離婚・家族 2026-09-29

ひとり親の住まいの探し方 ― 公営住宅の優先入居、住居確保給付金、民間賃貸の保証会社

離婚のあと、子どもと二人で住む家をどう確保するか。選択肢は、公営住宅(ひとり親は優先扱いがある)、家賃を一時的に支える住居確保給付金、保証人の代わりに保証会社を使う民間賃貸、そして緊急時の母子生活支援施設です。それぞれの家賃の決まり方、申し込みの窓口、順番を、相談で実際に組んだ手順で書きます。

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この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → [離婚後の生活] → 状況別(当てはまる方だけ)

離婚届を出す前に、住む場所が決まらない。女性の相談は、そこで止まっていました。子どもは小学二年生と四歳。今の家は夫名義で、別居すれば出るのは自分の方になる。パートの収入は月十一万円。「保証人になってくれる親もいないし、この収入で借りられる家があるのか分からない」。

ひとり親の住まいの選択肢は、大きく四つあります。公営住宅、民間の賃貸、家賃を一時的に支える給付金、そして緊急時の施設。順に書きます。

一つ目は公営住宅です。都道府県や市区町村が持つ住宅で、公営住宅法に基づき、収入が一定以下の世帯が入居できます。家賃は、世帯の収入と住宅の広さ・築年数から計算される「応能応益」の方式で、民間より低く抑えられています。ひとり親世帯は、多くの自治体で「優先入居」の扱いがあり、抽選の当選確率を上げる、収入基準を緩める、といった優遇が受けられます。何倍の優遇か、どの住宅が対象かは自治体ごとに違うので、住んでいる(または住みたい)市区町村の住宅課で確かめてください。

公営住宅の弱点は、時間です。募集は年に数回、申し込みから入居まで数か月かかることが普通で、人気の住宅は優遇があっても外れます。「今月中に出なければならない」という場面には向きません。

二つ目は民間の賃貸です。速さでは一番で、条件が合えば二週間で入居できます。壁は、収入の審査と保証人です。保証人については、今は「保証会社」を使う物件が大半で、親族の保証人がいなくても借りられます。保証会社の利用料は、初回に家賃の半月分から一か月分、その後は年に一万円前後、という物件が多い。審査は、家賃が月収の三分の一以内かどうかを一つの目安に見ます。月収十一万円なら、家賃の上限はおよそ三万六千円。児童扶養手当や養育費も収入として説明できるので、金額が決まっているものは書面(調停調書や公正証書、手当の決定通知)を用意しておくと審査が通りやすくなります。

三つ目は、住居確保給付金です。生活困窮者自立支援法に基づく制度で、離職や減収で家賃が払えなくなった人に、家賃相当額(上限あり)を自治体が家主へ直接支払います。期間は原則三か月、延長で最長九か月。収入と資産の要件があり、求職活動などの条件もつきます。窓口は、市区町村の「自立相談支援機関」(生活困窮者の相談窓口)です。もう一つ、2025年4月から、収入が大きく減って家賃の安い家に移る必要がある人に、転居にかかる費用を支給する枠が加わりました(厚生労働省の令和7年4月の制度変更)。対象になるかどうかの要件は自治体ごとに決められているので、家賃の支援と転居費用の支援の両方について、自立相談支援機関で確かめてください。「今の家賃を次が決まるまで支える」制度に、「安い家へ移る費用を支える」枠が足された、と考えると分かりやすいです。

四つ目は、母子生活支援施設です。児童福祉法に基づく施設で、十八歳未満の子どもと母親が一緒に入り、生活の立て直しを支援します。DVからの避難で緊急に住まいが要る、頼れる人が誰もいない、という場面の受け皿です。窓口は市区町村の福祉事務所。「施設」という言葉で身構える人がいますが、個室で、職員が就労や保育の相談に乗る場所です。

ひとり親の住まい、四つの選択肢
選択肢速さ家賃の目安窓口向く場面
公営住宅数か月(募集は年数回)収入に応じて低め(例:月2〜3万円)市区町村の住宅課急がない。長く住む家を安く
民間賃貸+保証会社2週間月収の3分の1以内(月収11万円なら約3.6万円)不動産会社今すぐ出たい。保証人がいない
住居確保給付金申請から数週間家賃相当額を家主へ直接(原則3か月、最長9か月)。2025年4月から、安い家へ移る転居費用の枠も自立相談支援機関今の家賃を次が決まるまで支える/安い家への転居費用
母子生活支援施設緊急時は即日〜収入に応じて福祉事務所DVからの避難。頼れる人がいない

相談で組んだ順番は、こうです。まず民間の賃貸を家賃三万五千円以内で探し、保証会社を使う物件に絞る。同時に公営住宅の次の募集に申し込む(優先入居の書類を揃える)。民間に入ったあと、公営に当たれば移る。最初の家賃と初期費用は、養育費の取り決め(月四万円)と児童扶養手当(所得により月一万円台から四万円台)を合わせて計算し、初期費用は自治体の母子父子寡婦福祉資金の貸付(転宅資金)を申し込む。

相談で組んだ順番 ― 民間で先に暮らし、公営は後から取りに行く
相談で組んだ順番 ― 民間で先に暮らし、公営は後から取りに行く左に母と子ども二人。矢印が二本に分かれ、上は民間賃貸(保証会社を使う、2週間で入居)、下は公営住宅(優先入居の申し込み、数か月待ち)。民間の家に入ったあと、公営に当たれば移る。 母 子 まず(2週間)まず(2週間) 同時に申し込む同時に申し込む 民間賃貸 保証会社・家賃3.4万円 公営住宅 優先入居・数か月待ち 当たれば公営へ移る当たれば公営へ移る ¥ 養育費+手当 決まった収入の証明を決まった収入の証明を 書面で揃える書面で揃える

左に母と子ども二人。矢印が二本に分かれ、上は民間賃貸(保証会社を使う、2週間で入居)、下は公営住宅(優先入居の申し込み、数か月待ち)。民間の家に入ったあと、公営に当たれば移る。

女性が最終的に入ったのは、家賃三万四千円、駅から徒歩十五分の民間のアパートでした。保証会社の初回料は一万七千円。公営住宅は一回目の抽選で外れ、二回目を待っている間に、民間の家で生活が回り始めました。

住まいの相談で、私がいつも先に伝えることがあります。「収入が低いから借りられない」は、半分しか正しくない。決まった収入の証明を揃え、家賃を収入の三分の一に収め、保証会社を使う。この三つが揃えば、ひとり親でも民間の家は借りられます。公営住宅は、その後に取りに行く選択肢です。

民間の賃貸に決めたときの初期費用も、数字を書きます。家賃三万四千円の物件で、敷金一か月(三万四千円)、礼金一か月(三万四千円)、仲介手数料半月(一万七千円、税別)、保証会社の初回料(一万七千円)、火災保険(二年で約二万円)、鍵の交換(約一万五千円)。合わせて十三万七千円、仲介手数料の消費税を足して約十四万円です。ここに引っ越し代が乗ります。この初期費用の当てに使えるのが、母子父子寡婦福祉資金の「転宅資金」で、上限二十六万円、無利子または低利で、市区町村の福祉の窓口に申し込みます。審査に一か月ほどかかるので、物件を探し始める前に相談しておくと、契約のときに間に合います。

入居したあとにやることが二つあります。一つ、児童扶養手当の住所変更と、毎年八月の現況届。届を出し忘れると支給が止まります。二つ、養育費の振込先と家賃の引き落とし口座を、自分名義の口座に揃えること。相手と共有していた口座のままだと、離婚後に引き出しや解約で揉めます。

逆に、今の家に住み続ける道もあります。財産分与で家をもらい、住宅ローンが残っていれば、名義とローンの扱いを決めることになります。これは住まい探しとは別の大きな話で、離婚と住宅ローンの記事に書きました。どちらの道でも、「住む場所」を先に固めてから条件の話に入る、という順番は同じです。

住まいが決まると、離婚の話し合いも進みます。出て行く先が決まっていない状態で条件を詰めると、急いで不利な条件をのむことになりやすい。家を先に、条件はその後で。順番を逆にしないことが、ひとり親の住まいの相談で一番大事なところです。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-09-29

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-09-29 確認)。

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