を見ると、積立金の値上げ案が2年続けて否決されていました。

毎月の負担は、Bのほうが1万1,000円安く見えます(管理費と積立金の合計で、Aは3万円、Bは1万9,000円)。けれど、Bの残高2,800万円では、この規模の大規模修繕に足りません。仮に工事が7,000万円かかれば、不足は4,200万円で、50戸で均等に割ると一戸あたり84万円の一時金です(実際は、部屋の広さに応じた割合で割ることが多い)。一時金のあとも、次の工事に向けて積立金を上げないと、同じことを繰り返します。

表は、買ってから10年間の支払いで二つを比べたものです。Bは、3年後に一時金84万円を払い、そのあと積立金が月9,000円から月2万4,000円に上がる、と仮定しました。上がる分は月1万5,000円で、残りの7年間(84か月)で126万円です。Aの積立金は10年間変わらない、と仮定しました。合計は、Aが3,640万円、Bが3,518万円で、差は200万円から122万円に縮みます。このとおりになるとは限りませんが、「200万円安い」のうち約78万円は、あとから払うお金だったことになります。

買ってから10年間の支払い(Bは3年後に一時金84万円、その後は積立金が月2万4,000円になると仮定)
A(積立が厚い)B(200万円安い)
部屋の価格3,280万円3,080万円
管理費と積立金(今の額で10年分)月3万円×120か月=360万円月1万9,000円×120か月=228万円
一時金0円84万円
積立金の値上げ分(月1万5,000円×84か月)0円126万円
10年間の合計3,640万円3,518万円
AとBの差―122万円(最初の差は200万円)

夫婦は、Aを選びました。Bを選んではいけない、という話ではありません。Bを選ぶなら、一時金と値上げを見込んで値段を交渉する、という道もあります。大事なのは、その200万円がどこから来ているかを知ったうえで決めることです。

売るときにも、同じ書類が見られます。管理の状態は、次に買う人の目にも同じように映ります。相続したマンションを売る相談でも、私は報告書と議事録を先に取り寄せてもらうようにしています。

中古マンションの値段は部屋で決まり、住んでからの出費は管理で決まります。この記事の図は、報告書の五つの数字が、買ったあとのどの出費につながるかを一枚にしたものです。部屋を見に行く前に、報告書を見せてもらってください。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-13

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-13 確認)。

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