離婚・家族 2026-09-12
面会交流の詳細 ― 頻度・受け渡し・宿泊をどこまで決めるか、拒否できる場合
面会交流は、離れて暮らす親と子が会う権利です。離婚協議書に書くとき、細かく決めすぎると守れず、粗すぎると揉めます。頻度・時間・受け渡しの場所と方法・宿泊・学校行事・連絡手段の決め方の相場、間接交流(手紙・写真・オンライン)、拒否できる正当な理由、間接強制、第三者機関の使い方を整理します。
この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → [離婚の中身を決める] → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → 離婚後の生活 → 状況別(当てはまる方だけ)
離婚から一年、元夫からの手紙を持って女性が来ました。「面会交流を、この半年、一度も実施してもらえていない。家庭裁判所に間接強制を申し立てる」。協議書には「月1回程度、日時は協議して定める」とあります。女性は「連絡は来ていたけど、子が行きたがらないので断った」。子は7歳。この記事は、その手紙のあとの、四か月の話です。
離婚協議書に書くこと の記事で、面会交流は「最低限の頻度と連絡手段だけ固定する」と書きました。この記事は、その中身を具体的にする話です。面会交流は、子と離れて暮らす親(非監護親)が子と会い、電話や手紙でやり取りする権利であり、同時に、子が両方の親と関わり続けるための子の利益でもあります。
決める項目は五つです。一つ、頻度と時間。実務でよく見る形は、月1回、数時間から半日。子が小さいうちは短く、成長すると長くなる傾向があります。二つ、受け渡しの場所と方法。駅やショッピングモールの入口など、双方の負担が少ない中間地点を決め、親同士が顔を合わせる時間を短くします。DVやモラハラの記事で書いた事情があれば、受け渡しを第三者に任せる方法もあります。三つ、宿泊の有無。子が乳幼児のうちは日帰りが多く、成長するにつれて宿泊を認める例が増えます。四つ、学校行事や誕生日、正月・お盆などの特別な日の扱い。五つ、電話・ビデオ通話・手紙といった、直接会う日以外の連絡手段(間接交流)。
書き方の水準について、もう一段具体的に書きます。「月1回程度、日時と場所はその都度、前月末までにLINEで協議する」という形が、実務でよく使われます。曜日や時間まで固定すると、学校行事や体調不良で毎回変更が必要になり、そのたびに揉めます。逆に「適宜協議する」だけでは、協議そのものが行われなくなることがあります。最低限「月に一度は連絡を取り合う」という頻度の下限だけを固定し、詳細はその都度決める、という骨格が現実的です。
| 項目 | 実務でよく見る形 |
|---|---|
| 頻度と時間 | 月1回、数時間〜半日(成長に応じて延長) |
| 受け渡し | 駅やモールの入口など中間地点。事情があれば第三者機関 |
| 宿泊 | 乳幼児は日帰り、成長後は月1回程度の宿泊を検討 |
| 特別な日 | 誕生日・正月・学校行事の扱いを別途決める |
| 間接交流 | 電話・ビデオ通話・手紙。会わない月の補完 |
拒否できる場合を書いておきます。面会交流は子の利益のための制度なので、非監護親に問題行動(子への虐待、連れ去りのおそれ、DVを子の前で行っていた)がある場合、監護親は拒否、または条件付き(第三者の立ち会い、短時間から始める)にすることができます。単に「元配偶者と関わりたくない」「新しいパートナーに会わせたくない」という理由だけでは、正当な拒否事由になりません。子自身が会いたくないと言う場合は、年齢と理由を踏まえて判断されますが、子の意思をそのまま結論にはせず、背景(片方の親からの働きかけなど)も見られます。
拒否を続けた場合の手続きも書きます。協議書や調停調書に定めた面会交流を、正当な理由なく監護親が拒み続けると、非監護親は家庭裁判所に「間接強制」を申し立てられます。認められると、「面会交流を実施しないたびに金〇万円を支払え」という命令が出て、金銭的な圧力で実施を促します。ただし、日時・場所・方法が具体的に特定されていない取り決めでは、間接強制が認められないことがあるので、協議書や調停調書は、最低限の骨格だけでも具体的な言葉で書く必要があります。
第三者機関の利用も、選択肢として書いておきます。親同士が直接連絡を取れない、受け渡しで顔を合わせたくない、という場合、面会交流支援団体(自治体やNPOが運営)が、受け渡しの付き添いや、当日の立ち会いを行います。費用は団体によって無料から数千円、民間の専門機関では1回数万円のこともあります。こども家庭庁や自治体の窓口で、利用できる団体を紹介してもらえます。
順に書きます。まず、間接強制の見通し。協議書の文言は「月1回程度、日時は協議して定める」で、日時・場所・方法が特定されていない。この文言では、間接強制は認められにくい、と女性に伝えました。元夫の弁護士も同じ判断で、間接強制ではなく、面会交流の調停を申し立ててきました。調停で、調停委員が女性に聞いたのは「子が行きたがらない理由」でした。女性は、「父が新しい相手と暮らしていて、子に会わせたくない」と、本音を言いました。子の「行きたくない」は、女性の気持ちを子が汲んでいた部分がある、と調停委員は見ました。
調停の結果です。頻度は月1回、第二土曜の10時から16時、受け渡しは駅の改札、宿泊はなし、と具体的に定めた調停調書。最初の三回は、面会交流支援団体の付き添いつきで、一回3,000円を元夫が負担。子が慣れたら付き添いなしに移行。間接交流として、週に一度、日曜の夜に10分のビデオ通話。調停は四回、四か月で成立しました。「単に元配偶者と関わりたくない、新しいパートナーに会わせたくないという理由だけでは、正当な拒否事由にならない」と本文に書いたとおりで、女性の本音は、調停では通りませんでした。
そのあとの話も書きます。付き添いつきの三回目で、子は「次は一人で行く」と言いました。半年後、女性から私に連絡があり、「月1回は続いています。正直、私が楽になりました。土曜の6時間、自分の時間ができた」。面会交流は子の利益のため、と本文に書きましたが、監護親の利益になることもある。「会わせたくない」で断っていた半年は、女性にとっても、6時間×6回の時間でした。
最後に、面会交流は、養育費と並べて語られがちですが、別の話です。養育費と算定表の記事で書いたとおり、「会わせないから養育費を払わない」「養育費を払わないから会わせない」は、どちらも法律上通りません。子にとっての利益を軸に、頻度と方法だけを、無理なく続けられる形で決める。それが、この項目の実務です。
「月1回程度、日時は協議して定める」という協議書の一行は、間接強制には弱く、調停で「第二土曜10時、駅の改札」に書き直されました。「最低限の骨格だけでも具体的な言葉で書く」と本文に書いた理由は、この書き直しです。そして、書き直された一行は、女性を縛るものではなく、女性に土曜の6時間を返すものになりました。
執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-16
この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。