土地・不動産 2026-09-09

検査済証がない家 ― 古い実家の多くが該当する、売るときと直すときの壁

建物が完成したときに建築基準法に適合していることを示す「検査済証」。2000年前後より前に建った家の多くは、これを取っていません。当時は完了検査を受けない家が普通だったからです。検査済証がないと、増改築の建築確認や住宅ローンで壁に当たります。確認方法(台帳記載事項証明書)、代わりになる調査(ガイドライン調査)、売却時の扱いを整理します。

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この記事の位置: まず読む:値段と書類の読み方 → [買う前に確認すること] → 建てられるか・どれだけ建つか → 境界・隣地・道 → 災害と地盤 → 持っている間:税金と登記 → 売るとき → 貸す・借りる・特殊な権利

築42年の実家を売りに出した男性に、不動産会社から電話が入りました。「買主さんが、二階を増築して二世帯にしたいそうです。検査済証はありますか」。探しました。確認済証は出てきた。検査済証は出てこない。役所に行くと、「完了検査の記録はありません」。買主は「増築できないなら買わない」と言い、契約は一度止まりました。この記事は、その止まった契約が、三週間後にどう動いたかの話です。

相続した実家を売ろうとして、あるいは二世帯住宅に建て替えようとして、不動産会社や工務店から「検査済証はありますか」と聞かれる。探しても出てこない。役所で調べると「交付の記録がない」。これは珍しいことではなく、古い家では多数派です。何が困り、どう対処するかを書きます。

家を建てるときは、着工前に建築確認を受け(確認済証)、完成したときに完了検査を受けます(検査済証)。検査済証は、完成した建物が建築基準法に適合していることを役所または指定確認検査機関が確認した証です。ところが、完了検査の受検率は、1990年代まで非常に低く、国土交通省の資料では1998年で4割程度でした。確認は取るが完了検査は受けない、という慣行が長く続いたためです。2000年前後から金融機関や行政の運用が変わって受検率が上がり、現在は9割を超えています。つまり、2000年より前に建った家は、検査済証がないほうが普通です。

確認済証と検査済証 ― 着工前と完成後、二つの書類は別もの
確認済証と検査済証 ― 着工前と完成後、二つの書類は別もの家を建てる流れは、着工前の建築確認で確認済証をもらい、工事をし、完成後に完了検査を受けて検査済証をもらう、の順。2000年より前に建った家は、完了検査を受けていないことが多く(1998年の受検率は4割程度)、確認済証はあるのに検査済証がない、という状態が普通。 確認済証 着工前着工前 工事工事 完了検査完了検査 役所・指定確認検査機関役所・指定確認検査機関 検査済証 完成後完成後 2000年より前の家は、ここを受けていないことが多い2000年より前の家は、ここを受けていないことが多い 1998年の完了検査の受検率は4割程度(国土交通省)1998年の完了検査の受検率は4割程度(国土交通省) 確認済証は出てきた 検査済証は出てこない検査済証は出てこない

家を建てる流れは、着工前の建築確認で確認済証をもらい、工事をし、完成後に完了検査を受けて検査済証をもらう、の順。2000年より前に建った家は、完了検査を受けていないことが多く(1998年の受検率は4割程度)、確認済証はあるのに検査済証がない、という状態が普通。

検査済証がないことと違法建築であることは別です。検査を受けなかっただけで、当時の基準には合っている家が多い。

検査済証がないと何が困るか。一つ目は、増改築です。建築確認が必要な規模の増築(10㎡超など)や用途変更をするとき、既存の建物が適法であることを示す必要があり、検査済証がないとそれが示せず、確認が下りません。二つ目は、住宅ローンです。買主がフラット35などを使う場合、検査済証か、それに代わる適合証明が求められることがあります。三つ目は、売却時の重要事項説明で「検査済証なし」と記載され、買主の判断材料になることです。

まず確認から。検査済証の有無は、市町村の建築指導課で「台帳記載事項証明書」を取ると分かります。建築確認の年月日と番号、完了検査の年月日と番号が記載されていて、完了検査の欄が空欄なら検査済証は交付されていません。数百円で取れます。実家の書類を探す前に、これを取るのが早い。登記事項証明書の記事で書いた建物の登記と、この台帳の情報が食い違う(増築が未登記など)ことも、このときに分かります。

検査済証がない場合の対処は、目的で分かれます。増改築や用途変更をしたいなら、2014年に国土交通省が出した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に沿った調査(ガイドライン調査)を、指定確認検査機関に依頼します。図面と現地の調査で、現在の建物が建築基準法に適合しているかを報告書にまとめてもらい、それを建築確認の添付資料にします。費用は建物の規模と図面の有無で幅があり、木造住宅で数十万円が目安です。図面がないと、まず図面の復元から要るので、費用と時間が増えます。

売るだけなら、検査済証がないこと自体は売却の妨げになりません。「検査済証なし」と重要事項説明に記載して売る物件は、古い家では普通です。買主が建て替え前提なら、既存建物の検査済証は関係ありません(新築で確認と検査を受けます)。買主がそのまま住んでリフォームする前提なら、確認申請が要らない範囲のリフォームには影響しません。影響が出るのは、買主が増築や用途変更を予定している場合と、ローンの種類によってです。売却の前に台帳記載事項証明書を取って、不動産会社に渡しておけば、買主への説明がスムーズです。

検査済証がない家で、目的別にすること
目的必要なこと費用・期間の目安
まず有無を確かめる市町村で台帳記載事項証明書を取る数百円、即日〜数日
そのまま売る「検査済証なし」を重要事項説明に記載。台帳証明を不動産会社に渡す特になし
建て替える既存の検査済証は不要(新築で確認・検査)解体費のみ関係
増築・用途変更する指定確認検査機関のガイドライン調査→適合状況の報告書→建築確認木造住宅で数十万円、図面がなければ復元から
買主がフラット35などを使う検査済証に代わる適合証明の可否を金融機関に確認ケースによる

変わった点を一つ足します。2025年4月1日に施行された建築基準法の改正で、木造2階建ての家(新2号建築物)は、増築だけでなく「大規模の修繕・模様替え」、たとえば屋根や外壁、柱や梁の半分を超える工事にも建築確認が要るようになりました(2025年4月からの「4号特例」縮小の記事に詳しく書いています)。確認を申請すると、直す部分だけでなく建物全体が今の基準に合っているかを見られるので、検査済証のない2階建てでは、建て替えないリフォームでも、この記事のガイドライン調査に当たる現況の調査が要る場面が増えました。平屋で延べ面積200平米以下の家は、これまでどおり確認は要りません。なお、2014年のガイドラインは2025年4月に国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」に統合され、調査の中身はそちらに引き継がれています(2026年10月時点)。

台帳記載事項証明書について、相談で分かった限界も書いておきます。一つ、台帳は役所が建築確認を受け付けた記録なので、古い年代の分は保存されていない自治体があります。その場合は「記載なし」という証明になり、検査済証がないことは分かっても、確認を取ったかどうかまでは分からない、という状態になります。二つ、台帳の面積と登記の面積が違うことがあり、その差が未登記の増築であれば、そこが現況調査の対象になります。三つ、確認済証の原本が見つからなくても、台帳に確認の番号と日付が残っていれば、調査の入口には立てます。図面は、確認申請を出した設計事務所や工務店が控えを持っていることがあるので、台帳で設計者の名前を確かめて連絡する、という手も使えます。

現場で最初にやったのは、市の建築指導課で台帳記載事項証明書を取ることでした。手数料300円。建築確認の日付と番号は載っていて、完了検査の欄は空欄。1983年の建築で、当時の受検率を考えれば普通の状態です。次に、確認済証に付いていた当時の図面を確認。平面図と立面図が残っていて、これが大きかった。図面がなければ、復元から始めることになり、費用が倍になります。

買主の増築計画は、二階に約20平米を足すもので、建築確認が要る規模です。既存の建物が適法であることを示すために、指定確認検査機関にガイドライン調査を依頼しました。図面と現地を照合し、構造や採光、建ぺい率・容積率の現況を確認する調査で、木造二階建て、図面あり、で見積は28万円、期間は三週間。この費用を誰が持つかを、売主と買主で話し合い、売買代金2,400万円から14万円を値引きして半分ずつ、という形で合意しました。調査の結果、既存の建物は当時の基準に適合、現在の建ぺい率・容積率にも収まっていて、報告書を建築確認の添付資料にできる、という結論でした。契約は、この報告書が出た日に結び直されました。

この家で、動くまでにかかった費用と負担(2024年、相談例の数字)
項目金額負担
台帳記載事項証明書(市役所)300円売主
ガイドライン調査(木造2階建て・図面あり、税込)28万円買主が支払い
売買代金からの値引き(調査費の半分)14万円売主 → 買主
売主の実質負担300円+14万円=14万300円
買主の実質負担28万円−14万円=14万円
合計28万300円

同じ年に、逆の事例もありました。検査済証のない家で、売主が「古い家だから仕方ない」と思っていたところ、台帳記載事項証明書を取ったら、確認の記録が二階建てなのに、現況は三階建て。あとから増築された三階部分が、確認も取らずに建てられていて、容積率を超えていました。これは検査済証がないことではなく、違反建築の問題で、買主には「建て替え前提で」と説明して売ることになりました。検査済証の有無より、現況が基準に収まっているかが大事だ、と本文の最後に書いたのは、この家のことです。

一つ注意を。検査済証がないことと、違法建築であることは別です。検査を受けなかっただけで、建物自体は当時の基準に適合していることが多い。逆に、検査済証があっても、そのあとの増築で建ぺい率や容積率をオーバーしていれば、現在は違反状態です。用途地域の記事で書いた建ぺい率と容積率を、現況で確かめておくことが、検査済証の有無よりも実は大事です。

止まった契約は、300円の証明書と、28万円の調査で動きました。「検査済証はありますか」と聞かれて探し回る前に、台帳記載事項証明書を取り、当時の図面を探す。この二つで、その家が「検査を受けなかっただけの家」なのか「基準を超えた家」なのかが分かります。答えはどちらでも、次にやることが見えます。見えないまま探し回る三週間が、一番もったいない時間です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-06

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-06 確認)。

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