離婚・家族 2026-09-25

別居・離婚と児童手当 ― 受け取る人は自動では変わらない。申請した月の翌月分から

児童手当は、別居しても離婚しても、受け取る人が自動で切り替わりません。離婚協議中の別居なら子と暮らす親に優先して払われますが、それも申請してからで、さかのぼりはありません。2024年10月からの支給額、別居中と離婚後の手続き、第3子の数え方で離婚が効く場面、児童扶養手当との違い。申請が4か月遅れた母親の実際の金額で書きます。

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この記事の位置: 別居前・離婚を考え始めたら → 離婚の中身を決める → 書面にする・届を出す → 離婚が成立したら → [離婚後の生活] → 状況別(当てはまる方だけ)

「別居してから、児童手当を一度も渡してもらっていないんです」。9歳と2歳の子を連れて家を出た30代の女性は、通帳を開いて言いました。別居は6月。児童手当は、結婚していた間ずっと夫の口座に振り込まれていて、夫からは何の連絡もない。相談に来たのは9月の終わりでした。私は、市役所で手続きをしたかを聞きました。「離婚が決まってからだと思っていました」。

児童手当は、2024年10月分から大きく変わりました。対象は高校生の年代(18歳になった後の最初の3月31日まで)に広がり、親の所得による制限がなくなりました。月額は、3歳未満が1人1万5,000円、3歳から高校生の年代までが1万円、第3子以降は年齢にかかわらず3万円です。支払いは年6回、偶数月に、その前月までの2か月分がまとめて振り込まれます(2026年9月時点)。

受け取るのは、父母のうち、生計を主に支えている方です。共働きなら、たいてい所得の高い方になります。公務員は、市区町村ではなく勤務先から支給されます。ここで大事なのは、別居しても、離婚しても、受け取る人は自動では切り替わらない、ということです。前に届け出た人の口座に、そのまま振り込まれ続けます。

別居中の扱いには、特別な決まりがあります。父母が離婚協議中などで別居している場合、子と同居している方に優先して支給されます。子と暮らす親が、自分の住所地の市区町村で児童手当の認定請求をすると、受け取る人が切り替わります。市区町村によっては、離婚協議中であることが分かる書類(調停の申立てを示す書類など)を求められます。離婚が成立したあとも同じで、子と暮らして育てている親が、自分で申請します。共同親権を選んだ場合も、親権の形より、子と暮らして生計を担っているかで決まります。

そして、支給は原則として、申請した月の翌月分からです。出生や転入のように、月末近くの出来事から15日以内に申請すれば申請月分から出る特例もありますが、別居や離婚で受け取る人が変わる場合に、前の月までさかのぼって支給されることは期待できません。申請が遅れた月の分は、元の受給者の口座に入るか、支給されないままになります。「離婚が決まってから」ではなく、別居した月のうちに市区町村の窓口へ、が原則です。

別居しても受給者は自動では変わらない ― 同居する親が申請した翌月分から
別居しても受給者は自動では変わらない ― 同居する親が申請した翌月分から左は別居前、所得の高い父の口座に児童手当が入る。別居後も手続きをしなければ父の口座に入り続ける。右は、子と暮らす母が市区町村に認定請求をし、申請した月の翌月分から母の口座に入る。 父 受給者のまま ¥ 手当 手続きしないと、父の口座に入り続ける手続きしないと、父の口座に入り続ける 母 子と同居 認定請求 申請申請 申請した月の翌月分から母へ申請した月の翌月分から母へ

左は別居前、所得の高い父の口座に児童手当が入る。別居後も手続きをしなければ父の口座に入り続ける。右は、子と暮らす母が市区町村に認定請求をし、申請した月の翌月分から母の口座に入る。

離婚協議中の別居では、子と同居している親に優先して支給されます。さかのぼっての支給は期待できません(2026年9月時点)。

窓口に持っていくものは、市区町村によって少しずつ違いますが、おおむね次のとおりです。認定請求書(窓口にあります)、自分名義の振込先の口座が分かるもの、自分と子のマイナンバーが分かるもの、本人確認の書類。別居中なら、離婚協議中であることが分かる書類を求められることがあります。子の住民票が自分と同じ住所にあることも見られるので、別居したら住民票を移してから行くと話が早い。オンラインで申請できる市区町村もあります。

元の受給者が公務員の場合は、少し流れが違います。公務員の児童手当は勤務先から出ているので、子と暮らす親が市区町村で申請すると同時に、元の受給者の側で勤務先への届出が要ります。相手が届出をしないと、二重に振り込まれて後で返す、という面倒が起きることもあります。相手と話せる関係なら、同じ月のうちに双方が手続きをするよう、書面で伝えておくのが無難です。

もう一つ、別居中に受け取る人は、年に一度の「現況届」に気をつけてください。現況届は2022年6月から原則として出さなくてよくなりましたが、離婚協議中で別居している人のように、市区町村が暮らしの状況を確かめる必要がある人には、引き続き提出を求める扱いがあります。案内が届いたのに出さないと、支給が止まることがあります。住民票の住所と実際に暮らす場所が違う人も、同じように確認の対象になりやすいので、郵便物が届く住所を市区町村に伝えておきます。

女性の家に当てはめます。9歳の子が1万円、2歳の子が1万5,000円で、月2万5,000円。女性は9月の末に申請したので、女性の口座に入るのは10月分からです。6月から9月までの4か月分、10万円は、夫の口座に入りました。10月分と11月分の5万円が、12月に女性の口座へ初めて振り込まれます。

申請が4か月遅れた女性の家の児童手当(9歳と2歳、月2万5,000円)
月9歳の子2歳の子入った口座
6〜9月(別居〜申請の月)1万円×4か月1万5,000円×4か月夫:合計10万円
10〜11月1万円×2か月1万5,000円×2か月女性:5万円(12月に振込)
1年分(申請後)12万円18万円女性:30万円

入ってしまった10万円は、市区町村に言っても、女性の口座には戻りません。取り戻す道は、夫との話し合いです。別居中の生活費は婚姻費用として請求でき、その記事で書いた調停を女性はすでに申し立てていました。調停の席で、夫が受け取った4か月分の児童手当を子のために使っていないことを伝え、未払いの婚姻費用に10万円を上乗せして払う、という形で合意しています。弁護士をつけない調停で、女性が出したのは、通帳の写しと、市役所で受け取った認定の通知でした。

離婚が絡むと、金額が変わる場面がもう一つあります。第3子の数え方です。第3子以降の3万円は、高校生の年代を過ぎた上の子も、22歳になった後の3月31日まで、親が生活費を負担していれば数に入れられます。ところが、離婚して上の子が元配偶者と暮らし、自分が生活費を負担していなければ、その子は数えられないことがあります。3人きょうだいで、一番上の大学生が父と、下の二人が母と暮らすと、母の側では下の子が「第2子」になり、月3万円が1万円になる、ということが起こりえます。市区町村に、誰がどの子の生活費を負担しているかを申し出る書類があるので、窓口で確かめてください。

名前の似た「児童扶養手当」は、別の制度です。ひとり親家庭などに支給され、所得による制限があり、離婚が成立したあと(または一定の条件の別居)に申請します。児童手当は子どもがいる家庭全体、児童扶養手当はひとり親の家庭、と覚えておくと混ざりません。両方とも申請した月の翌月分からなので、離婚届を出した週に、両方の窓口に行く人が多いです。ひとり親家庭の支援制度の記事に、ほかの制度をまとめています。

養育費との関係も聞かれます。裁判所の算定表で養育費を考えるときは、親の給与や事業の収入を使い、児童手当は収入に含めずに考えるのが一般的です。児童手当を受け取っているから養育費が減る、という話にはなりにくい。反対に、児童手当を受け取っていた側が子と離れて暮らすことになったら、自分から受給をやめる届けを出すのが筋です。

女性は、相談の帰りにそのまま市役所に寄り、9月のうちに認定請求を済ませました。相談のあとで確かめたのは、12月の振り込みの額だけです。児童手当は、自分から動かないと、受け取る人は変わりません。別居したら、その月のうちに住所地の窓口へ。4か月で10万円という数字が、その理由です。

執筆:長澤 湊(宅地建物取引士・行政書士・測量士補) 内容確認日:2026-10-02

この記事は制度と手続きの一般的な説明で、個別の事案についての法律・税務の相談や判断ではありません。制度や数字は内容確認日の時点のものです。ご自身の事案は、弁護士・司法書士・税理士・行政書士など、該当する専門家に確かめてください。

参考(公式)

この記事の制度と数字は、次の一次情報で確かめられます(2026-10-02 確認)。

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