土地・不動産 2026-10-02

2025年4月からの「4号特例」縮小 ― 木造2階建ての大規模なリフォームに、建築確認が要るようになった

2025年4月の建築基準法の改正で、木造2階建ての家や延べ面積200平米を超える平屋は「新2号建築物」になり、屋根の全面改修や階段の架け替えのような大規模なリフォームにも建築確認が要るようになりました。どの工事が当たるのか、平屋200平米以下は何が変わらないのか、費用と工期がどう変わるのかを、築40年の実家の見積もり2案で比べます。

目次を見る →

この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → 買う前に確認すること → [建てられるか・どれだけ建つか] → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

「工務店から『この工事は確認申請が要ります』と言われて、見積もりが二つになりました」。築42年の木造2階建ての実家を、相続したあとに直して住むつもりの40代の女性が、二通の見積書を持って来ました。一つは屋根を下地から全部やり直し、急な階段を架け替える案。もう一つは、屋根の表面だけを替え、階段はそのまま手すりを付ける案。金額は300万円以上違い、一つ目の案には「設計・確認申請・工事監理」という行が増えていました。「前は要らなかったと聞いたんですが、何が変わったんですか」。

変わったのは、2025年4月1日に施行された建築基準法の改正です。それまで、木造2階建てで延べ面積500平米以下といった小さな建物は「4号建築物」と呼ばれ、建築士が設計していれば構造などの審査を省く特例(いわゆる4号特例)がありました。また、4号建築物は、大規模の修繕や大規模の模様替をしても建築確認は要りませんでした。改正で4号建築物という区分はなくなり、木造かどうかに関係なく、2階建て以上か延べ面積200平米を超える建物は「新2号建築物」、平屋で延べ面積200平米以下の建物は「新3号建築物」になりました。

いちばん影響が大きいのが、新2号建築物の大規模なリフォームです。建築基準法6条1項は、新2号建築物の「大規模の修繕」「大規模の模様替」をする場合にも、工事に着手する前に確認を受けることを求めています。大規模の修繕・模様替とは、建物の主要構造部(壁・柱・床・はり・屋根・階段)の一種以上について、その過半を直すことです(2条)。国土交通省の案内では、階段の架け替えや屋根の全面的な改修はこれに当たり、屋根や壁の仕上げ材だけを替える工事は当たらないとされています。キッチン・トイレ・浴室などの水回りの入れ替えや、手すり・スロープの設置も手続きは不要です。2025年4月以降に工事に着手するものが対象です。

平屋で延べ面積200平米以下の家(新3号建築物)は、大規模なリフォームでも、これまでどおり建築確認は要りません。つまり、同じ築40年の木造でも、平屋か2階建てかで手続きが分かれます。また、延べ面積が100平米を超える建物で大規模なリフォームをするときは、建築士による設計と工事監理が必要です(建築基準法5条の6、建築士法。都道府県が条例で別の面積を定めている場合があります)。

2025年4月から ― 2階建てと200㎡超の平屋は「新2号」、大規模なリフォームに建築確認が要る
2025年4月から ― 2階建てと200㎡超の平屋は「新2号」、大規模なリフォームに建築確認が要る左から、木造2階建ての家と、延べ面積200平米を超える平屋は新2号建築物で、大規模なリフォームに建築確認が必要。右の延べ面積200平米以下の平屋は新3号建築物で、大規模なリフォームでも建築確認は不要。大規模なリフォームとは、壁・柱・床・はり・屋根・階段の一種以上について過半を直す工事で、階段の架け替えや屋根の全面改修が当たり、仕上げ材だけの改修や水回りの入れ替えは当たらない。 2階建て 木造でも・面積を問わず 平屋・200㎡超 平屋・200㎡以下 新2号建築物新2号建築物 新3号建築物新3号建築物 大規模なリフォーム → 建築確認が要る大規模なリフォーム → 建築確認が要る → 建築確認は不要→ 建築確認は不要 大規模なリフォーム=壁・柱・床・はり・屋根・階段のどれかを「過半」直す工事大規模なリフォーム=壁・柱・床・はり・屋根・階段のどれかを「過半」直す工事 当たる例:階段の架け替え、屋根の全面改修当たる例:階段の架け替え、屋根の全面改修 当たらない例:屋根・壁の仕上げ材だけ、キッチン・浴室の入れ替え、手すりの設置当たらない例:屋根・壁の仕上げ材だけ、キッチン・浴室の入れ替え、手すりの設置

左から、木造2階建ての家と、延べ面積200平米を超える平屋は新2号建築物で、大規模なリフォームに建築確認が必要。右の延べ面積200平米以下の平屋は新3号建築物で、大規模なリフォームでも建築確認は不要。大規模なリフォームとは、壁・柱・床・はり・屋根・階段の一種以上について過半を直す工事で、階段の架け替えや屋根の全面改修が当たり、仕上げ材だけの改修や水回りの入れ替えは当たらない。

2025年4月以降に着手する工事が対象です。延べ面積100㎡を超える建物の大規模なリフォームは、建築士の設計・工事監理も必要です。判断に迷う工事は、建築主事または確認検査機関に事前に相談します。

手続きの順番は、工事の中身を決める、主要構造部の過半に当たるかを工務店や建築士と確かめる、当たるなら建築士が図面を作って確認を申請する、確認済証を受け取ってから着工する、工事が終わったら完了検査を受ける、です。確認の審査期間も変わりました。新2号建築物の審査は、申請を受け付けてから35日以内(6条4項)で、以前の4号建築物の7日以内より長くなっています。図面の準備も含めると、着工が1〜2か月遅れることを見込んでおくのが安全です。確認を受けずに工事をすると、建築主にも工事をした業者にも、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の罰則があります(99条)。

自分の家が新2号か新3号かは、階数と延べ面積で決まります。手元で当たりをつけるなら、登記事項証明書の表題部(種類・構造・床面積)か、固定資産税の課税明細書の床面積を見ます。ただ、登記の床面積と建築基準法の延べ面積は、測り方や算入する部分が同じとは限りません。200平米や100平米の境目に近い家は、建築士に図面で確かめてもらいます。また、防火地域・準防火地域の外で、増築する部分の床面積が10平米以内なら、確認は要らないという例外があります(6条2項)。物置程度の小さな増築を考えている人は、まず自分の土地が防火地域・準防火地域に入っているかを市役所の都市計画図で確かめます。

もう一つの壁が、古い家の現況です。確認を申請すると、直す部分だけでなく、建物が今の法律に合っているかも見られます。国土交通省の案内には、現行法に適合していない箇所があれば、別に適合させる工事が必要な場合があると書かれています。建てたときの確認済証や検査済証が残っていない家では、当時の図面がなく、まず現況を調べて図面を起こすところから始まります。ここで費用と時間が増えます。

この家の話に戻ります。登記を見ると、木造瓦葺2階建、延べ面積104.34平米。2階建てなので新2号建築物、100平米を超えるので建築士の設計・工事監理が要る家でした。検査済証は見つからず、市役所の台帳でも確認済証の記録までしか追えませんでした。一つ目の案(A案)は、屋根の野地板からの全面葺き替えと、階段の架け替えです。屋根も階段も主要構造部で、全面・架け替えなので「過半」に当たります。工事費680万円に、現況調査と図面・確認申請・工事監理で48万円、確認と完了検査の手数料が約6万円、合計734万円(いずれも税込の見積もり)。工期は、確認の審査を含めて着工まで約2か月延びる計画でした。

二つ目の案(B案)は、屋根は傷んだ下地を部分的に補修したうえで表面の仕上げ材を替え、階段は架け替えずに手すりと滑り止めを付ける案です。仕上げ材だけの改修と手すりの設置なので、建築確認は要りません。工事費は410万円(税込)で、設計・申請の費用はかかりません。差は324万円です。ただし、屋根の下地を「部分的に」直すのがどこまでなら過半に当たらないかは、工事の中身で変わります。私は女性に、工務店から「この範囲なら過半に当たらない」と考える根拠(直す面積の割合)を書面でもらい、判断に迷う場合は確認検査機関に事前に相談してもらうよう勧めました。

この家の見積もり2案(延べ104.34㎡の木造2階建て・いずれも税込)
項目A案:屋根全面+階段架け替えB案:仕上げ材+手すり
工事費680万円410万円
現況調査・図面・確認申請・工事監理48万円0円(確認不要)
確認・完了検査の手数料約6万円0円
合計約734万円410万円
着工までの期間約2か月延びる(審査35日以内+図面)延びない

女性が選んだのはB案でした。急な階段は架け替えず、手すりと滑り止めを付けて、上り下りの不安を減らすことにしました。屋根は10年後に全面的に直すつもりで、そのときは建築確認が要る前提で積み立てを始めています。「売るときに、確認を取ったかどうかで、何か変わりますか」とも聞かれました。確認と完了検査を受けておけば、その工事が法律に合っていたことを書類で示せます。逆に、要る工事を確認なしで行うと、売るときの重要事項説明や買主の調査で問題になる材料が一つ増えます。

古い2階建ての家を直すときは、見積もりを取る前に、工事の中身を「主要構造部の過半か」で二つに分けてみてください。屋根・壁・床・柱・はり・階段のうち、どれをどこまで直すのか。その線の引き方で、工期も、費用も、書類の残り方も変わります。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。

あわせてどうぞ

解説記事一覧